78 ゴーレムの能力
朝から綾元さんからRINE電話だ。なんだろ?
ーあの~ちょっと面倒な事になりまして~ー
「おいおい、ひょっとして錬金術の話か?責任は自分で持つって話だったでしょ?」
ーそれもなんですが~。影山さんの事なんです~ー
影山かよ。俺は縁切ったんだぞ?今更何の話だよ。
ー影山さんが、私達がダンジョンの情報を独り占めしていると騒いでまして~ー
「うん、俺も情報よこせって言われたけど別に教える義理もない。あいつは自分の運営しているサイトの為にそう言ってるだけだよ」
ーでも、私たち実際、錬金術の事隠してるじゃないですか~ー
「うん、綾元さんが不用意に世界を破滅させかねない知識を覚え、持て余してるから俺も仕方なくだな」
ーそんな言い方~、ひどいです~ー
まあそんな事になるなんて予想してなかったんだろうけどね。
覚えてみたらどえらい能力だったと。
ーちょっと電話だと要領得ないんで~どこかで会えませんかね~ー
うーん、深刻な感じかな?じゃあ草津まで行こうか?
ー私、今屋久島でして~ー
「えらい場所にいるなぁ」
ー私がそちらまで飛びましょうか~?ー
いや、話するなら人が少ない場所の方がよさそうだ。
屋久島なら行ったことあるし、俺がそっちに飛ぶよ。
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「二条市場かぁ。一応おじ様おすすめの店あるけど」
ルシル達は朝食を食べに市場へ来た。
「海鮮はもう飽きちゃってるね」
「ラーメンは昨日食べたし」
「やっぱ北海道に居すぎなんすよね。ウチら」
お店を見て回るもののどうも触手が動かない。
あ、夕張メロンがある。
「ちょっと家にメロン送っても良い?」
「じゃあ私も、何か時期の海鮮を…」
「う~む、ウチもトウモロコシ送ってやるか。親父が泣いて喜ぶさまが見える」
朝食は決まらないけど取り合えず家に北海道の美味しい物を送ってあげよう。
我儘言って旅行させてもらってるんだ。これくらいしても罰は当たらない。
さて、お土産は送ったけどまだ店は決まらない。
駄目だね、市場を一周してみたけどどれもこれもピンと来ないよ。
「しょうがないから師匠おすすめの店にしようよ」
「ここだっけ?ああ、海鮮の他に焼き魚定食もあるよ」
「お、いいね。ウチ根室で焼き魚のウマさに目覚めたんよ」
「私は元々焼き魚好きだけどな。根室の朝食で出たサンマ美味しかったよね」
あれは確かに美味しかったな。
あたしとエレナは普段家で焼き魚が出てきたら嫌がってた。
食べづらいし子供の頃の苦手意識が残ってるからだろうね。
でも食べてみると滅茶苦茶美味しかった。味覚が変わったのかな?
「子供の頃は内臓苦いだけで何が美味しいのか解んなかったんす」
「小骨も嫌だったんだよね。口の中が敏感だったんだろうね」
今は鈍感になったのだろうか。何が変わったのか解らないけどとにかく焼き魚を食べられるようになった。
「あ、サバ味噌があるね。あたし食べた事無いかも」
「サバ味噌って煮魚?ウチまだそこは克服できてない」
「食べてみたら?以外と平気かもよ?」
煮魚か、焼き魚以上に苦手な意識持ってる。
古くなった魚にあたらない為に火を通すんじゃないの?違うの?
