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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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90/109

90 プリンセス

 子供が産まれた。今は病院にいる。


「よくやったぞカミナ」

「GOD、泣かないで」


 3000グラムの女の子、なんて可愛いんだ。

 頑張って命を作り出してくれてありがとう。


「いつ頃退院だ?」

「5日後に退院、その後生後一か月までは実家で過ごすね」


 入院先で1か月児健康診査を受けて問題なければこっちに戻れるんだよな。

 毎日会いたいから早く1か月経って欲しい。


「別に毎日会いにくればいいでしょ?」

「そうしたいけど今も入り口で睨んでる人がいるしなぁ」


 カミナのお父さんは相変わらずだ。俺はいつ許されるのだろうか。

 初孫でも駄目だったか。お父さんの意思は固い。


「それより危ない事しちゃ駄目だよ?危険なダンジョン行ってるでしょ」

「行ってるけど精霊のお陰で危なくは無いんだよ」

「父親の居ない子にはしないであげてね」


 解ってるよ。この子を残して逝くなんて考えられない。

 出来ればこの子が天寿を全うするまで見守ってあげたい。それは無理か。


 名残惜しいけどお父さんの視線で禿げそうだったから帰ってきた。

 はあ、可愛かったなぁ。



 ---------------



 ピンポーン


 家でくつろいでたら誰か来た。

 インターホンのモニターを見ると飛川さんだ。

 なんだろ?連絡もせずに家に来るなんて何事だ?

 つか俺の家知ってたんだな。まあ国ならすぐに調べられるか。


 ガチャ「はーい、どうしたの?」

「ちょ、ちょっと緊急のご用件がありまして」


 飛川さんの後ろに女の子が5人居た。そしてその後ろには屈強なボディガードっぽい男達が。

 外国人だな。なんだか物々しい。嫌な予感がする。


「取り合えず家にいれてもらえませんか?彼女達を外にいさせるわけには…」

「なんなの?急に来られても困るんだけど」

「えーと、貸しがありましたよね?それを今行使します」


 むむう、そう来たか。影山の時の貸しだよな?

 視察に付き合った事で貸しを清算しておくべきだったか。でもそんなの忘れてたよ。


「仕方ない、広い家ですがどうぞ」

「そこは普通狭い家と言うものでは…」


 実際広いんだもん、嫌みにしかならんでしょ。

 ボディーガード達は半分しか家に上がらなかった。残りは外を警戒するらしい。

 なんだろ?この女の子達はなにか特別な扱いを受けてるように見える。


 リビングに招きいれソファーに座ってもらう。

 行儀よく座る女の子達、なんだか気品を感じるなぁ。

 何者かは知らないが掃除しといて良かった。


「この方々はベルギーの王室と貴族の子達で」

「はい?そんな子達がなんで俺んちに?」

「えーと、私も混乱してるんですが、一から説明しますね」


 日本国ではベルギー王家の依頼を受け、第四王女の冒険者留学を引き受けた。

 本日は来日日、空港まで迎えに行ってみたら王女以外にも4人の女の子がいた。

 それぞれ貴族の子達で王女について日本に来たらしい。

 遊びに来ただけなら問題は無いのだが、なんと4人共王女と一緒に冒険者としての留学を希望している。

 まさか5人も面倒を見る事になるとは思ってなかった飛川さんは大慌て、で、俺んちに来たらしい。なぜそうなる。


「そういうのって事前に人数確認するもんじゃないの?泊まる場所とかあるだろうし」

「上司が確認したはずなんですよ。でも空港に行ってみたらこんな状態で…泊まるのは大使館なので問題ないんですが」


 ああ、ベルギー大使館近いもんな。

 上司のやっつけ仕事か。飛川さんも苦労してんだね。


「でも王族が冒険者?なんで?」

「それが、綾元さんと親交があるらしく…」


 ああ、あの財閥の巨乳か。

 一応現在世界で唯一の錬金術師でもある。


「綾元さん、やたら自慢話をしてたみたいで」

「ああ、承認欲求強い女だからな」

「それで王女は強い女に憧れを持ってしまったみたいなんです」


 だったら綾元さんに責任取らせれば良いでしょ。なんでウチに来たの?


「綾元さん、国の連絡から逃げてるんですよ」


 ああそっか、めんどくさい事頼まれるの嫌だから警戒して逃げてるんだよな。

 パーティメンバーとかあたってみたの?


