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アナンシ星人について

神聖なる妖精の正体は、光となって地球に飛来した「異星人」だった。――すべての謎が一つに繋がる、怒涛のSF的伏線回収。

 こんにちは諸君。今日も講堂いっぱいに集まってくれてありがとう。

 今回の講義は少し変わっている。とりあえず、SF小説にでも触れる思いで読んで欲しい。

「アナンシ星人」という名称を知っているだろうか? 聞いたことも見たこともない、という人が九十九パーセントだろう。四億五千年前、地球がシルル紀の頃にやってきた異星人のことだ。

 困惑の気持ちはよく分かる。これから詳しく説明するよ。話を先に進めよう。

 アナンシ星人は、故郷の惑星を「ノルワ」と呼んでいた。

 おや、アナンシ星人だから、星の名前もアナンシではないか? という疑問が浮かぶね。アナンシ星人は外部の呼び方で、アナンシよりはるか昔に住んでいた種族がノルワといったそうだ。ややこしい話だが、地球にも色々な生き物がいるので、同じ具合だったのだろう。

 惑星ノルワは天の川銀河のペルセウス腕にあった。我々がいるのはオリオン腕だよ。隣にある渦だ。両方とも生物が発生できる、天の川銀河のハビタブルゾーンだ。

 惑星ノルワができたのは百三十八億年前で、宇宙と同じ。ただ地球と異なるのは、超大質量の太陽の周りを回っていたということだった。

 平穏な時代が続いていた。

 ノルワ人は何らかの理由で少数派となった。

 そして、電気が知能を持った生命体による新しい文明が作られた。自称をアナンシといった。ノルワよりも社会が発達していたため、数パーセク内ではアナンシ星人という呼び名が付いた。

 ところが突然、惑星ノルワが滅んだ。仰天だ。驚くべき存在が宇宙にはいた。

 滅亡の理由は銀河系を管轄する部隊が、彼らを信仰しないアナンシ星人を怨んだためだった。殺された星だった。

 銀河連盟は太陽を膨張させ、超新星爆発を誘発した。巨大な質量の光がガンマ線バーストとともに放たれ、惑星ノルワのある恒星系はブラックホールに様変わりした。

 銀河連盟は偶然、ガンマ線の軌道にあたって、なんとも皮肉な話だが、彼らも滅んでしまった。

 アナンシ星人は惑星ノルワの滅亡を予測していた。よくあるSFに登場する宇宙船ではなく、光と融合する逃れ方を開発した。電気でできている彼ららしい方法だった。

 やがて時が迫った。全員を光子に融合させた。新しく移住した先でまた会おう、と別れを惜しみながら。そうやってアナンシ星人は、太陽の爆発に乗じて惑星を飛び立った。

 長い旅の末、忘れがたい故郷とよく似た星を見つけた。それが四億五千年前の地球だった。惑星ノルワの残骸とともに、一部のアナンシ星人が地球へ降り注いだ。

 時期が合うのでシルル紀の大量絶滅はガンマ線バーストで間違いない。

 他の者たちは様子を見て、地球の公転軌道に残った。惑星ノルワの残骸にぴたりと張り付いて、時を待つことにした。こうしてアナンシ星人は流星群として、地球へ定期的に降り続けることとなった。

 さて、それからどうなっただろう。

 アナンシ星人の光子は、地球の大多数の生物に取り込まれた。初めは原生生物に、次は植物に、昆虫に、恐竜に、哺乳類に、そして類人猿に、といった風に。アナンシ星人は地球の生物の進化をともに歩んだ。

 昆虫に翅が生えた理由はアナンシ由来ということらしい。他にペガサスのような生物の伝承も。先祖返りのように突然アナンシ星人の特徴、翅が生えるものが現れたということだ。

 地球の生物に取り込まれたといっても、生まれ方は地球と異なった。ここが特異点だ。

 光子でできている彼らは遺伝子を受け継ぐ方法を持たなかった。DNAでもRNAでもない生物だったんだ。

 一体どういうことなのか? 電気が意識を持ったという他にどう言えばいいだろう。我々もまた、脳の電気信号で動いているのだから、光が意識を持たないと言い切れるだろうか。

 とにかく誕生には日時が決まっていた。地球を様子見して待機しているアナンシ星人、つまり流星群が降る日に限られた。彼らを呼びよせることでしか増えることはなかった。

 七万年前まで、昆虫になり、魚類になり、としながら、アナンシ由来の生物の間で歴史が伝えられていた。かすかな記憶として、シナプスの明滅が覚えていた。

 しかし人間のサイズになった時から、長老たちが、この土地になじむために故郷を忘れたほうがいいのではないかと話し合った。人間の風習に倣って神話を作った。惑星ノルワを懐かしんでも既にないので、子孫のためを思い、我々は土着の妖精だということにした。


 ところで、アナンシ星人は光子でできていたと言ったね。本来は不老不死だったんだよ。

 惑星ノルワでは大質量の太陽からエネルギーをもらっていたからだ。地球に移住した後は太陽が足りない状態となった。そういうわけで、彼らが生きることへは限りができた。

 また、西暦で2000年ごろに流星群が尽きることも、長老たちには分かっていた。

 だから結局、アナンシ星人は絶滅の運命にあった。


 さて、これまでのことについて誰が話したか気になるだろう。

 地球で最後のアナンシ由来のエルフが、父に語りかけた。その時だ。幻灯花を使って見せられた幻、それを記録したのだそうだ。

 そして誰もが死んで、アナンシ星人はこの宇宙にもういない。

 最後のアナンシ星人は、何を考えて父にこのことを語ったのだろうか。思いをはせてみたくなる。


次回は2000年頃を舞台にした物語です。

スケールが大きいので、どうぞお楽しみください!

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