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港区の狂戦士、剛田力一  作者: つなまぐろ
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[初配信]夜露死苦。探索者デビュー/剛田力一 ②

 すれ違う探索者たちから好奇の視線を向けられながら、ひたすら進んでいく。周りはアーマーやらなんやら着ているってのに特服だもんな。


 “そういえば釘バットは?”


「あー、あれ邪魔だわ。捨てた。」


 漢といえばリーゼント、リーゼントといえば釘バットというノリで持ってきた。だが使ってみれば、釘は抜けるわ大して効かないわで目くらまし程度にしか使えないんだよな。


 せっかく釘を買って、いい感じの位置に合わせたってのに。てか、釘をバットに刺しても相手に当たるのは平べったい側だよな?釘を刺す意味ってあるのか?


 ……やめよう。ロマンに意味なんか要らねぇのよ。


 あっ、犬。


 "グレーウルフやな"

 "うちの犬の方がでかいな"

 

「それなんて犬種だ?」

 

 角を曲がったら、目の前にいた灰色の犬と目が合った。


 「───ッ!!」


 「ごめんな、犬じゃなくて狼だったな」


 しばらく見つめ合っていたんだが、急に噛み付いてきやがった。


 軽々と避けれたのは、ステータスによる身体強化のおかげだろう。特に動体視力がとんでもないくらい上がっている。


 続けざまにグレーウルフは飛びかかってくるが、その軌道を見極め迎え撃つ。


 口を開き飛びついてきたタイミングで下顎から真上に蹴り上げると、鈍い衝撃音とともにグレーウルフの身体が宙に浮く。


 そんなに腹を見せてくれるってことは、殴っても文句言うなよ。


 グレーウルフの腹に拳を打ち込み、身体をくの字に変形させる。そのまま弾かれるように吹き飛び、地を転がりながら壁に衝突した。


 「やったか?」


 "やれてなさそーw"

 "わざと言っとるやろ"


 結構いい感じに決まったと思ったが、仕留めきれなかったか。でも白目を剥いて痙攣してんだよな。やるなら今のうちか。


 無防備なやつに攻撃するのは本意じゃないが、不意打ちって訳でもないしな。

 

 グレーウルフが立ち上がる前に距離を詰め、倒れたままの身体に容赦なくサッカーボールキックを叩き込む。


 "えげつねぇ……"

 "痛そう"

 "痛いじゃすまなくて草"

 

 ミシミシと骨の軋む音が鳴り、回転しながら吹き飛んでいく。それを追いかけ、念の為にもう1発。


 グレーウルフの身体は今度こそ力を失い、ダンジョンに消えていった。


 「気持ちいい……」


 "漢やなくてサイコパスやん"

 "なんかお腹痛くなってきた…"

 

 本気で殴ったり蹴ったりできることなんて今までなかったから最高の気分だ。レベル1でこれくらいのことができるんだったら、もう少し下に降りてもいいだろ。


 「これ、3階層行っていいよな?」


 “ええと思う”

 “3階層からは何匹かで固まって行動する魔物がでるから気をつけて”


 多対一か、面白そうだ。


 探索者なんだから一方的な戦いばかりでなく、血湧き肉躍る戦いってのもしてみたい。こんな序盤じゃさすがに無理だろうが、少しは楽しませてくれよ?


 そんなこんなで、テキトーにゴブリンを倒しながら先へ進む。




 「なんか広くなったな?」


 3階層に足を踏み入れると、天井が高くなり通路の幅も広がっていた。窮屈感がなくなって、さっきよりストレスなく戦えそうだ。


 "集団で出てくる魔物がいるから広くなったらしいで"

 "ほーん"

 

 それが本当なら、魔物に合わせてダンジョンが変化してるってことか?


 ……。


 だからなんだって話だな。どうでもいいや。


 ぶらぶらほっつき歩いていると、前方に魔物の群れっぽいものがいた。


 グレーウルフとゴブが二匹。一匹なんか背負って……弓か?

 

 てことはゴブリンアーチャーか。まあ、弓を使うと言っても所詮ゴブリン。たかが知れてる。


 ───パンッ!!


