[第5回]30階まで※縛りあり/剛田力一 ④
"えぇ……なんで戦えんだよ"
"漢だからだ"
"漢じゃねーだろイカレポンチだろ"
"もっと同接増えていいだろこれ"
"それ、すげぇことやってんのにな"
魔力ポーションを飲み干し、再び【硬化】を使用する。【加速】を使ってねぇのに、何故かスカルキメラの攻撃を躱せているわけだが。
相手は骨。なのに苛立っているのが伝わってくる。
おいおい、そんなに手ぇ振りかぶってどうした?骨のくせに焦ったか?さっさと仕留めたいんだろうが、そんな大振りは隙を作るだけだろうが。
「【加速】っ!!」
スカルキメラの懐にギリギリで滑り込み、振り下ろしを躱す。腹の真下へ入り、でかい骨を狙って殴りつける。
なぎ払いが来そうになると腹の骨にしがみつき、振り落とされないよう耐える。すると攻撃が届かないと悟ったか、骨がバラバラになって散開した。
俺の周りを無数の骨が飛び回り、あちこちから攻撃が飛んでくる。かなり危険だが、この時が最も骨を砕けるチャンスだ。
「すげぇ……」
正面や背後、足元からも、四方八方から骨が迫ってくる。だが何故か、今はその全てに反応することができている。見えていない場所からの攻撃も、フェイントのようなものも全て。
どうすれば効率的に壊せるか、もっと威力を高められるか。自身の身体が、思考が、相手を壊すことに最適化されていく。
"これゾーンってやつ?"
"今までのニキより荒々しくない感じがする"
"ワイ、一度もゾーンとかいう経験ない"
"なんかリーゼント解けてきてね?"
"がふっ……"
"ネキー!!"
"あまりのメロさにネキが逝ったぞ!"
さすがに一方的に壊されたらたまらないだろう。攻撃の雨は止み、身体が再構築されていく。でかい骨を壊されたからか、さっきよりも確実に小さくなっていることが一目で分かる。
「ぐっ、ぅ……あァ!!」
だが俺も満身創痍なんだよな。呼吸がキツいわ胃酸も逆流してくるわ、さっさと回復しねぇと。
「───!!」
「くそが……」
そうだよな、回復なんてさせてくれねぇよな。だったらさっさと倒さねぇとマジで死んじまうよ俺ァ。
「もっどや゛ろう゛ぜ糞駄獣!!」
さっさと倒れろ糞駄獣。
このままじゃ埒が明かないと考えたのか、スカルキメラは攻撃の仕方を変えてきた。振り下ろしを今まで通りやり過ごしていると、直前になって手が檻の形に変形した。
「まじか」
今までの攻撃は全て避けていたが、実際ギリギリのところでやり過ごしていただけだ。逃げられるはずもなく、檻の中に閉じ込められる。
すぐさま檻を壊し脱出を試みるが、それよりも早く残った腕で檻ごとなぎ払ってきた。
「ぅあ……ぐふっ」
直撃は避けたものの、指先が触れただけで吹き飛ばされる。だが、今のでかなりの骨が砕けてくれた。トドメの一発のつもりだったんだろ。
死ぬほど痛い時に死ぬほど痛い攻撃を食らってもよ、死ぬほど痛いだけなんだわ。全く効かねーんだよこの野郎。
(【加速】)
悠長に身体を治しているスカルキメラに接近する。
迎撃を優先したのか前脚から先に組み立てられていくが、後ろの構築が疎かになっている。狙うならここしかない。
「や゛っとアホみだい゛な隙をづぐったなあ゛!!」
中途半端に作られた後ろ脚も宙を漂っている骨も、片っ端から壊していく。前脚で振り払おうとするが、姿勢を保てないのか再びバラバラに散開する。
だが攻撃を仕掛けては来なかった。俺に壊されるのが分かっているのか、離れた位置で再構築し始める。
もはやラージボアよりも小さく、首がない状態だ。元の大きさに合わせた顔だからか、持ち上がらないのだろう。
(【硬化】)
一度強化をかけ直し、迫り来るスカルキメラを迎え撃つ。しかしもう避けるだけじゃない。やっとこっちの攻撃も届くようになった。
奴の攻撃を避けては受け流し、胴に叩き込む。少しずつ確実に砕けていき、動きも鈍くなっていく。
またしても散開しようとしていたが、何度も見せられれば予兆くらい分かる。バラバラになる瞬間は攻撃してこないと踏んで、ありったけの一撃を身体のど真ん中に打ち込んだ。
後のことなど全く考えずに打ち込んだ一撃は大半の骨を砕き割り、ギリギリのところで逃げ延びた骨を残すのみとなった。
骨たちは俺から逃げていくが、本体であろう頭の方に近づこうとすると慌てて攻撃を仕掛けてくる。
それらを全て打ち砕き、頭以外の骨は沈黙した。
"勝ったーーー!"
