戦利品
ゴールデンウィーク始まったー。
けどゆっくりできそうにないです。
「やっぱりお前のチームだったか」
カモフラージュ、チームプレーを知っているのはカイトが知っている限りでこいつだけだった。
グレミオ・ディ・ノーチェ。その隣にはグレミオと同じチームの男が控えている。
「まぁ、カーちゃんのおかげでいろいろ思いついたんやけどな」
「で、レイナを見失って一人減ったのを取り返しにきたわけか」
「そやな、ここで負けるわけにいかへんし」
「カイト、どうします?」
ここの出方次第で赤チームの運命は決まる。グレミオを認識した瞬間からカイトは頭をフル回転させていた。どうやってこの場を切り抜けるか。戦ってレイナが審査員に引き渡されるのを回避し、その上でこの場を離れることが出来る確率は正直半分もないかもしれない。さっきの身のこなしや、気配の断ち方からみてもグレミオは侮れない。
「グレミオ」
「ん?」
「取引しないか?」
カイトが口を開く。
話しかけられたグレミオは呆れたような顔で小さく笑う。
「取引?カーちゃん自分の状況わかってんの?」
「レイナを捕まえられて俺達が不利な状況ってことか?」
「そうや」
「……なんで?」
「なんでってカーちゃんのチームから一人減りそうな状況やで」
「減りそうねぇ……」
ふふっと鼻で笑うカイト。
そして、氷のように冷たい視線をグレミオに向ける。
「別にかまわないぞ」
「は……?」
「仲間を見捨るのは何もお前だけの特権じゃない」
「カイト!」
たまらずジンガが叫ぶ。
それを無視してカイトは続ける。
「俺達は審査上、たまたま組んでいるだけだ。自分が受かるために可能性が高い方を選んで行動するのは当たり前だろ」
「……本気かいな?」
「お前こそ自分の状況わかってんのか?俺達がその女を見捨ててお前らに攻撃を加えれば女を抱えてるお前はまずアウト。隣のやつも戦うか、逃げるしかない。逃げてしまえば二対一でお前は余計不利になるだけだぞ」
「……」
「……」
絡み合う視線。思わぬ反撃にグレミオは少なからず動揺しているように見える。
(まずは第一段階突破かな……)
ここは我慢比べだと、カイトは自分に言い聞かせる。まずは、レイナとこいつらを離さないといけない。そのためには、相手が納得する交換条件を提示することが先決だ。
「それに黄色のチームもいるしな。あいつらとは遭遇したのか?」
「……まだや」
「俺達もまだだ。それならやつらはまだ三人いることになる」
もっともやつらが団体行動している可能性は低いが、グレミオの不安を煽る材料にはなる。
「ここでやられるか、取引に応じて一旦体制を建て直すか……どうする?」
「……」
さあ、どう出るグレミオ。
「……取引の条件は?」
かかった。カイトは内心ほくそ笑む。
あとは、この後の誘いにグレミオが乗るかどうかが重要な鍵となる。だが、カイトには自信があった。目の前の男、グレミオは柔軟な思考の持ち主ではあるが同時に軽薄な一面もあるとみている。
もし、カイトがグレミオと逆の立場なら仲間が一人減った直後にこのような真似はしない。まず、黄色チームと赤チームが争い始めるまで身を隠すだろう。チーム戦において数の力は大きい。
だが、グレミオは今こうしてカイト達の目の前に姿を現している。勝負を急いているのか、焦っているのかグレミオのとっている行動は、軽薄という他ない。カイトは条件を伝える。
「俺のスカイウォークトンクをお前に渡す」
「……」
沈黙するグレミオ。
「どうした?」
「もう1つや」
「あ?」
「そこのドレッドのやつのもや」
「……」
「構いませんよ」
素直に応じるジンガ。
(ジンガ……。駆け引きは苦手なんだな……)
とはいえ、応えてしまったものは仕方がない。
カイトは渋々といった表情をつくる。
「わかった。そうしよう」
「まずドレッド、お前のを置け」
ジンガが足元にトンクを置く。
雨に濡れたスカイウォークトンクは鈍い光沢を放っている。
「カーちゃん、君のもや」
「わかった。置いたらレイナから離れろ」
「……女、靴脱ぎや」
レイナが靴を脱ぐと、グレミオはその靴紐でレイナを後ろ手に縛って離れた。意外と用心深いヤツだ。
カイト達二人は、トンクを置いた場所から時計回りにゆっくりと移動する。
それにならって、グレミオともう一人の男も同じように動いた。互いに警戒しつつ、目的の場所に達する。
ジンガがレイナの縛りを解く。
グレミオともう一人がトンクを取ろうとしゃがんだ瞬間。
「グレミオ、忘れもんだ」
「な」
カイトの方を向いたグレミオが素早く後ろに跳ぶ。
バシュ!
「ぐあ!」
カイトが放ったスカイウォークトンクは、もう一人の男の頭部に命中した。すかさずジンガがうずくまった男を捕まえる。
「な……んでや」
「ナジムだっけ?獲物から戦利品もらうのは狩りの常識だろ」
今回は借りただけだけど。
「くっ……、このままで終わらさへんからな!」
そう言ってグレミオはすばやく逃げていった。
捕まった仲間を助けようともしないまま……
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