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裏切り者 その2

『ギエレン!ギエレン・ゴラクロス!最高のイェーガーマイスターとも呼ばれた貴方が、どうしてこんな凶行を!』

 アオイは外部スピーカーをつけ、そう叫んでいた。

『この国と市民のために戦うことこそ、モリニア軍の誇りではなかったか!』

『誇りィ!?そんな役にも金にもならんモンは5年前に捨てたよッ!』


 どがん。と強い衝撃。

 ギエレンはアオイのRG2-63-t(フォーレン)の胴体を蹴りつけ、距離を取り直したのだ。

「うぐっ……」

 アオイはジェットエンジンを軽く噴かし、体勢を立て直そうとする。しかし、ギエレンが踏み込み、銃剣を振り上げた。

「負けるか……!」


 アオイは咄嗟に右手に持った対装甲ナイフを投擲するが、白いTDの銃剣により刃の腹を叩かれ、容易く弾かれる。

『お前にナイフを教えたのは俺だ!そんなのでやれると思ったか?』

『……思ってるよッ!!』

 ギエレンが対装甲ナイフを弾いた僅かな時間を使って、体勢を立て直し、アタッチメントからライフルを取り出した。


 ギエレンの白いTDが振り上げた銃剣が熱を帯び、赤く輝いた。

 ベイルを掲げ、銃剣を受け止める。2メートルにも満たない小型のナイフの持つ、とんでもない熱量により、全長7メートルの装甲板が斜めに溶断される。

 相手に内蔵火器があれば、無防備になった胴体に撃ち込まれて終わり。しかし、そうはいくものか。

 ベイルを使わせたんじゃない。《《使ってやったんだ》》——。


 切り飛ばされたベイルを押し出すことでベイルの上半分を犠牲にしながらも、残りの下半分で相手に体当たりをして、隙をつくる。

「ゥオォッ!」

 アオイは咆哮と共に、斜めに切り飛ばされたベイルのブレードを、銃剣を振り抜き、ガラ空きになった白いTDの右半身に向かって突き出した。

 ギエレンは右腕を振り上げ、ブレードを受ける。ブレードはアサルト・ライフルの機関部を打ち砕いた。


 アオイはアフターバーナーを噴かしながらアサルト・ライフルの銃口を向け、発砲。

 数十発の弾丸はコンクリートを穿ちながら、白いTDに迫る。

 ギエレンはそれを回避し、アフターバーナーを点火。背中のアタッチメントから対装甲ナイフを抜き放ち、アオイを目掛けて飛んだ。


 そして、熾烈な空中戦が始まった。

 距離が詰まったタイミングで、アオイが発砲。外れる。

 互いの機体が交錯するタイミングでギエレンが対装甲ナイフを振る。外れる。

 旋回から交錯までのタイミングでアオイが再び発砲。外れる。

 弾薬も燃料も出し惜しみせずに行われる、贅沢な空中戦。誰かがこれを見ていれば、戦うことすら忘れて見入ってしまうであろう、ある種の美しさがそこにはあった。


 その美しい景色が崩れたのは、9回目の交錯の時だった。

 アオイのRG2-63-t(フォーレン)の持つ、アサルト・ライフルがギエレンの対装甲ナイフにより切断されたのだ。

 燃料の残量が残り少ないことを表すアラートが鳴り響き、アオイは高度を下ろす。


「どうする……?」

 アオイのRG2-63-t(フォーレン)に残っている武器は、左前腕部の内蔵機関砲と、シュヴァルべ・ユニットのアンカー、上半分を切り飛ばされたベイルのブレードだけ。

 機関砲も空中戦の際に牽制に撃ちまくってしまったので、もう50発程度しか弾が残っていない。


 武器として使えるものがないか周囲を見渡した時、あるものがアオイの視界に入った。

 ——あれを使えば、なんとかなるか?

『よそ見してる余裕があるのか、ええ!?』

 上空から飛び込んできたギエレンの対装甲ナイフをベイルで受ける。

 ベイルの向きを変えて、対装甲ナイフを受け流し、ギエレンに向けて機関砲を発砲。残弾を撃ち尽くすが、ギエレンは回避。しかし、それは狙い通りだ。


 アオイはアンカーを打ち出した。狙うはギエレンではなく、《《あるもの》》が突き刺さっているビルの壁。ワイヤーを巻き取る勢いに乗ってビルの屋上に向かって飛び込み、《《あるもの》》を掴む。それを軸にギエレンの白いTDに向き直り、ジェットエンジンを噴かしたシュヴァルべ・ユニットを切り離す。


 大きな弾丸となって飛んだ2つのシュヴァルべ・ユニットをギエレンが対装甲ナイフで落とす間に、アオイは《《あるもの》》——トリエラが撃たれた時に落とした、対装甲ナイフ——を抜いた。

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