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港区の狂戦士、剛田力一  作者: つなまぐろ
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討伐依頼

 「ふふっ、ボコボコだね」


 分かってはいたが全く通用しないわ。


 【高揚(ハイボルテージ)】の最後の方でも簡単に受け止められてしまう。わざと隙を見せてくるのがまたいやらしい。


 そこに飛びつけば反撃を食らうが、その隙を狙わないと突破口が見当たらない。


 それに彼女……いや、この女。俺が10分間回復できないのを知っているくせに、容赦なく攻撃を加えてくる。


 本当にファンなのか疑わしい。この分だと【耐久I】が進化しても全く驚かないな。


 「よし、毒、麻痺、魅了、睡眠、衰弱、威圧は試したし、とりあえず状態異常やデバフは効かなそうだね。私の【威圧】が効かないのなら確実だよ」


 この【威圧】、対格下用のスキルらしいんだがデバフがてんこ盛りだった。


 さっきは攻撃、耐久、俊敏が下がったのに加え、恐怖の状態異常が付与されたらしい。心臓が握りつぶされるような錯覚を覚え、身体の震えが止まらなかった。


 「それと君の攻撃を連続で受けてみたけど、規則的に威力が上がっていたよ。つまり連撃は発動していなかった可能性が高いね」


 ということは、他のパッシブスキルも発動していないとみて良さそうだ。


 他人から受けるバフに関しては試せていないが、どうせ一人で戦うんだから効いたらラッキー程度に思っておけばいい。


 「さて、バフは試せていないけれど必要なところは確定できたかな」


 そうだった、予想通りであればなぜ俺にここまでしてくれるのか話してくれるんだったな。


 「うん、思っていた通りの良いスキルだね。そこで君に頼みたいことがあるんだ」


 「はい、俺にできることなら」


 その頼み事に俺のスキルが関わってくるのか?まさか本当に人体実験かなにかか?


 「S級探索者の私から、F級探索者の君に指名依頼だ。六本木ダンジョン55階層にて発生した、階層主ガンド・ルーラーの異常個体を討伐して欲しい」


 …………は?


 昨日20レベになったばかりだぞ?55階層の階層主の異常個体なんて倒せるわけがないだろう。


 「本来であればできるだけ早い討伐が求められるんだけど、今回は特殊でね。君に死なれては困るんだ。君にしっかりと強くなってもらって、そして討伐して欲しい。」


 どうして俺にそれを求める?あんたでも倒せない魔物なのか?

 

 「特殊というのはどういったところが?」


 「簡単に言うと、状態異常とデバフのオンパレードなんだよ。階層全てが奴の攻撃範囲で、大量にそれらを付与してくるんだ。本来はもっと狭い範囲で、いくつかのデバフを付与してくるだけの魔物だったんだけれど」


 「でも、それならエンチャンターやヒーラーでどうにかならないんですか?」


 「ならなかったんだよ。55階層に入れば状態異常とデバフを永続的に食らう状態になっていてね、それらを解除しても意味がないんだ。だから戦うためには状態異常とデバフが効かないことが必須なんだけど、海外にいる聖女と言われる探索者以外に該当者がいなかったんだ」


 それなら聖女を呼べばいいんじゃないか?純粋な強さでS級になったと聞いているし。


 「その顔は、聖女に頼めばいいんじゃないかって思ってそうだね。でも残念かな、あれは能力が聖女ってだけの金の亡者さ。あんなのに依頼したら根こそぎ搾り取られるよ」

 

 なるほど、そこで俺に白羽の矢が立ったと。


 「どうかな?」


 わざわざ聞かなくても分かっているだろうに。


 純粋な強さとは違うかもしれないが、S級にも倒せない魔物を俺が倒すんだぞ?そんなの楽しみで仕方がねぇよ。


 「もちろん引き受けます」


 「そう言ってくれると思ったよ、ありがとう」


 とはいえ、俺にはレベルも経験も足りていなさすぎる。それを補うには、強いヤツと戦うのが一番手っ取り早い。


 「だからもう一度、模擬戦をしてくれませんか?」


 「そう言ってくると思ったよ、好きなだけやろう」


 ありがとう切裂姫、あんたの期待に答えてみせるよ。




 「うげぇー……」


 ダメだ、強すぎるぜあんた。次レベルアップしたらどれくらい耐久が伸びるんだ?


 「君はあれだね。しばらくハイボルテージを使うのやめようか」


 「はい」


 「センスをもっと尖らせよう。スキルで強引に倒してしまうのは勿体ないよ。経験も得られないしね」


 たしかに戦闘時間が短い分、単調な攻撃でも勝ててしまっている。階層主も最後はゴリ押しで倒しているし、ろくな経験を積めていないのかもしれない。


 「もう夕方だし、そろそろ終わりにしようか。明日は配信するんだろう?」


 「はい、いろいろとありがとうございました」


 「こちらこそありがとう。上まで送っていくよ」


 本当はもっと戦いたかったけど、夜遅くまでお世話になるのは違うしな。

 

 そういえば回復ポーション何本使ったんだ?多分上級だったよな?


 ……考えるのはやめよう。


 ガンド・ルーラーとやらを倒して恩を返そう。



 

 「はい、上に着いたよ」


 エレベーターで地上に上がり外に出ると、庭園がライトアップされていた。


 「明日の配信楽しみにしているよ」


 そういえば、俺のどこを気に入ってくれたんだろう。服装か筋肉か、はたまたリーゼントか。今日の素の俺を見てどう思ったんだろう。


 「ねぇ、力一君」


 「なんですか?」


 「魅了かけた時、顔真っ赤だったよ」


 「それがどうかしましたか?」


 そりゃ魅了をかけられたんだから、あんたを見て顔が赤くなるのは当たり前だろ。


 「ふふっ、つれないねぇ。女の子は、可愛いって言えば喜ぶよ?」


 「ネキって今幾つですか?」


 あ、目ぇ怖。


 話を逸らそうと気になってたことを聞いたんだが、完全に今じゃなかったな。ネットには20から25歳ってなってたけど、実際どんなもんか。


 いや、話題変えねぇと。


 「ネキって俺のどこが気に入ったんですか?」


 「ん?顔と戦闘センスだよ?」


 「あー、顔?そうなんですね」


 思っていたのと全然違う方向から来たな。センスはともかく顔ですか。


 なんて言えばいいんだ?


 「ふふっ、反応に困っているね?」


 「ちょっとなんて返せばいいのか……」


 「君は面白いねぇ」


 そんなこんなで門に到着。今の数百メートルがとんでもなく長いように感じた。


 いや、家の敷地にしては長すぎるな。


 「私の名前は霧崎美琴、霧崎家のお姫様さ」


 いきなり名乗るんだ。ここまで来たら秘密にしているものだと思ってたよ。


 「それで切裂姫なんですか?」


 「それは本当にたまたまだから笑っちゃった。今度会う時は美琴って呼んでよ」


 「はい、美琴さん」


 霧崎家の姫が切裂姫か、すごい偶然もあったもんだな。今更だけど、なんで俺は本名でDチューバーやってるんだ?


 「じゃあまた明日」


 「はい、また配信で」


 昨日は同接が多かったし、もう名前変えても意味ないよな。ノリで始めたけど、ちょっと不用心だったな。


 あ、よく見たら表札に霧崎って書いてあるじゃん。


 気が付かなかっただけか。

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