第2話 初めての華、星野ひなた①
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「……『強欲の王・完璧人生システム』を起動します」
脳内に直接響くような、冷徹で機械的な電子音。
周囲の嘲笑、翔太の勝ち誇った顔、美香の冷たい視線――すべてがスローモーションのように遠ざかり、俺の視界には半透明の青いウィンドウが浮かび上がった。
[宿主:皇蓮]
[現行ミッション:1ヶ月以内に1億円の借金を全額返済せよ]
[初期特典:軍資金3,000,000円を口座に付与しました]
一億円の借金。親父の無念。そして、目の前でいちゃつくゴミ屑ども。
俺は奥歯を噛み締めながら、スマホで銀行口座を確認する。残高は確かに『3,000,000円』に書き換わっていた。
「……夢じゃない」
俺の心臓が、復讐の炎で激しく高鳴る。
システムは俺に「力」を与えた。ならば、迷う必要はない。俺はこの金で、美香と翔太がのたうち回るような地獄を見せてやる。
その時、周囲の女子学生たちに青白いマーカーが表示され始めた。システムが周囲の『外見度』を瞬時にスキャンしているのだ。
[対象:西園寺美香(元恋人)/外見度:84]
[判定:システム利用不可]
「へえ、美香……お前はその程度の価値か」
あんなに騒ぎ立てていた美香の外見評価すら、このシステムにとっては「投資価値なし」のゴミということか。溜飲が下がる思いで視線を泳がせると、講義棟の裏、寂しげな庭園に座る一人の女に目が留まった。
星野ひなた。
学内でも屈指の美女として有名だが、極貧生活を送っているという噂がある。彼女がふと顔を上げた瞬間、システムが鋭い反応を見せた。
[ターゲット:星野ひなた(20歳)]
[外見度:94(SSSランク)]
【身長: 168cm】
【B96(Gカップ) / W58 / H90 】
[好感度:25]
[状態:家族の借金により困窮。心身ともに追い詰められている]
外見度94。俺が求める「本物の美女」は、こんな場所で朽ち果てようとしていたのか。
俺は歩き出した。翔太たちが俺を見下して笑っているが、今の俺にはただの道端の石ころにしか見えない。
俺は迷わず、庭園のベンチでうつむくひなたの隣に腰を下ろした。
「……なあ。そのスマホ、さっきから督促の通知が止まってないぞ」
ひなたが肩を震わせ、驚いて顔を上げた。その瞳は驚きに満ちているが、隠しきれないほどの疲弊と絶望が宿っている。
「……誰? ……って、皇さん……?」
「俺も同じだ。金に追い詰められ、愛した女に裏切られ、どん底にいる」
俺は懐から、先ほど手に入れた300万円を無造作に包んだ封筒を、彼女の膝の上に置いた。ひなたは息を呑み、封筒の中身を見て顔色を変える。
「え……!? これ、どうして……!」
「30万渡すからこれくらいあれば
利子ぐらいは払えるよね?」
「こんな大金受け取れないです……」
「それなら一日僕にひなたさんの時間をくれない?」
「えっ……どういうことですか……」
まっすぐひなたの目をみつめながら
「ひなたさん僕とデートしよう」
俺とひなたは、かつて俺が御曹司だった頃に愛用していた、会員制の高級レストランの前にいた。
「皇さん……こんなお店、私が入ってもいいんですか?」
「俺が連れてきたんだ。遠慮するな」
店内で供される極上のコース料理。5万円の会計を済ませる俺の横顔を見て、ひなたの瞳に宿る熱量が変わる。
[好感度:45 → 48]
食事のあと、俺は「妹へのプレゼント選びに付き合ってくれ」と嘘をつき、銀座の高級デパートへ連れ出した。そこで最悪の……いや、最高の偶然が訪れた。
ショーケースの前で、翔太と美香が嫌らしく笑いながら並んでいたからだ。
「よお、蓮。お前みたいな貧乏人が、なんでこんな場所にいるんだ?」
翔太が肩を小突き、美香が俺の格好を鼻で笑う。彼らは30万円の腕時計を吟味していた。
「あーあ、可哀想。蓮、目の保養にしに来たの? 翔太が私のためにこれ買ってくれるのよ。あなたには一生縁のない世界でしょ?」
俺は彼らを無視し、店員に告げた。
「あの、ショーケースにあるダイヤ装飾の腕時計。一番最高級のものを出してもらえるか」
