[第4回]行けるとこまで/剛田力一 ①
"きちゃー!"
"おはよう"
"SNSで告知してくれんのありがたいわ"
「朝っぱらからよく来てくれたな」
今は朝の6時なんだが、よくもまあ集まってくれるもんだ。
本当は15階層のボスを倒すのが目標だったんだが、モチベが高すぎて行けるとこまで行くことにしたんだわ。だからこんな朝早くからの配信になっちまった。
「ラージボアの時は攻撃手段がなかったから時間かかったけどよ、基本長くても数分で戦闘が終わるわけよ。15階層までじゃすぐに配信が終わっちまう」
"ってことはつまり?"
"どこまでいくのよ"
「文字通り行けるところまで行くつもりだ」
"長時間配信確定やな"
"魔力ポーション何個持ってきたん?"
"階層が下になるほど動けない10分間は怖いな"
そう、それが問題なんだ。だからしっかり準備してきたわけで。
「魔力ポーションは中級を2本と低級を2本、回復ポーションは低級を3本だな。」
おかげでポーチがミチミチ言ってら。
「それと、これだ。簡易魔物避け結界。」
"ファーww"
"お前それ高いだろ"
"1個300万くらいするだろそれ"
そう、これ1つで300万するらしい。
ピンポン玉みたいな形で、地面に投げつけると半径3メートルくらいの魔物避け結界を展開する。30階層くらいまでの魔物には効果があるらしい。
休憩用で使われることが多いから1時間持つんだが、俺は10分だけしか使わないしもったいないな。
「母ちゃんが配信見てたみたいでな…。動けない間に殺されたら恥ずかしいって言われて、分けてくれたんだよ」
"母ちゃん探索者なん?"
"結構強い感じ?"
「B級つってたな。ストレスを発散しにダンジョンに行く変人なんだよ」
"だいぶ強くて草"
"B級なら簡易結界買う金はあるわなw"
てか、殺されたら恥ずかしいってなんだよ。昔からなんでもやってみろ精神だったけど、少しぐらい息子の心配した方がいいんじゃね?
まあ一旦それは置いておくか。
「そういうわけで、だ。3回は安全に【高揚】を使えるってことで、早速階層主を倒しに行きますか」
"んで、ここどこ?"
"めっちゃビーチじゃん"
"ここって15階層?"
そう、今いる場所は既に15階層。
今日は階層主を倒す配信だから、間の階層はすっ飛ばしてきたんだよ。
「弱い魔物とやり合ってても面白くないんだ。15階層からでもいいだろ?」
"えぇー"
"最高やで"
"じれったいの嫌いだからありがたいわ"
"もちろんだよ"
"漢といえば海だな…"
"楽しそうな君を見たいからね"
海岸線に沿って進んでいく。
11階層から一気にここまで来たから、レベルが少し足りていない。普通より盛られたステータスも、ここの魔物を一撃で倒すことはできない。
「かってぇな、こいつら」
カニと蛇が混ざったような魔物に拳を入れて10発目。ようやく殻が割れ、中身を打ち抜くことができた。
防御力の高いモブだとは思うが、相当な硬さをしている。階層主もこのタイプだとしたら、それなりに厄介だろうな。
「てか、今は平日の朝6時過ぎな訳だが、この配信見てる人は休みなのか?」
"通勤中だよー"
"今から寝る"
"ワイは年中休みやな"
"↑だからいつもいるのか"
"君が配信をするから休みになったよ"
いつも来てくれてるエセ関西弁の人はニートだったのか。それにしても、どうしてここまでネタ禁ネキから好かれているんだ?
「他の配信者がたくさんいる中で、どうして俺の配信を見に来てくれるんだ?」
"いっ、言わせんなよ恥ずかしい///"
"同じ漢を目指すもの同士"
"君は強くなるから"
"強ぇやつの戦い方なんだよリーゼントニキは"
"一応言うけどニキのスキルぶっ壊れてるからな?"
ふむ、なるほど。
「…なんだ?」
ふと、足元が動いたように感じた。
地震とは明らかに違うその感覚は、どこか自然のものとは思えない。見た目に変化はないが、何かが地中にいる。
───ドゴォオオオオンッ!!
少しずつこちらに近づいて来たと思ったら、いきなり加速して地中から飛び出してきた。
白く細長い身体で、その先端部分には全てを飲み込むかのような口がついている。長さは10メートルはあるだろう。
「これまた気持ち悪いのが来たな。コイツが階層主で間違いないか?」
"きっしょ!"
"ワームってデカいとこんなにキモイのか"
"昨日釣り針につけてたわそいつ"
"グラインドワームだね。名前の通りだよ"
よく見たら口から身体の奥まで、歯がびっしりと詰まっている。うわ、尻だと思ってた方にも口が付いてやがる。
どんな生態かは知らんが、身体全体が口と言ってもいいんじゃないか?
そうこうしている間に、グラインドワームは再び地中に潜る。少し地面が揺れたと思いきや、すぐに地上へ上がって来た。
「遠距離攻撃があんのかよ」
2つの口を地中から出すと、口から土の塊を飛ばしてくる。それを躱して直ぐに距離を詰めるが、その時には既に逃げられていた。
"戦いづらそうやな"
"グラインドって英語ですり潰すって意味らしいな"
"地中から出てきたタイミングを狙うのが良さそうだね"
【高揚】を使うにしても、地中に逃げられないようにしてからだな。
さて、どうするか。
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