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紡ぎ合う世界の救世主  作者: 綿時 緋沙
聖なる集い編
211/256

第190話 帝国軍会議


「聖騎士様がお見えでございます」


 ユリウスの執務室に入ったレスティオは客人がいないのを確認してヴェールを脱いだ。

 付き添っていたラハトが受け取り、腕に掛けるとクォートと並んで壁際に控えた。


「急にすまない」

「いや、先触れも貰ったからな。問題ない」

 

 丁度休憩したかったところだと立ち上がったユリウスに聖の魔術を施すと、後に続いて応接セットのソファに腰かけた。

 

「で、話とは?」

「側近全員外に出してもいいかな?」

「ふむ」


 ユリウスは片手を挙げて、執務室にいた者たちに外に出るように促す。

 なにも言わずに皆が従う中、ローレンスはティーセットとお茶菓子をテーブルに置くと、奥の文官の執務室に繋がるドアに鍵をかけてから出て行った。


「理由も聞かずに対応してくれるとは」

「お前が持ち帰った情報は扱いに困るものも多いからな。ドーベル家とのお茶会は万事恙なくと報告を受けている。差し入れに貰ったマカロンもケーキとやらも実に美味しかった」

「あぁ、喜んでもらえたなら良かった。疲れた時には甘いものというから、また用意するよ。それで、今日の用件なのだけど、イグラムは両親のことを知っている?」


 忙しい皇帝の時間をそう長くとってはいられない。

 前置きを手短に先触れであえて伝えなかった本題を出すと、顔がしかめられた。


「皇室が護衛騎士としてマッカーフィーを登用する背景には、先の召喚の儀で生贄になったエルヴィンとミランダの件があるのではないか、とロジエーナから聞いたんだ。実のところどうなんだ?」

「それを、指導官就任について議論する前に問うということは、ミア・アンノーンという男はなにやらイグラムに関わるがあるということか」

「察しているなら教えてくれないか?」


 この後、エルリックとドレイド、魔術師団長ファリス・グランツを交えて帝国軍指導官の就任について話すことになっている。

 そこでどこまでなにを語るか。それを決める為に情報を集めたかった。


「イグラムは父アルバードの推薦で護衛騎士に取り立てた。イグラムと総帥の娘フェイミーとの婚姻も父からの提案だった」

「気に掛けられていたんだな」

「あぁ。父は酒を呑むと良く、テゼルドを止められずに優秀な部下を多く奪われたと語っていた。エルヴィンはその一人だった。マッカーフィーでありながら、剣より魔術に優れていたと聞く。故に、イグラムを魔術師として有力なカーストンと縁を結ばせ、思惑通りに剣も魔術も優れたエドウェルの登用に至った」


 マッカーフィーは騎士団と縁が深いと聞いていたが、エルヴィンが特別だったのかと納得する。

 エドウェルの登用に最初は疑問の声も上がったが、彼はエルヴィンの遺伝子を継いでか天才だった。

 魔術は問題なく扱える。その上剣技も学んでいるとなれば、魔術一本で彼に並ぶのは難しい。剣魔術も最初は苦戦していたようだが、徐々に形にしている。


「最初の問いに答えるならば、まぁ、知る人ぞ知ること。イグラムの耳に入っていないとは思えない。そのことを本人がどう思っているのか、それを確かめたことはない」

「そうか……」

「まさか、マッカーフィーも血縁とは言うまい」

「それはない。まぁ、ある意味ではエルリックと関係しているから全くの無縁とは言い難い、くらいかな」


 最後にエリザから既にミランダの件は報告が回っていると教えてもらい、レスティオは一足先に控えの部屋に移動すべく立ち上がった。

 ユリウスがベルを鳴らすと部屋に側近たちが戻ってきて、レスティオはヴェールを被せられる。


「ではまた後程」

「あぁ。あまり大事にならないことを願っている」

 

