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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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89/102

89 バジリスク

 翌日、奥飛騨ダンジョンへと来た。


「すんごいド田舎」

「ミヅキ、口を慎みなさい」


 今日もミヅキが怒られてる。

 天真爛漫な帰国子女、親の教育が悪かったのか、海外の空気が悪いのか。


「高級毒消し持ったか?バジリスクは毒持ってるぞ」

「持ってますよ。予習はばっちりです」

「万が一の為に普段から持ち歩いてるよ」

「さて、カミナがいるなら階層覚えの為に1から潜るとこだが、今日は一気にボス部屋まで行くぞ」

「了解です」

「精霊使ってくれるんだよね?」


 ああ、でないとお前達のどちらかが死ぬ恐れがある。

 まだ精霊無しの俺達では安心して倒せるレベルではない。


「じゃあ行くぞ」



 ~5分後~


「えー初回は失敗だったわけですが」

「ミヅキ?!大丈夫?」

「うう、精霊に潰された」


 実体化するって行っておいたのに。なんで動かなかったんだよ。

 ミヅキが逃げ遅れ、吹っ飛ばされたので慌てて抱えて逃げ帰ってきた。


「あ、あまりに凄くて見惚れちゃった」

『ふぉふぉふぉ、わが姿に魅了されたぞえ?』

「ほれヒール、取り合えず死ななくて良かったよ」


 カミナがいてくれたら絶対防御で守ってくれたかもしれない。

 まあ失敗もある程度想定済みだ。バジリスクもダウンしてたから簡単に逃げることが出来た。


「も、もう一回行こうよ。今度は失敗しないから」

「ホゲーの本日の加護はあと2回だ。今日は諦めて後日万全の状態で挑もう」


 焦りは失敗をさらに誘発する。

 ミヅキは自分が足を引っ張ったと思ってるのだろう。こういう時は要注意だ。


「うう、何も出来ずに終わった」

「精霊の動きは見れたでしょ?次は避けてくれよ」

「元気だしなよミヅキ」


 じゃあフェンリルと鵺でも倒しに行こうぜ。

 鵺はもう余裕だし、フェンリルは加護一回で行けるはずだ。

 時間余ったらオンセンサルも行くか?加護で瞬殺だから張り合い無いけど。

 そんな感じでその日は終わった。



 --------------------



 翌日、再度奥飛騨へ来た。


「昨日カミナからバジリスクに行ってるの?ってメッセージ来た」

「ウチにもメッセージ来ましたよ。位置共有してるんでしたっけ?」

「あの子ももうすぐ出産なのに羨ましいんだろうね」


 心配もあるんだろう。言わずに行ったのはまずかったかな。

 別府に行ったのもバレてるだろうし…ホゲーの加護の効果を試したくて周りが見えてなかった。


「子供が産まれるのに何やってんの?って思われてるかも」

「ナーバスになってるでしょうからね」

「えー?バジリスクやめるとか言わないよね?」


 やめないよ。バジリスクはソロでもいけてるし。

 昨日はミヅキのせいで失敗しただけで余裕だ。


「まあ毒槍出るまでは付き合うよ。休みは欲しいけどね」



 奥飛騨ダンジョンボス バジリスクの間


 巨大な蛇の王がとぐろを巻きこちらを睨んでいる。

 固い鱗に包まれた体、巻き付かれると体中の骨がバラバラになる。

 猛毒のある牙、すぐに解毒しないとあっという間に死ぬ。

 体がものすごく長いから見えない場所からもムチのように尻尾が飛んでくる。


「まあそれもダウンしてしまえば脅威ではない。ホゲー頼む」

『おまかせあれ』


 地面の中からクジラが飛びあがる。

 巨体が降り注いでくる姿は何度見ても壮観だ。凄い迫力だよな。

 ミヅキが見惚れてしまった気持ちもよくわかるよ。


 ずどーん


「よしダウンした!弱点は頭と腹だ!肛門のちょっと上あたり!」

「こ、肛門どこ?おっきすぎてどこにあんだか…」


 大体全身の約80%進んだ下側だ。探せ探せ。

 俺は頭を攻撃するよ。頭はバジリスクが気が付いた時に一番危ない場所でもある。

 蛇は基本的に目に入った動くものを攻撃してくるからな。


 目と牙を潰しておくかな。それだけで脅威が減るし。

 だがダメージが溜まる気がしない、手間取ったら手数が足りなくなる気もする。

 牙は固そうだ、目だけにしておくか。ざしゅ、ざしゅ

 そして眉間を攻撃、本当の弱点はここだ。硬くてなかなか刃が通らない。この硬い鱗の下に弱点がある。

 鱗を破壊しきる事が出来れば脆い弱点が残るだけ、そこに行くまでが大変なのだが…あ、ちょっと動いた。


「起き上がるぞ!加護使うからいったん退避!」

「お、お腹の弱点見つからないんだけど!」


 なに?じゃあ全然攻撃してないのか?仕方ない、次はお腹に行くか。


「目を潰したんですか?手当たり次第に暴れてますが」

「噛まれる心配は無くなったろ?吹っ飛ばされる心配はあるが」

「肛門どこなの?」


 肛門を求めるビキニアーマーの女、うら若き乙女がはしたない。

 いやだわ、これが腐女子ってやつか。


 クジラが飛びあがり、またバジリスクがダウンする。

 こっちだ!ついてこい!


