第180話 信頼と不安
レスティオは装備を確認してフードを被ると馬車を出た。
控えていたセバンと頷き合い、ジンガーグ隊の待機場所へと静かに移動する。
ジンガーグ隊は既に西の方角へ向けて隊列を整えており、すぐにも出発できる状態だった。
シルヴァからセバンの馬の手綱を受け取って騎乗すると、無言のままソリッズの手振りだけで隊列は動き出す。
野営地から距離が取れたところで、再びソリッズが合図を出すと、部隊は一気に駆け出す。
まずはロワの街を目指し、現地の状況を確認して明日以降の討伐任務の計画を立案する。
先遣隊をいつ動かせるかによって行軍日程に影響が出る。レスティオの思惑を叶えるためにも、迅速な行動が求められていた。
「レスティオ様!ロワの街の収穫もやや落ち込み気味のようなので、聖の魔術の癒しもしてやってください」
「農地に立ち寄ったなら勿論やらせてもらうよ。お前たちの貴重な食糧にもなるしな」
「話が早くて助かります!」
ジンガーグ隊は魔物討伐と迅速な移動のため、馬車をフランドール隊に預けてきた。
最小限の食糧は手分けして抱えているが、それだけでは帝都までは当然持たない。現地調達しようにも、食料が不足しているというのならば、聖の魔術で作物の生育を促して十分な食料を確保する必要がある。
ロワの街の住人は皆、レスティオとジンガーグ隊一行を歓迎した。
駐在兵が畑にいると言われて向かえば、魔術師団に代わり新しく駐留することになったファビス隊の兵たちが住人たちと収穫の相談をしていた。
一度は住人たちが飢えたこともあり、誰かが食料を占有するようなことがないように、畑の管理は駐在兵も加えて町を上げて行われるようになっていた。
そんな食料事情の説明の後、収穫量が心許なくなっているという訴えを受けて、レスティオは畑にたっぷりと魔力を注ぎ込んだ。
「じゃあ、俺は森に行ってくるから、お前たちは炊き出しの準備をよろしく」
野営地の準備や駐在兵からの報告を受けている間に日は暮れ出し、森に突入するのは明日にしようと話す中。
レスティオはジャケットの内側から取り出した目薬を両目に差して、笑顔で告げた。
「は?何を仰っているのですか?」
「今、夜間行軍用の特殊な薬を使ったから、暗がりの方が視界が明るく見えるようになってくる。早く帝都に戻りたいから、先行して現地を視察してくるよ」
「いやっ、それは流石に認められませんよっ!」
ソリッズの引き留めに、レスティオはくすりと笑んだ。
「大丈夫だよ。俺の身体は特別製な上に訓練も積んできてるから。効率的な任務完遂の為には、チートを有効活用することも覚えて欲しいね」
赤みを帯びた金色の瞳が妖しく光ってみえて、ソリッズは息を呑んだ。
「1滴だけだから効果が切れるまで3時間くらいかな。それまでには帰ってくるよ」
言うと、くんっと膝を屈伸させて後方の家の屋根に飛び上がった。
「魔術無しで付いてこれるなら付いてくることを認めよう。出来ないなら大人しく聖騎士の命に従いなさい」
「全く……困った人だ……」
ソリッズの諦めの声を聞いて、レスティオはさらに後ろへと飛び上がり、身体を捻りながら街と森を隔てる柵を軽々と越えた。
炊き出しの配膳が始まった頃に戻ってきたレスティオは、手土産にと森の果物をユハニに渡した。
艶のある果物を見て、聖の魔術の後かと呆れた顔で受け取る。
「ソリッズ、森の方は根源級も以前討伐してからさほど育っていないようだったから仕留めておいた。新種はいなかった。明日は西の森の方に注力して問題ないと思うよ」
「承知いたしました。明日も一人で行かれるつもりではないでしょうな?」
「行けというなら行くけれど。兵を鈍らせてもいけないからね」
