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ロマンチスト・ソウル  作者: タイラ
三章 「千秋楽山・決戦編」
26/42

26話 「ド腐れ邪仙とイカれ如来」


 [赫阿修羅(かくあしゅら)を復活させる]


 そのにわかには信じ難い言葉は、『波』からしても、嘘ではなかった。


「琉……琉……助……?」


 琉琉助を呆然と見つめることしか出来ない。

 琉琉助も、今まで見たことがないほど唖然としながら俺達を眺めていた。


 背後に立つ金髪の男は、一瞬訝いぶかしむような表情を浮かべた後、笑みを貼り付けた。


「お前……もしかして、言ってなかったのか?」


 『言ってなかった』……?

 意味が分からない。

 赫阿修羅を復活させるなんて聞いていない。

 むしろ、復活を防ぐのが今回の目的のはずじゃ……!?


 金髪の男は、あざけるような声色で続けた。


「なんで言わなかったんだ? 『若い人間に過去の人間の遺物を見せるわけにはいかない』とか、そう言う理屈か? それとも……ただただ嫌われるのが怖かっただけか?」


 ……コイツは何の話をしてる?


 ただ、嫌な感触の『波』が、二人から漏れ出ている。

 琉琉助は黙ったまま、反応する素振りを見せなかった。


「だからいつも中途半端だって言ってるんだよ琉琉助ぇ……!!」


「……どういう……事ですか……」


 つい、口から疑問が漏れ出た。

 金髪の男は、俺に視線を移し、軽い手振りを交えて喋りだした。


「ごめんごめん。話についていけてなかったよね。なんにも聞かせてもらってないんだもんね。安心して、今から本当の事を教えてあげるよ」


 奴は笑みを貼り付けたまま、俺を見据える。


「っ…………!」


 その目を見た時に分かった。

 コイツは何処かおかしい。

 『波』も、今まで感じたことのない、変な感触が…………



「琉琉助は俺の仲間を、赫阿修羅の依代として顕現けんげんさせるつもりなんだ。琉琉助がいじめてた、『菊』ってコなんだけどね……?」



「……は…………」


 依代…………? 顕現…………?


 敵の嘘……? 陽動や仲間割れを狙っている……? でも、『童子アイツ』も琉琉助も、『波』が嘘だと言ってない……


 なら、何が目的な/


「『何が目的なんだ……?』か? 簡単な話だよ、魂のみである赫阿修羅は、肉体を得たとき、その捧げられた依代の状態に依存する。つまり……


『あらかじめ依代を痛めつけておけば、瀕死の状態から戦いを始められる』って事だ」



 ……やっと分かった。

 琉琉助が敵を拷問していたこと。

 心の奥底に宿っていたドス黒い何かの正体。


 琉琉助は最初から『赫阿修羅を殺す』事を目的としていたんだ。


 その犠牲が、琉琉助含む俺たち全員と、敵の命と尊厳。


 最初から利用されているのは分かっていた。

 だが、ここまでの事に足を突っ込んでいると気付けなかった。


 琉琉助はただ、俯いたまま震えていた。


 ……でも、何故だ?

 この事実を知られたくないのなら、『未来視』を使って避ければ良かっただけの事だ。

 そもそも、なんで嘘を吐いた……?


 琉琉助は何を考えている……!?