"早く回復しろマジで"
"まだ頭残ってるやんけ"
"セクシーな死、セク死ー"
"上半身裸が様になってやがる"
ああ、ぼーっとしてた……。回復しねぇと……全部飲むか。
痛ってぇ!!
死ぬってマジでコレなんだよ。こんな痛いのに何も感じてなかったのか俺は。
30階層がまだ残ってんのに、回復ポーションはなくなったし魔力ポーションも一本しかない。経験値が美味くなかったらマジで許さねぇ。
それでこいつの頭はどう壊すか。顎の辺りは厚くなってるし眉間あたりがちょうど良さそうだ。
「そんな睨むなって」
助走をつけて跳躍し、眉間目掛けて天井を蹴る。完璧なタイミングで殴りつけると、ヒビは入ったが一撃で壊すとまではいかなかった。
ちょっとショックだな。今の戦闘で殴るコツを掴んだんだが、それでも壊れてくれないのか。結局いつも通り二、三回……十回ほど繰り返してようやく頭を壊すことができた。
すると、普段の何倍も激しく苛烈な力の奔流が身体の中を駆け巡る。これはさすがに期待してもいいよな。
(ステータス)
─────────
名前:剛田 力一
レベル:34←25
体力:335/559←218/442
魔力:74/160←20/106
攻撃:226←163
敏捷:178←124
耐久:189←126
器用:139←94
知力:65←47
スキル:【高揚】【硬化】【連撃】【不倒】【耐久Ⅱ】【加速】【野生の勘】【敏捷I】
─────────
「は?」
"どしたん"
"ステータスみた?"
"美しい筋肉だ……"
"何レベ上がった??"
階層主とのレベルに差があると、こんなにも経験値が手に入るのか。レベルの上がり方もそうだが、ステータスもかなり上振れている。スキルは二つ増えているが、どっちかは階層主の報酬じゃなくて経験から生えたやつだろうな。
【敏捷I】は自然と生えてもおかしくないから、階層主から貰えたのは【野生の勘】か。
いや待て、戦闘中に直感みたいなのが冴えに冴えていたから【野生の勘】が生えた方なのか?だったらこいつを倒して手に入ったのは【敏捷I】?
やめだやめ、悲しくなっちまう。前者だと思っておこう。
「めっちゃレベル上がったわ」
"何レベ上がったか気になる"
"そりゃだいぶ格上やしな"
"意外と早く倒せたから朝までに終われたり……しないな"
こんなにレベルが上がったんなら、これを機にレベルもスキルも隠す方向にしてもいいな。今まではちとオープンにしすぎたからな。
霧崎さんの件で変なアンチが少しばかり付いちまったから、念の為だ。
"今回は教えてくれないのね"
"でもホントよく勝てたな"
"まさに漢の筋肉よ"
"階層主にこんな低いレベルで挑んだ時は自殺行為かと思ったわ"
正直、自分でもよく勝てたとは思う。だが今回は、相性が抜群に良かったんだろうな。
特性はスケルトンと同じらしいから、物理攻撃以外にはめっぽう強い。あの拡散攻撃にしたってそうだ。俺は言ってしまえばインファイターだから素早く対応できたが、物理武器にしたって重さのあるメイスや大剣だったら対応は後手後手だしな。
パーティーで挑むにしても、物理攻撃をできない奴らがお荷物だ。こういう奴らは一人じゃ何もできないから、倒すのには苦労するだろうな。
別にパーティーを貶しているわけじゃないが、大半はそんなもんってことだ。
よく見たら俺、上着消し飛んでるじゃねーか。セク死とか筋肉とか、コメに変なやついるって思ったらこれのことか。
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