91 ラーメン
次の日、カミナと赤ん坊の顔を見に行く。
お父さんいつもいますね。ご機嫌いかがですか?
聞くまでもなく今機嫌が悪くなったって。しょんぼりしながら帰ってきた。
「ふう」
『大使館に行くのか?』
「いや、もうちょっと後かな」
昨日シロトを倒してからまだ24時間経ってない。正確な時間は解んないけど復活まで約1日必要なんだよね。
無駄足踏みたくないから昨日と同じ時間に行く。
「あ、カミナに王女の事言えなかったな」
邪魔も…お父さんがいたせいで言うの忘れた。
まったく、ゆっくり話も出来やしない。
「綾元さん未だに既読つかない。死んでんじゃないだろうな?」
悪態をついた訳では無い。実際冒険者には起こりえる事だ。
チョイス持ってる人だしダンジョン内で泊まる事も無いはずだからな。
既読がつかないと心配にもなってくる。まったく…
「ああ俺、カリカリしてるなぁ」
うまくいかない事が増えるとストレスを感じちゃうよね。
こういう時は気をつけないと、今日も育成ある訳だし子供達にも伝わりかねない。
海外のVIPだからな、国の立場も考えてあげないと。
『まあコーヒーでも飲め』
「淹れてくれよ文太」
『無茶言うな。それが出来たら自分で飲む』
ははは、お前は時々俺の食事をじっと見てるよな。
美味しそうに見えるのか?レッサーパンダは雑食だっけ?
おっと、精霊は精霊、姿が似ていたとしてもその物ではない。
『プリン食ってみたいんだよな』
「ああ、プルプルで美味しいんだぞ」
『ちきしょー、人間ばっかズリいよな』
出来る事なら食べさせてあげたいよ。感覚を共有したい。
一緒に食事を出来たらどんなに楽しいか。
『ホゲーはたくさん食いそうだよな』
「たしかに…破産しそう」
一緒に食事したいと思ったけど思い直した。
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「ごめんくださーい」
ベルギー大使館に来た。始めて来る場所だから勝手が解らん。
ガードマンに話は通っていたようだが、中に入るには武器を預けないといけないらしい。重要施設はそうなのか。
だったらここまで呼んでくれない?いちいち預けるのもめんどくさいよ。
それは出来ないって、やっぱ迎えに行かないと失礼に当たるのか。
「やあ、準備は出来てるか?あれ?もう装備着てるの?」
「昨日はいきなり普段着で連れていかれたんですもの。今思えばどうかと思うわよ?」
「はは、確かに」
どうせ精霊で一撃だし俺も普段着で行ってしまった。
しかし結構良い装備だね。金に糸目をつけていない。
あれ?他は?3人しかいない。
貴族様は時間もルーズなのだろうか。
「二人は体調を崩してしまったの。時差ボケもあるのでしょうね」
「あらら」
海外に来たからそんな事もあるだろう。
しかし困ったな。4人で行くとなると計画が狂ってしまう。
経験値四等分だからな、レベルが上りすぎて他の子も体調崩すと困る。
今日も文太に引っ込んでもらうか?それとも今日はやめる?
レベルがバラバラになるからそれもアリかも知れない。
「ええ?せっかく準備したのに」
うーん、プリンセスがそれを許さない雰囲気だ。
困ったな、どうするのが正解なのか。
「トビカワも現地で準備してくれてるのよ?」
「そうなの?」
飛川さんはダンジョンに前乗りしてるらしい。
恐らく育成の時と一緒で手厚いサポートを考えての事だろう。
そうなると行かない訳にはいかないかな。
「じゃあテレポ…入り口で武器返してもらわないと」
来た道を引き返す。入口で武器を返してもらった。
外に出てテレポート使おうとしたら王女を外に出すなって、はあ?