「パーティメンバーは綾元さんの使用人達ですからね。主人の居場所を言いませんでした」


 あのパーティ、綾元さんの独裁に見えたけど使用人達だったのか。

 パーティメンバーも高レベルだし国も強く出られなかったのかもしれない。


「いや待てよ、俺は連絡取れるから電話してみよっか?」

「お願いします」


 まったく、なんで俺がこんな事を…つながらないな。


「やっぱり出ませんか?」

「出ないというより電波が届いてないね。ダンジョンの中にいるかスマホをアイテムボックスに入れてるんじゃないかな」


 まあいいや、メッセージ送っておこう。

 見たらすぐに連絡しろよ。このトラブルメーカーめ。


「ねえ、のどが渇いたわ。お茶を入れてくださらないかしら?」

「ん?ああ、気が付かなかったな」


 女の子の一人に声をかけられる。

 一番気品のある子だ。多分この子が王女っぽい。

 プラチナブロンドの超絶美人、外国人は顔の作りが違うよな。


「でも参ったな。うちはコーヒーしか無いよ…あれ?日本語話せるの?」

「ええ、ユアに教えてもらったの」

「ユア?どっかで聞いたような」

「ユア・アヤモトよ。知り合いなんでしょ?貴方の話もしてくれたわ」


 綾元さん、結愛って名前だったっけ。そういや自己紹介の時聞いたかもしれない。

 胸しか見てないから忘れてしまっていた。


「おじさん、もうちょっと敬意を込めて話してください」

「別にいいわよ、私も普通にしてもらった方が楽ですもの」

「インスタントだけどコーヒー飲むか?」

「いただくわ」


 飛川さんがハラハラしてるけど無視してコーヒーを淹れる。

 俺は安いコーヒーが好きなもんでね。豆挽いたのとか胸焼けしちゃうんだ。

 5人の前にコーヒーを運ぶ。口に合わなかったら無理しなくていいぞ。


「まあ、面白い味ね」

「庶民の飲み物だからな。必要なら砂糖持ってくるけど」

「チョコレートはないの?」

「ベルギーってコーヒーとチョコ一緒に食べるの?」


 和菓子と緑茶みたいな感じで一緒に楽しむらしい。

 ベルギーと言えばチョコの国だもんな。


「チョコはないなぁ。あっても日本のチョコが口に合うかどうか…」

「食べた事あるわよ。私はタケノコ派ね」

「あはは、ニッチな戦争を知ってるんだな」


 俺もタケノコ派だ。綾元さんはキノコ派らしい。

 またあの女を憎む理由が出来た。さっさと連絡して来いよ。


「で、飛川さんがうちにきた目的だけど」

「王女一人なら国で護衛をつけながら安全に冒険者生活を送ってもらおうと思っていたんですが」


 彼女達はまだダンジョンにも潜った事が無いらしい。

 つまりはレベル1の状態、冒険者登録だけは向こうでしてきてる。

 母国の発行した冒険者資格の方が良いと思ったのだろう。


「5人でパーティ組む気なの?」

「そうよ、仲が良いからついてきてもらったの」

「いやでもな、適性が解らんうちにパーティ組んでも…例えば全員がヒーラー適正だったらどうするんだ?」


 バランスの悪いパーティになるぞ?

 せめて母国でそれくらい確かめてから来ればよかったのに。


「それも面白そうではなくて?モンスターをぎったぎった倒すヒーラー集団」

「そ、そう思えるなら止めはしないけど」

「それでですね、また育成をお願いできないですかね?ある程度レベルが上ってしまえば心配も減るので」


 そう言う事か。やっと飛川さんの思惑を理解した。

 だけど俺の育成方法には絶対防御が必須だ。

 カミナは子供産んだばかり、綾元は行方不明、他に当てはあるのか?


