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「さて、どうしたもんかな」
昨日綾元さんから受けた報告。
錬金術の書はとんでもない物だった。
「ゴーレムの話が衝撃的過ぎて聞き忘れたけど、毛生え薬の他にもまだあるのかな」
まあいい、取りあえずはゴーレムの事を考えよう。
ミスリルはまだいい。オリハルコンが規格外すぎる。
経験値吸って与えることが出来る?そんなことが出来ていいのか?
世界が知ったらどうなるかな。間違いなく混乱するだろう。
マッハ5で飛んで行けるんだ。簡単に世界征服出来そうだもんな。
「それでも今後も錬金術の書が出続ける可能性を考えれば国にはやっぱり報告せざるを得ないような」
ただ日本だって悪用しないとは限らないよな。政治家って大体悪いやつだし。
税金ばっか取るどうしようもないやつらだし。
あー駄目だ。全然考えがまとまらない。難しすぎるよ。
こんなの50過ぎのおっさんの頭じゃ無理だ。
取り合えず現実逃避して綾元さんのインストでも見よう。
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「今日どうするー?」
「休まない?ダラダラしようよ」
札幌のルシル達、明日からまたダンジョン巡りなので英気を養い中。
「昼はどうするの―?」
「味噌ラーメンで良いんじゃない?そして夜に石狩鍋で北海道を食べつくした事になるよ」
「エレナもそれでいい?」
「すぴー」
「良いって」
明日からどう回るかな。ルートは考えないと。
お盆直撃だから宿も早めにとっていかないと。
「11~14はもう宿取っちゃった方が良いかも知れないね」
15からは空き始めるとネットが教えてくれた。
じゃあ宿の空きと相談しながらルートを決めますか。
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ーおじさん、起きてる?ー
あ、やべ、今日ダンジョンの日だっけ。
ミヅキから催促が来てしまった。仕方ない、えーと下呂だっけ?向かうか。
「遅いよー」
「おはよう、すまないな、ぼんやりしてたよ」
ふう、しっかりしないとな。
あまり考え事ばかりしてると鵺に付け込まれてしまいそうだ。今日は大丈夫かな。
「フサフサになったのに浮かない顔をしてますね」
「ああ、お前達はもし自分の体の気に食わない部分を直すとしたらどこだ?」
「随分デリカシーの無い事聞きますね」
「私はもうちょっと脚長くしたい」
「ウチはくびれですね。骨盤の形が気に食わないんで」
ふむ、骨から変えたいというのか。整形なら可能なのかな?
…そういう錬金術はあるのかなぁ。
「二人ともそんなにおかしいとも思わないけどな。ミズキだって脚長い方じゃないか?」
「カミナのせいだよ、あの子が完璧だからね」
「骨盤のせいでいまいちラインが奇麗じゃないんですよね」
ふーん、いろいろあるんだな。
俺ももうちょっと腹は引っ込めたい。
ダイエットは頑張ってるけど年齢による限界も感じ始めている。
皮のたるみとか、最近シミもちょっと気になり始めてるんだよな。
髪が生えた途端、他が気になってきた。欲望にはキリがないな。
「おじさん整形でもするの?」
「いや、そんな気があるなら最初からやってるよ。金持ってんだから」
「ウチらもやりたい気持ちはあるけど、骨自体が脆くなりそうなんで踏み切れないんですよね」
骨が脆くなったら冒険者として難がありそうだ。
でも二人とも考えた事はあるという事なのか。
最近は整形が身近になって来てるから抵抗も無いのだろう。
「昔は傷も残ったけど、最近はヒーリングで傷の残さない整形手術を行えるからね」
「ほう、整形手術にも生かされてるのか」
「冒険者の丈夫な体用にオリハルコン製のメスとかも開発されてまして…」
外科手術で使われてるのは俺も知ってる。
怪我はヒーリングで治せるけど、病気は治せない。
冒険者だって治療の為に腹を切る事はある。
はあ、駄目だ、錬金術の事ばかり考えてしまう。
