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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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80/101

80 逮捕

 11日後、8月21日夜 函館


「ついに、我々は北海道を回り切ったぞー」

「「おおー」」


 ルシル達は夏休みを10日残して北海道を回り切った。

 大変だったけど今は充実感にあふれている。


「後半は200と300が結構あったね」

「階層も145まで更新出来たね」

「100万ドルの夜景をバックに写真撮りましょ。おじ様に勝利宣言っす」


 そんな訳で函館山に来ていた。

 100万ドルって1.5憶円?頑張ればあたし達でも買えてしまえそう。もうちょっと高くならないの?

 三人で勝利のポーズをおじさんに送った。


「パイセン、これで受験勉強に入るんすか?」

「そうだね…予定より早いけどそうしようかな。落ちたらかっこ悪いし」

「そっか、寂しくなるね」


 この夏の目標が終わってしまった。

 しばらくはエレナと二人パーティか。精霊も居なくなるし停滞が続きそう。


「私だって来年の今頃はソロになるんじゃないの?」

「あたし達の受験もあるもんね」

「パイセン一人で大丈夫なんすか?無茶しそうで心配っす」

「本当言うと心細いよ。でもサルエロがいるから大丈夫」


 どんな敵が相手でも逃げれるもんね。エッチな精霊だけど、頼りになる。

 あ、おじさんから返信だ。


 ―時間余ったなら青森回ればどうだ?ー


 はい?もうこっちはゴール後の労いと余韻の時間なんだけど。

 これからのそれぞれの歩む道を考えているんだけど。


「青森って何か所っすか?」

「えーと、14か所ね。200が3つと100が11」

「うう、回れてしまいそう」


 一道一県を夏休みで到達。

 全国制覇を狙うなら、行っておいた方が当然楽になる。

 はあ、これは延長戦かな。


「仕方ないなぁ、青森も行く?」

「師匠命令とあればしょうがないよね」

「待ってろ青森県、ウチらが食い尽くしてやる」


 カップルだらけの函館山。女子三人は夜景を見ながら心を新たにした。



 ------------------



「一か月で北海道回り切ったのかよ。若さって凄いな」


 俺の時は迷いながらトラブルに会いながら、もっと時間かかった気がするけど。

 今はスマホで迷うことは無いもんな。効率的に回れて羨ましい。


 旅行しながらダンジョン回った日々、大変だったけど楽しかったな。

 観光地じゃなくても奇跡的な瞬間で絶景と出会う事がある。あれがたまらないんだよな。


 ん?また知らない番号から電話だ。嫌な予感がする。


 ーおい!訴えられたくなかったらブロンズダンジョンの情報寄越せよ!-

「またお前か影山、番号変えてまでかけてくんなよ」


 開口一番訴えると来たか。何言ってんだコイツ。

 異常者の考える事は解んないよ。


「お前オロチの情報使ってナンパばかりしてるそうじゃないか」

 ーど、どうしてそれを!ー

「俺の方が情報通なんじゃないか?迷惑してるらしいからやめてやれ」

 ーうるせえ!お前には関係ないだろ!ー

「ああ関係ない、だからもう電話をかけてくるな」

 ーふざけるな!ダンジョンの情報を独り占めしやがって!ー


 やっぱり話にならない。自分は良いけど人は駄目、なんでそんな利己的になれるんだ?

 50過ぎてんのにまったく成長してない。人と関わらずに生きてきたのだろうか?


