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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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97/101

97 カニ

「今日は200層に行ってみたい」


 土曜日が来た。本日もベビーシッタートモカが登場。

 カミナが100にも慣れてきたし200に行きたいと言い出した。


「そろそろ次の段階へ行きたいって事か」

「今日はGODも付いてきてくれるから安心でしょ?」


 そうだな、一人で行く時に勝手にステップアップされるのは心配だ。

 しかし、200層だと1本でも5時間くらいかかるんじゃないだろうか。


「私なら大丈夫ですよ?1本でも2本でも」

「さすがに親の責任として10時間も預けっぱなしには出来ないよ」

「10時間で2万ですよ?何も問題はありません」


 貧乏大学生はどん欲だな。

 カミナもまだリハビリ中なんだから10時間も運動しちゃ駄目。今日は一本にしておきなさい。

 というか平日の事を考えたら10時間もいなくなられると困る。家庭を顧みてください。


「しょうがないなぁ」

「それはこっちのセリフだぞ?」

「で、どこがおすすめ?」


 そうだな、11月半ば、紅葉が綺麗な場所に行くか。



 ----------------



「ここどこ?」

「洞川200ダンジョン、奈良だな」


 中学生の修学旅行以外ではなかなか来ることのない場所、奈良。

 新幹線も空港も無いのもマイナーな理由の一つだ。


「モミジが綺麗だね…」

「モミジは別名カエデとも言う。だからここを選んだ」

「そっか…」


 マイナーなだけに手つかずの自然が残っている。

 一時間ほど散策するか?時間が延びる分にはトモカも怒らないだろう。


「あれ鹿じゃない?あ、逃げた」

「本当だ、この辺にもいるんだな」

「鹿公園ってこの辺じゃないの?」

「あれはもっと北の方、鹿の種類も違うように見えたけどな」


 奈良は北部以外は山なんだよな。

 詳しくないけどこっちの鹿は野生って感じがした。

 警戒心が強くてすぐに逃げる。人慣れしてないんだろうな。


「柿の葉寿司ってのが売ってるね。名物なのかな?」

「セーフティエリアの昼食として買ってくか?」


 5時間も潜るとなると昼超えちゃうからな。

 カミナも産後明けだしなるべく規則正しい食生活をだな。

 野菜ジュースも買おう、寿司に合うかは解んないけど。


「産後の栄養不足にちゃんとビタミン剤も飲んでるよ?」

「しかし本当は食事で取るのが一番なんだけどな」


 体のケアはカミナも考えてる。

 妊娠中も妊娠線が残らないようクリーム塗ってたな。

 他にもいろいろやってたみたい、男の俺より考えてるか。


 さて、では潜ろうか。

 100層までは順調、101層のセーフティエリアで一休み。

 ここ、結構人が来てるみたいだ。温泉も今は誰かが使ってるみたい。


「産後は温泉に入って良いんだっけ?」

「もう大丈夫なはずだけどもうちょっと様子見ようかな」


 そうか、慎重に越したことはない。

 つかこれだけ動いてるのも心配ではあるのだが。


 少しの休憩の後、ダンジョン攻略を再開。

 200のボスで結構食らっちゃったな。大丈夫なのか?


「ダメージは軽いけど動きにはまだついて行けてないかも」


 しばらく200に潜ることになりそうだ。

 焦る必要は無い、ちょっとずつ体を慣らそう。



 2週間後


「そろそろ300に潜りたい」

「はやり来たか」


 2週間カミナは200に潜り続けたが、戻ったレベルは2つだけ。

 土日は俺の加護も合わさってるのにやはり低階層ではなかなかレベルが上がらない。

 さすがに焦れてきてる。


「300層となると8時間は…」

「私は大丈夫です!」


 ベビーシッタートモカはやる気満々、カミナもやる気満々、なので止められるはずもない。

 仕方ないな、どこのダンジョンが良いだろうか?


