94 サイコロ
翌日から8日連続でバジリスクへ。
そしてついに毒槍が出た。
「こ、これが恐槍ドゥヴシェフ?」
「言いづらいな、毒槍でいいだろ」
「それよりおじさんあれ…」
ついでに石板も出たな。丁度100討伐目が来たか。
盛りだくさんの討伐回となった。
「国に報告だな、ミオコが報告するか?」
「いえ、手柄譲ってくれようとしなくていいですよ」
「ねえねえ、毒槍試してみたいんだけど」
「二人で試しておいで、俺はカミナが戻ってくる準備に入るよ」
「「ええ~~」」
なんだか不満そうだ。あと10日ほどでカミナが実家から戻ってくる。
まあそれまでは精霊の力でレベルアップ出来ると思ってたんだろうね。
赤ん坊が来ちゃうとそれこそダンジョンに来なくなると思ってるから今のうちに恩恵を受けたいのだろう。
「何の準備があるの?もう名前は決めたでしょ?」
「結局カエデちゃんになったんですよね?」
「他にもいろいろあるだろ。哺乳瓶買ったり」
「もうカミナが使ってるでしょ」
そうだな、準備はとっくに万全だ。
むしろ甘やかしすぎなくらい準備は整っている。
「はあ、浮気ですか」
「すぐそれだな。俺そんなにモテるように見えるか?」
「前に比べたら別人だよ?髪も生えてお腹も引っ込んで」
まあ自覚あるけどね。でも浮気ではありません。
現に目の前にこんなに魅力的な二人がいるのに手を出さないではないか。
「うわ、なんか急に褒めてきた。逆に怪しい」
「おじさん、ウチらを煙に巻こうと思ってません?」
「お、思ってないよ」
なんだよ、今日は結構鋭いな。
良いから俺にも自由をくれ。子供が来たらそれこそ寝る暇も無くなるんだから。
今のうちに羽を伸ばしておきたいんだよ。
「ガルーダ行こうと思ってたのに」
「ガルーダのドロップは弓とエメラルドのビキニアーマーだぞ?お前らには関係ないでしょ」
ゴネる二人をなだめ、じゃあそういう事でと話を終える。
別にいいじゃん、二人でレベルアップしてなよ。
ホゲーの加護が無くてもバジリスクを倒せるくらいになってくれよ。
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飛川さんに連絡を取り、直接会って石板を渡す。
解読?してないよ?これもどうせ銅ダンジョンのカギじゃないの?
「解読は国でやってよ」
「はあ、任せていただけるのであれば…」
俺は忙しいんだ。解読などに時間を使いたくない。
ハメるのもそっちでやってよ。準備もあるだろうしタイミングとかもそっちで決めていいから。
石板発見者には報酬が出るの?いつの間にそんな事に…
じゃあ俺とミオコとミヅキに分割で振り込んでおいて。
「おじさんには道後の分も合算して振り込みますんで」
オーケー了承した、それではこれにて。
テレポートで家に帰った。
「何か急いでましたね?」
「そうね琥珀ちゃん、浮気かしら?」
「ええ?そういう人なんですか?」
「冗談よ」
そういう人ではないと思う。私にも見向きもしないもの。
相手をしてほしい訳ではないけど、ここまで淡白だと自信を無くすわね。
現役時代はアイドル冒険者だった私をここまで袖に扱うなんて…
「先生は魅力的ですよ?」
「慰めるのはやめて、はあ、私も彼氏作ろうかな」
「航くんは駄目ですよ?」
狙ってないわよ。若いアイドルなんて。
そもそも琥珀ちゃんのものですらないと思うけど言わない方が良いかしら?
