[第3回]漢は黙って金策/剛田力一 ①
「漢は黙って金稼ぎ!」
"1日ぶりやでー"
"どしたw"
配信待機部屋ってのを作ってみたけどいい感じだな。最初から10人くらい来てくれている。
「どしたも何も、金がなくなっちまったよ……」
"ポーションガンガン使ってたしな。"
"トカゲなんちゃらの魔石はいくらやったん?"
「4万」
"安すぎじゃない?"
"10階層の階層主が4万円とか……"
そうなんだよ。中層に行けるようになってからじゃないと安定した稼ぎにはならんのよ。ちなみに21階層から40階層の間が中層だ。
「でもって、リザード・ブッチャーのドロップアイテムは最低でも30万はするらしいな」
"夢があるなー"
"それにはドロップガチャできる実力が必要なわけで…"
"君なら大丈夫だと思うけどね"
レベルアップした今なら、感覚的に【硬化】と【連撃】でいい感じに戦えると思うけどな。
てなわけで10階層に行きましょか。
9階層は遺跡ではなくなったものの、8階層の雰囲気を引き継いだのか墓地のようなエリアだった。
ぶらぶらと探索をしてもよかったんだけど、どうせゴースト系の魔物が出てきて、どうしようもなくなるだろうから最短距離で突っ切った。
でもって、やってきました10階層。
全体的にジャングルのようになっていて、幅が2メートル程の小川が点々としている。
槍を使うリザード・ブッチャーに合わせたのか、木の間隔が不自然に空いている。おかげで歩きやすくて助かるけどな。
"そういえば一昨日のやつ掲示板で話題になってたぞ"
「リザード・ブッチャーのことか?」
"そうそう"
"それみたわw"
やっぱりそうか。最近は一昨日みたいに階層主が違う階層で現れたり、異常なまでに魔物が大量発生したりと不穏な話題が多いからな。
もしかして、今視聴者100人超えてるのってそのせいか?
「もし一昨日の話題で来てくれているなら悪いんだが、金策回だからつまらないぞ?」
"リーゼントニキを見に来ただけだから"
"将来有望な若手を見るのはオモロいから気にすんな"
"君の配信は面白いよ、自信を持って"
ネタ禁ニキが言うならまぁいいか。てかリーゼントニキって分かりやすくていいな。
「今リーゼントニキって言った人、天才。今度からそう呼んでくれ」
"うおおおおお"
"剛田ってなんか呼びにくかったんだよ!!"
"リーゼントニキを知らなかったってことは掲示板の内容知らない?"
"チャンネル名にリーゼントニキも追加しようぜw"
"漢だ…"
剛田って呼びにくかったから、みんな君とかお前とか言ってたのか。今度リーゼントニキでエゴサでもしちゃおうかな。
内心浮かれながら、バカでかいダンゴムシや鎌のような足を持つ蜘蛛を倒していく。
ここの階層の適正レベルは、パーティーが前提条件だが13レベだ。一応適正レベルだが、攻撃が上振れすぎているからか難なく倒すことができてしまう。
やっぱり物足りないんだよな。
"リーゼントニキさ、俺らのギルドに入らない?"
お、ギルドのお誘いですか。
嬉しいけど自由に動き回りたいから向いてないと思うんだよな。それに今は配信が楽しいしな。
"フロンティアってギルドなんだけど"
"あんまそういう柄じゃないでしょ"
"ってまじ!?"
"TOP5のギルドが勧誘すんのかよ!"
フロンティアはさすがの俺でも知ってるわ。
5年前に創られた比較的新しいギルドで、今一番ノリに乗っているギルドだ。先日の国内ギルド番付で5位にランクインもしていた。
ただ、あまりの成長力に後進の教育が追いついていないのが時折問題にもなっている。
「悪いが俺は1人が気楽でいいんだ。他を当たってくれ」
"じゃなきゃソロでやってないよな笑"
"一生糞雑魚配信者でもやってろボケ"
"きちゃーww"
"さすフロw"
こんな感じで後進がダメダメなんだよ。創設組のメンバーは凄い人ばかりなんだけどな。
おっと、なんかでっかいやつの気配が───ビンゴだ。
「やっと見つけたぜ階層主」
こいつを倒したらまたどこかに湧くから、探さないといけない。それをするには怪我をしないで倒さないといけないんだけどさ。
リザード・ブッチャーは槍を片手にこちらに突っ込んでくる。
「【硬化】」
その勢いのまま槍をしならせ、下から胴を狙ってくる。しっかりと見極め弾き返すが、あまりの勢いにこちらも少し吹き飛ばされる。
さすがに階層主は強いな。連撃を継続させるのは必須だなこりゃ。
すぐに迫ってきたリザード・ブッチャーの攻撃を躱し、軽いパンチを当てる。吹き飛ばされないよう攻撃を受け流し、顔面を蹴り上げる。
攻撃を続けること約3分。
そろそろだと思い腰を入れて拳を打ち込むと、鈍い音が響き鱗が欠けた。
リザード・ブッチャーはいきなり威力を増した攻撃に驚いたのか、一旦距離を取ろうとする。そんなことはさせないと、尻尾を掴んで離さない。
「ぜってぇ逃がさねぇよ」
"……(尊)"
"ネタ禁さん、堂々としてきたな"
"気持ちは分かるw"
"戦いの時は漢だもんな"
"声が良いのも悪いww"
その後も、避けては殴るを繰り返しているうちに倒すことができた。
ドロップアイテムは……ないか。魔石だけじゃそんなになんだよな。
それに周回も少し怪しいかもしれない。
弱攻撃をしてる間は【硬化】を使わないで殴ってたんだが、時折危ない攻撃もあって結局魔力を30も使っちまったな。
「待てよ?レベルアップしないな」
ふと思ったが、レベルアップしないとおかしいんじゃないか?前回こいつを倒して9レベから13レベに上がったのに、今回はレベルが上がらない。
"13から14になるまでの経験値が桁違いなんじゃない?"
"この前のはイレギュラーだから特別強かったのかもしれないね"
"そんなことある?"
"普通じゃないからイレギュラーなんだよ"
"ネタ禁何者?"
ネタ禁ニキ……いやネキか?のおかげで原因が分かったが、本当に何者なんだ。
あれ、前回のリザード・ブッチャーが特別強かったってことは魔石の値段も高かったのか?
もしかしたら4万もしない可能性があるのか…?
……余計なことを考えるのはやめよう。どこかで湧いたリザード・ブッチャーを探しに行こう。
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