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ロマンチスト・ソウル  作者: タイラ
三章 「千秋楽山・決戦編」
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25話 「火鼠」


 飛ばされた迦楼羅かるらの首は、直ぐに紅い炎を纏って燃焼し、元に戻る。


「舐めんな!!」


 迦楼羅は炎の羽根を桜とキュピーに向けて飛ばすも、桜はそれを全て捌き、キュピーは木の盾を生成し防ぐ。


(『炎翼』の攻撃に対応されるようになってきたな……なら……!)


 迦楼羅は紅炎を纏って翼を再生させ、大きく羽ばたいて桜との距離を詰め、ナイフ状に構えた羽根で斬りかかる。


「ぐっ…………!!」


(やっぱり重い……!)


 桜は刀で受け止め吹き飛ぶも、片手で木につかまって回転し、勢いを殺して地面に着地する。


(火を消せば良いという仮説が正しいなら……)


 桜は自身の刀を思い切り掌で握り締める。

 そして、握り締めたままゆっくりと引き抜き、刀を血で濡らす。


(何してんだコイツ……!?)


 迦楼羅がたじろいだ一瞬を狙って、桜は再度超速で距離を詰め、斬りかかる。


「っ…………!?」


 浅く裂かれた迦楼羅の皮膚からは、「血」が滲んでいた。


(やっぱり……一部だけでも火を消せれば、治るとはいえちゃんとダメージが通る……!)


「血、出るんじゃん……!」


 桜はその後も連撃を繰り出し迦楼羅を切り刻んでいく。


「ぐっ……!」


 迦楼羅も応戦し羽根を振るうが、対応しきれず浅い切り傷が増えていく。


「クッソ……!」


 迦楼羅は翼を大きく羽ばたかせ距離を取り、傷口を「燃やして」瞬時に直す。


(『命日桜オビト・ザクラ』)


 宙に逃げた迦楼羅を追い超速の居合を繰り出す。

 迦楼羅の首は宙を舞うも、直ぐに炎に包まれ再生する。

 それでも桜は自身の刀を握り締め再度血で濡らし猛攻を仕掛ける。


「ぁ゙ぁ゙もう鬱陶しいなぁ!!」


 迦楼羅も大きく羽根を羽ばたかせ桜に攻撃を仕掛ける。


 しかし、迦楼羅の突撃は桜に見切られ弾かれる。


「はぁ!?」



(奴は羽根を飛ばし切ったら一瞬のリロードが必要で、突撃は羽根がほぼフルである時しか使えない……羽根を飛ばす攻撃が通じないとすれば、相手はもう突撃しか攻撃手段ないでしょ)


 桜は一瞬、鋭い目つきでニヤリと笑った。


 そして、再度大きく踏み込み、息もつかせぬ猛攻を繰り出す。


「ぐっ……!! このっ゙……!」


 桜の刃は迦楼羅の肉体を切り裂き、鮮血が散る。

 迦楼羅は羽根を突き立て桜を狙うも、瞬時に腕が叩き切られる。


「……!」


 空を切る刃の音と重なって、ごうごうと火が焚かれるような音が絶えず響く。



 迦楼羅は、異様な感覚を覚えていた。


 自身の方が『能力』が格上であり、絶対に負けることなどない。

 現に、これだけの攻撃を受けても、浅い傷しか受けず、それすらも直ぐに元に戻る。

 相手の無駄とも言える猛攻に、迦楼羅はいつしか「恐怖」していた。


(絶対に負けないはずなのに……俺は無敵のはずなのに……こんな女に……この程度の奴に……! 勝てる気がしない……!)


「ぐぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙っ!!」



 迦楼羅は叫び声を上げながら、桜に羽根を向ける。



(あっ。)


 顔を上げた時に、目が合った。

 血の滲んだような桜色の目と。


 完全に「怪物」の目をしていた。


 知っている。

 この目を知っている。


 戦う事以外の全てを捨て置いた人間の目を。

 『水銀』の冷たさを。


 

「ぉ……お前もかよぉっ!!」


 迦楼羅は一気に距離を取り、桜の猛攻から逃れようとするも、直ぐに桜はそれを追う。



 桜の太刀筋に、迷いは微塵もなかった。


─────


 悠真は変なところで優しいから、それが災いして、踏み込んだ先にいろいろな苦難が待ってることは目に見えてる。


 でも、私はその優しさを捨てないでほしい。

 いつまでも綺麗事を捨てないでほしい。


 私がそれに救われたように、他の人もそれで救ってあげてほしい。

 悠真に『理想』を捨てさせないことが、今の私の生きる意義だから。


 私が罪を許される事なんてあるはずがない。

 私は人を救える側の人間じゃない。

 でも、人を救える側の人間を、守ることは出来る。


 だから、災いを穿つ刃になる。


─────


 桜が迦楼羅の喉元に刃を突き立てたその時。



「すみませんが、時間切れです」


 キュピーの声に、二人は目を向け、そして、絶句した。


 キュピーの頭上には、とてつもなく巨大な『水の塊』が、宙を浮いていた。


「は……こんなの……何処から……」

(ちゃんとリサーチはして来た……この山付近にここまでの水を持つ川は流れていないはず……!)


「知っていますか? 山は、『自然のダム』なんですよ。木や土が吸って、貯めてきた水を少し拝借させてもらったんです」


 迦楼羅は、呆然と『水の塊』を眺めることしかできなかった。


「どうやって……」


 迦楼羅の問いに、キュピーは微笑んで答えた。


「私は山の事を愛してますから。土の隙間や、砂利の間に貯められた水の粒を集めるくらい、少し集中すればなんてことはありません」


(ありえない……馬鹿げた『能力』の練度……!)


「終わらせましょうか。『翠球温水すいきゅうぬくみず』」


 キュピーは巨大な『水の塊』を、迦楼羅目掛けて炸裂させる。


「……チィ゙ッ……!」


 迦楼羅は翼を勢い良く羽ばたかせ、大量の水から逃げようとする。


(まずい……『覚醒能力』の再発動手段は割れてる……! 無言は肯定と受け取られるから再発動できな)


 刹那、桜の斬撃が迦楼羅の両翼と腕を切り飛ばす。


「ふざけんなよクソアm」


「火遊びは終わりだナンパ野郎」


『水の塊』が叩き付けられ、山の一部が流され崩れ落ち、轟音が響く。


─────────────────────


「今の音……キュピーかな? もう迦楼羅がやられちゃうかぁ……」


 『童子』は、頭をポリポリと掻きながら軽く笑った。


「やっぱすごいな」


 それに、琉琉助も軽く笑ってみせた。


「だろ? 皆すげぇんだよ」


「あぁ。よく知ってるさ」


 笑顔で軽口を交わす二人の目は、笑っていなかった。


「じゃあ、いきなり本題から入ろうか」


 『童子』は、冷淡な声で告げた。


「君、赫阿修羅かくあしゅらを復活させようとしてるよね?」


 少しの沈黙の後、琉琉助は無表情で答えた。


「……あぁ。そうだよ」



「えっ……」


 琉琉助の元に辿り着いたばかりの悠真は、その琉琉助の答を聞いてしまった。


「あっ」


 琉琉助の悲しむような、傷ついたような眼と目が合った。


 悠真は琉琉助の『波』を、注力して読んだ。


 それが嘘である事に、最後の望みをかけた。



 嘘じゃなかった。



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