闇落ちされると困るしそっとしておこう。
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さて、明日は絨毯型モンスターに行くぞ。今日はゆっくり休んで早く寝るとして…
レーヴァテインはアイテムボックスに入ってるよな?準備は万端のはず。
しかしいつまでも絨毯型モンスターでは呼びにくいな。だれか名前つけてくんないかな。
SNSを見てみる。俺と綾元さんパーティ以外で100層に届いている人はいるのだろうか…
情報が無い、届いてないのか死んじゃってるのか。
ええい、俺が名前つけるか。タコとエイを合わせたようなモンスターだからオクトレイでいいや。
よし、明日はオクトレイに行くぞ~。
翌日、銅ダンジョン100階層
「はあ、はあ、なんとか行けたか」
加護全開で何とか倒し切った。くたくただけどソロで行けたか。
体感的にだけど、800ダンジョンボスより経験値が多い気がするな。
これからはこいつでレベルアップしていこうかな。
錬金術の本は出てないな。変な話だけど出なくてホっとしてる。激レアであってほしい逸品だ。
あんな物が景気よく出たら世の中のバランスが崩れてしまう。
翌日もオクトレイへ、ただダウンしてるだけの相手を攻撃するのも鈍りそうなのでギリギリまで相手してみるか。
まずは普通に攻撃、足元がおぼつかない中で四方八方から触手が飛んでくる。避けるのに必死で攻撃する暇が全然ない。精霊なしだと全然活路が見いだせない。
中央の盛り上がりに一撃入れる。大きく揺らぐオクトレイ。
やっぱあの中央の盛り上がる部分がダメージ大きいっぽいな。
だが簡単には近づけない。うお、やべ、足元がバウンドし空中に飛ばされるところだった。
今日はこの辺にしとくか。ホゲー、加護を頼む。
ホゲーの加護3回で難なく終了。
レーヴァテインの獄炎を中央に集中させると討伐時間も早かった。
あれを加護一回目からやれば押し切れるんじゃないか?
いや、それはもうちょっとレベル上がってから試してみようかな。
3日後
昨日一昨日と同じような要領でオクトレイを倒す。その中で敵の動きも見えてきた。
相手を空中に飛ばす時に反対側の体の一部が強張ることが判明、力を入れてるんだろうな。
行動の一部が読めるようになったので脅威が一つ減る、今後の討伐に行かせるだろう。
では今日は加護2回で討伐することを目標にしてみよう。
加護2回で討伐は出来たが時間がかかりすぎてしまった。
やっぱダウンしてないと隙を見つけるのが難しいな。触手は切っても再生されるみたいだし…
そもそも体全体が軟体動物っぽくてぐにゃぐにゃしてるんだよな。
この足元のおぼつかなさを無くせればもっと早く討伐できるんだが。
「今日も錬金術の本は無し…なんだありゃ」
サイコロだ。六面体のダイス。
だが図柄がおかしい、六面全て7の図柄になっている。
「ふむ、鑑定に出してみるか」
鑑定はレアスキルだ。俺もスキル本を見たことが無い。
道後にスキル持ちはいるだろうか?ブロンズダンジョンが出た今ならいるかもしれないな。
事務局に問い合わせると近くにはいないって。残念。
でも呼んでくれるらしい。テレポート持ちが連絡ついたみたい。
「こ、これ、特殊エリアでもレベル変動が無くなるらしいです」
「ああ、そういう事か。オロチより先にこっちに来ないといけなかったんだな」
意味を理解した。このサイコロは別府の777を抜けるためのアイテムだ。
あそこにはこのサイコロを持って入らなければいけなかったのか。
「でもサイコロ無しでも行けたよ?」
「他の人は行けてないんですよ」
そんなのお前だけだという目で見られる。
敵をすべて回避するルートがあるんだけどな。
まあみんなレベル変動のプレッシャーに負けてしまうのだろう。
「ですがこれは所有者にしか効果が無いようです。パーティでいくなら人数分無いと…」
そうらしい、でももうどのみち俺には関係のない代物。
いや待てよ?これから誕生するダンジョンでも同じようなエリアが出てくるかもしれない。
一応持っておくか。
「この事は公表してくださいね?」
「ああ、新しい攻略サイトのアンアンにでも情報提供するよ」
サイコロの写真を撮り、小早川ちゃんに送る。
これこれこういうもんらしいからサイトに乗っけといて。
鑑定士さんに謝礼を払う。100万?たっけーな。昔よりずいぶん値上がりしてる。
まあテレポートですぐ来てくれたから払うけどね。
「…そういえば綾元さん、錬金術の本を一発で見分けてたけど、鑑定持ちだったんだな」
鑑定、便利だよな。初出でも何だか解るんだもんな。
スキル本や魔法本も表紙に一応文字が書いてあるのだが、この世界に存在しない文字なので読めないんだよね。
だから手に入れても解読するまで何の本かすら解らない。
一度手に入れたことのある本なら文字の形や外装でなんとなく解るようになるのだが。
巡り合わせが悪かったのか以前の俺は鑑定を手に入れることが出来なかった。
以前は必要ないと思ってたけど新しいダンジョンも出来たし持ってて損は無いよな?
