【番外編】デートのお誘い
レイナルド殿下から、なんと観劇のお誘いがあった。こうして殿下から誘われて、二人で出かけるのは初めてだ。
「どうかしら?」
鏡の前でくるりと身体の向きを変えると、ドレスの裾がふわりと揺れた。今日選んだのは、淡い青色のドレスだ。胸元や袖には繊細な刺繍が施された、落ち着いた雰囲気のもの。
「とてもお似合いです。お嬢様」
侍女の言葉に、私はもう一度鏡を見る。何着か用意してもらった中から、結局、殿下の好きそうなこれを選んだ。
「……仕方ないわよね」
せっかく会うのなら、喜んでほしいし、似合っていると言われたい。
そんなことを考えていると、殿下が到着したとの知らせが入った。玄関ホールへ向かい、階段を下りると、父と向かい合っていた殿下が、なぜか深々と頭を下げているところだった。
「……?」
何をしているのかしら。
父が何か言うと、殿下はようやく顔を上げた。そして、階段を下りてきた私を見る。
「……」
殿下が固まった。
「お待たせしました。……殿下?」
「……よく似合っている」
「本当ですか?」
「ああ」
殿下の視線が、私から離れない。
「……可愛い」
「えっ……」
胸が、どきりと鳴った。
可愛い。私が?
思わずぽかんとしていると、父が何とも言えない顔をして、「……ごほん」とわざとらしい咳払いをした。
殿下がはっとしたように表情を改める。
「では、ジュリア嬢をお預かりいたします」
先ほどまでとは打って変わった王太子らしい顔で父へ挨拶をすると、私に手を差し出した。その手を取り、屋敷を出る。
馬車へ乗るときのエスコートも完璧だった。私が足を取られないよう手を添え、乗り込んだことを確認してから自分も乗る。それ自体は、以前と変わらない。
けれど、向かいに座った殿下を見る。
――目が、違う。
これまでも、話をすればこちらへ顔を向けたし、私の言葉にも答えてくれた。それでも、どこか遠くを見ているように感じることがあった。今、私を見る目はとても柔らかい。……くすぐったいくらいに。
「今日のオイラー座の演目、見てみたかったので嬉しいです」
「そうか……君なら、もう見ているかもしれないと思って心配していたんだ。まだでよかった」
「……え? どうして、私が見ていそうだと?」
「観劇が好きだろう?」
「ええ……そうですが。私、お話ししましたっけ?」
「しただろう。二年ほど前に、君が好きなものの話を振ってきたときに、自分は観劇が好きだと言っていた」
「……」
その会話は、なんとなく覚えている。殿下の好きなものを知りたくて、私から話を振ったのだ。
だけど、まさか殿下が覚えているなんて。
「どうかしたか?」
「……いえ」
顔を背け、窓の外を見る。
だめだ。顔が熱い。
「ジュリア?」
「……殿下は、人たらしですね」
「え?」
「なんでもありません」
……ゲフッ




