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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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87/102

87 視察終了

「雄大だな」


 翌日、今日は観光の日。ここアイスランドは手つかずの自然が残っている火山島。

 溶岩やら滝やら氷河やら間欠泉やら。昨日の夜はオーロラ見れたし自然に事足りない事は無い。


「火山島なのに氷河あるって変な感じ」

「アイスランドなのに火山島なのがもう変ですよね」

「海が無いのに山梨県みたいなもんか」


 本日も飛川さんとその秘書ちゃんと一緒だ。

 しかし電車が無いだなんて移動が大変だよな。代わりにバス網が発達しているらしい。

 俺達の移動はアイスランドが準備してくれたVIP専用の車。


「おわあ、見てくれよあの滝、映画に出てきそう」


 写真撮ってカミナに送ろう。ついでにルシル達のグループRINEにも貼っておくか。

 俺は海外に来てるんだぜマウントだ。高校生相手に何やってんだろ。


「見るものが多い国なんですね。全然知りませんでした」

「ネットの普及で世界中の情報入ってくるのにアイスランドはノーマークだったよな」


 遠すぎる為か、人口少なくて情報発信が少ない為かは知らないが、日本ではあまり知られてない国だ。

 でも人口40万人ではあまり観光客に来られても受け入れきれないよな。今くらいでちょうど良いのかもしれない。


「ここは氷河か。滅茶苦茶寒いな」

「この時期はあまり奇麗ではないらしいですね。冬が見頃だそうです」

「うう、上着出さないと」


 秘書ちゃんがアイテムボックスを探ってる。

 いつも長袖着てるけど、ここだと寒いよね。


 ひそ「おじさん、古い傷を消す錬金術はないんですかね?」

「綾元さんに聞いたけど無かったと思うぞ。彼女の腕の傷を治してあげたいのか?」

「ええ、政治家にはプラスにならないはずですから」


 まあそうかもな。精神面に不安があると思われるのは間違いない。

 バレたら票が入りにくいだろうね。

 でも綾元さんが持っている能力は『錬金術上巻・・』だ。今後古い傷を治す錬金術も出てくるかもしれない。

 ただ高価な素材が必要になるだろうとは思うけどね。


「先生も上着来てください。風邪をひいたら大変です」

「ありがとう、琥珀ちゃん」


 今の姿を見ると手首切ってた子には全然見えない。

 あと出来ればおっさんにも上着を進めて欲しかったな。


「ここは間欠泉か、あっちにダンジョンあるね」

「ここのダンジョンは賑わってるみたいですね」


 昨日のダンジョンはひどかったよな。資源取れるんだからもっと有効活用したらいいのに。

 宝の持ち腐れとはあの事だ。


「日本だって人気が無いダンジョンはたくさんありますよ?」

「そだね。黒川なんて600なのに人気無いもんな」


 日本はダンジョン飽和状態。僻地や離島はやっぱ潜る人少ないだろうね。

 そういう場所は留学に開放しても良いのかも?いやいや、やっぱ慎重に考えよう。


「でもさ、ダンジョン一桁しかないなんてイギリスとベルギーはやっぱ可哀そうだよね」

「どちらも王国なのでその二国は留学受け入れても良いかも知れませんね」


 王国つながりか。やっぱそういうのも大事なの?