「ほら、この白い範囲が少しだけ大きい場所が弱点だ」

「大きいって言ってもほんの少しじゃん」

「これ、初見じゃわかりませんよ?」

「白がちょっと鮮やかじゃないか?慣れればすぐに見分けがつくよ」


 ここは鱗も薄いしすぐに壊れるぞ。ほれ、ざしゅ、ざしゅ。

 3人で餅つきみたいに攻撃をする。ここは槍が攻撃しやすいだろうな。

 ミヅキはこれから肛門を狙え。肛門を追い求めろ。


「動き出すぞ。退避!」


 バジリスクから距離を取る。目を潰したし腹も痛めることが出来た。

 地を這いながらバジリスクが動き出す。長い長い体が頭の進んだ道を追い続ける。


「頭を上げませんね」

「腹を潰すと頭を上げる力が無くなるんだ」


 これで脅威がまた減った。だがおそらく体力はまだまだ残ってると思う。

 ホゲー3回目の加護を頼む。クジラが地面から飛び出し以下略。


「3人で頭を狙おう!鱗を壊し切ったら勝利は近い!」


 あらら、頭が壁際に行っちゃったか。これだと攻撃しづらい。

 こういう想定外の出来事で失敗は起こるもんだ。今日も無理そうなら諦めようかな。


「せ、狭いですね」

「力いっぱい攻撃できないな」

「槍はお手上げだよ」


 リーチ長い武器では無理か。ミヅキはやはり腹に行かせればよかった。

 もうちょっとでバジリスクが目覚めそう。俺の判断ミスだな。今日は諦めるか。


「ま、まだだよ!諦めるもんか!」

「お、おいおいミヅキ!」


 気が付いたバジリスクの頭の上にミヅキが飛び乗る。

 そのまま槍を逆手に持ち、弱点を攻撃し続ける。

 バジリスクも暴れはするものの、頭を上げる事が出来なくなったのでそこまでの抵抗も出来ない、されるがままだ。

 時々滑りそうになってるけど順調に体力を削っていく。


「柔らかくなってきた!い、行けそうだよ!」

「おお、頑張ってくれ」


 頭が随分遠い場所まで行ってしまった。俺とミオコは暴れる胴体を避け続ける。

 残りはミヅキに託そう。



 1時間後、ようやくバジリスクが倒れる。


「随分時間かかったな」

「はあはあ、や、柔らかくなったと、思ったんだけど、はあはあ、まだ第一段階だったみたい」


 ああ、三段階くらいあるんだよな。三段階目にはふにゃふにゃになる。

 そこまで行かないと弱点には届かない。


「つ、つらかった」

「800ボスは簡単では無いよ。初討伐としては速い方だ」

「でも、ダメージは受けませんでしたね」


 それはホゲーの加護で目と腹を潰せたからだ。

 本当はバジリスクが動き回る中で頭を潰さないといけないんだぞ。


「ど、毒槍は出た?」

「いや、残念ながら無いな。まあ一発で出るもんじゃないよ」


 ミヅキがぶっ倒れる。精も根も尽き果てた感じか。

 今日はとりあえず倒せただけでも良かったじゃないか。一度目だから苦労したけど次以降はどんどん早くなる。

 レベルもどんどん上がっていくしな。さあ、ドロップを拾ってダンジョン出ようぜ。



 後日以降、10回ほどバジリスクを討伐したけど毒槍は出なかった。

 加護込みで危なげなく討伐出来るようになったけど、ミヅキは不満そう。

 確立だから仕方ない、出ない時はとことん出ないもんだ。


「そろそろカミナの出産が近いから家で待機したい」

「えー、バジリスクだけでも…」

「ミヅキ、少しは我慢しなさいよ」


 そうだぞ、お前らも生まれたら見に来いよ。

 お祝い山ほど持ってくるんだぞ。ミヅキは変なもん持ってくるなよ。



 ---------------------



 千代田区の自宅に戻ってきた。ああ、また草伸びてるな。

 しばらく休むし家の中も片づけないと。


『主、あの場所は何か神聖な場所かえ?』

「ん?あれは皇居だな。偉い人が住んでる」

『ちょっと泳いでくるぞえ』


 見えないようにな。みんなびっくりしちゃうからな。

 精霊は俺の傍から離れられないはずだけど、でかいから行動範囲が広いな。


「ふう」

『主、お疲れだな』

「ああ文太、こんな時お前をもふもふ出来たら癒されるんだけどな」

『そんなのでいいのか?だったら実体化出来るあいつがうらやましいぜ』


 そうだな、ホゲーなら加護発動中に触ることが出来るはずだ。

 どんな感触なんだろ?ミヅキは吹っ飛ばされたから知ってるよな?