 移動した部屋にはドレイドとミアが向かい合って座って待っていた。

 ドレイドはいつもの鎧姿でミアは先日メルヴィユで購入したセットアップ風のジャケットとボトムスに、レスティオが渡した赤いワイシャツとネクタイを締めていた。

 レスティオはヴェールをそのままにミアの隣に座る。


「ネクタイは借り物?」

「こちらに来た時に付けていた自分の物だ。軍服は流石に損傷がひどくて燃やした」

「ゴーンウェスト市街戦って軍服壊れるほどだったの?まぁ、じゃなきゃ壊滅までいかないか」

 

 話しながらレスティオは手を動かす。

 その動きを見て、ミアも手を動かし始める。

 なにをやりとりしているのかわからない者たちはただ首を傾げるしかない。


「なるほど。どうしたものかな」

「お前のしたいようにすればいいよ。ただ、話してやった方が、喜ぶんじゃないかと思うけどね」

 

 すかさずミアが手を動かす。

 その動きを見て、レスティオは噴き出して笑った。


「なにやら楽しそうですね」


 部屋に入ってきたエリザは笑うレスティオに微笑ましそうな表情で会議室の準備が整ったと移動を促した。




 


 会議室に入るとレスティオはヴェールをラハトに預けて席に着いた。

 ミアはその隣に座り、襟を正す。右には皇族からユリウス、リアージュ、ロデリオ。左には帝国軍からエルリック、ドレイド、ファリスと並ぶ。


「忙しい中集まってくれたことに感謝する。先に説明している経緯は省いて構わないだろう。まずはミアから挨拶を」


 促されて立ち上がると、ミアは騎士団にいる時とは違う顔つきで胸に手を当てて優雅に礼をする。


「エリシオール合衆国軍所属ミア・アンノーンと申します。レスティオは1代下の後輩。聖の魔力は持ち合わせておりませぬが、軍人としての力量は勝っていると自負しております」


 一言余計だとレスティオは唇だけで文句を言う。

 だが、それを気づきながら無視したミアは、わずかに皇族の方へと向き直り、先程の礼よりやや深く膝と腰を折る。

 

「皇族の皆様、本日はお目に掛かれて誠に光栄に存じます。皇帝陛下に於かれましては、良き治世をお築きとのこと、心より嬉しく思います」


 一瞬視線を合わせて、レスティオはユリウスの護衛として壁際に控えるイグラムへと目を向けた。

 

「我が身に宿る魂の名はエルヴィン・マッカーフィー。アルバード皇弟殿下にお仕えしながら、テゼルド陛下の命により生贄に身命を捧げることとなりました。無念の中、されど、私は主に志を捧げた身。オリヴィエール帝国の安寧と繁栄を願い、姿を変えて再び御前に参上することが叶いました。この姿で申し上げるには些か戯言に聞こえるかもしれませんが、幼少の頃の成長をアルバード皇弟殿下と共に喜んだ日々は未だ鮮明に思い出されます。御立派に成長され、伴侶を得て、時代を繋ぐ子らに恵まれておられること……喜びに目が霞む想いにございます」


 語られる言葉に皆目を見開いて驚く。

 ユリウスもイグラムもレスティオに真偽を尋ねるように振り返り、それに頷き返すよりない。


「アルバード皇弟殿下直属護衛魔術師の一人として、レスティオの元、再び聖オリヴィエール帝国の為に尽力することをどうかお許しください」


 驚きを呑み込んだユリウスは表情を引き締め直した。


「良く戻ってくれた。先の召喚の儀のこと、父上は最期まで悔やんでおられた。しかし、其方が舞い戻ったとあれば報われる想いもあろう。近く、父の墓標に案内させてもらってもよいか?」

「お心遣い、痛み入ります。是非、帰還の報告をさせていただきたく、お願い申し上げます」


 恭しく頭を下げ直したミアにユリウスは着席を促す。


「会議の場だ。略式となるが、其方に紹介しておこう。妻のリアージュだ。フロアイン・ベルヴァーグの娘といえば通じやすいだろうか」

「あの怠惰者が皇妃を育てたのですか!?っと、失礼。当時を知るがあまり驚きました。ご無礼を謝罪いたします」


 ミアの言葉に年嵩の者たちが噴き出して笑いそうになるのを必死に堪えた。

 有能な宰相としての姿しか知らない者たちはその反応に目を瞬かせるばかりだった。

 

