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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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77/77

77 嘘

「うわ!寝坊した!」


 翌日8月7日、北海道18日目。


「だ、誰も起きなかったの?もうチェックアウトギリギリだよ!」

「んー、疲れが…」

「オシンコシンの滝…」


 いつの話をしてるのよ!思い出に浸ってないで起きて!

 さっさと準備してチェックアウトしないと。

 忘れものだけには気をつけて!


「んー、朝食は?」

「バイキングの時間終わってる、外で食べよう」

「エレナ充電器忘れてるよ!」


 バタバタしながらチェックアウト。

 はあ、髪がクシャクシャだ。


「早起きせな阿寒湖ー」

「エレナがまだ寝ぼけてるよ…」

「それよりこの辺はまだお店やってないみたい。コンビニならあるけど…」


 昨日の夕食はダンジョンの中で携帯食料。わびしいご飯が続くね。

 でも仕方ない、お昼はどこかでちゃんとしたものを食べよう。


 今日はまず移動に2時間ちょっと、途中、足寄町に寄り、昼食場所を探す。


「美味しそうなハンバーガー店ならあるみたいだけど…」

「ハンバーガー?食べたいっす!」

「確かにジャンクな物が食べたい…」


 ハンバーガーと聞いて口の中に水分が溢れてくる。

 自分でも気づかないうちに普段の食事に近い物を求めてたみたいだ。


「り、臨時休業」

「ガーーーン!!」

「もうハンバーガーの口になってたのに!」


 チェーン店でも良いから無いの?無いのかー。

 仕方ないので近くにあった蕎麦屋で食事をする。美味しいけど敗北の味。


「はあ、帯広行かないっすか?帯広なら店たくさんありそう」

「いや、それだとスケジュールがきつくなるよ?」

「明日には札幌に行かないと…」


 でもハンバーガーが頭から離れてくれない。

 ああ、どうしてなの臨時休業。あたし達を苦しめて楽しいの?


