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それぞれの戦場 その2

 ロケット・ブースターを切り離した《アードラー》が敵陣に殺到し、それぞれ手にしたアサルト・ライフルを放った。

 40mm徹甲弾の嵐が敵陣をズタボロに打ち砕いていく。

 迎撃を振り切り、一筋の流星のように敵陣を貫いていった《アードラー》はぐるりと反転、陣形から漏れた敵機を襲う。


 第2世代機でありながら第1世代の特徴である重装甲を色濃く受け継いだ《アードラー》の得意とする戦術であった。

『ドッグファイトはするな!自分のペースを守れっ!』

 第7小隊の隊長(トレッフ25)の叫びが響き、再び徹甲弾の嵐が敵陣に降り注いだ、嵐に巻かれた機体が墜落する。


 こうなれば戦場は《アードラー》の独壇場だ。敵部隊はもはや無用の長物となったブースターをつけなければ回避すらままならない。

 敵の指揮官もこれに気づいたのだろう。敵陣中心にいた部隊の4機がブースターを切り離し、3度目の攻撃に入ろうとした《アードラー》の迎撃に入った。


『迎撃機は抑える!お前たちは先に行け!』

 敵の指揮官の声が響いた。

 ペパーティア・システムを持たない首無し旅団は、長距離、広範囲の通信を行うことができず、一度に大勢に指示を出すためには敵に気付かれること前提でスピーカーを用いなければいけないのだ。


「第8、第9小隊!これから来るぞ!準備を!」

 レンカは敵から得た情報をペパーティア・システム経由で基地に伝えながら、第7小隊の《アードラーと合流する。

「トレッフ1から第7小隊各機!陣形に囲い込まれるな!楔形陣形(アローヘッド)で端から削り落とせ!」

『敵機は《アードラー》、情報通りだ! 乱戦に持ち込んで、各個撃破だ!味方の背後を支えているという自覚を忘れるな!』


 両部隊の指揮官が叫び、互いに楔形陣形(アローヘッド)で相対する。そしてそのままま吶喊し、発砲。

『散開!端から切り込め!』

「単機でやろうとするな、2機編隊で飛べ!フリーな機体は周囲を見ろ!」


 両指揮官の指示に従い、それぞれの部隊が3回する。レンカの部隊は2機編隊が2つ、単騎が一つ。敵の部隊は全機ばらばら、左右上下の四方向。

 レンカは指揮官機と思わしき《ストリージ》の振るう長剣を回避し、包囲の外側に抜けた。

 第7小隊の面々も、前後衛に別れてそれぞれ敵機の攻撃を捌いている。


『トレッフ27、背後に回れっ!』

 2機編隊のうちのひとつ、前衛を務めていたパイロットがそう叫んだ。同時に発砲。

 徹甲榴弾《APHE》が《ストリージ》の盾を吹き飛ばし、爆風を煙幕にして背後に回った後衛も発砲。徹甲弾で装甲を穴だらけにし、撃墜。


『やった……撃墜だ!』

 レンカ機のコックピットに、まだ若さの残る声が入ってきた。トレッフ27はトリエラ達学徒動員組を除けば最年少のパイロットだった。

『……やれます!次は俺が前衛やります!バックアップを!』

『おい、待て……』


 突出したトレッフ27を追うようにして、先程まで前衛を務めていた壮年のパイロットが飛んだ。

 トレッフ27が敵機の周りを旋回しながら弾丸を浴びせ、ガラ空きの背後を徹甲榴弾(APHE)で吹き飛ばす。


『やれる……!俺だって一人前のパイロットなんだ……』

『——!トレッフ27、28!飛べッ!』

 敵の包囲を抜けて、レンカの元へ合流したトレッフ25(小隊長)が叫んだ。

 若者ゆえの反射だろうか、トレッフ27は即座にジャンプ。高度を取る。


 トレッフ27が若さで動いたとするならば、トレッフ28は経験で動いた。

 身に迫る危険を、咄嗟に見ようとしたのだ。次の適切な行動に繋げるために。

 しかし、その一瞬が命取りとなった。


 ライフルを捨て、一瞬で距離を詰めた指揮官機が、両手で握った長剣を振り下ろす。

 今まさに振り下ろされんとしている刃を見たのだろう。モニターの端に映るトレッフ28の目が大きく見開かれた。直後、


 モニターに映るトレッフ28の姿が赤黒い何かに変化し、消えた。

『トレッフ28、シグナルロスト!』

『あぁっ……うぉぉォッ!』

 ペパーティア・システムからの報告を受けたトレッフ27が絶叫し、敵指揮官機に突撃。両手に持ったアサルト・ライフルを斉射した。


 敵指揮官機は、左右への巧みな足捌きでそれを回避し、ゆっくりと長剣を振り上げていく。

『待てッ!トレッフ27!』

 トレッフ25(小隊長)の叫びは届かなかった。敵指揮官機は経験のあるパイロットであるレンカ達ですらも見惚れてしまうほどの見事な足捌きでトレッフ27の背後に回り、両手で握った長剣の一振りで胴体を斜めに切り飛ばしたのだ。


『トレッフ27、シグナルロスト!』

 驚きを隠せないコンダクター2の声と共に、モニターの端に映る部隊の面々の姿が消えた。

 仲間がコックピットごと吹き飛ばされる姿を見ないようにという、精一杯の気遣いだった。


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