「お心遣い痛み入ります。レスティオ様もどうぞお食事をお召し上がりください。シルヴァッ!」
ソリッズに名前を呼ばれたシルヴァはレスティオを用意した席へとエスコートする。
セバンとヴァスクール小隊のブロワーズ・バルリングが護衛に立つ中、野菜と香草のスープとパンが出された。
スープにはレスティオが持ち帰った糧食のスープ玉が使われており、本来の味より随分と薄められているが、栄養は十分に補える。
「食後のお茶はいかがなさいますか?」
「今はいいかな。俺がいない間、実家で側仕えの教育を受けていたのか?」
「はいっ!レスティオ様に護衛騎士の内定を頂きましたので、実家だけでなく、皇室の側近の皆様にも先立って指導を賜りました」
ゾフィー帝国派遣団に同行したラウル・バーンズの口添えもあり、皇族は即座にシルヴァの教育に乗り出した。
レスティオがいつ戻るかわからない中、すぐに側近に据えられる存在として教育を受ける日々を送ってきたことを思い返して、シルヴァは遂に正式に任命されるのだと感慨深く思う。
「そうか。頼りにしているよ」
「他の護衛騎士の方はもう決まっているのですか?」
「いいや。候補者の擦り合わせはしたが、最終決定はしていないよ。けど、ロデリオの婚姻の儀までには就任式を済ませることになるから、心の準備はしておいてくれ」
「畏まりました」
頼もしくなったように見える顔つきを見上げて、ふっと笑みをこぼす。
「どうかなさいましたか?」
「いや、これからよろしく頼むよ。シルヴァ」
「はい、喜んで」
和やかに笑みを交わして、レスティオは立ち上がった。
食事を終えて遊ぶ子供たちの元に近づくと、一緒に遊ぼうと声を掛けて混ざる。
近隣の森の状況によってはロワの街に滞在することも検討していたが、レスティオの先行結果を踏まえて翌朝には出立となった。
ヴァスクール小隊とレスティオ、セバンは西の森に突入して状況確認に努め、本隊は街道沿いを帝都方面に向けて移動する。
「ブロワーズッ!」
「おうっ!っと、ユハニッ!そっち逃げたぞっ!」
ヴァスクール小隊が広く展開して魔物を討伐していく。
時折ネルヴィが短く笛を吹くと広がっていた者は距離を取り直して、再び連携を取りながら展開していくことを繰り返す。
枝を伝いながら木の上に魔物が潜んでいないことを確認していたレスティオは、ネルヴィの指揮の様子も観察していた。
ネルヴィ自身魔物に切りかかっていきながら、仲間の馬の蹄の音をきちんと聞いていることに感心する。
「レスティオ様!根源は見つけられそうですかっ!?」
集合の笛を吹いて上を見上げたネルヴィにレスティオは苦笑して地面に降りる。
「いいや。この辺りは然程魔物も多くないし、まだ判断材料に欠けるが少なくとも北東方面にはいないんじゃないかな」
「ふーん……もっと西寄りになると、西部帝国軍の管轄なんですよね」
いいながらネルヴィは向こうに川があるんですけど、と西を指差す。
川を境に西の森の中で帝都帝国軍と西部帝国軍の管轄が分かれる。
軍の魔物討伐としてはどちらが討伐しても構わないが、住人が野草や果物の採取を行える場所としては厳密に管理されている。そのため、不要な争いを避けるためにも極力近づかないようにするのが暗黙の了解。
「一旦戻るなら、とりあえず癒しておこうか?」
「そうですね。ひとまず聖の魔術を施しておけば、街道の安全はある程度担保できるでしょう」
ネルヴィと頷き合って聖の魔術を唱える。
その間にユハニが風の魔術で宙へと飛び上がり、本隊の位置を確認。同時に帰還を伝えるべく水柱を立てた。
「ネルヴィ、針路を10時方向にお願いします」
「11時方向でもいけるんじゃない?」
なるべく森の中の索敵に努めようとするネルヴィにユハニは首を横に振った。