 手を叩いてビビらせようと思ったら、こいつら全員ビクついてんの。


 そんなことをしてたら当然、魔物たちの視線が一斉にこちらへ集まる。どことなく怒りを含んでいるような気もするが置いておこう。


 でもってグレーウルフは今にも飛びかかってきそうなんだが、ゴブリ……弓ゴブが矢を番えるのを待っているのかギリギリ踏みとどまっている。


 同じ種族で協力する魔物なら結構いると思うが、違う種族とでも協力することとかあるんだな。


 特に意味の無い考察をしていると、弓ゴブがいきなり矢を放ってきた。


 「おっと、速いな」


 顔を軽く横に振って、脳天を狙った矢を避ける。狙いがバレバレすぎてなんの脅威にもならない。


 それに続くようにしてグレーウルフが飛びかかってきたが、身体が地に着くほど姿勢を低くして回避。すれ違いざまに後ろ脚を掴み、勢いを利用して弓ゴブへと投げつける。


 次の矢を準備していた弓ゴブは、避ける間もなくグレーウルフ諸共吹き飛んでいく。そんな二匹を横目に残るゴブリンへ接近するが、呆気にとられていたのか全く反応できていない。


 「そんなにぼーっとしてていいのか?」

 

 前傾姿勢で頭を掴み、飛び膝蹴りを決める。骨の砕ける感覚が膝に伝わり、ゴブリンは崩れ落ちて消滅した。


 "gkbr……"

 "ゴブリン目線どんなもんか気になるな"


 この間にグレーウルフが体勢を立て直したのか、視界の隅で再び動き出したのを感じた。


 しかしまあ、獣というかなんというか。これまでと同じように、飛びついてからの噛み付き。魔物同士で協力することができるのに、なんて可哀想なおつむなこと。


 ドンピシャなタイミングで、鼻先へ拳を叩き込む。


 メキョッと嫌な音をたてて飛びつきを弾くと、地面に転がり悶絶するグレーウルフに踵を振り下ろす。犬って鼻先が弱点のくせに、そこを相手に一番近づけないと攻撃できないってなんかアレだな。


 とうとう残るは弓ゴブのみなんだが……

 

 弓ゴブが放った矢を避けると全速力で接近し、顔面にトーキックをかますとそれだけで終わってしまった。


 初心者は弓ゴブと狼の連携に気をつけろと掲示板に書いてあったが、弓ゴブ弱すぎるだろ。グレーウルフは俺の攻撃に数発耐えられるだけの耐久があるってのに。


 "余裕すぎるww"

 "もう一個下の階行こーや"


 「ん、お?」


 コメに反応しようとしたら奇妙な感覚が流れ込んできた。これは絶対にアレだろ。

  

 「ステータス」


─────────

名前:剛田 力一

レベル:2←1

体力:143/143←130/130

魔力:4/4

攻撃:18←12

敏捷:13←8

耐久:14←10

器用:10←7

知力:8←5

スキル:【高揚(ハイボルテージ)

─────────


 やはりレベルアップだったか。


 こんなご丁寧にウィンドウを出してくれるってのに、経験値の欄はないんだよな。レベルが上がるまでにゴブリンを5匹とグレーウルフを2頭倒しているが、まあ順当って感じか?


 どれどれ、攻撃が6も上がってんのか。なかなかいい感じじゃねーの。

 

 ステータスはレベルが1上がるまでの行動を元に増えるわけなんだが、一方的に攻撃してたから6も増えたんだろうな。逆に魔力は使ってないから増えてないが。


 一般的にステータスが一つでも5上がれば上出来らしいんだが、それ以上は極端に伸びにくくなるそうな。例外だと特定の役割に特化した人間、例えばタンクや魔法使いだったりが6や7伸びることがあるとは聞く。


 まあ俺は攻めも守りも一人でやるし、ソロだから全体的に伸びやすいんだろうな。S級探索者って言われるやつらも軒並みソロだし間違ってないだろ。


 こうやって見るとパーティー組んでるヤツらはしょうもないよな。全部自分でできた方がかっこいいに決まってんのに。


 ちなみに体力に関しては肉体のスペックを元に初期値が決まり、それに合わせて増えていく感じだ。筋トレの成果はここにしかでないくせに、割と誤差なんだよな……。

 

 “おーい”

 “急に固まってどうしたん”


 「あぁ、すまん。初めてのレベルアップに戸惑っていた」


 “レベル1でさっきの強さか…”

 “嫌ならええんやけどステータスどんなもんなん?”


 「詳細は言わねーが、戦闘見てだいたい察してくれ」


 起きない方がいいんだが、もし対人戦になった時にステータスを知ってるのと知らないのじゃ大きな差だからな。

 

 ふとスマホを見ると、同接が僅かに増えている。


 視聴者さんを飽きさせないようにさっさと先に進もう。この階層とはおさらばだな。 

チャンネル登録者数:4 高評価数:3 視聴者:13



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