表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第1話

カクヨムにて先行公開中です!

最新話をいち早く読みたい方は、ぜひチェックしてください。

「ごめん蓮、もう無理。私、貧乏な男と付き合うほど暇じゃないの」

大学のキャンパス、新緑が眩しい中庭のロータリー。

西園寺美香さいおんじ みかは、俺が必死に買い与えたシャネルのバッグを愛おしそうに抱えながら、冷酷な声を放った。

かつて「すめらぎグループ」の御曹司として、何不自由ない生活を送っていた俺――皇蓮すめらぎ れん

だが、一ヶ月前、親の会社が倒産。

残されたのは、一文無しの現実と、俺たち家族の肩にのしかかった一億円という莫大な借金だった。

社長だった親父も、専業主婦だったお袋も、今はプライドを捨てて必死に慣れないパートやバイトを掛け持ちして働いている。俺も少しでも家計を助けるため、大学に通いながら深夜の物流倉庫で過酷な肉体労働をぶっ続けで行う日々だ。

185センチ、72キロのモデル体型と称賛された俺の身体は、今や慢性的な寝不足と疲労で悲鳴を上げている。鏡を見るたび、目の下にはっきりと刻まれた薄暗いクマ。だが、それが皮肉にも、今の俺に退廃的で危険な色気を与えていた。

「美香……お前、俺の家がどんな状態だって知ってて……」

ガラガラに枯れた声で絞り出す。美香はフッと鼻で笑った。

「知ってるわよ。だから別れるの。だいたい、最近の蓮って貧乏臭いのよ。おじさんやおばさんまで駅前のスーパーでレジ打ちとか清掃のバイトしてるんでしょ? ウケる。そんな恥ずかしい家族の隣、歩けるわけないじゃない」

かつて「蓮くん大好き、一生一緒だよ」と甘えてきた女の、これが本性。

蓮の『財力』と『ステータス』を、自分の実力だと勘違いしていたミーハー女の成れの果てだった。

その時、ロータリーに耳を劈くような排気音が響いた。

滑り込んできたのは、真っ赤なポルシェ。運転席から降りてきた男の顔を見て、俺の奥歯がギリリ、と鳴った。

浅倉翔太あさくら しょうた

実家が近所で、幼稚園からの幼馴染。

蓮の引き立て役、パシリ、二番手――ずっとそう呼ばれ、俺の後ろで卑屈な笑みを浮かべていた男だ。それが今や、仕立ての良いスーツを着て、勝ち誇った歪な笑みを浮かべている。

「よお、蓮。今日もこれからブラックバイトか? 185センチもあるのに、なんか最近背中が丸まって小さく見えるぜ?」

翔太はポルシェのキーを指先で弄びながら、俺に近づいてくる。

そして、躊躇いもなく美香の細い腰を、我が物顔でガシッと抱き寄せた。

「ちょっと翔太ぁ、蓮に近づかないでよ。貧乏臭がうつる」

「はは、悪い悪い。でもさ美香、蓮には感謝しねえとな。こいつの親父が会社潰してくれたおかげで、俺はお前っていう最高の戦利品を手に入れられたんだから。あ、お前の親父さん、こないだ俺の親父の会社のビルで警備員やってるの見かけたぜ? まさか元社長がねぇ(笑)」

親父までバカにされ、俺の胸の中にドス黒い怒りが燃え上がる。

美香は翔太の胸に嬉そうに寄り添った。

「そうね。翔太は蓮と違って、私を『本物の高級レストラン』に連れて行ってくれるもんね。ねえ蓮、もう身の程を知ったら? あなたはもう、私たちとは住む世界が違うの」

周囲の学生たちが、遠巻きにこちらの様子を見てヒソヒソと笑っている。

「おい、元御曹司、完全に寝取られてんじゃん」「借金一億で親もバイトとかマジで終わってんな」「今の皇ってただの粗大ゴミだよな」

容赦ない嘲笑の雨が、俺のプライドを切り刻んでいく。

翔太は俺の目の前まで歩み寄ると、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた。

「おいおい美香、蓮がかわいそうだろ。……あ、そうだ。せっかくだから、お前に慰めのご褒美を見せてやるよ」

「え? なぁに、翔太――」

美香が言いかけるより早く、翔太は彼女の顎をくいっと持ち上げた。

正式に俺の恋人だったはずの女の唇に、俺の目の前で、深く、激しくキスをした。

「んぅ……っ」

美香はわざとらしく鼻を鳴らし、目を薄く開けて、俺の反応を覗き見ながら翔太の舌を受け入れている。

俺が必死にバイトして、睡眠時間を削って稼いだ金で買ったブレスレット。それが、翔太の首に回された美香の手首で、キラキラと虚しく輝いていた。

「ぷはっ……。いや、最高だな。お前が一度は手に入れた極上の女を、今度は俺が毎晩めちゃくちゃにしてやるよ」

翔太は口を離すと、俺の肩をわざと強く小突き、耳元で悪魔のように囁いた。

「お前が持ってたもの、地位も、女も、全部俺がもらうわ。……じゃあな、負け組」

二人は再び腰に手を回し、ラブラブな様子で講義室へと消えていった。

一人取り残されたロータリー。眩しい初夏の太陽が、今の俺にはひどく冷たく感じられた。

金だ……。金さえあれば、こんな虚しい思いをしなくていいのに。

金さえあれば、あいつらに両親までバカにされて、ただ黙って見ているだけの、こんな惨めな思いをしなくて済んだのに……。

そう願った瞬間、俺の視界に、、、


【強欲の王・完璧人生システムロード開始】


----------------------------------------------------------------

初めまして、大神英奈と申します。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