「フロアイン殿は召喚の儀の後、亡き友らの為に人が変わったと聞きます。宰相の役目を務めあげ、今は隠居の身故、話の機会は近く得られるでしょう」

「なるほど。エルリック殿も随分と立派に成長されたようですし、時は流れるものですね」


 口を挟んだエルリックは当時を思い出すように言われて頭を掻く。


「私とリアージュの子、第一皇子ロデリオだ。近く、ラビ王国のドレア・トロースト・ラビ第一王女を妻に迎える」

「良縁に恵まれたと噂には聞いておりました。心よりお喜び申し上げます」


 皇族側の紹介が終わったところで、エルリックが姿勢を正す。


「既に知っている仲ではあるが、改めて。帝国軍総帥エルリック・カーストンです。マッカーフィーの奇才のご帰還、大変心強く思います」

 

 マッカーフィーの奇才。

 レスティオはその呼び方は初めて聞いたなと思いながら、周囲の納得の表情に知れた事なのかと観察する。

 すかさず、エリザがレスティオの横に立ち、騎士団に多く有能な人材を輩出してきたマッカーフィーの中で隔世遺伝かどうしてか魔術に長けて生まれ、若くして皇弟直属の上位護衛魔術師に選ばれたことに由来すると教えた。

 耳打ちが聞こえただろうミアの笑みに目を細めている間にもドレイドの紹介が簡潔に済まされる。


「こちらはレスティオ様も初めて会うことになるかと思います。魔術師団団長ファリス・グランツです」


 紹介を受けて末席に座っていたローブ姿の男が立ち上がる。

 長く伸びた金色の髪を左肩に掛けた男は気難しそうに固めた表情でレスティオに身体を向けた。


「お初お目にかかります。ご紹介に預かりましたファリス・グランツと申します。聖騎士様には妻を秘書に取り立てて頂き、また、ジャスミー相談役より我が身に癒しを賜ったと聞き及んでおります。心より感謝申し上げます。一方で、私の魔術師団の教育と管理が行き届かぬが故、数多くのご無礼があったと報告を受けております。御心を度々煩わせてしまい、誠に申し訳ございませんでした」


 深々と下げられた頭にレスティオが口を開こうとするも、謝罪の言葉は続き、肩を竦める。


「グランツ団長。そこまでにしておけ」


 エルリックが止めると、ファリスはぴたりと言葉を呑み込んだ。

 

「レスティオ様。魔術師団の今後につきましては、またの機会にてよろしいでしょうか」

「あぁ。先日、リーベレール殿下から話を受けている。そうしてくれ。グランツ団長、目覚めたばかりにもかかわらず心労が募っていることと思うが、謝罪よりも今後の働きで反省を示してくれたらそれでいい」

「はっ!必ずや。長々と失礼致しました」


 ファリスが着席すると、本題へと入る。少しばかり緊張が落ち着いた様子に、エリザが安堵の息を吐いたことに気づいて苦笑した。

 元々集まってもらったのは帝国軍の指導官の登用についてだった。挨拶が一通り済んだところで本題へと移る。


「さて、色々な縁が見えたところで思うところもあると思うが、厄災が本格化しようとしている今、軍事強化は優先事項と考える。私の長きに渡る不在の中、失われた命は少なくない。そして、魔物たちは発生し続け、凶暴化してきていることを踏まえても急務といえるだろう。そこで、まだまだ鍛える余地の多い帝国軍に指導官としてミア・アンノーンを置きたい」


 騎士団でも魔術師団でもなくあえて帝国軍の籍におく。

 ミアはマッカーフィーの奇才と呼ばれるだけの魔術師でありながら、エリシオール合衆国軍で鍛え上げた武術や知略がある。


「カリキュラムは帝国軍の上層部とミアの間で相談して決めてもらえたらいい。それから、余裕が出来たならば騎士学校や魔術学院のカリキュラムや指導方法の見直しにも是非とも帝国軍指導官として関わってもらえたらと思う」

