[第5回]30階まで※縛りあり/剛田力一 ③
思ったよりガッツリ眠れたな。アラームが鳴るまで起きないとは思わなかった。敵が来たら起きれる自信はあったが、ちと警戒心を解きすぎたか?
まあ敵は来なかったし、しっかりと休めたからオールオッケー。次から気をつければいいだけだ。中級魔力ポーションを使い、魔力を100近くまで回復させる。
「さてさて、休憩は終わりにしよう」
"すやすやでしたやん"
"なんで寝る姿が様になってんだよ"
"かっこよかったよ"
あ、霧崎さん来たじゃん。
「ネキ来てくれてありがとなー」
"ネキ呼びでいいならワイもネキって呼ぼー"
"お前怖いもの無しか"
"だってワイ、ネットの人間やし"
"配信が終わってなくてよかったよ"
霧崎さんも来たことだし、気合い入れていきますか。わざわざ模擬戦をしてもらったのにダサいところは見せらんねぇからな。
誰かが使っていたかもしれないこの部屋に別れを告げて外に出る。少しすると階段があり、それを下ると変わらず地下水路へと繋がっていた。
階層主がいるからか水位が下がっており、横幅も広くなっている。水路を広くしたからここで戦えってことだろうな。
地下水路ってことでホネホネの魚やネズミがいるものだと思っていたが、25階層になっても依然人型のスケルトンにしか遭遇しない。戦いやすいからそれでも問題はないが、半日もレベリングしたらさすがに見飽きたわ。
スケルトンを倒しながらぶらぶら進んでいると、ドーム状に拡がった場所に出た。水路にしては明らかに不自然な作りで、至る所に骨が散らばっている。
足を踏み入れると、そこら中にある骨がカタカタと動きだした。それらは部屋の中央に集まっていき、動物のような形を形成していく。
骨の身体に翼、二本の尾を生やし、骨のくせに雄叫びを上げている。ボーンキメラとかそこらの名前だろう。こいつが階層主に違いない。
"スカルキメラやな"
"トラックよりでかそう"
"骨のキメラってかっこいいな"
"昔やった、骨で動物を組み立てるおもちゃを思い出すな"
"漢は骨に惹かれるものだ"
"漢ってか厨二じゃない?"
骨は厨二とか漢とか関係ないから。男子はみんなドクロが好きなんだよ。
「かっこいいのは分かるが、倒させてもらうからな」
まずは一度、どんな動きをするのか確認するために接近する。攻撃を仕掛けるが、身体をぶん回してなぎ払ってきたため回避する。続けて攻撃を仕掛けるも、暴れ牛のように力任せに腕を振り下ろし反撃してきた。
「【加速】」
さすがに素早さを上げないと避けるのは厳しいな。
キメラつったら魔法を使うイメージがあまりなかったが、イメージ通りゴリッゴリのインファイターだったな。尻尾に毒がない分、生きていた頃より弱体化されているんだろう。元々が骨の可能性もあるが。
再び身体を回転させ薙ぎ払ってくるのを上に避け、天井を利用して胴体に拳を振り下ろす。
骨の翼でガードされるも、【硬化】で硬くした拳は骨の一部にヒビを入れることができた。
これで勝ち目があるのは分かったが、魔力の消費が酷すぎる。中級魔力ポーションは六個残っているが、30階層に備えてなるべく残しておきたい。
多少の被弾は気にせず、時間優先で行こう。
【硬化】が切れる前に機動力を削いでおきたい。そしたら【加速】を使わないでも戦えるようになるはずだ。
スカルキメラの攻撃をギリギリのところで掻い潜りながら、壁や天井を利用して死角に入り込む。この動きを繰り返し、右後ろ脚の付け根部分を執拗に狙う。天井を上手く使い体重を乗せた一撃は、骨をかち割り脚を分断させることに成功した。
そこで丁度一分が経ち、【硬化】が切れた。それと同時に【加速】も切っておく。
「ここからはずっと俺のターンだ……って言おうと思ったんだが」
スカルキメラの身体が崩れ、身体を構成していた骨がドーム状の広間を縦横無尽に飛びまわる。身体と分断されたものの、割れてはいなかった骨も同様だ。
それは攻撃性を含んでいて、見た目以上に重い一撃がそこかしこから迫ってくる。急所は確実に避けるが、さすがに全ては避けきれない。
いくつか攻撃を貰いスカルキメラの骨を叩き割ったところで攻撃は止み、再びドーム中央にスカルキメラが作り上げられる。もちろん脚は作り直されている。骨を割った分、全体的に気持ち小さくなっているようだ。
「【加速】なんか使ってたら魔力足りねぇな」
"チートすぎィ"
"頭をやらないとダメなんやろな"
"ハイボルテージを使わない謎縛りのせいで無理そうw"
"魔力ポーションを温存している場合かな?"
"またまた耐久の時間かね?"
骨がバラけている時、頭だけはその場から動かなかった。つまりはスケルトンと同じように、頭以外の骨を全て折ってしまえばいいってことだ。
つまり何が言いたいかって?
耐久の時間です。
少しでも魔力を温存させるため、【加速】を使わずに突撃する。スカルキメラの適当な振り下ろしをギリギリのところで躱し……きれない。
「ぐふっ……!」
何とか振り下ろしはガードするも、死角から迫る尻尾でのなぎ払いに気づくのが遅れた。壁まで吹き飛ばされるも、【不倒】が効いているのか立ったままだ。
ギリギリのところで腕を入れたが、左の肩と肋が数本逝った。肋ってよく折れる描写があるけど、くそ痛ぇじゃねぇか。
"腕変な方向いってる!"
"もう変な縛りやめとけって"
"さすがにレベルに差がありすぎたかな。危ないから使っていいよ"
"え、ネキ?"
"まさか切裂姫からの縛りだとは"
"漢は縛られても映えるぞ"
"何言ってんだ漢野郎"
霧崎さん、言ってくれるじゃんか。使っていいって言われたら意地でも使いたくなくなるね。
「あー、楽しいな……」
"うわ、イカレポンチきたw"
"なんで攻撃くらって楽しくなんだよ"
"尊死"
"ネキさあ……"
"もうネタ禁ネキからガチ恋ネキでいいだろ"
"んなことしたらまたニキのスレ荒れるぞw"
ダメージを受けると、命のやり取りをしていることの実感が湧く。こっちが狩られる側だということを強制的に認識させられる。
それが楽しい。
いつものように一方的に魔物を倒すのではなく、一対一で全てを出し切り雌雄を決するギリギリの戦い。
これをやりたい。
生きてるのか死んでるのかは微妙なところだが、相手にとって不足はない。
はあ、笑みが抑えられない。テンションが上がりすぎて身体がはち切れそうだ。初配信で視聴者が言ってたヤバい顔って、これのことだろうな。
こんなに楽しいのに、ありえないくらい冷静だ。くだらないことをいくらでも思いつくし、今ならなんでもできそうな謎の自信も湧いてくる。
「追撃して殺さなかったことを後悔させてやるよ、合成獣」
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