じゃあせっかくだし冒険しようか。
サラリーマンのおじさんが食べるものだというイメージ持ってるけど、美味しいのかな。
「滅茶苦茶美味しい」
「ウチ、なんで今まで食べてこなかったんだろ」
「あはは、良かったね」
素直になれなかったのよ。多分。
サバ味噌なんて見た目が茶色くて可愛くないし、認められなかった。
「ハンバーグやカレーより可愛くないのが悪いんだよ」
「どっちも茶色いじゃないの」
そうか、茶色い物は美味しいんだね。勉強になったよ。
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「屋久島にビーチなんてあるんだな」
海を目的に来る場所では無いので知らなかった。
綾元さんがこの辺にいるはずだが。
「こっちですよ~」
「やあ、なんで水着なの?」
「海なので~」
超巨乳が水着で待ってた。こぼれそうだ。
困ったな、嫁持ちなので個室とかで会うのは困るという事で海になったのだが。
人目もあるし、大丈夫な場所だと思ったけど結局気まずい感じになっちゃった。
まあいいや、その辺に座ってさっさと話してさっさと帰ろう。
「まず~影山さんがあいつら何か隠してるって国に抗議したらしいんですよ~」
「国に?あいつにそんな繋がりあるの?」
「国内最大級の攻略サイト運営者として有益情報の真意などで国とのやり取りがあったみたいですね~」
ふーん、それもどうせ俺が提供した情報なのに。
人のふんどしで権力に擦り寄ってたのか。腹立つな。
「じゃあ国がなんか言って来たの?」
「はい~私達~国にも情報隠してるじゃないですか~。影山さんの抗議は渡りに船だと思ったんでしょうね~」
「ちなみにこっちにも国から電話かかってきたよ。髪が生えたのが後から不思議になったんだろうね」
最初はヅラとでも思ったのかな。まあダンジョンに関係あるなんて思わないよな。
「何か有益な情報を隠匿してる場合~国家反逆罪もありうると~」
「そんな脅しをかけてきたの?」
「脅しって言うか揺さぶってる感じでしたね~。国も表立って脅しては来ないですよ~」
「まあそうか。今の時代すぐ録音出来るもんな」
まあそんな事する人がいたらって例え話でもされたのだろう。
向こうも確証がない以上、必要以上に踏み込んでは来ないか。
「でもおかしいな。揺さぶるなら髪が生えた俺の方を揺さぶるべきだと思うけど。綾元さんが俺の髪の秘密持ってる保証なんてないのに」
「うーん、すみません~。私、インストグラマやってるんですけど~、そこにゴーレムが写りこんじゃってて~」
「お前のせいじゃねえかよ!」
「うえ~ん」
投稿はすでに消したらしいが、それ見た連中には疑問残るよな。
国も見たのかな?俺を揺さぶっても無理と判断して綾元さんに行ったのかもしれない。
「新しいダッチワイフ買ったの?とか書かれるし踏んだり蹴ったりです~」
「もうそれで良いんじゃないか?誤魔化せないの?」
「かっこ悪いじゃないですか~」
うん、カッコ悪いね。こんな超巨乳だからどうせ性欲も旺盛げふげふ。
そんなレッテル張られやすいだろうなとは思う。
「私も怖くなっちゃって~こんな場所に逃げ込みました~」
「それでなのか。でもどのみちスマホにGPSついてるし国が本気出せば見つかると思うけど」
「それならまたテレポートで逃げます~」
もうスマホ捨てれば?現代人にそれは無理か。
「まあいざとなったらアイテムボックスに入れればGPSの電波は途切れるんで~」
ああ、そう言えばそうだ。
と言うか、電話も繋がらなくなるんだよな。
「そう言えばゴーレムはどうしたの?」
「アイテムボックスの中ですよ~」
「入れれるのか」
「丁度いいので~性能を教えましょうか~?」
うん、知りたい。教えてくれ。
ミスリルゴーレムの性能
・レベル500の冒険者と同等の強さ
・腕が変形し、剣になる
・盾形のシールド防御魔法が使える
・ダンジョンにも連れていけるがレベルは上がらない
・教えれば仕事などの業務も出来る(自己学習能力がある)
・教えれば一般的な家事が出来る(同上)
・レベル500の冒険者と同等の強さだが、テレポートは使えない