「先輩を良いように使い過ぎじゃないか、後輩」

「帝国の為。マッカーフィーの奇才とまで言われた貴方ならば、これくらいの多忙は苦にもならないでしょう」

 

 僅かな間睨み合い、互いに表情を笑みに変えると話を進める。

 レスティオの構想を語った後、意見を求めるとエルリックが手を挙げた。

 

「私からひとつ。帝国軍指導官の籍を皇帝陛下直轄、あるいは、聖騎士直轄としていただき、帝国軍を第三者の立場から監督する者としていただけますでしょうか。私自身総帥として至らぬことを痛感する日々故、私の下では不相応と思います」

「レスティオはどう思う」

「ミアの待遇は聖騎士認定特待生として扱いたいとは思っている。だが、先程話した通り、私は軍の後輩という立場だ。それを踏まえると、指揮命令系統としては忠誠を誓われている皇室の管轄、つまりはユリウスの直轄に置くのが良いと思う」


 いざと言うときに手綱を握りきれない可能性がある。

 頼めるかなとレスティオが下出に言うと、ユリウスはふっと笑って頷いた。


「お前にそのように頼られては気合を入れねばなるまい。よかろう。ミア・アンノーン、異論はあるまいな」

「勿論でございます。皇帝陛下直轄の任を賜る栄誉を前に異論などあるはずがございません」

「よろしい。では、帝国軍の指導全般を委ねる。貴殿の働きに期待させてもらうぞ、ミア」

「はっ!謹んで拝命致します」

 

 咄嗟に立ち上がって出た敬礼はエリシオール合衆国軍のもの。

 身に沁みついた姿勢にユリウスが満足そうにうなずいて着席を促す。


「それと、良ければ皇室の護衛達の指導も頼みたい」

「畏まりました。皇室の護りを盤石にするため、エリシオール合衆国軍仕込みの徹底した教育をお約束いたします」


 それは相当なスパルタになりそうだ。

 そう察したレスティオの同情した顔に護衛達は震えた。


 

 



 当面の打ち合わせを終えると、ミアをユリウスに預けて別れた。

 レスティオは、リアージュと合流したマルクと共に部屋を移動して聖ゾフィー帝国の使者が待つ応接室へと移動した。


「忙しなくて申し訳ないわね」

「いや、無理を言ったのはこちらだから。むしろ申し訳ない」

「いえいえ、外交を考えれば喜ばしきことですから」


 場所は会議室ではなくあくまで和やかに話せる場所が選ばれた。

 外交に忙しい中、競争率が高い部屋だが、両国の聖騎士案件となれば皆我先にと部屋を明け渡してくれた。


「お待たせ致しまして申し訳ございません」


 部屋に入ると、室内では楽師が音楽を奏でる中、マリティアとドグマ、レスティオは初対面の男が一人、並んでお茶をしていた。

 マリティアは外交用にヴェールを鼻先まで被った姿で、手にしていたティーカップとソーサーをゆったりとテーブルに置いた。

 その間に初対面の男が立ち上がる。

 

「いえ、優雅なおもてなしに、暫し時間を忘れかけていたところでございます。大陸会議からずっと有意義な時間を過ごさせて頂いておりまして、有難きことではあるのですが」

「聖を冠する国は大陸にまだ少ないですからね。そんな中、聖ゾフィー帝国とこうして親交を深められることを大変喜ばしく思います」


 心労を理解し合うようにマルクがにこやかに応じたところで男はレスティオへと目を向ける。


「聖オリヴィエール帝国の聖騎士様にはお初お目にかかります。ご挨拶をよろしいでしょうか?」

「勿論です」


 直接声を掛けずに一度リアージュに伺いを立て、許しを得てから一歩前に出る。


「私は聖ゾフィー帝国の外交官として第二皇子ドグマ・ゾフィー殿下の秘書を務めております、セルティ・ドーチェルと申します。先日の御来訪の折には、遠方へ出ておりまして非常に残念に思っておりました故、本日こうしてお目にかかる機会を賜り恐悦至極に御座います」