「レスティオ様。今の時間分かりますか?」
尋ねられて懐中時計を取り出して、ユハニの意図を理解した。
「11時半。もうすぐ昼だね」
「本隊の位置は7時方向でした。昼休憩で足を止める位置を考えると、11時方向では先を行きすぎます」
「ぁ、なーるほど。了解。10時方向に進もう」
先遣隊は魔物討伐をしながら勢いよく駆けている分、本隊よりも進行速度が早い。
ユハニの計算に納得したネルヴィは、各自の準備を確認して前進を促した。
森を抜けたところで本隊が移動を早めて合流すると、昼食準備の傍ら、戦略会議が始まる。
「我々は移動中に魔物避けの薬の散布を行っています。それだけで街道沿いの安全は比較的確保出来ると推定されていることに加え、レスティオ様の聖の魔術も効けば西部派遣団の帰還の途も安全と言えましょう」
地図を広げたソリッズの隣でクラエスが現在地を示す。薬の散布間隔を管理していたことを根拠にした推定を信頼し、午後の西の森の索敵編成と本隊の移動目標を定めていく。
魔物が少ない状況ならばこそと、実地訓練をかねてガレ小隊も先遣隊に同行することが決まるとシャーフの表情が険しくなった。
「じゃあ、俺はガレ小隊の方に帯同しようかな」
「良いのですか?」
「折角の機会だし、今後のためにも1人でも多くの動きを間近で見ておきたい」
ネルヴィは残念そうな顔をしたが、ソリッズはレスティオと視線を合わせて頷いた。
ダイナ隊の解体は、部隊長のラズベル・ダイナを始めとするダイナ隊の兵の半数以上が殉職したことにより決定した。
実地訓練に出た先で森の奥に潜んでいた魔物たちに襲われて救援信号を上げるも、主戦力として残っていたクォートの部隊がレスティオへ皇族の勅命状を届ける任務を命じられ、帰還していないタイミングだった。そのため、臨時編成を組むまでに時間を要し、訓練に出ていたダイナ隊の兵たちは全滅。当日、皇室周辺の警備に残っていた者たちは部隊再編と共に散らばることとなった。
ガレ小隊は比較的戦闘経験がある者たちだが、動きの硬さが目立つため、小隊単独で動くことはまだ許されていない。
「ネルヴィの急成長を思えば、お前たちだって努力次第でいくらでも伸びるだろうと期待してる。ガレ小隊で試したい連携とかあるなら、俺が援護に回るから存分に試すといいよ」
「じゃあ、ヴァスクール小隊は索敵範囲を広げて、取りこぼしはガレ小隊に任せていいですね」
「背後の警戒は怠るなよ」
「ユハニがいるから大丈夫です」
きっぱり言うネルヴィに若干の不安を感じつつ、ネルヴィとシャーフに動きの確認を任せる。
レスティオは身体を伸ばしながらふと空を見上げて、日差しの眩しさに目を細める。
「往路の道中は雨が続いていたのですが、レスティオ様が戻られてからは天候に恵まれています」
眩しいようでしたら日よけを用意しますと声を掛けて来たシルヴァに苦笑して首を横に振る。
用意してもらうまでもなく日除けならばジャケットのフードを被れば十分だ。空になにを思っていたのか考えている様子もないシルヴァに促されるまま昼食の席に着く。
硬いパンのサンドイッチを薄味のスープと共に食す。
「そういえば、ヴィルヘルムは元気にしてる?」
食べながら何気なくシルヴァに振ると、困った様子で苦笑いした。
「一応、騎士団でちゃんと世話はしてますよ。偶にユハニが走らせていますが、中々満足しないといつも大変そうです」
レスティオの愛馬であるヴィルヘルムは暴れ馬と言われていただけに中々兵に懐かない。
人の選り好みが激しく、餌は置けば食べるが、限られた人にしか騎乗を許さず暴れる。
「蹴られずに乗るだけ乗れた人もいたんですが、その人だと走るのを嫌がってしまって、結局言うことを聞かなかったんですよね。ヴィルヘルムを乗りこなしているレスティオ様は流石です」
