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環はあの世を駆けめぐる  作者: 春日野霞
第三章 タラリア<翼のブーツ>
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ぐーっ

「……さて、君は夜見環さんだね」


 金の目を環に向ける。一転して、真剣な顔になっていた。


「ケニカが迷惑かけて悪かったよ。なかなか気まぐれなやつでね」

「まあ、もう慣れたっていうか……」

「あの世の神も天使も、ひと癖あるやつが多い。僕も苦労しているから分かるよ」

 ミニソウラスが腕組みしてうなずく。


「第二の町なんか、大変だったでしょう」

「そりゃもう。神様が困ってるような問題を押し付けてくるんですから」

 慈悲をかけて、すんなり武器を貸してくれるかもしれない。環の期待が高まる。


「自殺教唆を第二の町で裁くことになって件ね。もしかして、あれ解決してくれたの君なの?」

 ミニソウラスが身を乗り出す。

「助かったよ。長いこと放置されてて気をもんでいた問題だったからさ。素晴らしいご意見だったよ。まさに僕が求めてた答えって感じ。どうやってああいった答えにたどり着いたんだい?」

 片方の目をキラキラさせている。


「いえ、私は、問題を解決できる人を探しただけです。その人が次の神様になったんですけど……」

「えー。そうなんだ」

 たちまち興味が失せたというように、腰を元の位置に戻す。


「ちなみに、第一の町で犯罪者に殺されかけたっていうのも、誰かに助けてもらったの?」

「はい。天使に……」

「ふうん」

 ソウラスが、隻眼せきがんで環をまじまじと見つめる。


「君さあ、自分では何もしないで武器借りてきたんだね」

「えっ」

「いっつも他人にどうにかしてもらってるじゃない。表情もなんだかぼやーっとしてて、なんとしてでも肉体を取り返す!って情熱を感じないんだよねえ」

「いや、そうですけど、私じゃどうにもならないことでしたし」

「うーん。それと、情熱がないことは関係がないよね」

「で、でも」

「部下の不始末は上司の不始末。ケニカのお詫びに神殿まで連れていってあげようかと思ったけど、覚悟が半端な奴にタラリアは貸せないよ。あ、タラリアっていうのは武器の名前ね」

「私だって、それなりにやってきました!」

「自覚あるじゃん。覚悟が半端だって」

 ソウラスがニヤリと笑う。


「『それなり』って、覚悟決まってる奴が使う言葉じゃないよ」


 手を振って、宙に消えてしまった。


「ぐーっ」

 環はこぶしを握る。


 これまでの頑張りを否定されたようで、悔しい。

 が、思い当たる節はあるのだ。なんだかんだ、誰かの働きのおこぼれで手に入っているところはある。第一の町の事件は最悪だったが、結果としてすんなり武器を貸してもらえたし、第二の町なんかほとんど青田の力だ。


 生き返りたいと、思っている。

 ただ、力が足りない。


 見習いたくはないが、晴山のような行動力はない。青田のように賢くもない。自信があることといったらファッションのことくらいだが、何の役にも立たない。


「どうしよう……」

 環は天井を見上げる。

「ほんと、私たち、どうしたらいいんだろうね」

 愛莉が涙をぬぐう。


「颯に会いたい」

「探しに行く?」

「いいの?環ちゃん、大変でしょう」

「うん……。でも、考えても分からないし。探してたら何か分かるかもだし」


 環は力なく自嘲する。本当は、目の前の課題から逃げたいだけだった。

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