「お、お店の人にも事情が…」

「うん…そうなんだろうけど…」

「ウチらと事情とどっちが大切なんすかね?」


 それは事情だと思う。はあ、諦めるか。


「あ、やば、宿の予約しないと」

「この流れだと埋まってない?」


 うう、嫌な事言わないでよ。

 空いてた。食事の準備も大丈夫そう。

 でも結構良いホテルみたい。会席料理なのか。ハンバーガーとは程遠い食事。


「明日には札幌だしさ、それまで我慢しよ?」

「うん、我儘言ってごめん」


 大丈夫だよエレナ。じゃあ行こっか。


 バイクを走らせ糠平湖にたどり着く。

 ダム湖なんだ?もう湖は見飽きてるからちらっと見て終わり。

 現在の時刻は13時、4時間でぬかびらダンジョンを制覇し次に向かう。


「ここから30分で然別湖ダンジョンだよ」

「近くて良かったっす」

「この道も冬季は閉鎖するらしくてね」


 うわあ、結構な登り路だ。狭いしカーブがやたら多い。

 道の両脇を木々がトンネルのようになってる。景観は良いんだけど見てる余裕無いなぁ。


「きっつ!今までで一番きついっす!」

「頑張ってエレナ!」

「カーブが急すぎるね。私もエンストしそう」


 30分後、何とか到着。現在17時半か、チェックインしよう。


「はあ、これで夜潜って、明日帯広行って1つ攻略して、電車で札幌」

「ここも湖だよ?一応観光する?」


 明日の朝でいいよ。湖畔を散策して一応観光しましたみたいな顔してお茶を濁そう。

 ダンジョンの為に効率的に回ってるとは言え、湖5連続は情緒も何もないよ。


「もっとゆっくりしないと阿寒湖ー」

「「………」」


 疲れた体にダブルパンチ。夕飯までエレナを無視した。

 夕飯の後に然別湖ダンジョンに潜り、本日は終了。



 ------------------------



 翌日8月8日、北海道19日目。


「いやー、ウチらもう北海道に19日もいるんだねー」


 ホテルをチェックアウトし、帯広に向かっている。

 取りあえずはおじさんのリストにある豚丼のお店で昼食を食べよう。


「不思議なもんで、ハンバーガーが引っ込んじゃった」

「昨日はあんなに食べたかったのにね」


 欲求は満たされなかったのに不思議だ。

 愛とは冷めてしまうものなのかもしれない。


「しかし豚丼かぁ。比べるもんじゃないんだろうけど牛丼より美味しいんすかね?」

「どうだろ?でも牛丼よりかつ丼の方が私は好きかな」

「ずるくないっすか?かつ丼は卵でとじてるじゃないっすか。卵頼りなとこあるじゃないっすか」

「牛丼だって生卵あるでしょ?」

「親子丼が一番美味しくない?」

「親子丼かぁ、美味しいけど卵がずるい」

「だから牛丼にも卵あるでしょ」


 卵は反則だと言わんばかりのエレナ。

 あ、着いたみたいだよ。


「お肉柔らかい」

「ずるいな~炭火で焼いてるんだもの~ずるいよ~」

「エレナのルールは基準解んないよ」


 結局美味しいよね。ぺろりと平らげた。

 豚丼屋さんから今日潜る十勝川ダンジョンに移動、現在12時か。


「ここが終われば札幌、遅くなるかもしれないけど今日中には着くよ」

「長かったっすね。どんなホテル取ったんすか?」

「ビジホ、札幌は食事は外で良いからね」


 少しキレイ目のビジホ、食事無いから到着が遅くなっても安心。

 その後二日間は丸々休み、札幌を堪能する予定。

 さあ、それでは気合入れて行きますか。



 ------------------



「はあ、どこへ行っても誰だお前だ」


 おっさんの自宅


 髪が生えてから誰にも認識してもらえない。

 カミナの家に行っても入れて貰えず立ち往生だし。

 息子にも詐欺か何かだと思われるし。

 お隣さんからは泥棒だと勘違いされて警察呼ばれちゃった。

 身分証見せても別人だと思われるし、踏んだり蹴ったりだ。


「それでも髪が生えて嬉しい」


 どんな不幸があろうとも、髪に変えられない。

 世界中を裏切ろうとも俺はこの髪を守る。

 あれ?飛川さんから電話だ。


「どうも、不審者です」

 ーそ、その節は、失礼しました。それであのー突然髪が生えたのは、ダンジョンと何か関係があるのでは?ー


 気付いたか、国にとって有益な情報が無いか探ってるな?