 この間俺も道後入ったり奥飛騨行ったりしている。

 道後は空振りも多い、相変わらず混雑している。

 なんとか4回ほどオクトレイを倒せたけど成果は無し、サイコロも錬金術も出てない。


 奥飛騨はゆっくり攻略だ。新しいダンジョンだから慎重に慎重を重ねている。

 加護全開、危なくなったらすぐにレオンの加護で逃げる。

 そんな感じで少しずつ攻略階層を伸ばし、99階層まで行っている。

 100層の中ボスちょっとだけ見てきたけどティラノサウルスみたいなやつだった。

 ホゲーの加護効くのかな?まだ試せていない。

 他のパーティは80あたりまで来ていると聞いた。

 初回討伐確定報酬があるなら先に倒してしまうたいが…いや、無理は禁物だ。


「ねえGOD、どこ行くか決まった?」

「そうだな…越前玉川に行こう」



 ---------------



 海沿いにあるダンジョン、12月の日本海は寒い。


「うう、風が強いね。なんでここにしたの?」

「カニを買おうと思ってね」


 越前ガニのシーズンだからだ。

 やっぱ年に一回はカニ食わないとな。


「いいね、トモカにも買っていってあげる?でも荷物になるから迷惑かな?」

「あの子も冒険者やってたんだからアイテムボックスあるんじゃないか?」


 いつも身軽な格好で来てるし持ってると思う。

 わざわざ聞いた事はないんだけどね。


「富山の寒ブリも食いたいけど氷見は200層なんだよな」

「食べ物で決められてるんだね。私のリハビリ」


 ついでだよついで。メインはリハビリなんだぞ?

 別にいいじゃないか。カミナも蟹食べたいでしょ。


 まずは魚屋を見つけ蟹を購入、ビニールに入れられ氷入りの発泡スチロールに入れてくれた。

 これでアイテムボックスに入れておけば鮮度は保たれる。

 アイテムボックスの中は一定温度で酸素が薄いらしい。


 ではダンジョンに潜ろう。寒いからか人が少ないな。

 って、思ってたらダンジョンの中に結構人がいる。

 ダンジョンの中は一年中一定温度、暖房費ケチって潜りに来ているのだろうか…?

