『GRIM』レポート〈DAY 13〉
以下は「GRIM」に関連して、主として人類側が知り得た情報をまとめたレポートとなる。
【前提】
・栃木県上空で異常な火球が閃光爆発を起こした日を〈DAY 0〉と記す。
・ここに記す内容は、日本時間で〈DAY 13〉23:59時点の情報を基準とする。
・〈DAY 11〉茨城県の行政機能が崩壊し、日本で正確な死者数等の統計の取得が不可能になった。そのため、以降のレポートでは海外も含め、後に「██」が推計した値を記録として採用する。
【GRIM】
・〈DAY 5〉に発見された、「Acu-SHE」の病原とされる微生物(異星性古細菌)。
・グミ粒状形態、アメーバ状形態、真球状形態の3形態に加え、第4の形態として「有棘(刺入)形態」を持つことが判明した。
これは脳内へ侵入して神経細胞へ攻撃を行う形態であり、体内に侵入した「GRIM」の最終目標と考えられている。
「Acu-SHE」の末期症状として起こるサイトカインストームは、この攻撃によって引き起こされる、体内の免疫システムの過剰反応である。
・ドイツのハウゼン博士が、グミ粒状形態の表面に極薄の生体被膜が形成されていることを発見。この形態が頑健な環境耐性を持つことが示唆された。
・NASAの研究により、「GRIM」の真球状形態は宇宙空間レベルの強力な紫外線や電子線の被曝にも耐えることが確認された。
【Acu-SHE】
・「GRIM」の感染によって発症する、致死率99.9%の死病。
・死者数/生還者数
日本国内:約38万人/380人
日本国外:約1万人/10人
・日本国内の被害状況
茨城県全域が汚染域となり、同県の行政機能が崩壊。住民は埼玉県と千葉県へ避難している。
関東北部や東北、新潟県で汚染がより深刻化している。特に、福島・新潟の両県は汚染域が7割を超え、社会崩壊が秒読み段階に入っている。
新たに沖縄県でも発症死亡事例が見られ、47都道府県全てで「Acu-SHE」の感染が確認された。
全国的にも汚染が進行しており、中国・四国地方でも降雨による発症死亡事例が確認された。
・日本国外の被害状況
台湾、中国南部、ハワイ、アリューシャン列島に汚染が到達。
ロシアではウラル山脈西部からシベリア東部まで広範囲に汚染が拡大している。全体的には限定的なホットスポットの発生に留まっているが、レナ川中流の都市ヤクーツクでアウトブレイクが発生した。
また、ヨーロッパでも北海やバルト海沿岸諸国で汚染がじわじわと浸透している。
【Acu-SHE抑制剤】
・ゲノム・フロンティア社の本庄亜梨朱氏が「Acu-SHE抑制剤」として、既存の免疫抑制薬であるバリシチニブ、デキサメタゾン、シクロスポリンの緊急承認申請を行った。
これらの薬剤には、「Acu-SHE」の末期症状であるサイトカインストームを抑制する効果があることが確かめられている。
【鯨類の大量死亡座礁】
・〈DAY 9〉朝方に、「GRIM」で汚染された海流の到達により、対馬海峡を発生源とする鯨類の大量死亡座礁が起こった。以下の地域で被害が発生。
・壱岐対馬を含む九州北部……〈DAY 13〉23:00までに合計で約850頭が漂着。
・韓国南部……〈DAY 13〉23:00までに合計で約1,000頭が漂着。
【日本政府の対応】
・各地で次々と起こるアウトブレイクの対応に追われている。
・降雨による感染拡大が確定的となり、全国的に雨天時の外出自粛を要請するに至った。
・沖縄県でも漁業および海産物の出荷禁止命令が公布された。
・水面下で首都移転の準備を進めている。
【日本社会への影響】
・茨城県から200万人を超える避難民が埼玉・千葉に流入することで、両県でパニックが発生している。特に千葉県では、〈DAY 11〉に発生した印波沼でのアウトブレイクにより、激しい混乱が見られた。
・茨城県を含む汚染地域では行政が崩壊し、その場に留まったわずかな人々が水や資源を求めて争い合う無法地帯と化した。
・東日本の大半の地域で学校や企業が自主的な休校・休業措置を取り、経済活動が急速に収縮している。
・インターネットの動画投稿サイトなどでは、「Acu-SHE」や「GRIM」の危険性を訴える動画と共に、サバイバル系のコンテンツが注目を集めるようになった。
【国際社会の対応】
・〈DAY 10〉のG7+サミットでの合意に基づき、超国家的組織「全球脅威対策機構(GTRO)」が成立し、暫定本部がワシントンDCに置かれた。
・GTROの下部組織として、「国際科学タスクフォース(GSTF)」が本格稼働を開始。日本の宇梶慧が議長を務めている。
・同じくGTRO内の取り組みとして、「全球監視網」システムが稼働開始。従来の日米合同の観測衛星等の監視網にGTRO加盟国の持つリソースが合流し、「GRIM」による汚染状況のより網羅的な観測が可能になった。
・WHO(世界保健機関)の専門調査チームが日本に到着し、関東周辺の被害状況を直接視察した。
・北半球の多くの国々が、日本からの入国・輸入を全面的に禁止する水際対策を発動。同時に、自国の沿岸部における海産物のモニタリング強化や、海岸への立ち入り制限など、防衛策の策定に追われている。
【国際社会への影響】
・感染被害が起こった一部の汚染地域で、小規模なパニックが散見されている。
・また、日本の惨状(社会機能の崩壊や、鯨類の大量死亡座礁など)のニュースが、海外メディアやSNSを通じて広がっている。知識階層を中心に、一部で危機感が高まっている。