「へぇ……もしかして、その人ってミア・アンノーン?」
「ぁ、ミアのことは、ご存じだったのですか?」
レスティオが名前を出すとシルヴァは驚いた顔をした。
すぐに口を滑らせたという様子で表情を繕われて、レスティオは肩を竦めてそれ以上は追及しなかった。
ヴィルヘルムが元気とわかっただけで会話の目的は果たした。食事のペースを少し早めて済ませると、片付けを任せて立ち上がった。
「シャーフのところに午後の連携を確認しに行ってくる」
「かしこまりました」
ヴァスクール小隊とガレ小隊は食事を済ませると一足先に森に向けて出陣した。
レスティオはセバンを護衛にガレ小隊の援護として殿に付いた。
あくまでガレ小隊の実地訓練の補助役として、連携の隙に飛び込んでくる魔物をぎりぎりで氷の矢で撃ち仕留める。
高速で空を駆ける戦闘機を撃ち落としていたことに比べると、魔物を仕留めるのはあまりにも容易い。そう、冷めた気分で感じながら、ガレ小隊の連携の未熟さに先は長そうだなと感想を抱く。
「けど、何故……」
ぽつりとつぶやいて、レスティオは周囲の魔物をまとめて貫き木の幹に串刺しにする。
「レスティオ様?」
呟きを拾ったセバンの声掛けを無視して、ふと浮かんだ疑問に考えを巡らせる。
ミア・アンノーンがハミル・ワトソンとすれば、エリシオール合衆国軍の軍学校で戦術訓練を受けているはず。
彼が教官役となれば拙い連携で前線に出ることもなく、もっと早く騎士団を精鋭部隊に仕上げることが出来たのではないか。
騎士団の業務に貢献し、皆から信頼を集める一方で、教育面には関与していない。
当初の彼らの力量を思えば諦めたのも無理はない。しかし、信頼を受けているのに対して、諦めは不誠実だろう。
レスティオにはやはり疑わしい存在に思えて仕方が無くなる。
森を抜けて本隊に合流すると、日は傾き出していたがギバの村まで駆け抜けた。
明日の昼には帝都に着く段取りと説明を聞きながら、レスティオは駐在所の陰から駆け出ていく気配に気づいた。
帝都へ帰還の先触れだろうかと一瞬考えた。だが、隠し事が苦手な騎士団の面々がわかりやすく隠そうと振る舞う様子に、十中八九、宛先はミアと推察出来てしまった。
仲間として、より信頼が強いのはミアなのだろう。
そう思いながら、穏やかな話し合いが出来るのか緊張が過ぎる。
「レスティオ様。夕食の用意をしている間に畑の方に行きますか?」
「え?あぁ、そうだね」
セバンに尋ねられて慌てて頷く。
村長と集まってきた村人たちと共に畑に移動すると、小ぶりの作物が目立っていた。
聖の魔術で良く育った野菜はある程度育つとすぐに買い手がつくため、ギバの村として消費出来る量が制限されてしまっている状況。村の利益を優先した自業自得の状況に内心呆れながら、畑に手を翳す。
詠唱の後、すぐに歓声が上がった。
しかし、ロワの街よりも作物の成育が進まなかった畑を見て、レスティオは申し訳なさに息が詰まった。
「ありがとうございます、聖騎士様のおかげでまたしばらく我々も安泰です」
「ぁ、あぁ。国の食糧生産を支える大事な畑だ。引き続き管理をしっかりと頼むよ」
聖騎士として応じなければと作り笑顔で感謝に応じる。
だが、やがて耐えられなくなり、夕食の時間まで子供たちと遊ぼうかと言って畑の近くから逃げ出すように離れた。
レスティオの提案に大人の後ろで顔を覗かせていた子供たちの表情が明るくなり、共に広場へと向かうべく駆け寄ってくる。そんな無邪気な子供達を抱き上げてはじゃれ合い、料理が出来ないジンガーグ隊の者たちを巻き込んで賑やかに笑い合う。
その様子を見つめていたセバンはシルヴァを手招いて、どう思う?と尋ねた。