 借りを作れると思えば悪くないのかもしれないなぁ。


「王国と言えばノルウェーもそうです。ダンジョンの数は一つしかありません」

「ええ?イギリスとかより深刻じゃん」

「ダンジョン以外での資源産出が活発なんですよ。なのでそこまで困ってないようです」


 ダンジョンが無くても安全に資源が取れる国か。それが一番恵まれているよな。

 日本も今じゃ資源大国だけど、多くの犠牲の上に成り立っている。

 人間だって資源なんだから、大切にしていかないと。



 ---------------



「おじ様からRINE来てる。これどこだろ?」

「原生林みたいな場所だね。メッセージで聞いてみるね」


 ルシルとエレナがダンジョンから出たらスマホがメッセージを受信した。

 日本はただいま夜、アイスランドとの時差は9時間。


「へえ、アイスランドだって。旅行に行ってるのかな?」

「カミナさん、もうすぐ出産じゃなかったっけ?」

「そうだよね…また何か任務かな?」


 観光してるみたいだけどね。よく解んないけど取り合えずお土産催促しとこ。

 ふう、それにしてもレベルが上らないね。


「ルシル、夏休み終わってからレベルいくつ上った?」

「2つだよ、エレナも同じレベルだから解かるでしょ?」


 パイセンが受験勉強に入ってから停滞気味だ。

 2人だと放課後は時間的に80階層くらいまでしか潜れないし、レベルの低いモンスターを相手にしなければならない。

 精霊の力を借りれないのも大きい。全然レベルが上らない。


「解ってた事だけどモチベーションも下がってくるね」

「うん、低階層のモンスターに飽きちゃってるよ」


 以前よりレベルの低いモンスターの相手だと実力が鈍っていく気分にもなる。

 はあ、もっとガンガン攻略したい。


「…ヒラメ漬け丼が食べたいな」

「エレナ、もう旅行が恋しくなってるの?」

「熱海は好きだけどさ、やっぱ同じとこばっか潜って同じルーティーン繰り返してると飽きてくるよ」


 気持ちは解るけどさ。でもあたし達は学生、放課後はそんなに時間が無い。

 一番近場の熱海で潜るのが一番効率が良い。

 現在はお金が儲かるからなんとか続けられているといった状態だ。


「ルシル、貯金増えた?」

「うん、7000万くらいあるよ。今は1億が目標」

「はあ、それをモチベーションに頑張るしかないのかな」


 クオンちゃんが戻ってくるまで5か月足らず、これを繰り返すしかない。

 刺激を求める十代としてはつらいとこだけど、成長した姿をクオンちゃんに見せてあげようよ。

 明日も頑張ろうとお互いを励ましながら家路についた。



 ---------------------



 アイスランド四日目、首都から随分遠い場所に来た。


「滝、溶岩地帯、湖、うーん、飽きてきたな」

「付近にダンジョンもありますよ。ただこの辺はどこも過疎ダンジョンらしく…」


 また潜っても良いらしい。俺達は過疎ダンジョンの掃除屋か?

 まあ潜るけどさ。こんな機会なかなかないし。


「バク子、どうだ?」

『ここに精霊はいませんね』


 付近の100ダンジョンを二つほど潜った。

 一番の期待は精霊だったのだが、そうそう都合良くいるもんじゃない。

 こないだは運が良かっただけなのだ。


「うふふ、レベルが100になりました」


 秘書ちゃんだけは喜んでる。文太の加護のお陰で100に届いたか。

 ドロップも嬉しいのだろう。レベル800越えの俺には価値が薄いんだけどね。

 まあいいや、他の人達と合流しよう。


「飛川さん、視察は明日で最後だっけ?」

「はい、実りある視察になりそうですか?」


 なんで俺に聞くんだよ。他の人達にも聞きなさいよ。

 正直懸念だらけだった。留学制度には賛成出来ないかな。

 俺の結論はこうなってしまうな。


「だから、パツキンのねーちゃんだけ受け入れようぜ」

「真面目に考えろ」


 雑音しか聞こえてこないし、今回の視察は失敗じゃないかな。

 飛川さん、ああいう議員はどうにか出来ないの?


「録音しておきますか。何かに使えるかもしれません」

「それはそれで怖いな」


 あの議員、次の選挙ではいないかもしれないな。

 アイスランドで精々最後の思い出を作って帰ってくれ。



 次の日、アイスランド視察最終日。


「今日はどこに行くの?」

「水産加工業の見学です。夜は首都に戻って晩餐会がありますよ」


 水産加工業の見学?それは今回の視察には関係ないんじゃ?

 …アイスランド側の意向だって、どうせだから自国の産業も見てくれって事か。

 販路拡大も考えての事だろう。視察させてやっからこっちにも旨味寄こせって訳か。まあ仕方ないよな。

 普段なら文句言うとこだけど精霊貰っちゃったし今回の俺に不満はない。


 水産加工所に連れていかれる。へえ、日本にもシシャモとか送ってるの?

 そう言えば魚のスープが滅茶苦茶美味しかったんだけど、あれの缶詰とか無いの?