・アイテムボックスに入れられる
・空を飛べる(マッハ2)
「ちょっと待てよ。滅茶苦茶高性能じゃないか」
「はい~AI搭載のロボット並みです~」
人間のいらない世界だな。しかも飛べるのかよ。
便利だな、これは作ってみたくなる訳だわ。
「オリハルコンはもっと凄いですよ~」
「そっか、そっちもあるんだったな」
オリハルコンゴーレムの性能
・レベル1000の冒険者と同等の強さ
・腕が変形し、剣になる
・各属性魔法が使える
・絶対防御魔法が使える
・ダンジョンにも連れていけるがレベルは上がらない
・教えれば仕事などの業務も出来る(自己学習能力がある)
・教えれば一般的な家事が出来る(同上)
・テレポートが使える(場所を覚えさせる必要あり)
・アイテムボックスに入れられる
・空を飛べる(マッハ5)
・レベル500までの冒険者のレベルを下げることが出来る(経験値を吸い取る)
・吸い取った経験値を他者に分けることが出来る
「ちょっと待てよ。やばすぎるだろこれ」
「怖いですね~」
「ちょ、ちょっと頭を整理させてくれるか?」
「はい~」
やばすぎる。なんだこれ。
ちょっと飲み物でも買って来て落ち着こう。
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「昼だね。師匠のリストの二重丸のお店に行こうか」
「ここは絶対行けって事っすね」
某スープカレーのお店まで来た。ここも結構並んでるなぁ。
でも二重丸なら仕方ない。待つか。
「札幌って結構観光場所少ないんだね」
「東京タワー潰したようなあれにはウケたっす」
「時計塔も噂には聞いていたけど…」
まあガッカリって程では無かったかな。
歴史ある建物なんだろうなとは思ったよ。
「午後からはどうする?」
「後は有名な公園か動物園か…」
「動物園は旭川で行ったしなぁ」
公園も自然を山ほど見た後の今となっては…
買い物で良いんじゃない?そろそろ色々消耗品を買いそろえたい。
「そうだね。そうしよっか」
「しかしおじ様の二重丸がスープカレーって以外じゃないっすか?」
「以外だね。女子が好きそうなものが好きなんだね」
見た目はオークみたいなのに可愛いね。
それは前の話か。今は髪も生えたしお腹もだいぶ引っ込んだ。
「あ、順番みたいだよ」
二重丸なら嫌がおうにも期待してしまう。
北海道初のスープカレーだし、楽しみだな。
「うっっっっっっま!!」
「野菜が甘い!甘すぎるよ!」
「野菜を素揚げしてるの?それだけでこんなに甘くなるの?」
多分元の野菜も美味しいんだよ。それを少し油に通す事で甘みを引き立たせている。
そしてカレー自体も滅茶苦茶美味しいんだよ。絶妙なバランスでこの料理を至高の存在に引き上げている。
「揚げ時間も絶妙なんだろうね」
「作った人天才、尊敬するっす」
「一応東京にも支店あるみたい。熱海から行こうかな…」
スープカレーってこんなに美味しいのか。
それともこのお店が特別美味しいのかな。
今まであんまり選んで食べてこなかったけど、考え方が変わった。
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「えーと、経験値を吸い取れる?じゃあ人の経験値吸い取って自分の物に出来るって事?」
「ですね~。吸い取りましょうか~?」
やめろばか。つかオリハルコンは作ってないだろ。
それに俺は先日800越えてるぞ。
「どれくらい吸い取れるの?レベル500の奴をレベル1に出来るって事?」
「調整可能みたいです~。少しでも全部でも吸えるみたいです~」
「で、レベル1のやつを500に出来るって事?」
「そうです~」
無茶苦茶だ。そんなの作ったらどうなるか。
世界がひっくり返るぞ。
「500以上なんてほぼ日本の冒険者にしかいないでしょ。各国の冒険者を無力化できると考えれば…」
「日本が戦争に強くなっちゃいますね~」
「しかもマッハ5で飛べる?それって弾道ミサイル迎撃出来るんじゃ?」
「そうなんですか~?」
詳しい事は解らないけど、絶対防御を張れるのであれば可能なんじゃないか?
