[第4回]行けるとこまで/剛田力一 ③
「なあ、イレギュラーってこんな頻繁に起こるもんなのか?」
"そんなはずないけど"
"最近イレギュラーまじで多いらしいぞ"
"にしてもこれはエグイな"
"ネタバレになるけど40から43階層の何処かやで"
19階層を抜け、階段から見た光景は20階層の砂漠に間違いなかった。
しかし20階層に脚を踏み入れた瞬間、目の前の景色が切り替わり、溶岩地帯へと足を踏み入れていた。階段を戻っても溶岩地帯が続いていて、視聴者曰く40から43階層のどこかに転移してしまったらしい。
40階層といえば推奨レベルは55にもなる。教会に連絡をして救助を待つべきだが、そんなものは面白くない。
「ここの階層にはよ、格上しかいないってことだよな?」
"まさか"
"やっぱニキならそうするよね"
"下克上じゃー!"
階段を上がり、転移地点から1階層上を探索する。戦いながら上層を目指すことにしたが、どれだけレベルを上げられるかが楽しみだ。
とはいえ、問題もある。
「強すぎるなこいつ!」
ロックゴーレムにマグマが混ざっただけの見た目をした、マグマゴーレムに苦戦していた。5メートルはあるだろう。
ゴーレムは凄まじい攻撃力を持つ代わりに、敏捷が遅い魔物だ。
だがさすが40階層。敏捷が弱点のはずなのだが、俺と大差ない。攻撃に関しては言うまでもない。
しかしだ、俺にも競い合える部分があるってことだ。ゴーレムは他の魔物と比べて偏りが激しい分、俺が倒せる確率として1番高い魔物かもしれない。
"いや、普通戦わないんだわ"
"多分15階層の階層主と似たような強さだぞ?"
"簡易結界効かないからハイボルテージは使うなよ"
言われなくても分かっとるわ。
それにしても、隙がないとコアに攻撃を入れらんねぇな。パンチは避けるとして、両腕のぶん回しの時に行くしかねぇか。そこでしか両手が塞がらねぇ。
避けて、避けて───
「ここだろっ!!」
回転する腕の間を通り抜け、胸元のコアに一発叩き込む。
硬化させた拳は、金属が削れたような音をして弾かれた。だが、コアには僅かに傷が入っている。
"傷できてる!"
"これ勝てるぞ"
"ホント楽しそうだな"
柔らかいもんだな。意外といけそうな気がしてきた。
連撃はさすがに諦め、距離を取ろうとしたところでゴーレムが予想外の行動を取る。
「おいおい、マジかよ……」
上半身が丸ごと回転し、ぶん回している腕が迫ってきた。
ちょうど距離を取ろうと空中にいた俺に避けるすべなどなく───
「【高揚】っ!!……ぶべっ」
思い切り地面に叩きつけられた。
感覚的に身体の骨がバキバキに逝ったのは間違いないが、痛すぎて気絶できねぇ。よかった。
間違いなく、次受けたら死ぬわ。
てか、もう目の前にあるじゃねぇか。
「あ”ッふ”ね”ぇ…」
何とか気力で避けたが限界だ…。
回復しねぇと。
回復ポーションは……なんで割れてねぇんだ?いや、そんな場合じゃないんだった。
もう全部一気でいいや。
あ?回復しねぇ…?
待て、何秒経った?
【高揚】を使ったんだ、回復なんか効かねぇ。倒さないと本当に死ぬ。
「──────ッ!!」
俺の脚、1回だけ耐えてくれよ。
「ぶっ飛べ───ッ!!」
地面を蹴り、身体をコアまで一直線に弾き飛ばす。脚がプラップラだ。
勝っても低級ポーションじゃ治らねぇな!ハッハッハッ!
……?
何止まってるんだ、ゴーレムさんよ。
俺がもう動けないと思ったか?ゴーレムのくせに想定外のことに驚いてんのか?
だいぶ生き物らしい考えじゃねぇか。
コアを守らなくていいのなら、最初から抵抗なんてすんじゃねぇよ!!
───パキッ。
あっ、力が入らねぇ。
ゴーレムは…倒せてるな。
ダメだ、意識が…。
「ちょっと失礼するよ」
あ?誰だ…?
「会うのは初めてだね、リーゼントニキ。いや、力一君。」
"誰"
"リスナーか?"
"マジで助けてくれ!"
「もちろん助けるよ。そのために来たんだからね」
女…か?
「10分後、回復してあげるから今は眠っているといい」
その顔、見覚えが…。
───トンッ。
「どうだい、首にトンッてするやつ。上手だろう?」
「なんであんたがここにいるんだ」
「開口一番がそれかい?」
滅多な事じゃメディアに出てこないあんたが、俺を助けて配信に映っているんだぞ。仕方ないだろ。
「あー、悪い。助けてくれてありがとな」
「どういたしまして」
「なんでここに切裂姫がいるんだ?」
切裂姫、若手を代表するS級探索者の1人だ。
赤を基調とした着物に身を包み、真っ赤な妖刀を腰に差している。どんなに硬い魔物も、魔法も、全てを切り裂くその強さと、人形のような容姿から切裂姫と呼ばれている。
「ふふっ、ネタ禁ネキって呼んでくれてもいいんだよ?」
「え…、ネタ禁ネキ?いつも配信見てくれてありがとう」
「こちらこそ、いつも楽しませてもらっているよ」
"ネタ禁ネキが切裂姫ってま?"
"さっき使ったの上級ポーションですよね…1000万"
"は?なんでネキがこんな美人なんだよ。ニキ、そこ代われよ"
"これニュースなるやろ"
ネタ禁ネキが強い探索者だとは思ってたが、まさかS級とはな。
「同時接続3000人超えたんだが」
「気にしないでいいよ。どうせみんな君の虜になるさ」
えぇ、最近のネキちょっと怖いわ。
いやー、ここからどうしようか。切裂姫は全然メディアに出ないし、配信閉じた方がいいのかね?
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