「ご丁寧に有難うございます。レスティオ・ホークマンと申します。本日はよき話し合いが出来ればと願っております」


 聖ゾフィー帝国一行と向かい合うソファーに腰を下ろすと、マルクやリアージュから城での生活はどうかと世間話を始める。

 楽師の演奏は続いており、場はお茶会の様相だった。


「して、本日この場を設けた件についてですが」

「はい。近くこちらからお願い申し上げようと思っていたところでした。互いの想いがこのような形で結ばれるとはなんとも微笑ましいことです」

「では、ご快諾との理解でよろしいでしょうか」

「勿論でございます。既に家の承諾も出ております故、書類一式はこちらに」

「それほどに想い深くおられましたとは」

「いえ、きっとそちらも主人の不在に想いを燻らせていたことでしょう」


 軽快に進められるマルクとセルティのやりとりに耳を澄ませてレスティオはおやっと思う。

 ヴェール越しにマリティアと目が合ってわずかに肩が竦められた。

 後ろでジェウが戸惑っている気配を感じて同情しながら、口挟んで止めるのも違う気がして書類を出し合い確認する二人を観察する。


「あら、こちらに嫁いで下さるのですか?聞くところによれば、そちらはマリティア様の筆頭側仕えと窺っておりましたが」


 リアージュの問いかけはややわざとらしく聞こえた。

 ドグマが口を開く前にマリティアが、はい、と返事をした。


「シャナは私が誇る優秀な側仕えです。遠征にまで同行してくれる頼もしい存在で、寄り添ってくれる温かさに長く閉ざした心を開くことが出来ました。だからこそ、私は、彼女には幸せになってもらいたいと心から願っております。それが他国に嫁ぐことであろうと、私は笑顔で送り出すと決めているのです」


 既に筆頭側仕えの後任の教育も出来ているのだと加えられ、シャナの隣に立つ女性がそっと会釈した。

 シャナとそう年齢が変わらないくらいの可愛らしい女性だった。


「私も側近を抱える身として見習いたく存じます。それほど優秀なのでしたら、是非とも私の側仕えにと思いますが、いかがでしょうか。大陸会議などでもお会いする機会もございましょう」

「まぁ、よろしいのですか?レスティオ様の護衛騎士の伴侶となるのですもの、皇妃陛下の側仕えに取り立てて頂けるのは喜ばしきことと思います」


 若干シャナの笑顔がひきつった。

 この場において側仕えが発言することはできない。無論、護衛騎士も。


「あぁ、シャナならば側仕えであり護衛として重宝しそうですね。厄災も激化するでしょうから、シャナのような者を側近に加えることで万事に備えられそうですね」

「なるほど?」


 レスティオの発言にすかさずリアージュが食いつく。

 その眼光はシャナに向けられ、姿勢が一層正された。


「確かに側近は常に行動を共にする者たちですからね。彼らに備えをさせておくことは遠征などの道中を考えても有用そうです」


 今後は文武共に長けた者が重宝される時代かとセルティが尤もらしく言うと、それぞれに真剣な表情で頷く。

 縁談をまとめている最中だが、今ソファーに座っている6人はいずれも、厄災の渦中で国を背負って働いている者たちだ。

 無言で視線が交わされる。


「今後とも、良き縁を互いに結ぶことが出来たら良いですね」

「えぇ、私も心からそう思いますわ」


 笑顔の中、当事者二人が一度も口を開くことなく、婚約を越えて婚姻の手続きが済まされた。

 緊張している間に名がシャナ・ウスタルからシャナ・ロレアンに変わっていた事実に、流石のレスティオもマリティアも驚いたがあえて口出しはしなかった。

 籍は変わったものの流石にすぐに屋敷の用意は整わない。シャナは婚姻の儀までにマリティアの側仕えからリアージュの側仕えに移る準備を整えつつ、ロレアン家への挨拶や新居の準備に時間を取ることになった。

 ジェウは早急に仮押えしている屋敷候補から住居を選び使用人の選定や家族との顔合わせの段取りなど、やらなければならないことを積み上げられて青ざめた。

 今まさに引っ越しを迫られている同僚たちはそっとその肩に手を置いて、幸せになれよ、と短く祝福するのだった。


 

両国の聖騎士案件となれば話もトントンとなるのです。

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