「お前、結婚してるのか?」

 ーしてねえよ!今関係ないだろ!ー

「50過ぎのおっさんが年誤魔化して若い子狙ってんじゃないよ。恥ずかしい」

 ーうるせえ!お前こそ離婚したそうじゃねえか!大学の同級生から聞いたぞ!ー


 ああ、離婚したさ。でも再婚したぞ。

 そこまでは知らないみたいだな。


「お前さ、情報を扱う者として、自分がすでに時代遅れになっている事に気づいてないのか?」

 ーなにがだよ!解ったような事言うな!ー

「お前の事だ、どうせ動画サイトで有名なカミナとかにも変なメッセージ送ってたんじゃないか?」

 ーなんだと!だれがあんなクソ女!俺を差し置いて他の男と結婚しやがって!ー


 お前とどんな関係だったというんだ。

 どうせ一方的な思いだったくせに。


 ーどうせ金目当てでどっかのブサイク選びやがったんだよ!ー

「俺だよ。カミナと結婚したのは俺だ」

 ー…………は?ー

「お前はもう情報を追えてないんだよ。いい加減自分が終わってる事に気づけ」

 ーな、なに?え?は?ー


 動揺がひどい。状況を理解出来ないのかな。頭も働いてないのだろう。

 哀れな老害だな。お前はとっくにアップデートをやめてるんだよ。


 ーう、うそ、だろ?ー

「本当だ。もうすぐ子供も産まれる」

 ーう、嘘つけ!本当ならカミナを電話口に出せよ!ー

「今は実家に帰ってるな。お前は知らないと思うが子供を産むときはそうするもんなんだ」

 ーは、はは、やっぱり嘘なんだな!見得張りやがって!ー

「別に信用しなくてもいい。お前は俺達とは無関係で認めてもらう必要が無い存在だからな」

 ー負け惜しみ言いやがって!ー

「俺がお前に何で負けてるんだ?お前は常に言葉選びを間違えてるぞ」


 ずっと家の中にいるんだろうな。だからコミュニケーションもまともに取れない

 そんな状態でナンパしても無駄なんだよ。気持ち悪いで終わってるんだ


「もう良いだろ?お前の相手するほど暇じゃないんだ」

 ーおい!着拒するんじゃねえぞ!にげるんじゃねえ!ー

「迷惑なんだからするに決まってるだろ。厄介者なんだよお前は」

 ーふ、ふざ…ー


 電話を切った。すぐに着拒。

 相手にストレスを与えるだけの、何の役にも立たない馬鹿な奴。

 ずーっと家にいろ。人と接するな。それが一番世の中の為になる。

 孤独に一人で朽ち果てて行けばいい。



「カミナ、影山ってやつからメッセージが来てたと思うんだが」

 ー誰?変なメッセージならしょっちゅう来てたからいちいち読んでないよー


 そういうヤツは1人2人じゃなかったらしい。

 心配して連絡してみたけど、認識すらされてなかったみたいだ。


 ー卑猥なものも多いからね。確認せずに消してるよー

「そっか、取り越し苦労だったか」

 ー位置情報が屋久島になった事と何か関係あるの?ー


 あ、やべ、カミナに言わずに行っちゃったなぁ。

 でもまさにそれ、浮気してた訳じゃないんだよ。

 やっぱ確認してるんだな。怖い怖い。


「銅ダンジョン一緒に潜った人でね。お互い国と影山には悩まされてる」

 ー互いの境遇、仲間意識、そして浮気ー

「あはは、カミナはすぐそれだな。俺に浮気させたいのか?」

 ―だってあんまり会いに来てくれないんだもんー

「うむ、お父さんが怖いんすよ」

 ―も~仲良くしてよー


 俺は仲良くしたいんだぞ。でも向こうは絶対折れる気は無いという目で見てくるんだ。

 髪も生えたのに何が不満だと言うのか。


 ー娘がこんなに幸せなのに、何が不満なんだろうねー

「まあ自分より年上の義理の息子なんて嫌に決まってるんだけどね」

 ーそんな!史上最高の旦那様を捕まえたのにー


 カミナは相変わらず俺を全肯定だな。

 順番で行けば俺がお父さんより先に死ぬんだ。娘を不幸にする男を気に入る訳が無い。

 …錬金術に、不老不死とかないのかな。

 いやいや、そんなのあっても使う気は無いけどね。



 ---------------------



 3日後。


 ーおじさん、攻略サイトで個人情報バラされてますよ?ー

「はい?何の話だ?」

 ー良いから見てくださいー


 朝からミオコから電話がかかってきた。

 どれどれ、あいつのサイトの閲覧数増やすの嫌なんだけどな。

 …カミナの夫として俺の情報が書いてある。実名、大学名まで。

 なんであいつ週刊誌みたいな事してんの?

