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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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81 種

「動画見た?おじさん何かトラブルに巻き込まれてたみたいだね」

「普段と変わらない様子だから全然気づかなかったよ」

「まあウチらはメッセージのみのやり取りなんで」


 ルシル達は現在青森を攻略中。

 夏休み中には順調に終われそうだ。


「顔出しするんだね。抵抗なかったのかな?」

「フサフサで動いてるとこ見たけどダンディーになってたね」

「出会ったころから比べるとお腹もかなりへっこんで、こりゃファンが増えそうっす」


 うん、もうオークではなくなった。

 これからはおじさんの事をどう表現すればいいのか。


「人間の男で良いんだよ。最初から」

「そうだよルシル。そもそもモンスターで表すとか失礼でしょ?」

「分かった、これからは男として意識する」

「そ、それも言い方としてはどうなの?」

「妻帯者なんだから変な気を起こしちゃ駄目だよ?」


 二人が何を言ってるのか解らないけど成長したあたしを褒めて欲しい。

 おじさんは男、ハイエルフのカミナを妊娠させた存在。

 二人の子供はハーフエルフになるのかな。


「駄目だこりゃ」

「何なの?感じ悪いわね」

「でももうすぐ生まれるんすよね。ウチおじ様のお子さん見たいっす」

「私だって見たいよ。出来れば抱かせてほしい」


 熱海に連れてきてくれるかな。

 赤ちゃん連れてくる用事はないか。おじさん過保護そうだし温室で甘やかして育てそう。


「パイセンはどのみちしばらくはダンジョンに来ないんだから会う機会ないんじゃないっすか?」

「そうなるね…うう、師匠のお子さんの成長を見守れないとは」

「あはは、どんな立場なんすか」


 勝手な事言ってるけど楽しみだよね。

 冒険者同士の子供は能力が高い事が多い。

 おじさんとカミナは更に高レベルの冒険者、とてつもなくハイブリッドな子供が生まれてくるんじゃないかな。


「私、師匠の子供の師匠になりたい」

「ややこしいっす」

「まだ冒険者やるか解らないでしょ?」


 産まれても無いのに期待されてるね。

 過度な期待をされるのは子供にとって幸せな事なのかどうか解らないけど、少なくとも望まれて産まれてくるんだ。

 全ての子供がそうであればいいのにね。


「パイセン、ルシルが哲学的な事を言ってるっす」

「二人は望まれて産まれてきたの?」

「こ、怖い事言わないでよ」


 そんなのあたしだってどうだかわかんないか。

 変な空気にしてごめんね。親の快楽の代償でない事を望む。



 --------------------------



 ーケイトリン君、例の動画は見たかねー


 CIAエージェント、ケイトリン・リリー・フィリップス。

 また本国から通信が来た。


「見ました。エースがブロンズダンジョンを誕生させていたとは…」


 これでまたエースへの警戒度が上がってしまうだろう。

 はあ、無茶な任務を押し付けられなければいいけど。


 ーいや、エースはどうせもう先が無い。このまま捨て置いても構わんだろうー

「(ほっ)そうですか。エースも歳ですからね」

 ー髪が復活してたのは不思議ではあったがー

「カツラじゃないですか?動画に出るから見栄を張ったのでは?」


 フサフサだった。エースも可愛いところあるじゃないの。


 ーそれより産まれてくる子供が驚異だとは思わんかね?ー

「はい?ま、まさか、子供を排除しろとでも…」


 高レベルの冒険者同士の子供は高い能力を持って生まれてくる可能性が高い。

 え?脅威になるかもしれないから殺せって言ってるの?


