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街はずれにて

「メインストリートの砲陣地が壊滅したァ⁉」

 街はずれの補給地点にいたギエレンはその報告に目を丸くした。メインストリート攻略の連中の腕は確かに良いほうではないが、だからといって数で劣るモリニア軍に押し返されるほどのヘボではないはずだ。


「それが、4機のTDによる強襲があったそうで、前衛のTD部隊はほとんど無事であると……」

「前衛が無事なら、大丈夫じゃないですかぁ?」

 新入りの馬鹿さ加減に呆れてしまう。前衛を無視して後方の砲陣地のみを狙う。典型的な|シュツゥルム・イエーガー《吶喊猟兵戦術》の手口ではないか。

 半端な腕では自殺と同義なそれを実行できるほどの腕を持つパイロットと、パイロットの腕を信頼し、危険な道を敢えて選択できる指揮官が居るということだ。


「それにこれ、教習用のRG2-63-t(フォーレン)ですぜ。学生の浅知恵ですよ、あいつらヘボだから、そんなのに引っかかって……」

 隣の新入りを撃ち殺してしまいたいという衝動を、ギエレンは必死になって耐えた。学生が|シュツゥルム・イエーガー《吶喊猟兵戦術》を行ったことの重大さが、いまだ掴めていないのだ。彼の頭が悪いのは今に始まったことではないのだが、腕があるからとこんな奴をTDパイロットにしなければならないこちら側の事情にも、腹が立った。


 ――あいつなら、なんて言うだろうか。

 ふと、ギエレンの脳裏に、自分の知る中で最強のパイロットの顔が思い浮かんだ。TDパイロットになってから2年で10回の|シュツゥルム・イエーガー《吶喊猟兵戦術》を成功させた『魔剣使い』――アオイ・モーントシャインの顔を。

「生きていれば、アステル・アカデミーのガキどもと同じくらいの年か……」

 彼女が居るのなら、あり得ない話ではない。

 彼女がその気になれば、メインストリートの1個中隊を1分足らずで壊滅させることさえできるだろう。


 その時だった。

「ギエレンさん!」

「何だ!」

 駆け寄ってきた通信兵の言葉に思考を遮られ、つい荒く返してしまったギエレンに少し怯えながらも、報告を続けた。

「あっ、済まん。教えてくれ」

「申し上げます!先ほど、B2エリアにモリニアのTDが現れましたぁ!」

「何ぃ⁉︎」

「B2エリアのTD4機、装甲車4台全てを撃破し、大学地区に向かっています!」


 B2エリアは、歩兵と装甲車による偵察を行っており、TDは少数しか配置していなかった。

 しかし、その分優秀な人材揃いであったため、ギエレンにとってもそれらが撃破されたのは想定外だった。


 ――妙だ。

 ギエレンは違和感を感じた。

 優秀な人材揃いの偵察小隊を容易く破れる実力を持つパイロットが、なぜ大学に向かっている?

 大学は今作戦中の目標としての価値は低く、一番近いギエレンの隊すらもほとんど無視してアステル・アカデミーに向かおうとしていたのだ。

 そんな場所に、なぜ。


 そして、ギエレンは一つの答えに辿り着いた。

「そうか、『お宝』は向こうか……」

 ギエレンは上官から『お宝』の確保を命じられていた。部下にも秘密の重要任務だ。

 当初は『お宝』はアステル・アカデミーにあるものと思っていたが、大学に置かれているならそのTDの行動にも説明がつく。


「作戦変更だ!進行目標は大学地区に、偵察隊の仇を取るぞ!」

「大丈夫なんですかい、ギエレンさん。4機をすぐ片付けた奴ですよ?」

 新人が気弱そうな声でそう聞いた。腕が立つとは言っても、所詮はチンピラ上がりなのである。


 そんな彼を安心させる――正確には無理矢理安心させられるような声で、ギエレンは語った。

「その為の第3世代機(こいつ)だろう?」

 ギエレンは自分のTDに手をあてた。まだどの軍隊も採用できていない第3世代TD。

 剥き出しの骨格とコードが異様な雰囲気を醸し出しているその機体。

 『ローシァチ』と名づけられた機体の白い外装を撫でながら、彼は笑った。

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