 くそう、俺が先に触っておくんだった。


「バク子やゴリ左衛門、ちぃ太にだって触ってみたいよ」

『おい、ワシは良いのか?』

「レオンは下手に触ると尻尾が切れちゃうんじゃないのか?」

『トカゲではないぞい』


 あはは、レオンにだって触ってみたいよ。

 何十年も一緒に居るのに俺達は触れ合った事も無い。

 仕方のない事だけど、少し寂しい事のように思える。


『ワシも生まれてくる子を抱いてみたい』

「ゴリ左衛門、そんな欲求あったの?」

『赤ん坊は脆いんだろ?握りつぶしちゃうんじゃねえか?』

「そんな事はないだろ、ゴリ左衛門なら優しく扱ってくれるよ」


 力が強くなる加護を持った精霊だけど優しい奴だ。

 赤ん坊を抱く姿も何となく想像できてしまう。見た目が類人猿だからだろうか。


『主の息子も可愛かった。だが何度手を伸ばしてみても触れることは出来なかった』

「…そうだったのか」

『ワシがのぞき込むと息子も手を伸ばしてきてな。触れさせてやれればと何度思ったか』


 なんか切ないな。触らせてあげたかったなぁ。

 赤ん坊のころのアイツは本当に可愛かった。ただ見守ってくれてただけでも俺は嬉しかったぞ。


「おーいホゲー、実体化ってどうやるの?」

『唐突だぞえ、生まれ持った能力なので解からんぞえ』


 丁度戻って来たから聞いてみたけどよく解からんらしい。

 まあそう都合よく実体化出来たら苦労しないか。


『実体化は負担がかかるぞえ、特にこの体は重力に弱いのでな』

「そうだろうな、何トンくらいになるのかな」


 クジラは重力に負けて陸から海に行ったもんな。

 一日3回しか加護を使えないのはそういう事なのだろう。

 ここ最近は負担かけすぎた、ごめんな。


『かまわぬぞえ、何十年もダンジョンに閉じ込められていたゆえ運動も必要だぞえ』

「そう言ってくれると助かるけどさ。でもやりたくない時は言ってくれよ?」

『ふふ、主は優しいのだな』


 これくらいは普通の気遣いだ。当たり前の事だよ。

 いつも助けてくれる精霊達を粗末に扱ったりはしない。


『俺達の心配よりも主もちょっと休め!歳なんだからよ』

「お、おう」


 逆に心配されちゃったか。気持ちは若いんだけどな。

 でもお言葉に甘えてソファで一眠りした。



 -----------------



 熱海ダンジョン前広場


「おじ様帰ってきたのかな?」

「どうなんだろ?エレナなんか用事でもあるの?」

「お土産もろてない」

「………」


 おじさんなら買ってきてくれてそうだけどね。

 でも催促なんてそんな図々しい事も出来ないでしょ?