 ー君もかなりレベルが高くなった。可能ではないかね?ー

「母親は絶対防御持ちのカミナですよ?私でも手出しできるとは…」


 やっぱり無茶な任務を押し付ける気だったか。

 お腹の中にいる時は絶対無理ね。絶対防御を張られればそれまでだ。

 産まれてから母親が不在の時を狙えば出来ないことは無いかも知れない。

 でも赤ん坊を殺すなんて事、絶対にやりたくない。


「いくら本国の任務とはいえそんな事絶対にやりたくありません」

 ー君もレベルが上ってから強気だね。こんな事を言いたくは無いのだが、君にも家族がいるだろう?事故にでもあったらどうするんだい?ー


 ぐっ!家族を盾に強請ってくるなんて。

 こんな事をするのが自分の祖国だなんて…

 これが、母国の正体なのか…


「で、ですが、エースはおそらく精霊持ちですよ?精霊の種類によっては私の犯行だとバレる可能性も…」

 ー出来ないなら君も高レベルの冒険者との子でも作りなさいー

「はい?…え?私に能力の高い子を産めと?」

 ー日本なら高レベルがたくさんいるだろう?ー

「それは解りますが、え?日本人と子供を作れと?」

 ーもちろん子供の国籍はアメリカにする。揉め事になると面倒なので妊娠は悟られないようになー


 ちょ、ちょっと待ってよ。急展開すぎる。日本人と子供を作れって言うの?

 私の意思とか無視して話を進められても困る。

 ただ、それを見越しての家族への脅しだったのも今なら解かる。


「に、日本で一番レベルが高い男の冒険者でも狙えって事ですか?」

 ーいや、第一候補はやはりエースだ。奴は恐らく精霊持ち、エースが亡くなった後に精霊もついてくる可能性があるー


 精霊は宿主が亡くなると元居たダンジョンに戻される。

 その後、次の契約を待つ事になるのだが、元の宿主の子供となれば契約は容易い。

 出現場所、出現方法も聞けるし、なにより自分が一度は契約した相手の子供、精霊を情で動かしやすい。


「先の短いエースは狙い目と言う意味ですか…ですがエースは妻子持ちで」

 ーそんな事は至極当然解っておる!君はそれを踏まえたうえでエースを落とす自信も無いのかね?ー


 ぐっ、プライドまでくすぐってくるとは。

 じ、自信ならあるわよ!私だってカミナに負けず劣らずの美貌と体を持っている。

 でも一度混浴までしたのに何もされなかったからやっぱり無理かもしれない、はあ。


 ー君を日本に送り込むのにどれだけ苦労したと思ってるんだ。今も継続的に日本にいれる事がただの幸運だとは思わない事だー


 …そうよね、本国だって私の我儘を散々聞いてくれている。

 でも子供作れってのはさすがに無茶苦茶な気が…

 子供が出来たら私の成長も止まってしまう訳だし、なにより好きでもない男との子なんて。


 ーとにかく、何の成果も出さずにいられても困るのだよー

「れ、レベルは上がってるじゃないですか。私はすでに全米ナンバーワンですよ?」

 ーそれだけでは成果が足らんと言っておるのだ。いい加減理解したまえー


 通信が切れた。まさか子供を作れだなんて。

 最初からそのつもりで送りだしたの?いや、それはさすがに…

 でも女の方が色々都合が良いとは思われていたのかもしれない。


 どうしよう、まさかこんな事になるなんて。

 子供作るの?愛してもいない男と?

