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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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98/101

98 流星群

 翌日、今日は平日だ。

 なのでベビーシッタートモカはいない。


 カミナは昨日も300層に行ったけど、やはり途中で息切れしてしまった。

 なので今日からは200層と100層を一本ずつ潜って長時間の探索に慣れたいと言い出した。

 合計7時間くらいかな?長い探索になるけどレベルの低い敵なら大丈夫なのだろうか。


「GODには負担かけちゃうけど」

「いいよ、途中で一度戻ってくるんでしょ?」


 午前中は8時くらいから200を潜って13時に帰ってくるらしい。

 そのあと休憩をはさんで夕飯前に100層を潜るとか。

 300はまだ俺がついて行かないと心配だから無理しないでくれているだけで助かるよ。


「300は土日にまたリベンジします」


 やる気満々だなぁ。休みも入れてほしいところだが。

 カミナは全盛期に戻るための努力を惜しまない。

 まあその分俺が子供の面倒頑張ればいいか。好きにさせよう。


 カミナを200層のダンジョンへと送る。

 俺は戻ってカエデの世話だ。今日も可愛いなお前は。

 午前中は二人きりだぞ?あばばばばばばば~。



 -------------



「おかえり。問題なかったか?」

「もちろんだよ」


 200だもんな。それでもいちいち聞かないと心配だ。

 不測の事態が起こらんとも限らん。


「GODも行ってきて?3時間くらいで帰ってきてほしいけど」

「俺は別にしばらくは土日だけでも良いぞ?」

「駄目だよ、土日も私がメインだし、レベル下がっちゃうよ?」


 むう、そこまで言うのなら。

 でも3時間か、どこに行けばいいのやら。



 奥飛騨ブロンズタワー100階層


 俺は今、レオンの加護で透明になっている。中ボスを少し離れた場所から観察中だ。

 ティラノサウルスに似た中ボス、ネットで調べたら本物は13メートルくらいだったらしいが、こいつはそれよりかなり大きい、2倍近くありそうだ。

 口がとにかくでかい、飲み込まれたらひとたまりもないな。よくある体の中から攻撃は通じるだろうか。

 鼻をひくひくさせている、自分以外の何かがこの場にいると感じ取っているのかもしれない。

 手が小さい、可動域も小さそうだ。あれはあまり脅威には見えないが、一応爪には注意かな。

 そして一番モロそうに見えるのが巨大な体を支える二本の足だ。ホゲーの圧殺で簡単にポキッと折れそう。

 横に長い体なのに二足歩行だもんな。どう見てもバランスが悪い。

 尻尾が太く長い、これはかなり脅威だな。二足歩行なので振り回しやすいように見える。

 当たったら吹っ飛ばされるだろう。


 さて、弱点なのだがどうも喉が怪しく見える。

 確定では無いけれどあそこだけ少し白くなってるもんな。

 だが巨大な口の真下だ。なかなか狙えるとも思えない。

 顎が長いし入り込んでしまえば口は届かないだろうか?

 短い手の可動域からも外れているように見える。


 うーん、行ってみようかな。

 駄目で元々、試すだけでもいいか。


「ホゲー、頼む」

『了解だぞえ』


 地面からクジラが飛び出してくる。

 上を見上げ、驚いている敵の頭上から押しつぶした。

 あ!足が折れたぞ!やった!


『う゛』

「ん?ホゲーどした?」

『骨がお腹に…』


 あ!敵の折れた足の骨が己の皮膚を突き破り、ホゲーのお腹を傷つけたのか!?

 だ、大丈夫か?ホゲー!