危ないから中で飛べって?じゃあ結局武器を大使館の中に入れる事になるけど…なんなんだ、この無駄なやり取りは。
「ふふ、規則が多くて大変よね」
「王族ともなるといつもこんな感じなの?」
「ええ、窮屈すぎておかしくなりそうな事もあるわ」
そうだろうな、何不自由ない生活だろうけど、羨ましくないもの。
それだけに冒険者になる事を許されたのは不思議ではあるが。
「王位継承権から遠いのと、私が強くなって家族を守るからと情に訴えて何とかなったわ」
「実際近場に冒険者がいてくれるとセキュリティーが全然違うものな」
「冒険者専業は珍しいけど王族がダンジョンに潜る事は時々あるのよ?」
「ああ、ステータス上げて自分自身を守るためにでしょ?」
高レベルの冒険者に高額払って護衛させながらそんな事をすると聞いたことはある。
VIPは命を狙われる立場でもあるからね。
まあ今の俺も同じような依頼を受けている訳だが。
取り合えず飛ぶか。テレポート。
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伊豆高原に着いた瞬間日本のSPに取り囲まれる。
守る為だろうがこの子達はすでに君達より丈夫だぞ?
まあ仕事だろうからやめろとも言えんが。
「いったんバスの中へ入ってください」
飛川さんに促され日本政府が準備したバスの中へ。なんだよすぐに終わるのに。
やっぱ政府が絡むと時間かかるんだよな。
「そういや学校は?まだ15歳なんでしょ?こっちの学校に通うのか?」
「優秀な家庭教師がついてきているわ。他の子は日本語が解らないし学校には通わないわ」
「そうか、どれくらい日本にいるつもりなの?」
「解らないわね。すでにホームシックの子もいるし困ったものね」
あらあら、温室育ちだな。まあ言葉が解らなければ不安にもなるか。
王女はどうなの?やっていけそう?
「私が日本に来たのは他にも目的があるの。ラーメンを食べたいのよ」
「へえ、王族がラーメンとは…どこで興味を持ったの?」
「動画サイト、行きたいお店のリストまで作ってしまったわ」
なるほど、実に当たり前の答えだった。
しかしこんなに警備が厳重だとラーメン店に行くのも大変そうだな。
やっぱ貸し切りにしたりすんのかな。
「おすすめのお店を教えてくれても良いのよ?」
「俺はつけ麺が好きなんだよな。でも最初はスタンダードな物の方が良いよね?」
どこがいいだろ?外国人はトンコツが好きって聞いたことあるけど。
だとするならチェーン店だけど〇蘭かな。俺としては山〇家の方が好みなんだけどね。
細麺が好きか太麺が好きかでも変わってくる。
「リストにも入ってるし両方行ってみるわ」
「すでにチェック済みか。でもそんな簡単に行けるものなのか?」
「こんな警備は最初だけだと願いたいわね。強くなったらもう少し自由も貰えると思うの」
そうだといいね。じゃあ今日も行ってきますか。ダンジョンに潜りすぐにチョイスで600へ。
シロトにホゲーをズドーン。ドロップ拾ってリターンで帰ってくる。
ダンジョンから出るとすぐにSPに取り囲まれバスの中へ。
「体は大丈夫か?」
「私は大丈夫、レベルが昨日よりも上がったわね」
ああ、四等分だし文太の加護も使ったからな。
いくつ上ったの?28?合わせてレベル54か。
おかしなレベルの上がり方してるけど気にしないで。あとホゲーの事も内緒な。
ふう、バスの中はなんだか息がつまる。俺は外に出よう。
飛川さんが近づいてきた。
「おじさん、次は那須ですか?準備もあるので予定を聞いておきたいんですが」
「うーん、来なかった他の二人は26だよな?どうしようかな…」
もう一回シロトに行くべきかな。それともフェンリル行っちゃうか。
加護ありフェンリル6等分でどこまで上がってしまうのだろう。
でも次も欠員出るかもしれない。そうなると26の子は上がりすぎちゃうよな?
はてさて何が正解なのやら、ややこしくなってしまったもんだ。
「…安全策だな。次もまたシロトに行くよ」
「それが良いですね。あ、帰りは私達が彼女達を送るので大丈夫ですよ」
そうなの?そういや側近にテレポート使える人いるんだっけ。
だったら彼女達は来る時もその人に運んでもらえばいいのではないだろうか。
大使館で一悶着あったからちょっと懲りちゃったよ。
「おじさんがいつ来るか解らないもので、VIPを長時間バスの中で待たせる訳にもいかないですし」
「俺が飛んで来たら連絡を入れて後から彼女達が飛んでくるのはどうだろうか?」
「それならまあ…やれやれ、いつまで続くんですかね、これ」
調整する飛川さんが一番大変だよな。でも女の子達もこんなに厳重な警備は望んでないみたいだぞ。
遠くから見守るくらいで良いのだと思うが…まあ最初はどうしても大袈裟になっちゃうんだろうな。
じゃあ俺は先に帰るよ。時間あるんだしこの後立ち回りとか教えたら?
