35話 「懐疑的会議/上」
「いや〜……待って、怖すぎなんだけど……正メンバーになったと思ったらいきなり会議って何……!? 顔合わせもしてないのに……!?」
ウチの名前は『縁切 サラ』
まだ17歳の最強美少女。
ウチの能力がとても強力ということで、政府管轄の対能力犯罪特化組織、『鎮静会』にスカウトされ、つい五日前に正式なメンバーになったばっかりです。
メンバーと言っても、まだ高校生なので「これから少しずつ慣れていこうね〜」
って話だったのに、いきなり緊急招集が掛かり、首都東京近くの県に拠点を置くメンバー全員が、この『鎮静会本部』にお呼ばれしました。
ウチ、免除で良かったんじゃないかなぁ……
でっけぇ扉を開けて中に入ると、きっぱりとした黒いスーツに身を包んだ男性が立ってました。
「『縁切 サラ』様ですね。こちらへどうぞ」
「あ、えっと、ど、ども〜……」
先導するスーツの人の後ろに付いていく。
「……………………」
絨毯はレッドカーペット(?)みたいだし、廊下には絵画みたいなのがずらりと並んでる。
雰囲気があり過ぎて怖い……『鎮静会』……どんな人たちなのかな……優しい人だといいな……
「こちらになります」
スーツの人は、仰々しい扉の前で止まり、腕を後ろに組んで向き直った。
「ありがとうございます……」
いちいち扉がデカいのは何なん……
巨人でもいる伏線ですか?
……ま、ビビっててもしょうがないよね!
ここは元気よく行こうか!!
「こんにちは〜!! 新人のえんき……」
「あ? ……どこに入ってきてんだガキぶち殺すぞ……!?」
「………………………………」
終わったわマジでなんじゃここ!!
もう既に『絶縁』したいんだが!?
男の人目つき悪すぎでしょ! 人殺し!?
「恒河、その子は新人の縁切 サラさんだ」
隣に座っていた長身で長い蒼髪の女性が、フォローを入れてくれた。
「怖がらせてすまない。私は『軍光 刃織』。こっちの男は『小鳥喰 恒河』だ。ほら、謝れ恒河」
「チッ……」
刃織さんに諭されても、恒河はそっぽを向いて椅子に深く腰かけるだけ。
いや……謝れよ……!
てか『ガキ』呼びして来たけど……あんたもハタチないくらい……だよね……?
「まあ、座ってくれ。そんなに硬くならなくても大丈夫だからな」
「あ、ありがとうございます……!」
刃織さんはイケメンだ……!
遠慮なく、刃織さんの隣に座らさせてもらう。
周りを見渡すと、テーブルの横に、背筋の伸びたおじいちゃんが、しっかりとした黒いスーツを着て、後ろに腕を組んで立っていた。
「あの人は……?」
「あの人は『ファザー』さん。最古参だ」
「へぇ……てか、三人しか居ないんですか……?」
「いや、もうすぐ来ると思うぞ。……でも、今日は本当なら『休日』だったからな……あいつらのモチベは最悪だろう……」
「あ〜……そうだったんですか。祝日ですもんね……」
そうこうしていると、反対側の扉に三人の人影が見えてくる。
「はぁ〜……もっと早く連絡しろよ……やっと休みだったのに……神様仏様マイシスター……」
「あたしも……今日休みの前提で飲みまくってたのに……」
「シャキッとしてくれよ二人とも……!」
うっわ。
疲れ切った社会人感ハンパな。
一人は黒髪爽やかイケメン。
マイシスター言ってた人。
一人は……なんか、ほとんど下着で、金髪にピンクメッシュ入れた女の人。
セクシーだなおい。
ボンキュッボンだし、足長ぇし。
一人はデカいムキムキ短髪マッチョ。
この人も男前でイケメン。
恒河は、三人にも啖呵を切った。
「遅刻だろ……!」
それに、黒髪の男の人が答える。
「すぁあせん……昨日の夕方から飲んでまして……夜中に連絡来まして……」
確かにすごい夜中に急にだったよなぁ……
びっくりしてウチも全然寝れなかったし。
「だよなぁ……てか、アレ。見ない顔だね、新人さん?」
黒髪の男の人が、ウチに話しかける。
正面から見てもイケメンだな……目の隈すごいけど。
「はい。縁切 サラって言います」
「俺は『星月 皆既』。よろしく」
「新人さんなんだぁ〜」
「あっ、はい!」
金髪にピンクメッシュ入れたお姉さんも、こっちを向く。
色気すごいな……なんの香水使ってるんだろ。
「あたしは『豊姫 甘夏』。よろしくね」
「よ、よろしくお願いします……!」
「俺は『天衝 豪千』だ! よろしくなサラ!」
「! はい! よろしくお願いします!」
ムキムキマッチョさん改め、豪千さんは、ハツラツとしてて頼りがいがありそう。
「これで全員ですか?」
刃織さんに聞く。
「いや、本当ならあと二人……」
「みんな揃ったかな〜? 揃ってるよね〜?」
少年の元気な声が、部屋の外から響いてくる。
中に駆け入ってきたその子は、白衣に丸メガネを掛けていて、茶髪に赤メッシュが入っていた。
その子が入ってきた途端、空気が一気にピリつく。
「っ…………!」
その雰囲気に、背筋を伸ばし、膝に手を置いてしまう。
少年は、こう続けた。
「今回みんなに集まってもらったのは、村一つを滅ぼした大量殺戮少女こと、『嵐山 桜』について、方針とボクの見解を伝えようと思ったからだよ」
えっ…………大量殺戮少女……!?