「悠真」


「!」


「状況は分かんないけど、今は考え事してるヒマ、多分ないよな」


 鋼の言葉で現実に引き戻される。

 そうだ、今はいい、そんな事……一旦置いておくべきだ。



「さて、そろそろ……」


 童子は、ゆっくりと足を後ろに引き、構えを取る。

 そして、一気に悠真へと突撃する。


────


 直後、童子の拳は悠真の顔面を破壊し、ひしゃげた脳漿のうしょうが飛び散る。


────


「!」


 という『未来』を視た琉琉助は、瞬時に悠真と鋼を抱えて攻撃を避ける。

 童子は、鋭い笑顔を琉琉助に向けた。


「良いね。やっとヤル気になったか?」



 琉琉助は悠真と鋼を地面に下ろし、冷淡な口調で語りかける。


「……ごめん。二人とも、話は後でちゃんとつける。今は協力してくれ」


「…………」


 疑いと失望がないまぜになり、はっきりと答えられない。

 それでも、今抗えなければ死ぬ。


 何より、琉琉助にはきっちり話をつけてもらわなければならない。


「分かりました……!」


 童子は、ゆっくりとこちらに歩いて来ながら、何処を見ているのか分からない目で睨みつける。


「でも、旧友水入らずのトークを邪魔するのは、野暮ってもんじゃないか? お前ら」


 童子が軽く指を振ると、『黒鉄くろがねの針』のような物が悠真と鋼目掛けて打ち出される。


 琉琉助は瞬時に二人を抱え直し、それを避ける。


(『風月』を足に纏って移動している……)

「やっぱお前、『層合気』上手いな!」


 愉しげに笑いながら、童子は連続で『針』を飛ばし続ける。

 琉琉助は木と木の間を縫って移動し、『針』を捌き続ける。



「ちょ……速……酔う……」←何も知らない鋼さん


「……我慢しろ!」←色々気付いた悠真くん



 童子は、飛び回る琉琉助を見て、ふっと笑った。


「いいものってさ、真似したくなるよな」


 童子は空を弾いて一気に跳躍し、琉琉助に飛びかかる。


「ダチのもんだと尚更なぁ!」


「っ!」

(まだ一度も見せたことのない『纏脚風月てんきゃくふうげつ』を一発で……!?)


「『層合気・練武・極』!」


 童子は琉琉助に向けて、大振りな踵落としを繰り出す。



(ここで足手まといじゃ駄目だろ!)


 悠真は琉琉助に抱えられたまま、拳を振るおうとする。


─────


 かち合った悠真の拳は、骨ごとぐちゃぐちゃに砕ける。


─────


 その未来を視た琉琉助は空中で身を捻り、童子の踵落としを蹴りで弾く。


「っ…………!」


 しかし、衝撃を流しきれず轟音と共に地面に叩きつけられる。


「かはっ………」


 琉琉助は二人を庇うように受け身を取るも、ダメージを流し切る事は出来ず、吐血した。


 その様子を見て、童子はため息をついた。


「おいおい、そんな小僧二人大事そうに抱えて……はっきり言って邪魔だろ? ……それとも、そいつらも『未来』に必要だったりするのかな?」


「……あぁ……大事だよ」


「……そうか。それを聞くと、とっとと潰しておきたくなるな」


 童子が空を握ると、そこには『黒鉄の刀』が出現した。


(琉琉助の『未来視』の看破方法は意外と単純だ。〈分岐〉を選ぶ性質上、殺し方を増やせばそれだけ混線する)


 童子は一気に距離を詰め、生成した刀で斬りかかる。


(と見せかけて……!)


 瞬時に童子は刀を三枚の手裏剣に変形させ、三人の眉間目掛けて投げつける。

 それをすでに予知していた琉琉助は、空中に飛び上がり、木の上に着地する。


「アレ、ずっとまきびし撒いてたの気付いてた? やっぱ相手にするとやり辛いな……でも、結構疲れてきたか? 二人抱えてたら動きにくいよな」


 童子は、お喋りながらも冷静だった。


(明らかに以前より『未来視』の精度が上がっている……俺の攻撃を、人二人担いだ状態でいなしているんだ。かつての琉琉助なら、そろそろ被弾してもおかしくないが……)


 琉琉助は木の上から、童子を見下ろす。

 ゼェゼェと息を切らしながらも、その目は異常なまでに透き通っていた。


 琉琉助の目に、勝利の〈分岐〉が浮かぶ。


─────


拡張能力『完全な未来(パーフェクトゲーム)


 視る事のできる範囲と時間を極限まで濃縮し、ごく狭い範囲のみ、完璧な精度の未来を視続けることができる。


 これはあくまで能力の応用のため、覚醒能力等の類ではない。


─────


 琉琉助を童子は見上げ、手をクイクイと動かして挑発した。


「ま、逃げててばっかりじゃ、勝てないよね?」



「っ……!」


 悠真と鋼は、思考していた。

 完全に釣り合いの取れていない戦闘への、食らい付き方を。


 俺/僕じゃ、このレベルの戦闘にはついていけない……完全な足手まとい状態。

 でも、逃げるのも多分不可能だ。

 ならば……!