それはそれで大変そうだな。どうやって潜るんだろ?
まあ俺が心配する事ではないか。お疲れ様。
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家に戻ってきた。ソファで一休み。
『ラーメンか、俺も食ってみてえ』
「ははは、今日は食べ物の話ばっかだな」
『ボクも食べてみたい』
「ちぃ太も?食べる姿が想像できないな」
チーター型の精霊ちぃ太、箸持てるのかお前。あと猫舌に見える。
『卵の色が凄く美味しそうじゃない?』
「ああ味玉かぁ、半熟卵の鮮やかなオレンジ色が食欲そそるよな」
『主はあれに少し醬油を落として食べるよね。塩分取り過ぎじゃない?』
「健康志向なのかお前」
肉しか食ってないような顔をしてるくせに。
怒るなよ、見た目で判断して悪かった。
「しかし文太はプリン、ちぃ太は味玉、精霊は卵好きなのか…?」
『ワシはロールキャベツを食ってみたいのう』
「卵関係なかったか。つかレオンがロールキャベツ?」
『ワシの舌みたいにクルクル巻いてあるではないか。形が素晴らしいんじゃ』
自分の舌に似てるから食ってみたいって事?興味持つポイントが解らんな。
俺はロールキャベツそんなに好きでは無いんだけど…女子が好む食べ物だと思ってる。
つか形で言うなら…
「これなんてどうだ?」
『なんじゃこれ!食い物なのか!』
蕨の画像を見せてみた。一応食い物だよ。
これも好きじゃないから食ってるの見せた事無いと思うけど。
『きっと高級品なんじゃろうな』
「いや田舎の素朴な山菜だ。じじばばの食い物だよ」
『なんか腹立つからしばらく出んぞい!』
あらら、怒ってしまった。気難しい奴め。
やれやれ、蕨買って来たら許してくんないかな。
都会で売ってるの見た事無いけど、わらび餅で勘弁してくんないかな。
どうせ食べられないんだから無理か。
ピンポーン
ん?誰か来た。宅配みたいだ。何も注文した覚えは無いんだけど。
まあいい、出てみるか。
荷物を受け取るとベルギー大使館からみたいだ。
なんだろ?さっき行った場所なんだけど忘れものでもしたかな。
「チョコか、これは一応謝礼か何かかな」
ベルギーらしくチョコレートが贈答品として送られてきた。
ほれレオン、蕨は無理だけどチョコ貰ったぞ。
全然出て来てくれない…形が好きじゃないのだろうか。
『主、飴でいけるんじゃねえか?』
ペロペロキャンディーを買いに行ったらレオンの機嫌が直った。
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「ねえルシル、伊豆高原にプリンセスがいたらしいよ」
「何の話?」
熱海ダンジョン前広場
「解んないけどどっかの国の姫様が日本で冒険者をやるんだって」
「へえ、なんでそんな事に?」
「わかんない」
でもなんかSNSで話題になってるよ?ルシルも見てみたら?
「こ、これは!!!」
「どったのルシル」
「あ、あたしの理想のハイエルフ!」
あ………やばいかも。
そうだった、ルシルにはこれがあるんだっけ。
「エレナ、明日は土曜だし伊豆高原行かない?」
「え?ええ?な、なんで?」
「ハイエルフに愛を伝えるためだよ!」
「あ、相手は海外の王女だよ!?国際問題になるよ!」
「いいもん、あたしは一人でも行くからね」
「え、えええ!!!」
え、えらいこっちゃ。こんな時ウチ一人でどうしたら良いのか。
ぱ、パイセンに助けを求める?でも受験勉強してんのにそんな事…
ウチが話題出した責任あるし、その尻拭いをさせるのもなぁ。
し、仕方ない、明日はルシルを徹底マークの日。
ルシルがおかしな事をしないようウチが頑張らないと。




