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亡国の公子と金と銀の姫君  作者: あぐにゅん
第3章 亡国の公子
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第27話 移りゆく状況

この章がどう収束するのか、まだ悩んでいます。

「三階は外れだ。二階にを探しに行くぞ」


覆面集団のリーダーらしき男は、三階の捜索に見切りを付けて二階に行くように指示を飛ばす。階段を降りて二階に来ると、そこは明らかに魔力濃度が上がっており、廊下には何人か生徒が倒れていた。


『このマスクが無かったら、俺らもヤバかったな』


集団が魔力濃度の高い中、行動が出来るのは、そのマスクのおかげである。マスクは魔力を遮断する素材であり、実際魔の森で行動するように作られている。今回の作戦ように、特別に用意したものだ。


「恐らくこの階いるはずだ。それともう気絶しているだろうから、倒れている奴は片っ端から顔を確認しろ、わかったな」


集団の男たちは、足早に散っていき、王女探しを始めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


シンはセシルを修練場に連れてくると、ニックに状況の説明をしつつ、セシルを預ける。


「という事は、シン先生、今回の件は王女殿下目的という事ですか?」


「ええ、どうやらそう見たいですね。魔力遮断のマスクまで被ってましたから、予め計画されたものだと思います」


シンはそう言って肯定する。ニックの周りには騎士科の三名とセシル、それに見慣れない男性が一人いる。恐らく魔法科の教員なのだろう。灰色がかったローブを来て、高級そうな杖を持っている。


「ニック先生、こちらの方は?」


「ああ、シン先生はご存知ないか。彼は魔法師協会から派遣されている魔法科の講師であることエリク・ラカゼットさんだ。エリク先生、彼がシン先生です」


エリクは軽くお辞儀をした後、自ら自己紹介を始める。


「はじめまして。エリク・ラカゼットです。シン先生のお噂はお聞きしております。我が魔法師協会でも

今代の英雄が現れたと話題になっておりますよ」


シンは魔法師協会でも噂になっているという有難くない噂を一旦脇に置き、魔法の専門の意見を聞いてみる。


「エリク先生、先生はこの魔力濃度の異常は気付いていると思いますが、原因は何だと思いますか?」


シンの質問に対しており学者らしく、可能性を一つ一つ丁寧に説明してくれる。


「まず第一に、可能性としては、魔石を使用しているものではないかと考えています。ただ、これ程の魔力ですので、相当上位の魔石入手が条件ですが。もう一つは、人の手によるもの。まあこれもこれだけの量ですから、一人や二人でどうこう出来るものではないですが。三つ目は、古代遺跡のアーティファクト。これも実際に、そう言った物を見た事も聞いた事も無いので、あくまで可能性がある程度の予想に過ぎませんが」


「その中で一番可能性がありそうなのは?」


エリクは少しだけ考えた後、結論を出す。


「魔石ですかね。ただ正直、自信はありません、すいません」


シンはかぶりを振って、ありがとうと感謝を示す。


「そう言えば、エリク先生は、どうやってここまで?」


「私はたまたま一階を歩いていた時に魔力濃度の上昇に気が付きまして、近隣にいた生徒達に声をかけて、逃げてきたんですよ」


そう言えば、修練場では普段見ない生徒達が結構いる。彼らがエリクの連れて来た生徒だろう。


「なるほど大変でしたね」


シンはそう言うと再びニックに向き直る。


「俺はもう一度中を見て、魔力濃度の上昇の原因を探って来ます。王女殿下の守りをよろしくお願いします」


「王族を守るのは近衛の本分だから、任せて下さい。そちらもお気をつけて」


シンは笑顔で首肯すると騎士三名にもよろしく頼むと言う。三人はそれぞれ真剣な表情で了解しました、と返事をする。シンはその中で、ナタリアだけを呼び寄せて、耳うちをする。


「ちょっと気になる程度だから、そんなに気負わなくて良い。よろしくね」


ナタリアは耳うちされた後、少し目を見開いたが、すぐに真剣な表情に戻り、


「分かりました。注意しておきます」


そう言って、シンに了承する。シンはその返事を聞いて、踵を返して、再び校舎へ走って行った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


アイシャは、教員室のソファの上で横になっていた。別に眠い訳ではなく、いつ覆面集団がきてもいいように準備を整える為である。しかも表情が見えないようにうつ伏せになっている。


「私がセシルを心配して、先に行かすようなことをするなんて」


アイシャは自分の行動に思わず苦笑いする。それこそ一ヶ月前までは思いもよらなかった行動。公爵家令嬢である以上、王族の命が優先されるのは当然なのだが、それでも今回、今こうしているのは自分自身の気持ちとして、狙われているセシルを心配しての行動であり、心配するような間柄になったことに苦笑している。


加えて、アイシャはシンが来てくれるということに疑いを抱いていない。今、こうして危険を伴う環境の中で、一人置き去りにされているのだが、不思議と不安がわいてこない。直接のターゲットではない事もあるだろうが、シンが必ず助けに来るといってくれたことで、後はヘマをしないようにすれば、助けてもらえると不思議と思ってしまう。