なにそれ、聞いてないんだけど。
他の人には情報行ってる感じ……?
「どんどん話進めていくね。ボクの見解としては……」
「ぶっ殺しゃいいじゃねぇか」
「ちょっ……!」
恒河が少年の話を遮る。
刃織さんが嗜めるも、恒河の目つきは鋭く少年を捉えていた。
「被害が広がる前に殺す。セオリーだろ。既に殺ってる側なんだから、配慮する必要もねぇ」
それに、皆既さんが手を挙げる。
その目は、さっきの疲れ切った表情からは想像できないほどに、鋭かった。
「一理あるけどさ、そもそもどの程度の戦闘力を持ってるのか分からない。『愉悦』君の事だから、資料や動画はあるんだろ?」
「それを今から提示するんだよ〜」
白衣の少年は、『愉悦』と呼ばれた。
なんかあの年にしては、嫌な雰囲気が漂っていて怖い。
マッドサイエンティストショタだ。
大きなスクリーンに、映像が映し出される。
「ひっ……!?」
そこには、人々が殺し合うあまりにも酷いモノが流れた。
「まずはこれ。おそらく精神干渉の類だと思う」
刃織さんがそれを見て、呟く。
「これほど大規模な精神干渉……本人への反動は無いのか……?」
愉悦君はそれに答える。
「記録できてるのがここからだからなぁ……分かんないや」
てか、そもそもなんで記録できてるんだよ。
上空から撮った映像……だよね……?
豪千さんが手を挙げ、発言する。
「そもそも、なんでこの子は虐殺を行うに至ったんだ?」
確かに……そもそも理由が分からない。
それに、恒河が答える。
「快楽殺人だろ。そいつの表情、よく見てみろよ。笑ってんぜ」
皆既さんは、映像を観ながらボソリと呟く。
「空っぽの笑顔……ってやつかな」
「……どういう意味だよ」
「さぁ。まだ分からない。でも、俺には楽しんでる笑顔には見えなかった」
「……そうか」
愉悦君は、新しい映像をスクリーンに映し出す。
もうあんまりグロいのは見たくない。
次に映ったのは、大きな羽根の生えた化け物……? と、戦っている映像。
それを見た甘夏さんが呟く。
「凄い身体能力……あの怪物と一人で……てか、そもそもこのデカいやつは何? 未登録の先駆者?」
映像を観ながら、愉悦君が答える。
「上手く身を隠して、力を蓄えていたみたい。それに、君たちにとってはあんまり脅威じゃないかなって思って報告しなかった」
皆既さんは苦笑いを浮かべる。
「いや、十分脅威でしょ。ちゃんと報告頼むよ。それと、『嵐山 桜』の横にいる青年についての資料はある?」
本当だ。
よく見ると、青年も『嵐山 桜』の後ろに隠れるようにして立っている。
愉悦君は、つまらなさそうな口調で指さす。
「そこの資料に一応書いてあるよ」
「ありがとう」
皆既は、『青年』の資料に目を通す。
(名前は『蓮界 悠真』。W大学一年。書いてある情報は……大体全部ボランティア……? …………なるほど……悠真の人物像が何となく見えてきた)
愉悦君は、新しい映像スクリーンに流し出す。
「それで、これがメインの『赫阿修羅』の件ね」
「これって…………!」
息を呑むような凄まじい命の削り合い。
信じられないような強さの化け物が暴れている。
映像は、化け物の腕が六本になったと思えば、急にぶつ切れした。
「カメラが耐えられなかったらしくて、記録に残ってるのはここまでね。……一応、先に皆の見解を聞いておくよ」
ファザーさんが手を挙げた。
「その映像に映っている、灰色の髪の少年は、『錆林 鋼』ですか?」
愉悦君が、それに答える。
「そうそう。確か、鎮静会へのスカウトも検討されてた『磁界操作』の子だね。資料にもしっかりまとめてあるよ」
このときの愉悦君の声色は、心なしか楽しそうだった。
また、皆既さんが手を挙げた。
「『錆林 鋼』も、『嵐山 桜』も、『蓮界 悠真』の協力者って事で良いんだよね?」
それに、愉悦君が答える。
「うん。今も一緒に行動してるよ」
「……そうかぁ…………」
皆既さんは、また手を顎に当て、何かを考えているようだった。
(『錆林 鋼』は、おそらく『蓮界 悠真』との繋がりだろう……だが、ただ『友人』というだけで、あれほどの戦乱に参加するか……? 『蓮界 悠真』……『残響』……人間性……)
場に、静寂が流れる。
ウチは、もう何が何だかさっぱりだ。
あまりにも情報量が多すぎてついていけない。
気持ちの整理を付けるためにも、一度手を挙げる。
「あ……あの……! い、一回休憩挟みませんか……!?」
それに、皆既さんも乗ってくれる。
「そうだね。俺も少しだけ、整理の時間が欲しい」
愉悦君も、それに同調する。
「分かった。じゃ、少し休憩と言うことで」
会議に一旦区切りが付いた。
─────
「怖かったって〜……!」
最初の仕事にしてはあまりにショッキングなモノを見せつけられたので、刃織さんに泣きつく。
「大丈夫だ。ほら」
刃織さんの安心感半端ない……!
─────
皆既は、外に出て考え事をしていた。
そして、ポツリと呟く。
「一番ヤバいのは、『蓮界 悠真』だ」