金出してオークション漁ろうかな。
まあいいか、今日はサイコロで満足しておこう。
二日後、触手の弱点を発見する。
どうも触手は狙う箇所が決まってるようだ。
頭を狙う奴、胸あたりを狙う奴、腰あたりを狙う奴、そして足を狙う奴。
「なので前転宙返りなんてすると…」
触手同士が絡み合う、狙う対象の位置が早変わりしたからだ。あちこちで触手が絡み合ってる。
これがなかなかほどけないみたい。バク宙でもすればすぐほどけるんだろうけどするわけがない。
「よし、今のうちに攻撃を…」
攻撃攻撃、たまに宙返り、攻撃攻撃。
「でもやっぱまだ火力が足りないか」
結局ホゲーの加護を使って討伐。
もっと最適化できると思うんだけどなぁ。
ソロは色々試せるから楽しい。
これがパーティだと「あいつ何やってんだ?」の目に晒されるからね。
二日後、大分オクトレイの動きにも慣れてきたし、今日は加護一回で倒すことを目標にしてみよう。
一度目は失敗、すぐに部屋を入りなおして二度目は成功。
時間かかるけどなんとかなりそうだな。
「ホゲー、ラス一頼むよ」
『了解だぞえ』
なんでもそうだが、やればやるほど最適化されていく。
そこにレベルアップも加算され、クリアーが早くなる。
「一時間で行けたか?」
『いや、1時間8分かかったな』
そうか、無駄なく動き回ったんだけどな。
でも今の段階ではこれが限界かも知れない。
今後のレベルアップで時間はどんどん早くなるだろう。
『一日で2体倒したんだぜ?十分だろ』
「中ボスはすぐに復活してくれるから3回倒せると経験値的に美味しいんだ」
更にホゲーの加護無しで行けるようになれば狩り放題になるんだぜ?
ソロで900中ボス連戦、俺はこれで若い時にレベルを1400まで上げることが出来たんだ。
その時は別府の中ボスだったけどね。
『でもココ、サイコロ求めてこれからは混むんじゃねえか?』
「…………」
せっかく最適化を見つける手前まで来たのに。
まあいいや、明日はカミナが帰ってくる日だ。しばらくはお休みにしよう。
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翌日、カミナが戻ってきた。
幸せ空間だ。俺は今幸せ空間にいる。
「カエデ、なんて可愛いんだ」
「GOD朝から同じ事ばっか言ってるよ?」
「何万回言っても足りないくらいだ」
「も~くすくす」
俺の腕に感じる微かな重みと温かさ。
ああ、幸せすぎる。この子を絶対に守って見せる。
「ねえ、取りあえず私の家に戻ってきたけどさ、この子が歩けるようになったらGODのおうちに行こうよ」
「そうだな、広い庭もあるし、近くに大きな公園もあるし」
息子とキャッチボールしたくて作った家だけど、女の子の場合は何して遊べばいいのかな。
ブランコとか置くか?やっぱプール作ろうかな?なんなら遊園地丸ごと作ったろうかな。
「も~あんまり甘やかしたら駄目だよ?」
「そうだな、ミヅキみたいになったら困るから時には厳しさも必要だ」
悪い事をしたら心を鬼にして叱ろう。
うう、考えただけで苦しい、胸が張り裂けそうだ。
「それより錬金術の話なんだけど」
「ああ、カミナには出産に集中してほしかったから教えてなかったんだけどな」
さっき話してしまった。カミナなら信用できる。
ミオコミヅキに話すなとは言わないが、良く考えてからにしてくれよ。
「でもサイコロ目当てで錬金術の本も出るんじゃない?」
「…そうなんだよな。サイコロ公表は早まったかな」
これから銅ダンジョンは今まで以上に人が押し寄せると思う。
そして同時にオロチへの道筋も出来てしまった。そのうち討伐者も現れるだろう。
今は俺しか勾玉持ってないけどゴーレム作成の道筋が広がってしまったかもしれない。
「それで道後ばっか行ってたんだね。危ない事しちゃ駄目って言ったのに」
「リスク管理はしっかりしてるぞ?実際無理せず何度か逃げてるし」
やっぱり位置管理されてたか。
しかし10回倒したのにサイコロは一度、錬金術に関しては出なかった。
おそらく両方ともレアアイテムなのだろう。
錬金術は初討伐時の確定報酬だったのかもな。
悪い予想ばかりしてしまうが、ゴーレムは正しく使えば間違いなく世の中が良くなる。
便利なことに間違いはないからな。
「それに明日、新ダンジョンが誕生するね」
奥飛騨で出た石板はやはり新銅ダンジョンのキーだった。
国会で承認が出てニュースはそれで持ち切り。
四国以外にも銅ダンジョンが出来た事でこれから新たに潜り始める人も出てくるだろうな。
「ミオコミヅキからも誘いが来てる。俺は当分潜らんぞ?」
行きたい気持ちも解るけどさ、俺は当分子供優先だ。
新ダンジョンは誰かに任せよう。




