[第2回]ポーション買った。6階層から/剛田力一 ②
洞窟、森、沼地ときて、7階層は遺跡になっていた。年季を帯びた石造りの遺跡で、壁に取り付けられている松明が通路を照らしてくれているようだ。
「遺跡ってなんだかワクワクするよな」
"それなー"
"なんでダンジョンに遺跡があるんだよ"
"宝箱があったらロマンのある話なのにな"
しばらく道なりに進んでいると、ギャッギャと聞き慣れた声が聞こえてきた。柱の影から覗き見ると、十匹近くのゴブリンが焚き火を囲んでいる。
ゴブリンがどうやって火をつけたかは知らないが、経験値になってもらおう。今の俺なら十匹程度は楽勝だろうしな。
「───!!」
拳に【硬化】を使い襲撃を仕掛けると、ゴブリンたちは今までと違った面白い反応を見せた。
俺の接近に気づいたゴブリンが声を上げ、流れるように盾役と攻撃役に別れて迎え撃ってきた。拙いながらも統率の取れたそれは、前の階層で遭遇したゴブリンよりも知能が高いことが分かる。
しかしまあ、残念。木の盾と棍棒じゃ相手になりませんとも。
強化された拳で盾を割り、棍棒を叩き折り、武器がなくなったゴブリンたちを蹂躙した。知能やステータスが上がったとはいえ、ゴブリンはゴブリンだな。
戦闘の後、久しぶりに魔石以外のものが落ちていると思ったらゴブリンの耳が落ちていた。ゴブリンの耳って何に使うんだよ。
ちなみに4階層でドロップしたグレーウルフの牙は、初心者用の武器の素材とかになったりする。記念として家に持ち帰ったが、牙一本で一万円はするそうな。店で売っているポーションや装備の値段を見たら、一万円で何ができるって話にはなるがな。
その後もズンズンと通路を進んでいき、同じようにゴブリンの群れを破壊していく。魔力が足りず【硬化】は使えないが、特に必要になることはなかった。
せっかくの遺跡でワクワクしていたんだが、相手がゴブリンばかりじゃ飽きてくる。そもそも遺跡で何食って生きているんだよ。遺跡といえばゴーレムとかガーゴイルだろ。
「遺跡って割には何もないな?」
壁画や造りからして確実に遺跡なんだが、開けた空間や小部屋が全く見当たらない。今のところは、ただただ通路を歩いているだけだ。
"せやな"
"隠し部屋とかないんか?"
まー、隠し部屋ってのはロマンある話だよな。経験値の美味い魔物や珍しい遺物が見つかることがあるらしいし、見つけることができれば一攫千金のチャンスだ。
「いいなそれ、歩きながら探してみるか」
こんな上層の隠し部屋なんか、あったとしても既に荒らされた後だろう。ただまあ、ロマンって大事だよな。
とはいえ、どうやって見つければいいのか。だいたい壁とか床にヒントがあるもんだよな?思いつく限りいろいろ試してみるか。
「無理だ、さすがに諦めよう」
あてもなく壁を叩いたり、床を踏みつけながら移動してみたがなんの反応もない。今は探索のついでに探しているが、時間のある時に隠し部屋耐久配信をしてもいいな。
そんなこんなで諦めきれず壁を叩いたりしていると、どこからともなくゴブリンの集団が寄ってきた。こんなに音を出していたら当たり前か。
今までと同様にゴブリンを突き、叩き、投げ飛ばす。もはや流れ作業になってきたな。
───ガコンッ
「おっ、なんの音だ?」
ゴブリンを投げつけた壁の一部が僅かに沈んだと思いきや、何かが噛み合ったかのような、仕掛けが起動したような音が鳴り響く。
それを機に地面が揺れ、隠し部屋への通路が開かれる───
と思ったのだが、そんな上手くはいかなかった。隠し部屋探索モードではなく、普段の俺ならば回避できていたであろう。
「あ、落とし穴か……」
地面が開き、重力に逆らうことなく落ちていく。隠し部屋の可能性に気を取られていたからか、罠だという考えがすぐに出てこなかった。
体感で三十メートルほど落ちただろうか。ようやく地面が見え着地をするが、完全に衝撃を逃すことはできず体力がそこそこ減ってしまった。イノシシの最後っ屁もそうだったが、被ダメージの仕方がしょうもない。
「回復ポーションって美味いんだな。びっくりしたわ」
二本ある回復ポーションのうち一本を飲み干す。回復薬は薬っていうイメージが強かったから、ほのかに甘く飲みやすいことにかなりの衝撃を受けた。
"あーあ、懲罰部屋じゃん"
"そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんじゃない?"