「琉琉助! 俺を離してくれ!」

「貴方! 僕を降ろして下さい!」


 琉琉助は分かっていた。

 この二人が甘んじて足手まといを受け入れるような人間ではないと。


 そして、思考の中で、最適な〈分岐〉を選ぶ。



「……分かった」


 琉琉助は木から飛び降り、二人を離した。

 二人は二手に分かれて走り出し、互いに距離を取る。


 琉琉助は軽く跳ねてステップを踏みながらゆっくりと構え直す。


「……やっとかよ。でも、邪魔は払っておきたい性分だからさ」


 童子は低く構え、琉琉助を見上げる。

 ふくらはぎに血管がビチビチと浮かび上がっていく。


「空気読めない小僧ほど、うざいものはないよね!」


─────


 童子は大きく踏み込み、一気に鋼との距離を詰める。


─────


 琉琉助はそれを阻止するため、童子と鋼の間に先回りする。


「ははっ!」


 童子は琉琉助に右上段回し蹴りを入れる。

 それと同時に、背後の悠真に『針』を投げた。


「っ!」


 悠真はそれを間一髪躱すも、避けきれず頬が裂ける。


「ほらよ!」


 琉琉助が一瞬悠真に気を取られた隙を突き童子は飛び上がり、左足で琉琉助の胴を蹴り飛ばす。


「ぐっ!」


 さらに童子は琉琉助を蹴った事方向転換し、悠真に突撃する。


「クソッ……!」


 琉琉助の目に、明確な焦りが浮かんだ。



 鋼は気付いていた。

 童子の能力と自身の能力は、相性抜群であると。


(アイツが撒いていたまきびしを、巨大な磁界で巻き上げる!)


 鋼が左手をかざすと、地面に散らばっていたまきびしが竜巻のように一つに纏め上げられ、童子へと向けられる。


「何っ」


 まきびしの嵐が一気に童子を襲い、童子は押し流される。


(『金属を操作する能力』……? 相性有利に加え、『未来視』か……)


 童子がまきびしの波に触れると、まきびしは纏まっていき、やがて一つの黒鉄の塊に変質した。


「っ…………」


 三人は再度構え直し、三角形に童子を囲った。

 童子は再度『針』を二本生成する。


「なら、こうしようか」


「っ…………!!」


 琉琉助は悠真の方向へと駆け出した。


 童子は大きく踏み込み琉琉助との距離を詰める。

 それと同時に、二本の『針』を瞬時に悠真と鋼の二人に放った。


 琉琉助は悠真に飛ばされた『針』を掴んでいなす。

 その一瞬の崩れを、童子は見逃さなかった。


「ガラ空きだよ!」


 琉琉助のその一瞬の隙を突いて、童子は琉琉助に渾身の一撃を叩き込む。

 それを琉琉助は受け流すも、衝撃を流しきれずによろける。


「っ……!」



(ここしかない……!)


 鋼は、磁界操作で飛ばされた『針』を操り、童子へと勢いよく跳ね返す。


「お見通し」


 童子は返された『針』を簡単に避ける。


「っ……!!」

(誘導しやがった!)


 童子が壁になり見えなかったその射線の先には、悠真がいた。

 鋼が返した『針』は悠真の掌を貫き、木に杭打つ。


「がっ……!?」


「悠真!」


 鋼が叫んだ時には、既に童子は目の前まで接近していた。


─────


 鋼の頭蓋が打ち付けられ、即死する。


─────


「っ……!」


 その未来を見た琉琉助は、童子を背後から狙う。


(『未来視』にも死角はある……!)

