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港区の狂戦士、剛田力一  作者: つなまぐろ
12/27

 息抜きも大事

 「ふぁあああ…………。眠い」


 二日連続濃い探索をしたから、だいぶ体が疲れてるみたいだ。こんなにぐっすり眠ったのはいつぶりだろう。


 リーゼントを作るために伸ばした髪を掻きむしる。


 …………。


 早く支度するか……。


 本当は今日一日ダラダラ過ごそうと思っていたんだけど、ポーション代を稼がないとやばいからね。探索者ランクを上げるための採取依頼や納品依頼をやるつもりだ。


 …………。




 二度寝から起きて支度を始める。


 サラダチキンを入れたアボカドとトマトの和え物を食べ、春雨スープを飲み干す。食器は……帰ってからでいいや。


 洗面所で歯を磨き、鏡の前で髪を整える。肩口まである髪を後ろで結び、雑誌の真似をしてオシャレにしてみる。


 部屋に戻ると、黒いランニングウェアに着替え、上からダンジョン用のコートを羽織る。


 本当は防具を着けた方がいいんだけど、特服以外の防具がない。


 ちなみに特服は、50万払って作ってもらった特注品だ。10階層までは通用するって言われたけど、もう作り直すことになるなんて。


 だからそこら辺も合わせて100万はお金を確保しておきたい。


 「終わった……」


 そんなこんなでようやく準備完了だ。

 

 素材を大量に集めるつもりだから、大容量のバックパックを背負う。


 んじゃ行くかー。


 いつか収納袋が手に入ったら楽になるな。

 



 アパートから歩いて約5分。東京タワーのほぼ真下にある、港区探索者協会に到着。この中からダンジョンに入ることができる。


 しかしまあ、豪華な建物なことで。


 15階建てのビルの入口付近は全身ガラス張りで、床は全面大理石。1階から3階までを探索者は自由に行き来でき、それより上は協会の人間のワークスペースだ。


 ここのダンジョンは人気があるとは言えないが、周りに高層ビルやブランドショップがあるため見劣りしないようにしているそうな。


 ちなみに俺のいるアパートも例に漏れず豪華だ。


 無駄に豪華なドアをくぐり、協会に入る。


 正面の電光掲示板を見ると、今日の入場人数は…284人。休日明けだからか、少し少なめだ。日曜日の昨日は400人近くいたはず。


 「どっこいしょ……と」


 ロビーに置かれたソファに深く腰をかけ、港区探索者協会の依頼アプリを起動させる。


 俺は探索者になりたてでG級と、最低ランクだ。依頼アプリは自身のランクに合った依頼が優先して表示されるため、4階層の薬草やゴブリンのドロップアイテムなど、物足りないものばかりだ。


 まあ、今日は採取に興味があるからやってみるだけだしな。


 テキトーに薬草やキノコ、果実などの納品依頼を受注しておく。別に探索が終わってからでも受注はできるけど、目標があった方がやりやすい。


 とりあえずこんなもんでいいか。


 ソファから腰を上げ、地下に降りるとダンジョンの入口へと向かう。


 地下1階に着くと、そこは砦のような見た目の何重にもなる防衛機構が設置されている。その最奥に、ゲートと呼ばれる時空の歪み、すなわちダンジョンの入口がある。


 スタンピードが起きた際に都市部だと甚大な被害が予想されるため、ここのダンジョンは何重にもなる防衛機構の奥にあるらしい。防衛機構の方が後付けなんだけど。

 

 受付の横にある機械に探索者ライセンスをタッチして入場したことを記録する。


 それから防衛機構の中を通り、ゲートの中に入る。


 ちなみに受付にいるお姉さんは、Cランク以上の探索者だ。ダンジョンの受付係は、有事の際に備えて地下に配置されている文武両道のエリートらしい。




 チュートリアル階層と何もない3階層は無視して駆け抜け、4階層に到着した。


 途中でいくつかのパーティーとすれ違ったが、奇異なものを見る視線を感じなかった。昨日とは大違いだ。


 さて、薬草は100g辺り500円。キノコや果実はものによって変動する……と。


 よく分からないから手当り次第回収していくか。




 いや、バックパックがパンッパンよ。


 2時間ほどすると、大容量のバックパックがいっぱいになっていた。

 

 薬草は群生しているから比較的集めやすかった。5kgくらいは集まったんじゃないかな。


 一方でキノコは集めるのをやめた。ダンジョン産のキノコは傘が大きいものばかりで、リュックがかさばるからだ。


 その分果実を多く集めることにしたのだが、果実の近くには決まってゴブリンやグレーウルフが群がっていた。


 ゴブリンの臭いが服につかないよう、遠距離から石を投げて倒すのが少し大変だった。飛ぶ斬撃みたいな、遠距離攻撃の手札を手に入れないとダメかもな。


 そんな感じで、元々の依頼品と弱い魔物たちの魔石が集まった。ついでにゴブリンの眼球がドロップした。気色悪い。




 ダンジョンを出て、協会の地下1階にある換金装置で今回の成果をスキャン。すると、自動的に依頼の品は納品され、換金額と依頼報酬がまとめて表示された。


 8,023円。


 もう採取依頼はやらなくていいや。


 昨日のリザード・ブッチャーの魔石が1つ4万円くらいしたから馬鹿馬鹿しくなってくるわ。


 昼だし何か買って家に帰ろうかと思っていると、スマホに通知が届く。ランクアップ通知だそうだ。受付でライセンスカードの更新をしてくださいとな。


 一定の評価が溜まるとランクアップするそうだが、早すぎるな。昨日のリザード・ブッチャー討伐がかなり大きかったのだろう。


 仕方ない、行くか。


 1階に戻り、ランク更新窓口へ向かう。


 「すいません、ランクの更新をしたいんですけど」


 「はい、では探索者ライセンスを拝見させていただきます」


 こっちは爽やかなお兄さんだった。お兄さんは俺のライセンスカードを受け取ると、機械に通し何やらパソコンをカチャカチャ。


 「ランクアップおめでとうございます。こちらをお受け取りください」


 「ありがとうございます」


 あっという間だったな。まあこんなもんか。


 今度こそ帰ろう。旬がすぎる前にアジでも食べたいな。なめろう出汁茶漬けがいいや。

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