 もうちょっと詳しく読んでみるか。


 カミナを騙して結婚した54歳の中年、大学を退学になり路頭に迷うところをサイト主が助け、仕事を紹介してやったのに恩を仇で返してきた。

 サイト主にコネがあるので俺なら情報を何でも聞き出すことが出来る。そうやってカミナを騙し、無理やり結婚。

 元の嫁を捨て、離婚後すぐにカミナと結婚した。

 サイト主としては自分を利用され、若い子を騙しているこいつが許せない、らしい。


「なんだこりゃ?なんで俺が大学退学であいつに仕事紹介された事になってんだよ」

 ーどうしてこんな事になってるんですか?ー


 まあいろいろあってな。

 これこれこういう訳なんだよ。


 ーおじさんは一般人なんですから訴えたらどうです?ー

「そうだな、個人情報さらされてる訳だし、さらに嘘まで書いてある」

 ー攻略サイトには信者もいます。稚拙な文章ですが信じちゃう人もいると思いますよー


 なるほど、すぐに対応しなくては。

 教えてくれてありがとうなミオコ。え?貸しにしときますって?分かったよ。



 -------------------------------



「おい、俺の個人情報晒したらしいな」

 ーへっ!ざまあみろ!ー

「これ、名誉棄損だぞ?訴えるからな」

 ーなにぃ!お前が悪いんだろうが!ー


 どこが?多分お前の中だけの話だぞそれ。


「これはそれを言うだけの電話だ。お前が土下座して謝っても取り下げるつもりはない」

 ーだ!誰が土下座なんかするか!ー

「金ならあるし、とことんやるからな。お前もそのつもりでいろよ」

 ーまっ……ー



 切った。じゃあ飛川さんにでも電話するか。


「そんな訳で国に対応してほしいんだけど。あと優秀なサポートを準備してほしい」

 ー解りました。貴方に借りを作れるのは国としても喜ばしい事なのでー


 ぐ、くそ、俺は何も悪い事してないのに、なんかどんどん貸しが増えていくな。

 なんで逆恨みでこんな事になってしまうんだよ。


 ー貴方は国としても重要人物です。危害を加えたとして逮捕しますねー

「逮捕か…まあ仕方ないかな。名誉棄損の量刑はどれくらいなの?」

 ー最大で3年くらいは刑務所暮らしに出来ますよー


 3年か、長いな。まあでもそれくらいしなきゃお灸にならないか。

 刑務所に入るとなれば人に迷惑をかける事も無くなるし同情も無い。


 ーですが、仮にも攻略サイトの管理人なので、居なくなると困らないですかね?ー

「どうせ新着情報も無いんだから今も放置状態みたいなもんでしょ」

 ーそうですね。逮捕後も放置しておけば問題ないかもしれませんー


 心配なら国で管理したら?いやそれは駄目か。

 国は自分達に都合よく事実を書き換えるからな。


「というか、影山からサイトを取りあげることは可能なの?」

 ーそれは国でやります。サイトのパスワードなどもあるはずですが、一般人相手に聞き出せない事はありませんー


 ああ、幻惑の魔法だな。抵抗力の無い一般人などイチコロだ。

 現在では犯罪者の嘘など通用しない。

 じゃあパスワード聞き出してパスワード変えて使えないようにしちゃえばいいのか。


「じゃあ取り合えず捕まえてよ。後の事は後で考えればいいよ」


 電話を切った。今は経過を待とう。



 -------------------



 次の日、影山が捕まった事をニュースで知る。

 有名サイトの管理人が偽情報を流し個人の権利を侵害、広告を出していた企業などから賠償請求等も検討されているそうだ。

 信用無くしたからだろうな。ただそこまで莫大な違約金になる訳でも無いようだ。

 攻略サイトは過去の遺物、大したスポンサーもつかず、近年の影山の収入は年間300万くらいしかなかったらしい。

 まあ新しい情報が更新されなければそんなものなのかな。


 ーそういう訳で次は裁判でしょうか。まあ貴方が負けるような事は無いはずですー

「ありがとう飛川さん。保釈は絶対認めないでね」


 俺の嘘情報はサイトから消されたらしい。

 まあでももう手遅れだ。少なからずネットの中で拡散されてしまっている。

 俺は自分の名誉回復の為に今回は徹底的にやらせてもらう。


 影山が捕まった事で誤情報であったとの報道も出たけど、自分でも何かしら信頼回復の為に発信した方が良いのかなぁ。

 でも俺SNSもやってないしな。下手な事すると火に油だし、どうしたもんか。

 おや、ミオコから電話だ。


 ーカミナが許せないって言ってるんで、久しぶりに弁明動画を出そうかと思いますー


 うーん、そうなるのか。

 カミナも身重の立場、そんな事にかまけてほしくは無いのだが。