「だと思ったよ!!」


 童子は琉琉助の鳩尾に左後ろ回し蹴りを繰り出す。

 それと同時に、鋼に右ストレートを打ち込む。


「グッ……!」

「ぁ゙っ…………」


 鋼はギリギリで童子の拳を両腕でガードするも、衝撃を防ぎきれずにだらりと手を下ろした。


(殺すつもりだったけど……蹴りと同時に放ったから威力落ちたな。まぁいいか。これでもうコイツは動けないだろ……)


 童子はゆっくりと、倒れている琉琉助へと歩み寄る。

 そして、目の前で屈み、顔を覗き込む。


「お喋りの続きしようぜ」


「……待て……やめろ……」


 琉琉助は、焦るような、憐れむような表情で童子を見上げる。


「おいおい、『未来』視るなって、俺と喋るときは能力使わないクセ、まだ直ってないんだろ?」


 童子は焦点の微妙に合わない目で、ニヤリと嗤った。


「『今』話そうよ」


「っ……」


 童子の声色は、妙に優しかった。


「いいね、その表情。見たことない。またお前の新しい一面が知れたな」


 童子は琉琉助の髪の毛を掴み、ゆっくりと立たせていく。


「ぐっ………!」


 悠真は琉琉助に手を伸ばし、叫ぶ。


「……! やめ」


「うるせぇ」


 童子は悠真を見ることすらせず、『針』を超速で飛ばす。


「がっ……」


 伸ばした手に『針』が貫通し、悠真は両腕を打ち付けられた。


 童子は琉琉助の髪を握り締めながら、語りかける。


「俺は、お前に賭けてたんだよ」


 童子から発せられたのは、異様な言葉だった。


「俺が送った『菊』を、『赫阿修羅』の復活の依代にする事。前までとは違って、それを行える残酷さを得ていること。全部」


「…………」


 童子は穏やかな声色で続けた。


「それと、お前がまだ『中途半端』な事にもな」


「は…………」


 童子は、一気に無表情になった。

 そして、無機質な声で琉琉助に問う。


「お前、菊の爪、何枚剥がした?」


「っ!?」


 凄まじい嫌悪感が悠真を襲い、背筋が凍る。


 琉琉助は視線を逸らして、口籠りながら言った。


「……十……三枚……」


「……折った歯の本数は?」


「……七……」


「折った骨の本数は?」


「……五十八本…………!」


 童子は穏やかな笑みを張り付けたまま言った。


「それを全て覚えている時点で論外だよ」


「っ……!」


 絶望する琉琉助と、唖然とする悠真に、童子は続けた。


「俺なら、四肢を斬った後に生皮剥がす程度はやる。でもお前にはそんな事、出来ないよな? 『人間』だから」


「うるさい……やめろ……」


 琉琉助の声は、かつてないほど弱く、震えていた。


「お前、本気で『赫阿修羅』に勝てると思ってた訳じゃないよな?」


「……本気と……残酷は……違」


「まぁ、その中途半端さに賭けたんだけどね。はっきり言って、復活した時点で勝ち確定だ。お前が仙人気取りの『人間』だったからだぞ? 琉琉助」


 震える琉琉助を、童子は投げ捨てた。


「っ…………」


 琉琉助は倒れながらも、悠真の事をちらりと見る。

 その目には、確かな打算が見られた。


 自身をおとりとした隙を作ろうとしているのだと、悠真は確信した。


(琉琉助……!)

「ぐっ……!!」


 悠真は木に打ち付けられながらも、藻掻いていた。

 琉琉助をこのまま死なせるわけにはいかない。

 全てを説明させる必要と、責任を取らせる義務がある。


「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……!!」


 「ズリズリ」と肉が削げる様な音を立てながら、貫通した『針』から手を引き抜いていく。

 


「がっ……は……!」


 童子はそんな悠真には目もくれず、地に伏せる琉琉助を何度も蹴り上げる。


 ひとしきり蹴り終わったあと、何かを思い出して不気味に嗤った。


「そうだ、琉琉助、お前に見せたいモノが……」



 刹那、童子の後頭部を誰かが掴んだ。

 振り返ると、血走った目をした小僧ゆうまがいた。


(小僧……『針』ごとぶち抜いて……)



 (今ここで、使わないならいつ使う!?)

