不思議だね
「ふえぇ。ビーフシチューに野菜が入ってるから、サラダはいらないよぉ。」
食事中――。
「なんだモルガナ、野菜もちゃんと食え。俺は食えるぞ。」
トマト嫌いの男、ユークが笑う。
「ふえぇ。ユークが食べれるのなら、私に食べれない理由はないよぉ。」
「ん?どういう意味だ?」
笑みが消え、訝しむ視線をモルガナに向ける。
「2人とも、普通に話できてる。」
ずっと黙っていたクオンがそう言った。部屋で休んでいたらしいが、元気になったようだ。いつも通り飄々としている。
「・・・!確かに!何でだ親父!?」
実は一緒に食事を摂っているジェーラに質問するユーク。
「そりゃあ・・・あれだ・・・何でだ?」
分かっていなかった。
「魔王同士、何か共鳴でもあるのでは?」
プレナの助け船。
「あ、ああ、多分それだ。父さんは余所の魔王と普通に話せる・・・いや、そうだったかな?でも今はモルガナちゃんと話せてるわけだし・・・あれ?」
混乱する親父。
「昔は普通に話をされていたのですよね?では、魔王の座を退位された現在では、共鳴が失われているということでしょうか。」
ユークは頭の中でまとめる。
「えっと・・・俺とモルガナが魔王だから言葉が通じて・・・親父はもう魔王じゃないから通じない。」
「はい。」とプレナが頷いた。
「あくまで憶測ですが。そもそも、魔王とは『魔族の王』というだけであって、特別な存在ではありませんから。常人よりも力に恵まれているくらいですかね。何か分からない不思議なことでも、あるのかもしれません。」
「そだな。魔王だし、よく分からんことが起きても不思議じゃないよな。」
無理やり納得しかけたユークをクオンは制した。
「待って。だったら、普通に話せている私はどうなる?」
・・・確かに!
「ふえぇ。実はクオンちゃんも魔王だったってことだよぉ。」
な、なんだってー!?
「ってそりゃあねぇだろ。クオンは忍者だからな。」
「否定になってませんよ。」
「忍者でござる。」
今更、変なキャラ付けしようとするな。
「・・・で、どういうことなんだ?」
プレナは顎を摘み、思考する。
「・・・そうですね。クオンさんの言葉が流暢に通じるようになったことに、魔王として・・・いえ、私にも通じているわけですから、魔王は関係ない・・・?」
独り言のようにブツブツと呟く。
「魔王が傍にいることが影響して・・・だとしても理由が分からない・・・ですが、それしか・・・。何にせよ、他の事例が欲しいところですね。私たちに起きた出来事だけでは、まだ分からないことが多いです。」
「なら、モルガナがいた国に行こうぜ。」
ユークの提案。ついでにモルガナを返品できるしな。
「いいよ。旅行ってことだよね。私もお母様に言っておきたかったの。しばらくクオンちゃんのとこにいるって。ふえぇ。」
おっと、帰る気はないのか。
「ヴェリニヤに行ってくるのか。いいぞヴェリニヤは。お土産待ってるぜ!」
この台詞を久々に最後まで言えた親父であった。