取り合えず今日のノルマを終わらせてまた家で考えよう。
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「ケイト今レベルいくつだっけ?」
「769」
私はCIAエージェント、ケイトリン・リリー・フィリップス。
現在由布院ダンジョンにてガルーダを倒す為にかなりのハイペースでレベルを上げさせてもらってる。
「769かあ、ガルーダはもうちょっと先になるかな」
「これでも頑張ってるのよ?」
アメリカ人としてはもう過去最高レベル。
日本人を含めた世界ランキングでもTOP300くらいには入っているはずだ。
「そう言えばさ、アメリカが留学制度がどうとかって日本政府に持ち掛けてるんでしょ?」
「ええ、ブロンズダンジョンに冒険者を派遣したくて出た話らしいけど…」
とんでもなく高レベルのダンジョンだった。母国の者達では歯が立たないでしょうね。
留学出来たとしても他のダンジョンに潜る事になるだろう。
「日本人はどう思ってるの?留学には反対?」
「私はどっちでもいいわね。難しい事は解んないし」
こういう日本人は多い。政治に興味が無いみたいだ。
他国の軍事力があがるのよ?脅威だと思うのが普通だと思うけど。
今も私のレベルをこんなに上げちゃって…ありがたいけど不用心だと心配になってしまう。
「どこの国も日本のダンジョンが羨ましいのよ」
「むしろ私は海外のダンジョンに潜ってみたいわよ?」
「ええ?海外は最高でも500階層よ?物足りないでしょ?」
「無双できて楽しそうじゃない」
レベル上がりにくいのに潜ってみたいとは。
解らないわね。時間の無駄のように思えるけど。
「でもだったら海外で新ダンジョン誕生は無いって事?」
「ええ、一応政府が再度調べてみたらしいけど、石板をはめる台座のあるダンジョンなんてアメリカには一つも無かったそうよ」
他の国もそうだ。新ダンジョンは日本だけの特権。
ただでさえ日本はダンジョンが多いのに、さらに格差が広がってしまった。
「やっぱりずるいと思うわ。留学を受け入れるべきよ」
「あはは、いじけないでよケイト。でもそうね、各国の冒険者が日本に来て交流出来たら私もいいと思うわ」
そう考える人が増えると良いんだけどね。
まあ資源流出の可能性を考えると、やっぱり難しいと思う。
「…ブロンズダンジョンはどうなってるのかしら?新しい資源は出たの?」
「あんまり新しい情報は出てこないね。攻略に苦戦してるのかも」
歯がゆい、外国人の私はブロンズダンジョンに潜らせてもらえるのかしら?
いえ、まずレベルが足りない、今の私では通用しない。
「まあ取りあえず、私達の目標はビキニアーマーだよ。桁違いの防御力を手に入れればこの先が楽になる」
「そうね、レベルも大事だけど装備も底上げしていかないと」
百里の道も一歩から。もうしばらくはレベルアップに励もう。
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「ゴーレムの存在を国に言った場合はどうなるのかなぁ」
オリハルコンのゴーレムが居れば育成が楽になるのは間違いない。
要人の警備にも使えるし、国防にも使えそうだし、言う事無い…とはならないんだよな。
「絶対政治家が私物化するよなー」
ダンジョン潜らずレベルがあげられる。
悪い政治家が物理的な強さを手に入れられる。
これって問題ないのか?絶対問題あるよな。
一部の富裕層が金と引き換えで経験値を買うなんて事も考えられるな。
金持ちが強さを手にする…これには問題ないだろうか?
セキュリティーが必要な人達、自身が強くなれば自分で身を守れる。
国にもお金が入るなら良い事尽くめかとも思うけど、やはり政治家が着服しそう。
25億のオリハルコン代くらいすぐに回収できるだろうし。
そもそもどこから経験値を吸い取るかって話なんだけど、これは犯罪冒険者からになるのかな。
しかし経験値希望者の数は多いだろう。犯罪者の数ではペイ出来ないと思う。
そしたら国はどうするだろう?無害な者達からも吸い取るのでは?