「俺も出ようか?お前達にばかり任せて知らん顔ってのもいい加減無責任な気がしてな」

 ーええ?良いんですか?浮気できなくなりますよ?ー


 誰が浮気しとるんじゃ。失礼な。

 ハゲの時は嫌だったけど髪が生えたから俺も少し強気かも知れない。

 カミナのパートナーとして恥ずかしくない姿になった気がしてる。


「どうせダンジョンでは一緒にいるところ見られてるしさ、もうそこまで隠す意味も無いと思うんだよな」

 ーそうですか。解りました。4人で動画撮りましょうー



 そんな訳で次の日、久しぶりのカミナ邸。


「わー、お腹大きくなったね」

「女の子なんでしょ?もう名前決めたの?」


 名前か、決めてないな。

 最近の子の名前は特殊過ぎるからおっさんには良い物が思い浮かばない。

 子供が一生背負う名前、良い物をつけてあげたいとは思うんだけど…


「おじさんの第一候補は?」

「うーん、楓とかかな。秋に生まれるから」

「カエデちゃんか、悪くは無いけど」


 季節にちなんだ名前を付けるのも今時古いような気もしてるんだよな。

 カミナはどうせ俺がつけた名前なら全肯定だろうしどうしたもんか。

 おっと、今日はそんな事より配信の準備、白幕つけたり機材をセッティングしなくては。


「中央におじさんとカミナ、ウチらは両端で」

「俺とカミナだけでも良いような気もするが」

「そうかもね、私置物になりそう」


 俺とカミナの弁明動画だし、ミヅキは喋る事無いよな。

 でもまあ進行役としていてくれても良いかも知れない。

 よし、じゃあカメラ回してくれ。


「えーこのたびは一部誤った情報が流れてしまったが為の釈明動画となります。報道で皆さんもご存じかも知れませんが、某攻略サイトの管理人が逮捕されました。今回の騒動は管理人に逆恨みをされてしまった為に起こった…えーっと、説明難しいな」

「編集でなんとかするから適当に喋ってくれていいよ」


 おお、そんなかんじでいいのか。助かるぜ。

 じゃあまずは自分の経歴でも話すかな。

 俺が何者か解らないからおかしな憶測が広まってる訳だし。


「私は元々は某攻略サイトに情報提供していた別府覇者で…」

「でももうとっくに縁を切っていたんでしょ?」

「ああ、26年前に一度冒険者を辞めた時に縁は切ったんだ。なのにブロンズダンジョンが出てきたら急に連絡が来て」

「情報欲しかったんだろうね。ブロンズダンジョンを出したのもおじさんだし」


 ミオコとミヅキが効き手となりフォローしてくれる。

 やっぱりいてくれて良かったな。


「私は元々GODの活躍を色々な文献で読んで憧れがあり…」

「あ、GODって俺の事です。大それた肩書で呼ばれています」

「とにかく、一部で言われているようなお金目当てとかではありません。私は冒険者としてGODを崇拝しています」


 なので結婚までしましたと。そのような経緯が伝えられていく。

 とにかくカミナは俺の事をべた褒めだ。

 あんまり褒められすぎると逆に胡散臭く思う人もいるからその辺で。


「カミナも出産を控えており、あまり心配事を増やしたくないので今回の件はこれで収束させたいと思っています。今後は某サイトの管理人との裁判の経過でも見ていただければよいかと」

「おじさん、徹底的にやるんでしょ?」

「ああ、大学はダンジョンの為に中退したけど、サイトでは退学ってなってたし、情報提供して得してたのは向こうの方だし、こちらとしては恩を仇で返されたので」


 ついでに決意表明もしておいた。

 今後他者が同じような事をしてこない為の脅しにもなるだろう。


「管理人が逮捕された事でサイトは放置状態になると思いますが、元々新着情報も無かっただろうし、誰も困らないかな」

「我こそはと思う人は新しいサイトを立ち上げてみたら?旧サイトもあんまり儲かってなかったみたいだけどね」

「新しいサイトが真面目なものならブロンズダンジョンの情報提供しても良いかもな」


 そんな感じで締めくくり、後はこれを編集して夜の時間帯にアップする。

 編集はミヅキが担当だっけ?おかしな編集しないでね。


「まかせといて、管理人が100%悪に持ってくから」

「大丈夫なのか?さすがに動画の力でそこまで持ってくのは無理がある気が…」

「調べたら私とミオコにも変なメッセージ送って来てたんだよね。これもついでにアップする」


 そうだったのか。まあうまくやってくれ。

 その辺の難しい事は解らんから任せるしかないな。

 後は野となれ山となれだ。

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