『大丈夫だぞえ、でもしばらくは回復に努めさせていただくぞえ』

「そ、そうか、解った安静にしてくれ!」


 ホゲーの姿が消える。ああ、大丈夫かな?心配だ。

 精霊が傷つくなんてこと今まで無かったからな。

 俺の作戦が間違ってたのかな。悪い事をしてしまった。


 さてどうしよう。

 目の前には立ち上がれずもがいているティラノモドキ、千載一遇のチャンスには違いない。

 ダウンはしていない、体を横にして暴れている。

 両足ポッキリ折れてるから絶対に立ち上がれない。


 喉に近づいてみるか。

 おわ!寝っ転がりながらも首を曲げ噛みつこうとしてくる。

 危ない、こいつの闘志は衰えてない。

 それでも下の方から回り込めば安全みたいだ。

 短い手を潜り抜け、のど元に攻撃、効いてる、やっぱりここが弱点か。


 あ、寝返りを打つように体を反転させた。

 ちくしょう、弱点が向こう側に行ってしまった。

 体を飛び越え向かおうとしたらまた首を曲げて大きな口が飛んでくる。

 あぶねええええええ、足に少しかすってしまった。

 今のはやばかった、ひやひやする。


「さて、属性の弱点も調べておきたいところだが…」


 あがくボスに抵抗を受けながら、ひと通り試してみる。

 この為に一応保管庫からいろいろな属性の武器を持ってきた。

 そして、氷の属性武器を使った時にボスはひときわ大きな咆哮を上げた。


「お前の時代が来たか。魔剣グラム」


 弱点が解ればあとは攻撃あるのみだ。

 身をよじり、首を一生懸命伸ばしながら中ボスも抵抗する。

 うおやべ!尻尾を縦に振り、自身のお腹の下から攻撃してきた。

 あれに当たったら口の方に飛ばされてたな。怖い怖い。

 やっぱり初見だと思いがけない攻撃をしてくるもんだな。

 でも見切ったぜ、絶対食らわんからな。


 魔剣グラムの攻撃を何発入れただろうか?

 しぶとい、かなりの深手を負わせているのに何で死なないんだ?

 ひょっとして弱点はここではなかったのか?

 時間の経過とともに不安が押し寄せてくる。


 う、短い腕の爪攻撃を受けてしまった。

 思ったより深手を負ってしまう、すぐに回復。

 あの爪でここまでの攻撃力があるとは。

 口で噛まれたら即死かも知れない。


 はあはあ、今どれくらい経っただろうか。

 まだ死なないのか?まだ寝返りを打つ体力があるとは。

 口が届かないよう飛び越え、おっとまた尻尾が。

 往生際悪いな、こいつの闘志だけは称えたい。


 そして遂に、中ボスの力が弱くなってきた。

 動きが遅く弱弱しい、何とか抵抗しようとはするものの、可動域が狭い、全然脅威ではなくなった。

 これで終わってくれとありったけの一撃を喉に入れる。


 ドロップが出た。ついにやったか。俺はその場に大文字で倒れた。


「はあ、はあ、げふふっ!!く、くそ、なんてしぶといんだよ!」


 息がまともに出来ずむせてしまう。

 こんなに疲れたのはいつぶりだ?オロチ以来じゃないだろうか?


「はあ、はあ、レベルも足りないしソロで挑むもんじゃないんだろうな」


 だめだ、頭がくらくらする。しばらくは起き上がれそうもない。

 ギリギリだったんだな。カミナには言えない危ない橋を渡ってしまった。

 ホゲーの加護であそこまで弱らせてもらったのに…

 まともに相手できる日は来るのか?



「はあ、はあ、ふう」


 どれくらい経っただろうか?段々と息が落ち着いてくる。

 もう立ち上がっても大丈夫だろうか?貧血が来そうで怖い。

 ゆっくりゆっくり確認しながら立ち上がる。ふう、大丈夫そうだ。


「あ、あの色は魔法書だな」


 ドロップの中に魔法書を発見。

 これが今回の初討伐確定アイテムだろうか?