莫大なビジネスが成立するとなれば無い話では無い気もするなぁ。
冤罪かけていくらでも悪人作れるだろうし。
「ああもう、考え過ぎなレベルにまで思考が行っちゃってる」
問題点見つけようと思えばいくらでも出てくる。
それよりも有用な使い方が出来る部分に焦点を当てるべきではないだろうか。
正しく使えば世界が良くなる事には間違いない。そこが大事だ。
「飛川さんに言うか」
取りあえずは飛川さんに相談、あの人はまだ比較的信用出来ると思ってる。
その上にいる人達にどう伝えるかは飛川さんに熟考してもらおう。
そういう訳で綾元さんに連絡、俺の結論を伝える。
綾元さんも異論は無いらしい。と言うか早く楽になりたいみたい。
次に飛川さんに電話、すぐに会いたいって。待ち構えてたみたいだ。
綾元さんに再度連絡、今日この後すぐに都内の高級寿司店で落ち合う事になった。
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「なんで早く言ってくれないんですか」
「国が綾元さんを悪用する未来しか見えなくて」
飛川さんは呆れ顔、俺と綾元さんは気まずい顔。
高級寿司店の個室で、向かい合っている。
「とんでもない発見ですよ?」
「それだけにこっちも慎重になっちゃったんだよ」
「私の事利用するでしょ~?」
「それは…協力です。協力は要請すると思いますが」
同じ事だよ。言い方変えただけ。
綾元さんは自分の意志とは関係ない事をやらされる。
「ですが…さすがに私もこのまま上に伝えて良いのか迷ってしまいますね」
「やっぱ悪用する人いるんでしょ?」
「残念ながらいるでしょうね。お恥ずかしい話ですが」
飛川さんが考え込む、あなたがまともそうで良かった。
まだ100パーセント信用した訳ではないけどね。
「幸いと言っていいのか解りませんが、オリハルコンゴーレムの制作条件はまだ達成してないんですよね?でしたらもうしばらくこのまま情報を伏せておいた方が良い気もしますね」
「うーん、誰かがそのうち錬金術の書を手に入れるとは思うけど」
「その時はその時です。その時が初出という事にしても良いですし」
初獲得の栄誉は他に譲る事になるが、そんなものより弊害の方が大きそうなんだよな。
綾元さんも別に拘って無さそうだし、それで良いのかな。
「ただ、悪用する奴が獲得する可能性も…」
「オロチの勾玉が必要なんですよね?では作れないのでは?」
うん、俺が提供するか、もしくは他の誰かがオロチを倒さない限りは作れない。
錬金術の書も素材が無ければ無用の長物か。
「そう言えばゴーレムと毛生え薬の他にも何か作れるの?」
「後は~目を良くする薬とか~」
「マジで?それも欲しいんだけど」
目を良くする薬、耳を良くする薬、冷え性を治す薬、ED治療薬が作れるらしい。
「勾玉2個で目を良くする薬とED治療薬作って」
「良いですよ~」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。貴重な勾玉をそんなにあっさり」
どう考えても俺が得する取引だろうが。
俺の勾玉なんだからどう使おうが勝手でしょ?
「す、少し冷静になってください」
「うるさい、国家権力には屈っしてたまるか」
「今ED治ったところでカミナは妊娠中でしょう?」
うん、使い道が無いね。少し冷静になったよ。
だが目はすぐにでも良くなりたい。老眼来てるからつらいんだ。
「国としてもいくつか確保しておきたいんですが」
「見返りは?俺金持ちだから金額じゃ動かないよ」
「うーん」
提供出来るものはないでしょうが。諦めなさい。
「あ、綾元さん、製作はよく考えて…」
「私だって無駄遣いはしませんよ~、次はオリハルコン作りたいです~」
「個人で強力な兵器を持つのも国としては…」
「それもあるんだよな。綾元さんが私利私欲でレベル吸いまくって自分に注入、この可能性もやはり心配」
「だったら勾玉譲らないでください」
「ひどいです~」
思惑は三者三葉、誰もが自分の利益の為に勝手な事を言ってる。
これは縮図だ。狭いこの寿司屋の個室でさえこんな感じだ。
錬金術を公表した時は世界間でこのやり取りが繰り広げられるだろう。
まあもうしばらくは公表しない方が良いのかもしれないね。
結論を先延ばしにするだけかもしれないが、もっと慎重に検討する時間は必要だ。
「あ、影山の事なんだけど、国も相手しないで欲しいんだよね」
「ああ、あの人は別に国も相手していませんよ?昔っから私をナンパしてくる人で」
良い歳こいてあっちこっちでナンパしてんだな。
中身は俺と同じ五十代のおっさんだから無視していいぞ。
「議員や財閥の娘を狙うなんて随分高望みですね~」
「財閥の娘って誰?」
「私ですよ~」
「へえ、なんで冒険者やってんの?」
「承認欲求です~。親の七光りって言われたくないんで~」
ふーん、はたから見ると苦労なく生きてけそうに思えるけど、いろいろあるのね。
でも財閥の娘なら国もあまり無理な事言わないんじゃないかな?知らんけど。
つか影山は玉の輿狙ってんのかな?そもそも結婚もしてないって事か?
まあ今の時代自由だとは思うけどさ。そもそもあいつの人生なんてどうでもいいか。
「お二人はオリハルコンゴーレムを作るために今後もダンジョンを攻略する予定なんでしょうか?」
「私はもちろんそのつもりですよ~」
「俺は無いかな。子供も産まれるし他の人に任せるよ」
「そうですか…」
少し後ろめたいんだけどね。ブロンズダンジョン出してしまった責任あるし。
あんなもん出しちゃったからこんな事になったんだよな。
少しの後悔とは裏腹に、髪が生えた嬉しさが圧倒的に勝ち、勝手なもんで仕方が無かったと思っている。
後始末はよろしくね!てへ。
「はあ、取り合えず、本日の話はこの三人の中だけに留めておくという事で」
了解、では帰ろう。