「ほんと規格外な方ですわ」


それがアイシャの偽りがたい本音だった。セシルが敬愛してやまない人。今も魔力を意識すると抱きしめられた感触と共に暖かさを感じる。


いけない、いけない、顔が赤くなってしまう、そんな事を考えている時だった。


ガラガラッ


扉が開く音がする。アイシャは思考を手放し、目を閉じて、入口からくる物音に集中する。


『自然に、自然に』


心の中で呟く。


「ここは?」


「教員室ですね」


二つの声がやり取りをしている。


「ん?学生が一人倒れているなあ、王女か?」


「何度も言っているじゃないですか、王女は金髪です」


アイシャはそのやり取りを聞きながら、背中に冷たい汗が伝うのを感じる。


『お兄様?』


その後二人はやり取りを続けているが、おそらく間違いない。アイシャの兄、ケビンの声である。しばらくすると二人は王女がいないのを確認して、部屋を出て行く。アイシャは扉が閉まるのを確認した後、体を起こし、扉の方に目を向ける。


「全くあの人は何をしているのかしら?元々協力しているのか、協力させられているのか。この事をシン先生に言うべきかどうか。あーもう、頭の痛い...」


アイシャは、兄の軽率な行動に心底腹を立てるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


シンは一階階段付近までくると、二階の捜索がすでに始まっているのがわかる。


「さて、ここからが問題だな。どうやってアイシャのところまで行くかだが」


思い切って覆面集団と戦闘をすると言う手段がない訳ではないが、今の段階では学校内と言う事もあり人質になり得る生徒が多数いるので、それは避けたい。アイシャを助けた後、この魔力濃度の元凶をなんとかししたいところだ。シンは少し考えると校舎の外へ出て行く。そしてアイシャがいる教員室の窓の前まで来るとその場にしゃがみ込ん、身体強化で真上に上がって窓の下にある狭い出っ張りに手を掛ける。


「良しっ」


シンはそのまま強化された握力と腕力にものをいわせてそのままよじ登り、こっそり窓の中を見る。アシシャがソファの上に一人座っている。


コンコンッ


シンは窓を小さく叩き、アイシャを呼ぶ。アイシャはすぐに音に気付き窓に駆け寄ってくる。


「シン先生」


アイシャは窓を開けると、思わず声が漏れる。


「アイシャ、遅くなって悪かったね。このまま外から出よう」


「シン先生、少し問題がありました。その事で相談があるのですが」


シンは突然そう言うアイシャを見て、少し考えると後、


「わかった。一旦外へ出よう。話はそこで聞くから」


シンがそう言うとアイシャも頷き、窓の外へでる。二人はそのまま下に飛ぶと、空中でアイシャを抱きとめて、着地する。アイシャは、図らずもまた密着してしまった事で顔を赤くするが、すぐに相談事を思い出してシンに話をする。


「先生、この非常に申し訳無いのですが、どうやら覆面集団の中に兄がいるようなのです」


シンは面をくらいびっくりする。


「君のお兄さんという事は、ケビンか。元々グルだったって事かい?」


「それはわかりません。ただ言えることは、セシルの外見を知らない他の人間に教えてた事くらいで」


「それなら後から強制されて手伝わされている可能性もあるね。人質込みでね」


シンは一旦アイシャを下ろして立たせると、少し思案に耽る。


「シン先生、私はどうしたらいいでしょう?」


シンはアイシャの思い悩んでいる姿を見て、その頭を撫でてやり、優しく話かける。


「アイシャ、まずはこの魔力濃度の上昇をなんとかしよう。今現時点では、ケビンの身に何かある事は無い筈だ。この魔力濃度を何とかすれば、上の集団も動き出す。そこで最善手を考えよう」


「はい、わかりました。それで魔力濃度の上昇の要因は何なのでしょうか?」


「魔法科のエリク先生の話では、魔石か人か魔導具か、という話だけど。魔力濃度の高い方へ行って見ればわかると思う」


シンは特定は出来ていないが、元を辿ればわかるだろうとこれには楽観視している。


「ならばシン先生、私も参りますわ。私を安全な場所に連れて行く時間が省けますし、何よりお兄様の事も気になります。ですので、お願いします。私も連れて行って下さい」


シンはアイシャの真剣な眼差しを受けて、少し悩んだ後、軽く溜息をして、返事をする。


「わかった。ただ俺の側を離れない事、俺の言う事を守ること、この二つが条件だ。出来るかい?」


「はい、よろしくお願いします」


アイシャはそう言って、笑顔でお辞儀をした。





書き手とし、この後の構想もまだまだあるのですが、初めての作品という事もあり、いまいちいい作品なのか悪い作品なのか、手ごたえがあるようで無いような、そんな状況です。もしご愛読していただいている方がいましたら、忌憚のない意見を頂きたく。よろしくお願いします。



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