「問い掛けるのは今ではないと思います」
「まぁ、そっか……」
穏やかな表情で応じたシルヴァに、セバンはいつもの彼と違う雰囲気を感じ取った。
なにかを感じつつも、それを顔に出すのは側仕えとして違うのだろう。そう理解して、シルヴァに後を委ねようと決めた。
ギバの村の駐在所の一室を借りることになったレスティオは湯浴みを済ませると、シルヴァが整えたベッドに寝転んだ。
粗末なベッドも適度な加減で布を洗い直し、ラハト特製の香りを纏わせれば、格段に寝心地が変わる。
「レスティオ様。夜は私とセバンが交代で警護に立ちますので、どうぞごゆっくりお休みください」
シルヴァが借り物のティーセットで就寝前のお茶を用意すると、レスティオは側仕えらしい気遣いの数々に苦笑して礼を言って体を起こす。
「俺の警護なんて適当でいいのに」
「我々はレスティオ様の護衛騎士として最も近くでお守りすることが役目です。至らぬことが多く不安を感じられることもあるかと思いますが、レスティオ様が心安らかにいられるように尽くしたいのです」
ラヴェンデルを含んだ薬草茶には蜜の優しい甘さが感じられた。
じんわりと身体に沁み込んでくる温もりに慰められた気がして、ゆっくり肩の力を抜いた。
「騎士団にミア・アンノーンという庶務官がいるだろう?」
「はい」
「彼は俺の世界で行方不明となっている男に酷似しているんだ」
優しい顔で話を聞こうとしていたシルヴァの表情が一瞬にして硬いものになった。
「俺は敵意はないつもりなんだけどね。彼が俺の知る人ならば、彼もまた俺のことを知っているはず。なのに、黙っているのは何故か。いくつも可能性を考えては警戒を拭えずにいる」
「ここ数日、隊長や小隊長の様子がおかしいように見えたのは、それが理由なのでしょうか」
「俺の勝手な行動でミア・アンノーンの存在が脅かされることを恐れているんだろうと思う」
なるほどと口を開いたのはセバンだった。
セバンは以前に聞いたことがあると、ミア・アンノーンが騎士団副団長シャブル・キャロディの部隊の窮地を救った話を語った。
そうでなくても、ミアは不遇な騎士団を支えてくれる貴重な存在で、今や兵の誰もがミアに信頼を寄せている。
「フランドール隊長もジンガーグ隊長も元はキャロディ隊でした。救ってもらった身だからこそ一層気に掛けるのでしょう」
「まぁ……ミア・アンノーンの方が、お前たちと日常的に関わりがある存在だろうし、気持ちはわかるんだけどね」
突然現れて部隊の窮地を救った。ならば、それだけの能力があるということ。なのに、彼は庶務官という役目を務めるだけ。
助けられた。だから、助けたい。その一心で保護しているのだとしても、戦力にするなり、教えを乞うなり、彼に助力を求めないのは何故か。
不可解に思っていることが思考を埋め尽くしていく。
レスティオ自身、共に戦場に出るようになって、騎士団とは確かに絆は出来てきたと感じている。
だが、先日ミアの事を話した時のソリッズたちの反応や言動を思い出すと、敵わない壁があるように思えて何とも言えない焦燥感が胸を襲う。
「レスティオ様。思うところがあるならば、遠慮せず口にして良いのですよ」
セバンに掛けられた声に、レスティオは今自分が酷く情けない表情をしてしまっている気がして顔を逸らした。
「……明日になれば……ミア・アンノーンに会うことが出来れば、きっと解消されることだから。心配をかけて悪い」
今日はもう休むと告げて、ティーカップをシルヴァへと返す。
布団に入って瞼を落としたレスティオは、明日はどう動けばよいか、思考を巡らせて夜を過ごした。
調子を取り戻しつつある中、疑念に頭を抱えて鬱々と。
次回、お盆休み中なので明日8/14(火)21時に更新予定です。