 私はただ産む為に種をつけられる繁殖女って事?そんなの酷い。


 訴えてやりたいところだけど相手が国の中枢では…

 家族に危害を加えられ、私だってどうなるか。

 スパイ容疑をかけられたら終わりだ。私の粛清は日本の冒険者が勝手にやる事になるだろう。

 きっとたくさんの男たちの慰み者にされてしまうのね…うう…


「ケイト?電話終わったの?」

「虹谷」

「もう、奈々子って呼んでって言ってるでしょ?」


 パーティメンバーの虹谷 奈々子 魔法使い。

 ちょっとバレない程度に相談してみようかな。


「ナナコは今レベルいくつ?」

「823だよ」

「パーティメンバーの男二人はレベルいくつだっけ?」

「850とか840とか、多分そのくらい」


 850か、十分高レベルだ。

 あの二人なら何の疑いも無く子作り出来そうだけど。

 多分快楽の為にいくらでも乗ってきそう。


 でも当局の本命はやはりエースなのだろう。

 そうなると難易度が極端に高くなってしまう。

 駄目で元々、交渉するだけでもしてみようかな。気持ちは複雑だけど。


「ねえ、ナナコは結婚しないの?」

「ええ?考えた事はあるけど、この仕事っていつ死ぬか解らないでしょ?そう思うと踏ん切りがつかないのよね」


 言ってる意味は解る。特に子供なんて居た日には、残していなくなる事になる。

 間違いなく不幸な子を作ってしまう事になるだろう。


「カミナの動画見たの?お腹おっきくなってたよね」

「ああ違うのよ、それで意識した訳では無くて…でも女は妊娠すると冒険者の仕事出来なくなるし、やっぱり考えちゃうわよね」


 当局の命令は私の人生など無視している。

 国の利益を考えるのが仕事の人達だ。彼らにとってはそれで正しい。


「でも20歳くらいで子供産めば復帰も難しくないわよね」

「そうかしら?子育てはどうするの?」

「ベビーシッターがいるでしょ。アメリカの方がそういうの進んでるんじゃないの?」


 ベビーシッターも当たり外れが多いんだけどな。

 でも私の場合は産んでからは当局で育てて貰えるのかな。

 愛してもいない男との子供、それならそれで良いのかもしれない。

 って、前向きに考えてどうするのよ。


「はあ、子供産むなら私は瀬戸際なのよね」

「ナナコいくつだっけ?」

「うるさいわね、そろそろダンジョンに潜るわよ」


 はいはい、取り合えずもう少し考えてみようかな。

 簡単な話じゃない。少しくらい悩んだって罰は当たらないだろう。

 はあやれやれ、遊び気分で日本に来ただけなのに、妊娠しろだなんて滅茶苦茶な事になってきたわね。

 人生にかかわる事なのに、自分の人権を無視してなんで話が進んでいるのやら。

 気分は複雑だけど、ダンジョンに潜って憂さ晴らししよう。



 -------------------



 ーあの~私が新しく攻略サイト作りましょうか?ー


 久々の人からRINE電話が来たな。

 名前なんだっけ?土下座の子としか覚えていない。


 ー小早川こばやかわ智花ともかですよ。いたいけなうら若き乙女を土下座で覚えないでくださいー

「いっつも土下座してるでしょ。趣味なの?」

 ー違いますよ!ー


 彼女は熱海で助けた子だ。東京でも一度会ってるな。

 カミナと買い物中に土下座してきた子だ。

 現在東京の大学に通うため、こっちに住んでるんだっけ。


「サイトなら別に俺に聞かなくても勝手に作っていいと思うよ」

 ーええ?動画内で真面目なサイトならブロンズダンジョンの情報くれるって言ってたじゃないですかー


 ああ、それが目当てか。まあいいけどさ。

 取り合えず作ってみなよ。人気出たら情報あげても良いよ。


「既存のダンジョン情報は影山サイトを丸パクリでもバレないと思うぞ。説明文とかニュアンス変える必要はあると思うけど」

 ーおじさんから情報提供受けたでは駄目なんですか?ー

「ああ、一応インセンティブ契約してたからな。俺が教えたってなると契約違反になりかねないからやめてほしい」


 ダンジョン誕生から40年、攻略も進んでるし、今更俺が情報提供したとはだれも思わないとは思うけど。

 いや待てよ、別府第一の778以降は俺しか知らないんだっけ、この部分はどうしたもんか。


「まあその部分は保留にして取り合えず初心者向けのサイトでも作ってみたら?」

 ー低階層から始めろって事ですねー

「影山のサイトは古くて今の子達には見づらいと思うんだ。今風に作り変えると見て貰えると思うよ」

 ー解りました。これから冒険者を始めるような子達に見て貰えるようなサイトを目指しますー


 そうだな、取り合えず各ダンジョンの100層までの攻略で作ってみると良いよ。

 100層のダンジョンを越えられる者は冒険者の3割だと聞いたことがある。

 という事は7割は100層までの情報で良いのだ。

 結構みんな心が折れて行くんだよな。死んだら終わりのダンジョンは甘くない。


 ー私も折れた一人ですからね。気持ちは解りますー

「そうだったな。でも引き際を見定めるのも立派だと思うよ。死んだら終わりなんだから」

 ーありがとうございます。すぐに作り始めるのでおじさんも見てくださいねー


 ああ解ったよ。作ったらサイトのアドレス送ってくれ。

 知り合いに宣伝もするからな。さいわい若い知り合い多いし。

 育成の子達にでも頼めば宣伝もしてくれそう。


 ーあ、あと、ベビーシッターが必要なら言ってくださいー

「バイトしたいって事か?」

 ーはい、歳の離れた兄弟がいるので小さい子の相手は得意ですよー


 親の代わりにミルク作ったりおむつ交換もしていたらしい。

 それは助かるな。大学が無い時は頼んでもいいかも知れない。

 じゃあそう言う事でと通話を終了した。

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