「すみません、国で把握している絶対防御持ちはその二人だけで…」

「今日めでたく子供が産まれたばかりなのに無理難題を持ってこないでよ」

「お、おめでとうございます」

「まあいいか」

「はい?」


 じゃあ5人共立って。5人を連れ伊豆高原ダンジョンにテレポート。

 文太はアイテムボックスに入ってくれ、チョイスで600層へ、シロトにホゲーをずどーん。

 ドロップ拾ってリターンでダンジョンを出てテレポートで家に戻ってくる。ここまで3分。


「きゅ、急に消えてどこに行ってたんですか?SPが大騒ぎですよ?!」

「レベル上げてきた」

「はい?」

「れ、レベルが26に上がったわ」

「体おかしくないか?」

「ええ?今の一瞬でダンジョンに潜ってきたんですか?」

「飛川さんは知ってるでしょ?俺の新しい戦力」


 コーヒーが冷めないうちに行ってきたよ。

 お、なんかかっこいいな、このセリフ。


「適正はどうだ?」

「な、何が何だか」


 王女はちんぷんかんぷんみたいだ。

 他の子も狼狽えてるけど外国語で何言ってるか解らん。


「レベルいくつまで上げれば良いの?つか報酬は?」

「ちょ、ちょっとまず説明を…」

「ねえ、これ適正は何になるのかしら?」

「おお、ベルギーの冒険者資格はスマホ管理なのか、ダンジョン少ないのに進んでるな。うーん、外国語読めない」

「ユーロ圏はどこもそうよ?」

「説明を~」


 カオスになっちゃった。ちょっといきなりすぎたかな。

 でも俺もそこそこ忙しいんだよ。時間かけてられないから即行動しちゃった。


「はあ、シロトを一撃で倒してきたと」

「ねえ、あの子足がおかしいんだって」

「マッサージで治るぞ。大使館で誰かにやってもらいなよ」

「飛ぶ前に一言言ってくださいよ」

「国の許可とか時間がかかるに決まってる」

「私、剣士の適性があったみたいだわ」


 他の子はヒーラーと魔法使いと弓職ともう一人剣士。

 結構バランスよく揃ったみたいだな。


「道後の時と一緒で立ち回りは国で教えてね」

「は、はあ」

「で、報酬は?」

「ま、まだ考えてませんでした」


 なんだよ、これだから国は…

 まあ飛川さんも寝耳に水だったんだろうけど。


「私の国からお金は出すわよ?一人いくらでどれくら上げてもらえるのかしら?」

「100までなら一人100万ユーロ」


 ユーロ今いくらだっけ?まあ適当でいいや。

 ただし100まで、100以降は時間かかるから勘弁してほしい。

 俺もそんなには時間使えない状態なんだ。


「明日の今頃また来てよ。それともこっちが出向こうか?」

「出向いてください、王族を呼びつける気ですか?」

「私達は先にダンジョンのある場所に行ってましょうか?運ぶのも負担がかかるのでしょう?」


 うーん、そうなんだけどね。でも伊豆高原は明日までだと思う。

 明日以降はフェンリルに行く事になると思う。あいつなら加護一回で倒し切れるし。


「ふぇ、フェンリル!?」

「うるさいな飛川さん。育成で不死王に行ってるのに今更なんだよ」

「だ、大丈夫なんですかね?何かあったら国際問題ですよ?!」

「俺に任せる気で来たんじゃないのかよ」


 どうせ自分ではどうにも出来ないから俺に投げつけに来たんでしょ?

 だったら自由にやらせてくれ。死なせるような事はしないから大丈夫だよ。


「はあ…検討したい」

「それは1年くらいかかるやつじゃないか」

「私達もそんなには待っていられないわ?この方にお任せするべきではなくて?」

「お、王女様がそう言うなら」


 やっと話がまとまったか。

 まったく、ダンジョン潜ってるより話し合いの方が長いんだもんな。


「ねえ、私はフィオナ、プリンセスフィオナよ」

「そういや自己紹介もまだだったな。俺は…」


 よく考えたら自己紹介もしてないのに訳の解らんおっさんに連れ回されて大変だったな。

 まだ時差ボケも抜けてないよね?


「怒涛の一日で楽しかったわよ?じゃあまた明日お願いね!」


 プラチナブロンドをなびかせ去っていった。見かけによらず図太い子みたいだ。

 いいな、俺も年甲斐もなく髪染めようかな。


「うう、国にどう報告すれば」

「知らんがな。王女について行かなくていいの?」


 慌てて飛川さんも帰っていった。

 まったく、突然来て俺の平穏をぶち破りおって。

 綾元さんは既読つかないし、どいつもこいつも勝手な奴らめ。


『ふぉふぉふぉ、主は面白いぞえ』

「ホゲー、休みの予定だったのにすまなかったな」

『まったく、いきなりアイテムボックスに入れってよ』

「悪かったよ文太、子供が産まれたから面倒事は速いとこ片づけたかったんだ」


 明日からは文太の加護にも頼るからな。

 テレビをつけたら丁度王女来日のニュースがやってた。

 普段は気にもしないニュースだ。どこのVIPが来ても関係なかったからな。

 そういや他の留学はどうなったんだろ?

 まあ別にいいか。今は何より子供の事を考えないと。

 こっちにだってプリンセスはいるんだからね。

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