【番外編】王子のデート計画
「殿下、オイラー座の席、取れましたよ」
そう言いながら、エドガーが部屋へ入ってきた。
「助かった。ありがとう」
調べてみると、オイラー座で今もっとも注目を集めている演目だった。席が取れない可能性も考えていたが、これでひとまず安心できる。
エドガーは予約票を机に置くと、どこか白い目を向けてきた。
「……ジュリア様って、観劇がお好きなんですか?」
「言うな。分かっている……」
以前、ジュリアが話していたことを思い出す。
『殿下は観劇をご覧になりますか? わたくし、好きなんです。物語そのものもですけれど、流行している演目を見ていると、今の国の人たちが何を好んでいるのか分かったりして、面白いんですよ』
ジュリアが観劇を好むことを、俺は知っていた。
知っていながら、一度も誘わなかった。
そのくせ、アイーダとは観劇へ行った。
「……だから、今回は完璧にエスコートする」
「そういうことですか。じゃあ、観劇場の近くの茶房も予約しておきましょうか?」
「いや。あの店は菓子が中心だろう。観劇のあとなら、ジュリアは演目について話したがるはずだ。紅茶を飲みながら、ゆっくり話せる場所のほうがいい」
「……さすがですね」
「たしか西区に、外国の茶葉を専門に扱っている店があったな」
「え、そんな冒険するんですか? あの店、確かに個室はありますけど、建物も地味ですし、令嬢を連れていく店としてはちょっと……」
「ジュリアは新しいものを見つけるのが好きだからな。ああいう店のほうが喜ぶはずだ」
「……はあ」
「王宮で紅茶を飲むときも、新しく仕入れた茶葉があると、よくそちらを選んでいる」
「……なるほど」
「そのあとは庭園へ行く。今ならリナリアが見頃のはずだ」
「ジュリア様、リナリアがお好きなんですか?」
「ああ。夜会で花束を受け取っているところを何度か見たが、リナリアが入っているときだけ、一瞬反応が遅れる」
「……」
「なんだ?」
「いえ……よくご存じだなと思いまして」
「そうか? 普通だろう」
「……ジュリア様の婚約者ですもんね」
「ああ」
エドガーはそれ以上、何も言わなかった。
エドガー「きんもー」




