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再開

「かつてモリニア最強とも言われた魔剣使いが、まさか本当にこんな小娘とはな……」

 クレートレッフ基地の飾り気のない司令部、《休め》の姿勢をとっているアオイを、さぞ豪華そうなデスクの奥で品定めをするような目で見ている人物がいた。


 大柄な男だった。ウッズマン大佐の大木のような力強さとは違う、格闘家や肉食獣のようなしなやかな印象を感じる男だ。もしかしたら、彼のその印象は、触れたらさぞヤスリのような手応えを与えるであろう髭のせいかもしれない。


「14歳で中尉か……まぁ、構わん。有能なパイロットなら、誰だって歓迎だ。経歴、人種、国籍問わずな……」

「私はクレートレッフ基地の司令官、シンドレッド・ジョーセット大佐だ。君を歓迎しよう。アオイ・モーントシャイン中尉」

「……はっ」


 アオイは彼の言葉に敬礼で返した。

 シンドレッドと名乗った男は、机から一枚の書類を取り出して、アオイに手渡した。配属先として書かれていた部隊の名前は――『第69試験小隊』

「まあいい、お前とお前が持ってきた荷物には、ふさわしい仕事がある。第69試験小隊、本日付でお前はそこに着任し、これからやってくるひよっ子達を引っ張りつつ、《グラニ》とかいう新型のテストをやってもらう」

「……了解です」


 アオイの言葉の後、5秒ほどの沈黙が指令室を満たした。シンドレッドは再びアオイを見つめて、ゆっくりと頷いた。

「……よろしい。では15時に205室に集合しろ。細かいところは現場のTD隊隊長に聞けばわかるだろう」

「はっ」


 シンドレッドは再び机の中を漁り、何かを取り出してそれをアオイに放った。

 アオイはシンドレッドから投げられた個室の鍵をキャッチした後に敬礼し、足元に置いていた荷物を持ち上げて退出した。


――――


 シンドレッドから渡された命令書に記されていた『第69試験小隊』の集合場所は、コンクリートだけで構成された飾り気のない廊下の端にある、人気のない小さな部屋だった。

 作戦室というより、倉庫といったほうがしっくりするくらいの部屋だ。実際、隣の部屋は倉庫だった。扉を開けてみたら沢山の資材の雪崩に迎えられても納得できるくらいには倉庫であった。

 辛うじて倉庫ではないと言えるのは、扉の上に『第69試験小隊』と書かれた紙が貼ってあったからだ。


「本当に大丈夫なの……?」

 アオイはため息をつきながら倉庫……いや、作戦室を眺めていたそんな時、

「そこで何をしてるんですか?通りたいんですけど」

 アオイの背後から聞こえたのは、敬語と乱暴な言葉遣いを合わせて2で割ったような少女の声だった。


 アオイが振る帰るとそこにいたのは、わずかに緑がかった灰色の髪の、若い女性兵士だ。

 アオイは、彼女の来ている軍服に見覚えがあった。下士官や兵卒の着る紺色でも、いまアオイが着ている黒い士官服とも違う、灰色の、胸に紋章の着いた特別な軍服。

 ――アステル・アカデミーの制服。わたしは、彼女を知っている。


 大人びた細い頬の線と、子供らしい緑色の大きな目が同居する、可愛らしい顔の少女は、大きな瞳に剣呑な雰囲気を纏わせて、じっとアオイの顔を見つめていた。

 喉で引っかかっているその名前をどうにか口に出そうと、アオイも彼女の顔をじっと見つめると、向こうが先に口を開いた。


「もしかして、アオイ?……アオイ・モーントシャイン?」

 彼女がアオイの名前を呼んだことで、アオイの喉に引っかかっていた名前がするりと喉を抜けて、自然と言葉になった。

「……エスト、エスト・オルヒデーエ!?どうしてここに!?」

 2人の少女のひっくり返った声が、廊下中にこだました。

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