 今のところ作ってないらしい。そうか、あるなら買って帰りたかった。

 でもやっぱ缶詰だと味落ちちゃうよな。現地の出来たてには敵わないか。

 今日の晩餐会でも出るかな、期待しよう。


「工場見学、なんだかんだで面白いね」

「ずっと見てられますね」


 単純作業の繰り返し、それを流れ作業でやってる。

 やってる側は大変なんだろうな。飽き飽きしてるだろう。

 来る日も来る日も同じ作業を延々と…

 まあ冒険者も似たようなもんか、レベル上げやドロップ目的で延々同じ敵を狩り続ける事もある。


「国会議員はどうなの?仕事に嫌気がさすことは無いの?」

「会議が嫌ですね。答えの出ない議題を延々と…」


 どの仕事も大変なんだな。てっきり料亭で飲んだくれてるだけだと思ってた。

 飛川さんに睨まれる。そんな目で見られてもこの旅でその疑いは一層強くなってるぞ。

 まともに働いてるの飛川さんだけじゃないかよ。


「はあ、まあ私が総理大臣になって変えて見せますよ」

「日本の未来を頼んだぞ」

「選挙の時は応援に来てくれませんかね?出来ればカミナも連れて」

「か、考えとくよ」


 選挙か…殆ど行った事無いげふげふ。

 選挙カーとか迷惑行為以外の何物でもないと思っているもんで。

 あのやり方変えられないのかな?それこそ他国のやり方を学べばどうだ?

 暴走族と変わらん行為だと思うのは俺だけだろうか。


「変えたいと思うのであればおじさんも議員になるべきですよ」

「それはめんどい。傍から我儘言ってる方が楽でいい」

「そういう国民が多いのも悩みの種です」

「ハゲそうな仕事だね。俺が議員になることは無いよ」


 俺はもうかけがえのない物を失いたくないんだ。

 日本の未来より自分の髪、それより大事なものは数えるくらいしかない。

 産まれてくる俺の子供の為にも日本を良くしてくれよな。



 ----------------



 首都に戻って晩餐会に出席する。

 フォーマルな会なの?俺、礼服とか持ってきてないんだけど…

 準備してあるって?助かったけどサイズ大丈夫か?

 数種類準備してあるらしい。至れり尽くせりでありがたい。


「ふう、こんな服で食事しても食った気しないんだよな」

「似合ってますよ。本当にお腹引っ込みましたね」


 お陰様でデブから脱皮しぽっちゃり程度に進化したよ。

 髪も生えたしもう少しスリムになればダンディーなイケおじになれるのではないだろうか。


 当たり前だけどナイフとフォークの食事みたいだ。

 マナー大丈夫かな。晩餐会とか格式ばった食事会に出るの初めてなんだけど。


「おじさん、キョロキョロしないでください」

「落ち着かなくてね。酒とか注ぎに回った方が良いの?」

「宴会じゃないんですから。バトラーがやってくれますよ」


 勝手が解らん。なんでこんな窮屈な食事しなきゃならんの。

 あ、俺は酒いらないよ。水があったら持ってきてよ。

 断ったけどマナー違反じゃないよね?なんもかんも不安。


「ああ、やっぱスープが美味いな。アイスランドはスープが最強だよ」

「魚の出汁の扱い方が上手なんでしょうね。日本の鰹節や昆布出汁とはまた違った文化を感じます」

「文化の違いか。良い面も悪い面も今回勉強させてもらったよ」

「留学制度の結論としてはどうですか?おじさんの考えを聞かせてください」


 うーん、本音を言えば日本に旨味少ないし反対なんだけどな。

 しかし少しくらいなら受け入れても影響少ないだろうとも思ってしまう。


「日本でも100層を越えるのは30%の冒険者だけと聞いたことがある。日本の500階層以上のダンジョンに潜りたがる海外の冒険者がそこまで多くなるとは思えないんだよね」

「海外のTOPが皆、家族を置いて遠く離れた国に来る訳でもないでしょうからね」


 税金も50%だからな。そこで諦める者も多いと思う。

 テストケースとして少人数受け入れてみれば?そこで何か問題があればやっぱ駄目って今後は突っぱねる事が出来るし。

 もちろん審査は必須、変な奴が潜り込まないよう厳正に選んで貰えれば…まあ良いんじゃないかな。


「イギリスとかベルギーの希望者の中から少人数なら…」

「すぐ妥協するのが日本の悪い所で」

「うるさいな!そもそも俺が決める事でもないでしょ?」

「一応参考にさせてもらいます」


 飛川さんははっきり反対してほしかったのかな。

 でもイギリスとベルギーの現状を聞いてしまうとなぁ。

 確かに妥協だけど恩を売っておいて損も無い相手だと思うんだが。

 まあ俺は国同士の関係性をそこまで熟知している訳でも無い。最終判断はやはり国が決めるべきだよ。


 明日は帰国か。アイスランドは良い国だったな。

 ただで旅行できて良かった。なにより精霊をありがとう。

 大事にするからね。

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