 だが錬金術の事は綾元さんの身に危険が迫るかもしれないから言う気はない。


「ダンジョン頑張ったから体が活性化して生えたんじゃないかな」

 ー前日までは随分そのー…薄かったと思うんですが、突然フサフサになったようなー

「こんなもんじゃなかったっけ?」

 ーいえ、さすがにそれはー

「なんなの?ハゲの大臣にでも聞いて来いって言われたの?」

 ー違いますよ。私は日本の為になる新しい発見があったのではないかとー


 あったね。滅茶苦茶あったね。

 でも俺なら公表しない。錬金術なんて諸刃の剣だ。

 あんなの悪用されたら世界が終わりかねない。


 ー綾元さんも特に新しい発見は無いの一点張りでー

「俺に聞いても同じだよ。一緒に潜ってたんだから」

 ー…………ー


 疑ってるね。そりゃそうだ、嘘ついてるし。

 だが平和のための嘘だ。俺は何も言う気はない。

 今後、探索が進めばそのうちバレるんだろうけどね。

 その時はその時だ。俺が生きてるうちに訪れるかもわからない。


「とにかく何もないよ。これ以上は時間の無駄だ」

 ー……解かりましたー


 納得できないだろうなー。でも知った事ではない。

 俺にも守りたいものがあるんだ。それを邪魔させはしない。



 ------------------



 十勝川ダンジョンを制覇し、現在電車の中。

 これから2時間半の長い移動、目的地は札幌。


「ふう、疲れたねー」

「疲れたよね」

「疲れたっすー」


 一段落した心地よい疲れだ。電車の揺れが心地よい眠気を誘う。


「エレナ、寝るならマスクしな?あんたいつも口開けて寝るんだから」

「あいー、zzz」

「ルシルは眠くない?」

「眠いけど起きてたい。外の景色見ていたい」


 北海道の右上の四角い部分がこれで終わった。後は左下のくの字の部分。

 面積が小さい部分だ。これからは移動も楽になる。


「19日目で26か所終わったね。制覇は24、残りは18か所」

「明日明後日休んで残り21日で18か所だよね。楽勝だね」


 随分余裕が出来たもんだ。苦しい思いした甲斐があった。

 帰るのに一日使うにしてもまだ全然余裕がある。


「帰りなんだけどさ、函館から新幹線で帰らない?」

「あー、その方が楽だよね」

「フェリー長いし大洗からまた長距離バイクはツライ」


 たしかにつらい、体が疲れている今は特にそう思う。

 帰りくらい楽したいよね。


「早く帰れそうなら途中駅によってさ、観光しながら帰るとか」

「どこに寄りたいの?」

「仙台と宇都宮かな?牛タンと餃子食べたい」

「いいねー」


 ダンジョン潜らずただの旅行、それもいいよね。

 なんかあたし、たくさんの制覇を繰り返して満たされて来てるかも。

 熱意が下がって来てる?いや、疲れてるからそう考えちゃうんだろうな。


「師匠が全国制覇する時は函館からフェリーで大間に渡ったらしいよ」

「大間ってマグロで有名な場所だよね」

「北海道回って休まず東北降りてったらしいよ?とんでもないよね」


 大学辞めて回ったって言ってたよね。時間あるからそれも出来る。

 あたし達だって時間があれば…あれ?あたし張り合ってる?

 気持ちがあっち行ったりこっち行ったり、変な感じだ。


「ソロでやってた人と張り合っても仕方ないよ」

「そだね、剣も魔法も回復も全部できて、羨ましいとは思うけど、あたしはこの三人が良い」

「ルシル…」


 良い仲間を手に入れたんだ。これ以上誇れることは無いか。

 おじさん羨ましいでしょ?貴方が若い頃に手に入れられなかったものだよ。


「ねえ、そこでなんだけどさ、ルールを決めておきたいというか」

「え?ルール?」

「今のところ出てないけどさ、私達だってスキル書や魔法書がドロップしたら変わってしまうかもしれない」

「なるほど、その通りだね」


 おじさんはドロップ分配で揉めるのが面倒くさくなってソロになったと言ってた。

 あたし達にも起こりえる事なのかな。


「ドロップの書がなんであれ、3冊貯まってから分ける事にしない?」

「ああ、不公平にならないように?」

「まだ気が早い話なんだけどね。でも早めに決めておいた方が良いかなって」


 あたし達が潜ってる100層では滅多に出る事の無い書。

 それでもこのまま続けていけば、近い将来お目にかかることが出来るはずだ。


「あたしはそれでいいよ」

「エレナもそれでいい?」

「すぴー」


 良いってさ。



 -------------------



「うーーん、着いたね札幌」

「電車長かったねー」

「ウチが寝てるうちに色々決めるのやめてくんないっすか?」

「エレナいつも寝てるんだもの」


 でも別に反対では無いらしい。

 現在20時半、お腹空いたけどどうする?


「この時間だと空いてるのはラーメン屋かジンギスカンか」

「おじ様のリストは?」


 味噌ラーメンと海老ラーメンがあるね。

 味噌ラーメンがたくさん、おじさん味噌ラーメン好きなのかな。


「私でも知ってる有名店もあるね」

「ここ、カップラーメンになってたっすよね」

「取り合えず一番近い店にしない?ペコペコだよ」


 行ってみたら凄い行列、これは駄目だ。

 取り合えずチェックインしてからお店探すか。

 札幌の町を散策ついでに歩いてみようよ。


「ここも凄い行列」

「札幌っていつもこんな感じなの?」

「飲み屋も多い繁華街みたいだから昼の方が空いてるのかな」


 どこも行列、ちょっと繁華街から離れてみようか。

 ここは海老ラーメン?やっぱり列があるけど他よりはマシだね。

 ここに決めちゃおうか?


「うっま」

「海老が濃い」

「お盆だともっと混んでたのかな?危なかったよ」


 確かにそうだ。お盆前に札幌に入る事が出来て良かった。

 札幌だけ見てたら北海道が過疎化進んでるとは思えない、一極集中なのかな。


「東京もそうだけどどうして一か所に集まっちゃうのかね」

「う、あたしも東京の大学行きたい」

「ルシルはまだその気なの?冒険者やりにくくなるよ?」


 うーん、少しずつ気持ちが揺らいではいるんだけどね。

 華やかな都会に憧れるのは必然じゃない?

 東京で生きてる自分の姿を想像して夢見てしまうのは田舎者なら誰でもあるでしょ?


「東京は怖い町だよ?ルシルみたいな天然が行くと…」

「悪いやつに騙され、シャブ漬けにされるよ?」

「さらっと怖い事言わないでよ。というか、誰が天然よ」


 二人が顔を見合わせ、ため息をつく。感じ悪いわね。

 こうなったら意地でも東京に行って二人に都会マウントをとってやる。

 まだそんな場所に住んでるの?おっくれってるーってやつだ。

 …ばかみたい、やめとこ。

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