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港区の狂戦士、剛田力一  作者: つなまぐろ
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ハイボルテージ

 とりあえず、感謝のDMはこれで良し。


 切裂姫のお陰でなんとか帰ることができましたと。今更だけど、切裂姫とネタ禁ネキ、どっちで呼ぶ方がいいんだろうか。


 送信…っと。


 …………。

  

 うお、返信早っ。


 "君と話したいことがあるのだが、今電話しても平気かな?私は君のファンではあるが、一探索者として話したい事があってね。決してやましい事があるとかではないんだ。もちろん強制ではないから、嫌であれば断ってくれて構わないよ。断られたとしても私は君のファンでいるから安心してくれ。"


 えー、あー。

 

 高レベルの探索者ともなると、文字を打つのまでこんなに早いのか。さすがだな、うん。


 こちらは構いませんよ……っと。


 おおぅ、一瞬で電話かかってきたな。通話のボタンを構えてたと思えるくらいだ。


 「もしもし、力一君かい?」


 「はい、今日は本当にありがとうございました」


 「いやー、気にしないでくれ。今君に死なれては困るんだ。ファンとしても、探索者としても」


 ファンとしてなら分かるんだが、探索者としてってどういうことだ?あの切裂姫が俺なんかに何を求める?


 「簡潔に言うとだね、私の予想が合っているか確認したいから実験に付き合ってくれないかい?これは君のためにもなるはずだよ」


 「ためになるって言うのは?」


 「君のスキル、ハイボルテージに可能性を見出したんだ」


 【高揚(ハイボルテージ)】に可能性?


 デメリットを含めてもだいぶ壊れたスキルだとは思うが、これの将来性とかか?


 まあ、どちらにせよ───

 

 「俺はあなたに救われました。断るわけありませんよ」


 「ありがとう力一君!今から住所を送るから、ここに来て欲しいんだ。空いている日にちを教えてくれないかな?」


 「そうですね…。ダンジョンはその時の気分で行くかどうか決めているので、はい。いつでも行けますね」


 探索者なんてダンジョンに行かなければただのニートだし、頼まれれば何時でもOKだ。


 うーん、でもスキルのこととなると気になるしな。


 「明日とかって大丈夫ですか?」


 「ふふ、やっぱり気になるよね。明日にしようか」


 「はい、よろしくお願いします」


 「こちらこそよろしくね」


 ふー、終わった。

 

 なんとなく話が進んでいるけど、S級と、しかも切裂姫と会う約束をしたなんてすごいことだよな。


 疲れているはずなのに、明日が楽しみで寝られるか心配だ。




 東京都世田谷区、成城にある屋敷の前に俺は来ている。周りは自然に囲まれていて、神聖な雰囲気すら感じる。


 来たはいいものの、入口の門は閉じているしインターホンもない。

 

 どうすればいい、連絡するか?


 「わっ!」


 「おっ」


 びっくりしたー、全く気配がしなかった。意外とお茶目な人なんだな。


 「おはようございます」


 「反応が薄いね、おはよう。早速だけど案内するよ」


 門をくぐると、和洋混じった庭園が拡がっていた。まんま金持ちの屋敷って感じだ。彼女の着物とよく似合っている。


 庭園の一角にあるバーゴラに向かうと、エレベーターになっているようで、地下へ降りるらしい。


 「ここってもしかして自宅ですか?」


 「ああ、そうだよ。お金の使い道がないからいろいろいじったんだ」


 S級ともなれば金なんていくらでも稼げるもんな。一度の探索で億は稼げるって聞くし。


 昨日のマグマゴーレムの魔石が1つ10万したから、深層以降は急に桁が変わるんだろう。

 