「うう、良く寝たぜー」

「噂をすれば」


 ほれお土産、クオンはいないんだっけ?渡しといてくれよ。

 あいつは勉強頑張っているのかね。


「しょっちゅう泣き言メッセージ送ってくるよ」

「もうめげてんのか。あいつも根性ないな」

「そんな事よりアイスランドの話聞かせてくださいよ」

「スープの美味い国だった」

「なにそれ?」

「俺は楽しかったけど若い子には面白い場所じゃないと思うぞ?自然しかないし」


 お前らが喜びそうなのはオーロラくらいのもんだ。

 溶岩も氷河も間欠泉も興味ないでしょ?


「あ、そういやダンジョン潜ったぞ。精霊見つけた」

「はあ?海外のダンジョン潜ったの?どうして?」

「いやそれより精霊って…」


 ホゲー、彼女達だけに見えるように出て来てくれるか?

 出現する巨大な精霊、ルシル達が怯え散らかす。さすがにでかすぎてビビっちゃったか。


「こ、これって、クジラ?」

「ひええ、こんなにでかい精霊いるんすね」


 ついつい手を伸ばしてしまうエレナ、触れないぞ。

 触ってみたい気持ちは解るけどね。


「主の強さに応じて物理攻撃をしてくれる精霊だ。今の俺だと600ボスも一撃だった」

「ええ?強すぎない?」

「おじ様ばっかりズルいっす」

「じゃあ精霊自慢も終わったし帰るよ」

「その為に来たのね…」

「土産はついでっすか」


 おじさんが帰っていった。あっさりしてるなあ。

 もうちょっと若い子と話したいとは思わないのかな?


「お土産これなんだろ?」

「英語でよく解んないけどスキンケア製品みたいだね」


 若い子に対して結構気が利いたお土産だね。

 アイスランドはスキンケア製品で有名なのかな?


「おわ、ネットで調べたら結構高級品だよ?」

「こんなに高いと気に入った時が怖いね」

「う、うん、定期購入する羽目になったらどうしよう」


 お金ならある、それだけに心配だ。

 海外製品でも買えてしまう時代なのも悪い。


「まあいいや、取りあえず使ってみよーっと」

「新しいスキンケア、嬉しいね」


 なんだかんだありがたいね。あたし達も子供の祝いでも送る?

 おじさんいつ来るか解かんないからな。渡すの何時になるのやら。


「送れば良いんじゃない?RINEで住所聞いてみる?」

「あて名はどうするの?何故かどう書いていいのか解かんないんだけど」

「おじ様の名前で良いでしょ」


 おじさんの名前…う!頭が!

 頭痛がしたので送るのは保留にした。

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