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再会 その3

 サヤカが部屋に入ってきてからすぐ、フーシャとトリエラが作戦室に入ってきた。

 フーシャはアオイの顔を見て、少し驚いたかのような顔を見せた。しかし、すぐにアステル・アカデミーの時と同じミステリアスな笑みに表情を戻し、アオイに声をかけた。

「お久しぶりです、アオイさん。生きていたのですね」

「うん……。ごめんね、嘘ついて」


「……アオイ、久しぶり。アステルの時は、ありがとう」

 最後に作戦室に入ってきたトリエラはアオイの顔を見て、サヤカと同じように素っ気ない言葉を投げた。

「久しぶり、トリエラ」

 アオイは出来る限り明るい表情を作って、フーシャとトリエラに返事を返した。


 しかし、それ以上言葉を続けることができず、アオイは黙ってしまった。フーシャとトリエラはアオイからさまざまな感情の籠った視線を引き剥がし、作戦室の椅子に座った。


 そして、作戦室の扉が再び開いた。

 入ってきたのは、青い髪の女性だ。手にはいくつかの書類を持っている。

 その女性は作戦室の壁に取り付けられた黒板の前まで移動して、口を開いた。


「初めまして、第69試験小隊の皆さん!!クレートレッフ基地のTD部隊隊長を務めている、レンカ・ウィスタリア大尉です!!これからよろしくお願いしますね!!」

 レンカ、と名乗った女性が大きな声で行った自己紹介は、5人の間に流れていた不穏な空気を蹴散らすのに十分な勢いを持っていた。

 5人は予想していたイメージとは大きくかけ離れた人物像の上司の登場に、つい先ほどまでの素っ気ない雰囲気は何処へやら、互いに顔を見合わせ、夢ではないことを確かめ合っていた。


 全員、所謂いわゆる鬼軍曹を頭に思い浮かべていたため、こんなフレンドリーな女性が出てくるなんて想定していなかった。

 お互いに見合わせた顔は、全員が面白いくらい同じような予想を立てていて、それの予想を見事に裏切られて困惑している顔をしていることの証明にしかならなかった。

 レンカと名乗った女性は凍り付いてしまった5人に気づかぬまま、言葉を続ける。


「……私も新任大尉なので、至らないところはたくさんありますが、仲良くしてくれると嬉しいです!!」

 彼女が大きな声で放った言葉の殆どは、5人の意識に届いていなかった。

「……えっと、皆さん?」

「「「「「……ぉぁっ、えっ……?」」」」」

 レンカは凍り付いてしまった5人にようやく気づいて、心配そうな声を上げた。しかし、5人は金魚や余裕のなくなったアオイのように口をパクパクと動かすだけで、言葉という言葉を放つことは出来なかった。


「……失敗した?昨日『できる上司の声掛け術』を徹夜して読んだのですけど……」

「大尉……?何やってるんですか?」

 レンカ本人も妙なことを小声でつぶやき始めて、あわや部屋中の時間が止まってしまいそうになった時、誰かの声が部屋に響いた。

 部屋に入ってきた声の主は、可愛らしい女の子だ。アオイより少し大きいがそれでもまだ小柄な身長と、肩くらいまでの長さの焦げ茶色の髪が特徴的な女の子だ。


「ごめん、ベルちゃん。ちょっと動揺しちゃって」

 その姿を見て、『ベルちゃん』という愛称を聞いた時、アオイの脳裏に不思議な触感が走った。

 ――なんだろう、これ。なんか、懐かしい感じがする――。

「そのベルちゃんっていうの、やめてくださいって何度も言ったじゃないですか、大尉」

「ごめんごめん、皆言ってるとつい引っ張られちゃってさ。ベルちゃんも自己紹介して」

「……。了解」


 ベルちゃんと呼ばれた少女は、レンカのその言葉にため息交じりに返答を返し、アオイ達に向き直った。

 正面から顔を見た時、アオイの脳裏の感触は強くなり、ベルちゃんの表情も少しだけ、変わった。

「ボクは、クレートレッフ基地第1小隊所属の、ベルナテット・シュテルネン少尉です。ベルって呼んでください。第69試験小隊の皆さん、よろしく、お願いします」


「……あっ」

 彼女の自己紹介を聞いて、アオイとベルナテットがほぼ同時に声を上げた。

 ――わたしは、彼女と一緒に戦ったことがある!

 彼女は5年前、アオイがまだギエレンの隊にいた頃、アオイとペアを組んで戦っていたパイロットだった。


「久しぶり、アオイ」

 アオイより先にそのことに気づいていたのだろうベルナテットは、アオイにそう言葉をかけた。

「……うん。久しぶりだね、ベル。生きててよかった」

 アオイはぶっきらぼうに返した。器用な返答の言葉は、アオイが何回考えても、見つからなかった。

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