 暑いからクーラーの効いたパチンコ屋行くみたいな感覚なのかもしれない。


「そうみたいだね。混んでるの一階層だけみたいだよ」

「安全な場所で小銭稼ぎながらついでに体をあっためながら運動不足も解消ってとこか」


 魔石のお陰で電気代は安くなったのにな。

 ダンジョンでモンスターを倒すと手に入る魔石。これでエネルギー問題が激変した。

 原子力より高い効率でエネルギーを発生させられるとかなんとか。詳しい事は知らない。


「まあ悪い事ではないよ。少しでもダンジョンから資源を持ってきてくれるんだから」

「そうだね、土日だけでも潜ってくれるだけでどれだけ助かるか」


 普段は会社員、土日は冒険者の週末冒険者と言われる人達がいる。

 会社員の給料だけではやっていけないのか、もっとお金が欲しいだけなのか。

 家庭があれば土日も忙しいだろうから、バランス取るの大変そうだな。

 冒険者専業になればいいのにとも思うが命懸けの仕事だし、歳を取った時の事を考えれば踏ん切りがつかないのも解る。

 人の人生だからな。本人が一番解っているだろう。


「100層を超えるのが全体の30%、超えなくても10年間で3億は稼げるらしいからね」

「無理しなくても10年で生涯年収くらいは稼げるって事なんだね」


 そうそう、みんながダンジョンを制覇したい訳ではない。生活していければ十分と考える人も多いのだ。

 むしろ危険なボスに挑んで死んだら本末転倒、そう考える人も多いのだ。

 冒険者だけど冒険をしない。その判断も正しいと言える。


「セーフティエリアだ。昼にしよう」

「GOD、アイテムボックスにカセットコンロ入れてるの?」


 駄目か?結構入れてる人多いと思うけどな。

 泊りがけで来る人は温かいものをダンジョンの中で食べられる。


「私はキャンプ用のバーナー」

「ああ、そういう意味か。確かにそっちの方がコンパクトで良いな」


 ジェネレーションギャップを感じたぜ。

 俺の時代にはまだそんなの売ってなかったもの。


「お湯を沸かし、レトルトのコメを温める」

「ふんふん」

「つぎに蟹のついでに買ったへしこを焼く。ぬかは軽く落とす」

「ふんふん」

「最後にまたお湯を沸かし、茶碗に盛ったご飯とへしこと茶漬けの素の上にかければ簡単へしこ茶漬けの出来上がりだ」


 俺はこれが好きなんだよな。

 でも匂いが結構強いからカミナは気に入ってくれないかもな。


「そんな事ないよ。美味しいしサラサラ食べられるね」


 消化にも良さそうだよな。

 まだ潜る予定だし程よい量なのも良い。

 米がお湯で膨らむから満足感もある。


「ふう、美味しかった」


 日持ちするし、もっと買えばよかったかな。

 でも匂いが強いからマンションでは焼けないんだよな。

 こういうものはたまにで良いんだ、丁度良かったとしよう。



 ダンジョン攻略を再開、危なげなく201まで到達。

 休憩は多めに取ろう。喉乾いてないか?トイレは大丈夫か?


「トイレはちょっとしたいかも」


 解った、では簡易トイレもって木の陰に行こう。

 今は他に誰もいないみたいだが、いつ来るか解らんからな。

 俺が影になるから思う存分出してくれ。


「終わったよ」

「トイレも妊娠前より大変そうだな」


 便座に座れない場所でのトイレ、本当は良くないんだろうな。

 まあ微々たる問題かもしれないけどさ。


「お腹がまだ少し大きいからどうしてもやりづらいよ」


 解る解る、俺も太ってた時は足の爪切るのが大変だった。

 腹の脂肪のせいで足が曲がらないんだよな。

 今は痩せてきてだいぶ楽になった。体が軽いし良い事づくめだ。



 ダンジョン攻略を再開、250の小ボスを倒したあたりでカミナの息が上がってくる。

 潜り始めてもうすぐ7時間、やっぱ長時間の探索はまだ無理だったか。


「カミナ、無理はせず今日は切り上げよう」

「そ、そうだね。あんまり無理すると家に帰っても何も出来ないかも」


 ああ、普段の生活もあるんだからな。そっちの方が優先すべき大事な役割だ。

 親と言う替えの効かない大切な役割。


 リターンでダンジョン脱出、テレポートでカミナ邸へ。

 カエデを抱っこするトモカに迎えられる。大人しくしてたみたいだな。


 カミナはベッドで少し休むって、トモカ、これお土産。


「蟹だ~~~!!」

「うわ!そんなに好きなの?」

「えーーーん」

「あ!楓ちゃんおっきな声出してごめん」


 よしよし、俺が変わろう。おっさんへしこの匂いするから嫌われるかな?

 すぐに泣き止み寝てくれた。本当に手がかからない良い子だ。


「す、すみません、蟹なんて回転寿司でしか食べた事なくて」

「あはは、食べすぎるとお腹壊すかもしれないから気を付けてね」


 一杯丸ごとは多すぎたかな。でも嬉しそうだしまあいいか。

 日持ちしないからすぐに食べてね。


 アイテムボックスにカニをしまいトモカが帰っていく。

 明日も来てくれる予定だ。頼んだぞ~。



 次の日


「私、蟹味噌が好きだと昨日知りました」

「おお、初めて食べたんだな」


 回転寿司にもあるけど見た目が悪いもんな。

 トモカはカニの食べ方をネットで色々調べた挙句、甲羅焼きにたどり着いたらしい。

 カニの身を浸して食べると悶絶したとか。


「はあ、大学生なのに贅沢を覚えてしまいました」

「普段何食べてるの?」

「自炊で簡単なものですね。冷凍食品やレトルトも多いです」


 まあ若い時はそんなもんでしょ。

 自分のご飯をしっかり作るというのも大変なもんだ。

 一人暮らしをすると母親の苦労が解る。


「カミナ、今日はどうするんだ?行けそうか?」

「行くけど、うーん、どうしよう」


 昨日リタイヤしたから考えてるな。

 また200に戻っても良いんだぞ。


「違うの、今日はお肉が食べたい。お肉の美味しい300層に行きたい」

「…………」


 食べ物で決めてるのお前じゃないかよ。

 そんな訳で飛騨高山ダンジョンに行った。

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