↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者になった公爵令嬢は、我儘をつき通す  作者: 星見蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/45

第33話 公爵令嬢は対策を講じる

 クラリッサは勉強に勉強を重ねた。

 ソフィア様との課題は勿論のこと、寝る前には必ず『読書』を心掛けた。

 普通の恋愛小説と、刺激の強い恋愛小説を、それぞれ丁寧に丁寧に読み込んだ。

 そうして学んだのだ。


(恥ずかしくて当然ですの!!)


 小説の主人公たちも恥ずかしそうにしていた。

 それでも触れ合いを続けていく。

 つまり、クラリッサは情けなくなんて……


(ダメですわ。ちゃんと家具選びをできなかったことは反省しなくては)


 そもそも。

 あの段階まで手を繋いでいる必要は無かったはずで。

 情けなくなる前に、仕事と割り切って、手を離し、前を向けば良かったのだ。

 なんなら目の前のベッドを自分のベッドだとは思わず、来客用のベッドとでも考えれば良かっただけ。


(方法はいくらでもありましたわ)


 ぐっと拳を握りしめ、気合を入れた。



* * *



 今週末も、アリステアたちは森のお屋敷へ。

 使用人棟の改修状況を確認するためだ。

 もともと大きな改修が無い為、こちらはほぼ完成していると聞かされた。


 馬車を降り、彼女に手を差し出す。

 とんとんと馬車の階段を降りた彼女は、すっとアリステアから手を離した。


「アリスさん、行きましょう?」


 にっこりと微笑まれて、アリステアの手は行き場を失う。

 思わず後ろのロビンを見れば、すすっと視線が斜めに動いた。どういう感情なのか分からない。その隣のヴィヴィアンはとても良い笑顔だが、目の圧を感じる。こちらは分かる。『さっさと行け』だ。

 

 アリステアは、もやもやとした気持ちを抱えたまま、彼女に続いてお屋敷の玄関へと向かった。



* * *



 クラリッサの作戦は大成功である。

 馬車を降りると同時に、握られた手から速やかに逃れ、職人たちの話をアリスさんと二人冷静に聞くことができた。

 使用人棟の話なので、ヴィヴィアンとロビンにも確認をとった。

 二人とも特に問題は無いと言った。

 ついでに他の部屋と、庭も見て回ることにした。

 もちろん、その間も手は繋がなかった。



 書庫へ行くと、既に先客がいた。

 この間の三人の子供たちだ。

 手持ち無沙汰に椅子に座って足をブラブラさせているのが、長男のガイ。

 本好き三男のルカの後をついて回っているのが、次男のニコ。

 ニコとルカは、すぐ近くの孤児院から昼休憩のたびに来ているらしい。

 ガイは週末だけ顔を出すそうだ。


「返してくれるなら、持って帰ってもいいんだが?」


 アリスさんの提案にルカがガイを見た。

 ガイが首を左右に振った。


「本を持ち帰ったら、奪われるだけだ」

「……どういうことだ?」


 アリスさんが訊き返す。


「俺たち孤児が本なんて高価な物を持っていたらいけないんだ」

「……借りてるだけだと言えばいいだろう?」

「借りてるなんて知られるわけにはいかない」


 アリスさんはそれ以上追及することなく、膝に乗せたルカの質問に丁寧に答えていた。



* * *



「アリスさん?」


 三人が帰っても、アリスさんは書庫の椅子から動かなかった。

 じっと何かを考えているようで、クラリッサはアリスさんの顔の前で手をひらひらさせた。


「ロビン」

「はい?」


 クラリッサは無視された。


「孤児院のこと、調べられるか?」

「……俺が調べられると思うんですか? せいぜい公の記録を確認するだけですよ」

「そうか」

「……アリスさん?」


 クラリッサはもう一度声を掛けた。

 ちょっとムッとしたので、躊躇いつつもアリスさんの頬を引っ張ってみた。


「……」

「痛いとかありますよね?」

「……痛いな」

「遅くありませんか?」

「驚いたから」

「……わたくしを無視しないでください」

「すまない。ちょっと考えていて」

「分かりますけど。……孤児院が気になるんですの?」

「ああ。……気のせいかもしれないが」

「……どうします? アーサー殿下を召喚します?」

「……さすがに、それは」


 アリスさんはそこで、言葉を止めた。

 そして。


「孤児院について調べてもらえるのか?」


 唐突に、声を上げた。

 ヴィヴィアンも、ロビンも、怪訝そうにアリスさんを見るだけだったのだが。


 トントンという音がした。

 クラリッサは辺りを見渡すも、それらしい音の原因が見つけられない。

 

 ところが。


「すまない。異変があるようならアーサー殿下に伝えてもらえると助かる」


 アリスさんはそう言ったのだ。

 しかも、もう一度トントンと音が返ってきた。


「……今のは?」


 ロビンがアリスさんに訊いた。


「……影だ」


 アリスさんの視線が一瞬だけクラリッサに向けられていたが、意味が分からない。

 でもロビンは違うようで、『なるほど』と納得していた。


「アリスさん?」

「……なんだ?」

「影ってどういうことですの?」

「……影は影だ」

「ですから??」

「アーサー殿下の影が遊びに来ていたみたいだな」

「……さすがに、影さんはアーサー殿下のように遊びはしないと思うのですけど??」

「それなら、アーサー殿下の代わりに屋敷を見に来たんじゃないか?」

「……アリスさん?」


 クラリッサは納得できないので、何度も訊いたのだが、ちゃんとした回答は無く。

 さらに不満が募った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。