"専門店だといろんな味のポーションが売っているよ"
"出口探さないと"
ポーションにもいろいろと味があるのか。資金繰りに余裕ができたら、今度その専門店とやらに行ってみるか。
……コメントが慌てた様子だと、逆に冷静になれるな。
「落ちたもんは仕方ないだろ。天井も綺麗に閉まってるし」
辺りを見渡すと、遺跡と同じ造りの小部屋に落ちてきたようだ。天井も五メートルほどあり、落ちてきた穴は塞がっている。
「懲罰部屋ってなんだ?」
"少し強めの魔物がいる部屋"
"今みたいに罠にかかった末に辿り着くことが多いなw"
"魔物を倒せたら脱出できる場合が多いね"
小部屋を出ると魔物の気配がなく、一本道が続いているだけだった。奥を見ると巨大な広間に繋がっていて、そこへ行けということだろう。
「あそこに魔物がいるってことか」
"せやで"
"まあこいつなら平気じゃない?"
罠がある可能性を考慮しながら慎重に広間の前まで進むと、入口付近の左右の壁に翼の生えたゴブリンのような石像が飾られていた。ダンジョンで石像と言えばガーゴイルなんだが、これはどうだろう。
目の前まで近づいてみても一向に動く気配がない。通り過ぎてから奇襲をかけるパターンか?触ったら動き出すとかあるか?
ガーゴイルだった場合はレギュレーション違反だが、一体壊してみるか。
「【硬化】」
バキッと片側の石像を壊してみると、案の定だった。
「──────ッ!」
もう片方の石像が壁を離れ、咆哮をあげている。その小さな羽根でどうやって宙に浮いているんだか。ただ、スキルを使って殴れば壊れることが分かったなら容易い事だ。
ガーゴイルの引っ掻きを躱しカウンターを顔面に食らわすと、簡単に首が折れて地面に落下した。多分【硬化】との相性が良かったんだろうな。
「ん?身体が崩れないな」
"まだ倒してないってこと?"
"本体が操っているとかかな?"
分からん、こういう時の視聴者よ。
「有識者教えてー」
"知らん"
"核があるとかじゃない?"
"ギミックのガーゴイルと魔物のガーゴイル、二種類いてね。これは前者で、時間経過で修復されるから無視でいいよ"
"ほへー"
なるほどね。ギミックのガーゴイルだから灰にならないのか。経験値にも金にもならないと。
今ので魔力がギリギリになったから、魔力ポーションを二本飲んで回復させる。
(ステータス)
─────────
名前:剛田 力一
レベル:7
体力:205/208
魔力:22/24
攻撃:57
敏捷:40
耐久:39
器用:30
知力:21
スキル:【高揚】【硬化】
─────────
【硬化】が有用すぎるし、【高揚】はもう少し成長するまでお預けだな。
ガーゴイルの残骸はそのままにして、広間に入る。中央には大きな岩が置かれていて、それ以外は何もなさそうだ。
見るからに怪しいが、ガーゴイルのようにアクションを起こさないと反応しないパターンかと思い近づいてみる。すると大岩はゆっくりと姿を変え、ロックゴーレムへと変貌した。
三メートルほどの高さがあり、胸の中央にはコアがはめ込まれている。ゴーレムってのはロマンなんだが、何故こうも弱点を晒すのか。
ゴーレムに近づくと、両手を勢いよく振り下ろしてきた。容易に見極めることのできるゆっくりとした動きだ。
漢のロマン、ゴーレム。その攻撃の安直さ、隙の大きさに悲しみを覚えながら、硬質化させた拳でコアを撃ち抜く。
動きを停止させたゴーレムは、崩れ落ちるように消滅した。
これならゴブリンの群れの方がまだ面倒臭かった。ラージボアはともかく、大きい魔物ってのはなんでこうも動きが遅いんだろうな。
"ゴーレム弱スギィ"
"敏捷の低い探索者なら大変だっただろうね"
懲罰部屋なのにこんな弱い魔物を倒すだけでいいのか。とりあえずこれで階段なり転移の魔法陣が現れると思っていると、ゴォオオオッと地鳴りが起こる。広間の左右の壁が動き出し、新たな通路が二つ出来上がった。
するとそこから人間を模したようなゴーレムがゾロゾロと現れる。鎧を身につけ盾と剣を装備したそれらは、俺を取り囲み剣を構えた。
ゴーレムだかオートマタかは知らんが、やっと面白くなってきたな。
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