 見た事のないやつだ。当然表紙の文字も読めない。初出の魔法書だと思う。


「嬉しいけど、疲れすぎてて喜べないや」


 今はただ泥のように眠りたい。

 最後の力を振り絞ってリターンとテレポート、カミナ邸に戻った。



「GOD?遅かったね」

「すまん、何時間たってる?」


 現在16時半、16時に戻る予定だったのに、30分オーバーしてしまったか。

 観察の後、多分3時間ぶっ通しで戦っていたんだろうな。


「カミナ、悪いんだけど今日は100層に行くのやめてほしい。俺をちょっと寝かせてくれ」

「え?い、いいけど、ケガはない?」

「ああ、ケガはないんだけど滅茶苦茶疲れた」


 理由は後で説明するよ。今はただただ寝かせてくれ。

 ベッドに倒れ込むとすぐにイビキをかき始めた。



 -------------------



「そうなんだ、奥飛騨の銅100中ボスやっつけたんだね」

「ああ、でもやっぱ初見だから苦労しちゃってね」


 6時間くらい寝てしまった。

 経緯を説明する。死にかけた事はもちろん内緒だ。

 心配させていい事は何もない。


「で、これが手に入った」

「魔法書?」


 おそらくだけど初回討伐確定アイテム、初出だと思う。

 早速表紙の文字だけ解読してみるか。

 中見ちゃうと使用者が俺に確定してしまうからまだ見ない。

 内容次第だけど魔法書ならカミナが使った方が良いからね。


「…流星群だって」

「す、凄そうだね」


 ああ、凄そうだ。イメージ的にはメテオが何発も落ちてきそう。

 そしてイメージ通りなら間違いなくこれまでで一番強力な魔法だと思う。


「よしカミナ、あげるよ」

「え?いいの?」

「俺も魔法は使えるけど専門職じゃないからな。MPもカミナほど多くないし」


 使用にはたくさんのMPを使うと思う。

 俺が覚えるよりカミナが覚えた方が合理的だ。


「な、なんか、私何にもしてないのに貰ってばっかで…」

「これからの攻略で使ってくれればいいんだぞ?それが助けになるんだから」

「うん、そうかも知れないけど…」


 あ、一応表紙の写真だけ取らせてくれ。

 これもアンアンに情報提供しよう。


「ありがとう、有効活用させてもらうからね」

「ああ、それが一番の恩返しだ」


 カミナは明日、ダンジョン休みにして読んでみるって。

 カエデの世話は俺に任せろ、だからそっちに集中していいぞ。

 今日は寝ていいよ。俺は変な時間に寝ちゃったからもう少し起きてるよ。

 コーヒーを飲みながらゆっくり夜が更けていく。

 はあ、ホゲー大丈夫かな?大したことないといいけど。

 俺もしばらくは難しい討伐はやめよう。今はただホゲーの回復を待ちたい。

 強い効果を持った精霊に無茶させてたのかもなぁ。

 反省だ、強そうな魔法書を手に入れたのに喜ぶ気持ちにはなれなかった。



 ----------------



 翌日、朝からカミナが魔法書を読み始める。

 解読しながらの地道な作業、何時間かかるか解らない。

 俺はカエデの相手だ。ミルクをあげ、おむつを替え、風呂に入れる。

 カエデが寝てる間もせっせと家事をこなす。

 洗い物、洗濯、掃除、とにかくカミナには魔法書に専念させる。


「コーヒー淹れたよ」

「うん、ありがとう」


 真剣に魔法書を読むカミナ、ああ、表情が可愛いな。

 おかしな事をしたくなってしまうが我慢だ。

 カエデは元気かな?今は起きてるみたい。


 ハイハイが出来るようになるまでは自分で動く事もできない。

 当たり前の事なんだけど、退屈なんじゃないだろうかと考えてしまう。


『可愛いな』

「うお、ゴリ左衛門、見てたのか?」

『ああ、どれだけ見ても見飽きない』


 ベビーベッドをのぞき込むゴリラ型の精霊、お前は抱いてみたいって言ってたよな。

 オスだと思って名前つけたけどメスだったのか…?そもそも精霊に性別はあるのだろうか。


『カエデか、良い名だ』

「そう思うか?精霊は俺から見るといつも結構変な名前を気にいるんだけどな」

『秋の色は燃え盛る火のようだ。人間は枯れる前の段階だと思うのかも知れんが、ワシには一番輝いて見える』


 そうだな、確かに枯れる前の段階ではあるんだけど、情熱的に彩ってるよな。

 桜の咲く春や新緑の季節も良いんだけど、俺も一時の切なさを感じる秋が一番好きだ。


『僕は夏が好きだけどな』

「ちぃ太は夏か、イメージ通りだな」

『そう?スイカの柄が好きなんだよね』


 灼熱の荒野で走り回ってそうなのに、予想外の答えだった。

 スイカは野菜だぞ?こないだもラーメン食べたいとか言い出すし、なんで肉に興味持たんの。


『二人目は夏に産んで名前はスイカにしてね』

「無茶言うなwやっぱ精霊は変な名前が好きだな」

『おかしいの?…人間のセンスは解んないや』

『春に産んで桜餅丸ってのはどうだ?』

「文太まで…つかぽこぽこ産まそうとするなよ」

『冬に産んで名前はダイヤモンドダストにして欲しいです』

「バク子、長いし中二病っぽいから」


 あとダストって埃って意味だからな?

 みんな好き勝手な事を言っちゃいけません。

 子供を作り、育てるというのは大変な事なんだからな。

 見ててそう思わないか?


『ただただ可愛い。どんどん作ってくれ』

「解んないか、聞いた俺が馬鹿だったよ」

「解読終わったよ。覚える事が出来たみたい」


 おお、おめでとう。どんな魔法か見てみたいけどカエデがいるから土日まで我慢だな。

 いいなあ新しい魔法、譲っといてなんだけど羨ましいぜ。


「次出たらGODも覚えたら?」


 うーん、次か。あいつをまた倒すのはいつの事になるのやら。

 もうホゲーを出す気にはならないし、当分先の話だな……あ!!


「ど、どうしたの?」

「いや、101階のセーフティエリアに行くの忘れてた。今思い出したよ」


 くそー、疲れてて頭が回らなかったな。

 これであいつとの再戦は確定的だ。先に進むにはもう一度倒すしかない。

 はあ、あんなに苦労して倒したのに…でもレオンの加護で気づかれずに抜けれるか?

 確証はない、どうせ倒したんだから確実に行っておけば良かったのに。

 ホゲーの心配、魔法書、疲れ、様々な要素が重なり凡ミスだ。

 やっぱ歳かな?やれやれため息が出ちゃう。

 カミナも手が空いたし、ふて寝した。

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