 それにしても、エレベーターに乗ったはいいが随分と下に降りてるな。なんだ、地下にある施設ってだけでなんかいいよな。ロマンがある。


 「着いたよ。だいたい地下6、70メートルくらいかな?私が使っている訓練施設だから、耐久性はバッチリだよ」


 これぞ切裂姫といった感じで、赤と黒を基調とした東京ドーム並の広さの空間に着いた。


 これだけ広い場所で実験をするなら、いくら暴れても天井が崩れる心配もないだろう。そもそも実験の内容を聞いてないから、暴れかも分からんが。


 「早速本題に移ろう。まず君のスキルについて、私の予想を話すよ」


 そう言って話してくれた内容はこうだ。


 彼女の予想では、【高揚(ハイボルテージ)】は独りよがりなスキルらしい。誰にも頼らず敵と戦う、まさに唯我独尊。


 このスキルを使うと、俺の能力が時間経過で強化される。そして、相手から攻撃を食らえば傷も負う。


 ただそれだけ。


 回復ポーションや魔力ポーション、スキルやバフデバフの影響を何一つ受けないという。


 俺は気づかなかったが、マグマゴーレムと戦っている時に【高揚(ハイボルテージ)】を使った瞬間、まだ時間が残っているはずの【硬化】が解除されたらしい。


 よく考えれば15層の階層主とやった時、【高揚(ハイボルテージ)】の状態で【硬化】を発動できなかった。


 その時は階層主の仕業かと思ったが、【高揚(ハイボルテージ)】に言われた通りの効果があるのなら納得できる。


 同じように、【連撃】や【不倒】の効果も乗っていなかった可能性があるらしい。


 他にも、マグマゴーレムの攻撃には火傷の効果が発生するらしい。だが、助けられた時に俺は火傷状態ではなかったそうだ。


 バフに関しては試せていないが、ここまで聞くと効かなそうな気がしてきた。


 「つまるところ、ここでハイボルテージに関する疑問をなくそうってことだね」


 それはありがたい。これが事実なら、今後の使い方もいろいろ変わってくる。


 だが、これだけ聞いても疑問が残る。


 「なぜ駆け出しの俺に、こんなことをしてくれるんですか?S級のあなたが」


 こんな時に思うことじゃないだろうけど、目を見て話すとちょっと照れる。美人すぎるのは目の毒だって。


 「うーん、そうだね。君のスキルが予想通りのものだったら話すよ」


 まあいいか。彼女にもいろいろあるんだろうし。


 「分かりました。じゃあそうなった時は教えてください」


 「大変物分かりがよろしい。じゃあ早速始めよう。この注射を打たせてもらうよ」


 そう言って懐から、毒々しい色の液体が入った注射器を取りだした。


 「ちょい待ち、そういう人体実験?」


 「ん?毒を打ったらスキルを発動してくれ。それで毒が消えたのを確認したら、もう一度毒を打ってスキル中に効果が出るか確かめよう」


 「……分かりました」


 確かめるにはそうするのが手っ取り早いだろうが、さすがにいきなり注射はビビるわ。配信の俺はあくまで作ってるんだからな?


 「あと、そうだ。この実験は中身を変えて何回も繰り返すから、かなり時間を持て余すことになる。だからせめて、スキルを使って状態異常を直せたら、残りの時間は私と模擬戦をしよう」


 マジで言ってるのか?

 

 切裂姫の戦いを間近で見ることができるなんて最高じゃんか。


 「君はセンスで戦っているから、指導をしたりはしないよ。私との戦いで何か得るものがあれば嬉しいな」


 ───プスッ。


 おい、いきなり刺すなよ。


 腕の血管からすごい勢いで肩口まで迫る。もう腕の感覚がない。どれだけやばい毒を打ったんだ?


 「あっ、早くしないと」


 「【高揚(ハイボルテージ)】!!」


 あっぶねー!!


 何とか間に合ったし、腕の感覚も戻った。どす黒く変色したはずの血の色も、元に戻っている。


 急に刺してくるから頭が上手く回らなかったわ。せめてなんか一声かけてくれ。


 ───プスッ。


 「おー!スキル中に毒を打ったら完全に効かないね。打った後の毒はどこに消えたんだろうね?処理すること自体危険な薬品を君に飲ませたら、無限に消えるのかな?後で毒を飲んでみようか」


 この人はまともな人間だと思ってたけど、やっぱS級はS級なんだな。イカれた人間ばかりだっていう、S級探索者に対する世間の総評は間違ってない。


 「じゃあ模擬戦を始めようか。私が攻撃を食らうことはないから、安心して全力で来るといい」


 「はい、お願いします」


 遠慮しないように挑発したのかもしれないけど、俺の攻撃を食らう程度ならS級なんて言われてるわけないだろ。


 手加減なんかしたら逆に失礼だ。


 ハナから本気でいかせてもらいます。

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