指差したのは、150万円の逸品。美香が息を呑む。
俺はひなたの華奢な手首を掴み、その腕に輝く時計を巻かせた。
「……可愛い。すごく、似合ってる」
「えっ……でも、これ150万も……妹さんのじゃないの?」
「俺が、君につけてほしくて選んだんだ。受け取ってくれる?」
俺がニコリと笑うと、ひなたの顔が紅潮する。彼女の好感度が一気に跳ね上がるのが分かった。
[好感度:48 → 70]
お金があればなんでもできる……
[システム警告:好感度70達成]
[外見度94(SSSランク)確認。キャッシュバック3倍適用]
[150万円 × 3倍 = 450万円が口座に振り込まれました]
「はあ!? あんた、そんな金どこにあるのよ!」
美香が顔を青ざめさせ、翔太に泣きつく。「翔太! 私にもあれ買って! 負けたくない!」
だが、翔太の顔は引き攣っていた。150万など、今の彼には大金なのだ。
「う、うるせぇ!」
翔太は心の中で
「そんな金あるわけねーし、
こんなクソ女にそんな金使えるか!」
俺はひなたを連れ、惨めな二人を背に優雅にデパートを去った。店を出た帰り道、ひなたに借金の額を尋ねる。
「……100万円、あるの」
俺は躊躇わず、その場で彼女のスマホ銀行へ100万円を送金した。
「いらない、そんな大金……」
「悲しい顔の君は見たくないんだ。……お礼は、また明日デートしてくれ」
[好感度:70 → 80]
蓮はひなたを家まで送り届けた。
「おやすみ。また明日!」
「うん……また……あしたね。おやすみ……」
ひなたは蓮の後ろ姿をみつめながらボソッと
「蓮君に夜誘われなかったな……」
蓮は家に帰りスマホ銀行を覗くと
[現在口座残高:10,650,000円]
「一千万……」
銀行残高が1,000万円を超えたその瞬間、俺の脳内にこれまでとは違う、重厚で官能的な電子音が響き渡った。
[メインミッション・ヒロイン攻略:SSSランク美女の所有ハーレム登録完了]
[特例ボーナス:好感度80到達記念]
[報酬:高級車『メルセデス・ベンス AMG GT』をあなたのガレージに配布しました]
[報酬:強欲の王の肉体改造——性欲および身体能力の限界突破を付与します]
「……ベンスに、肉体改造だと?」
突如として、全身の血管を熱い奔流が駆け巡るような感覚に襲われた。
筋繊維が軋みを上げ、より強靭に、よりしなやかに再構築されていく。それと同時に、下腹部にこれまで感じたことのない、どす黒く燃え盛るような『渇き』が渦巻いた。
以前の俺とは違う。今の俺なら、どんな絶世の美女を相手にしても、朝まで彼女を狂わせ、悦びの淵へ沈め続けることができる。
その時、脳裏に「突発ミッション」のログが流れる。
[突発ミッション:ざまあ成功]
[幼馴染・浅倉翔太のプライドを粉砕しました]
[報酬:翔太の父の会社が抱える「粉飾決算」の極秘データをアンロックします]
俺は思わず、獣のような笑みを漏らした。
翔太の親父の会社の悪事。それが手に入れば、奴らの人生は今日から崩壊のカウントダウンに入る。
俺はスマホを取り出し、先ほど別れたばかりのひなたにメッセージを送る。
『明日、迎えに行く。』
数秒後、返信が届く。
『うん……待ってるね。蓮君今日はありがとう……おやすみ。』
その文字を見ただけで、彼女が今、どんな表情でスマホを握りしめているかが手に取るように分かった。
きっと、顔を真っ赤にして、先ほど俺と交わした肌の温もりを反芻しているんだろう。
かつての清楚で高嶺の花だった彼女はもういない。
俺が与えた刺激、俺が植え付けた金という毒。それら全てが、彼女の中で初めて経験する「悦び」として急速に増殖している。
自分の中に芽生えた、このどうしようもない情欲と渇望。それをどう処理すればいいのか分からず、ただベッドで丸くなって俺の名前を呼んでいる——そんなひなたの姿が目に浮かぶようだ。
俺は昂ぶる性欲を抑え込みながら、暗闇の中で妖しく光るシステム画面を見つめた。
手に入れた『メルセデス・ベンス AMG GT』。そして、翔太の破滅を決定づける『粉飾決算データ』。
「……翔太、美香。お前たちが奪ったすべてを、俺が一番残酷な方法で取り返してやる」