「『記憶の逆流(メモリー・リバース)』……!」


「がッ!?」


 童子の脳内に、死への恐怖が流れ込む。


「ぁ゙ぉ゙ぇ゙っ……」


 悠真は耐え切れず、その場にうずくまり、嘔吐する。

 童子はしばらく震えていたが、やがてゆっくりと天を見上げた。


「っ……ハハッ……ハハハハハハハハハ!!」


「は……?」


 童子の狂ったような笑い声に、悠真は面を上げる。


「今更死ぬのが怖くてやってられっかよ……!」


(ありえない……『死の恐怖』を克服した…!?)


 童子は狂ったように笑いながら、涎を垂らしている。

 そして、全身から黒い液状の金属が流れ出ていく。


「お前にも序でに見せてやる。俺の力をな……!

 〈神域能力〉『砕けぬ理の緋緋色金ひひいろかね』……!」


 童子がそう唱えると、液状の金属が固まっていき、黒光りする金属の鎧が全身を覆った。

 背後には歪んだ金属の『輪』が後光の様に付けられ、ポタポタと黒い雫を垂らしている。


 琉琉助の絶望した表情を見て、悠真は思わず口にした。


「〈神域能力〉……?」


 童子の目は、異常なまでに開かれているにも関わらず、全く光が無かった。

 周囲には、金属の生臭い香りが充満していく。


「『人間』は、『神』の生き写しとされている。なのになぜ、『人間』は『神』の領域に至れないのか」


 童子は、自身の胸に手を当てた。


「それは、『人の心』が枷となり、『力』を抑えるからだ。ならば、その『人の心』を一部だけでも取り払えたら、どうなると思う?」


「…………」


「枷を払われた『力』は一部のみ、『神』の領域へと至る」



 こいつの異様な『波』の正体が分かった。

 こいつ、心が欠けてるんだ。

 だから『波』の一部分を感じられなかったんだ……!



「ちくしょう……が!」


 悠真は童子の鎧に、拳を打ち込む。


 しかし、拳に手応えはほとんどなく、衝撃音すら響かなかった。


「は……?」


「気付いたか? この『緋緋色金』は、全ての衝撃を吸収する。虚空に飲み込まれるようにな」


 童子は琉琉助に向き直り、誇らしげに鎧を見せつけた。


「どうだ琉琉助!? これがお前には得られない、人の枷を外した力だ!」


 琉琉助はもはや、何も返すことはできなかった。

 過去、未来、そして『今』までも、童子にねじ伏せられた。


 童子は、自身を見上げる琉琉助の様子を見て、小さく、ボソリと呟いた。


「琉琉助、世の中に『仙人』はもう不要らしい」


「!」


 先ほどとは打って変わった、薄い笑みだった。


 かつての面影が滲んだ。



「……じゃあ、死んでくれ」


 童子が琉琉助に拳を振り上げた瞬間、ピタリと動きが止まった。


「ぁ゙……が……?」


 そして、痙攣するようにピクピクと震える。



「えっ……」


 瞬間、場は静寂に包まれ、悠真は呆気にとられる。


 その後ろで、鋼は左手を構えていた。


「『金属』なら……『電気』は通るだろ……!」



 鋼は、少し前に意識を戻した時からずっと、鎧を纏った童子の心臓付近に、電荷を溜め続けていた。


 そして、溜められた電荷を放ち、心臓付近でショートさせた。



 ビクビクと震えている童子を見上げながら、琉琉助は小さくため息をつく。

 その目は、冷たかった。


 その目に、悠真にも悪寒が走る。


(琉琉助……まさか、さっきのも全部、演技なんじゃ……)


 悠真は、琉琉助の『波』を読む。


「っ……」


 そこには、確かな傷と、絶望と、哀しみが刻み込まれていた。


 冷たい目から、一滴、雫が垂れる。



 童子はしばらく泡を吹きながら痙攣した後、白目を剥いてバタリと倒れた。

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