やばい、やばすぎるよオリハルコンゴーレム。
「育成も容易、国防にも役に立つ、政府が知ったら間違いなく作れって言われるだろうな」
「でしょうね~」
それにレベルを下げれるなら今まで極刑にするしかなかった冒険者を無力化できる。
冒険者特例法にも影響が出てきそうだな。
上手く使えば滅茶苦茶役に立つけど弊害も必ずあるような。
なにより綾元さんに野心があったら日本も終わりじゃないか。
「無いですよ~。だから相談してるんじゃないですか~」
「作る前に相談してくれよ。知ってたのに言わなかったでしょ?」
「こんな事になるなんて~」
「うーん、これは…というか、今後も錬金術の書は出る可能性あるだろうしどうしたもんかな」
「パンドラの箱を開けちゃったんですかね~」
まさにそれだな。触れてはいけない物のように思える。
救いなのは勾玉持ってるのが俺だけって事か。
と、同時に俺にも危険が迫るような?どうしたもんかね。
「まあいいか、勾玉は1個しか無かった。そしてそれをすでに譲ったって事にしよ」
「後6つあるの知ってるのは私だけなんですか~?」
「ああ…いや、影山は知ってるな。ドロップ情報も教えたからな」
困ったな。厄介な奴に知られてしまっている。
うーん、どうしたらいいんだ?こんな事になるって解っていれば…
「でも良くミスリルで我慢できたね。多少無理してでもオリハルコン作ろうとは思わなかったの?」
「正確には作れないんですよ~」
「え?」
「勾玉ともう一つ素材がいるんです~。聞いたことも無いモンスターの素材だったので~、もっと先に進まないと出ないんじゃないかな~」
そうなのか。少し安心した。
取り合えずすぐにオリハルコンゴーレムが作られるような事は無さそうだ。
「綾元さんはどうしたいの?」
「国には言うしか無いかな~って思ってます~。でも後で困った事になると嫌なので~相談を~」
「そうか、ただ今すぐは俺も結論出せない。少し考えさせてくれないか?」
「解りました~。しばらくは逃げ回ってます~」
はあ、どえらい問題を抱え込んでしまった。
ちょっと家に帰ってゆっくり考えてみよう。
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「かっとばせー-!」
夜、ルシル達は北広島に来ていた。
「今のホームラン?」
「いや、ファールになったね」
「あの人がピッチャー?」
「あれはマスコットだね」
ルールが全然わからない。選手も豆粒だし。
試合直前だからあまり良い席を取れなかった。
「お姉さん飲み物くださーい」
「ちょ、ビール売りだよ?すみません間違いです」
「なんで短パンなの?性的搾取?」
「めんどくさい事言わないで」
ごめんごめん、難しい世の中なんだね。
配慮配慮でみんな大変だ。
ワアアアアアアアアアア
おお、おっきい。こっちに飛んできてるね。
あたし達のはるか上をボールが通りすぎて…エレナがジャンプしてボール取っちゃった。
これはルール上いいの?
「やった!」
「すげえなお嬢ちゃん、冒険者かい?」
解るよね。あんなにジャンプしたら。
近隣からの拍手喝采、エレナは照れながらお辞儀してた。
「冒険者が見ても面白いのかい?アンタ達に取っちゃあ茶番だろ?」
「そんな事無いですよ。面白いです」
「ふーん」
本当は嘘だ。あたしならもっとうまく出来そうだもの。
球も早く投げれるだろうし、一瞬でベースを回れる。
当たるか解んないけどボールももっと飛ばせそう。
スローモーションに見える。二人は楽しいのかな?
「…ボール取って満足しちゃったっす」
「混まないうちに帰る?私はいつでも良いよ」
…同じなんだね。知らないうちに人間離れしちゃったんだ。
もう普通の人間には戻れない。凄い事のはずなのに、なぜか寂しいように思えた。




