76 湖
「う、美味い、朝食も美味いんか」
「こんな朝食、毎日食べたい」
北海道15日目、名残惜しいけど宿を出る。
では予定通り納沙布岬に行きますか。
根室半島をバイクで30分、到着。
「あれが歯舞?」
「うーん、多分」
「ウチが取り戻して見せるからな」
「あはは」
ここも写真撮っとく?エレナ野心溢れる感じで。
日本の未来を頼んだよ。例によっておじさんに送ろう。
半島をぐるりと回るように根室市街に戻る。お昼にはちょっと早いね。
でもお目当てのエスカロップのお店はやってるようだ。じゃあ入ろうか。
「これまた美味しいなぁ」
「バターライスにカツ、カロリー高いもんはなんで美味しいの?」
「会席料理の後だからB級グルメが丁度良いっすね」
ふう、堪能した。じゃあそろそろ次に向かおうか。
「次は標茶ダンジョンだっけ?」
「うん、バイクで行けば2時間なんだけど、電車だと景色が良いらしいんだよね」
ただし電車だと4時間らしい。うーん、長いね。
でもバイクが続いてたし、電車でも良いかな。
「じゃあ急いで、電車すぐだから。一日6本しかない」
「ええ?早く言ってよ」
バタバタしながら根室駅へ。間に合った。
「電車ボロボロっすよ?」
「左側に座って、絶景はこっちらしい」
絶景なんだ?そこまで言うからには期待してしまう。
動き出した。ゆ、揺れるね。
町を出てしばらくすると電車が海沿いを走りだす。
ふむ、確かに景色が奇麗だね。
「絶景はまだ先」
「そうなの?じゃあ今のうちに標茶の宿を予約しとくね」
丘陵地帯を抜け耕作地帯を抜け電車はゆっくりと走り続ける。
まだかなまだかな。
「おわ、何ここ?もののけが出てきそう」
「湿地帯なんだって」
「へえ、よくこんなところに電車通したね」
浮島のように見えるあれは水草かな?
湿地帯って聞くと沼をイメージしてしまうけど、ここは奇麗だな…
水鳥の生息地として大切な役割をしているらしい。
「ああ、終わっちゃった」
「もっと見ていたかったね」
「ここって電車からしか見れないんすか?」
どうなんだろう?カヌーで入れるみたい。
でもあまり人が入るべき場所では無いような気がした。
自然を守る為、出来るだけ放っておいた方が良い。
釧路駅に着き、電車を乗り換える。
待ち時間50分か、ちょっとだけ散策してみる?
「う、うわあ…さびれてるね」
「廃墟多いらしいよ?」
売り物件、テナント募集だらけ。
ガラスも割れてるとこあるし、あそこなんて天井が落ちてる。
駅前とは思えない寂しさだ。
「人口どんどん減ってるみたい」
なんとも悲しい。やっぱり便利な場所に若い人は出ちゃうのかな。
………あたしだって、熱海から出ようとしてる。
釧路の現状を憂うとともに、後ろめたい気持ちになった。
釧網本線に乗り、ここからは北上。
50分ほどで標茶駅に着く。そこからバイクでひとっ走りし予約したホテルへ。
ホテルここしか無かったんだけどレストラン併設なので決めちゃった。
現在15時半、夕飯は18時からか、その後ダンジョンに潜ろう。
「うーん、この先お店もコンビニも少ないなぁ。どうしたもんか…」
お昼に困りそうな感じだ。計画的に進まないとね。
食事はアイテムボックスの中に入れておけばそれなりに長持ちはする。
「携帯食量も一応持ってるっすよ」
「うん、私もだけど…」
ダンジョンでもかじりながら食べれる携帯食料は便利だ。
ブロック状の栄養補助食品はあたしもいくつか準備している。
「ウチ、乾燥肉入れてるよ?冒険者っぽくない?」
「ジャーキーかぁ。その手があったね」
「私ポテチ」
「お菓子じゃん」
「芋は食事」
あはは、ポテチ食べながら戦えるのかなぁ。
まあ出来るだけちゃんとしたものを食べたいよね。
ホテルの夕食をしっかり取り、標茶ダンジョンを制覇した。
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翌日、北海道16日目、摩周ダンジョンへと向かう。
バイクで30分、その後4時間弱で制覇。
「摩周湖寄ってく?」
「行きたいけど霧は朝が凄いらしいんだよね」
霧で有名な摩周湖、透明度でも有名だよね?
霧の無い摩周湖も見てみたい気もするけど。
「霧の無い摩周湖見ちゃうと婚期遅れるんだって」
「パイセン早めに結婚したいんすか?」
「考えた事も無いけど、なんであれ遅れるのは嫌じゃない?」
「迷信でしょ?」
「ルシルは遅れても良いの?」
「あたしはまだ理想のエルフが見つかってないよ」
「「………」」
何故か二人が目を伏せちゃった。
日本ではエルフと結婚出来るのだろうか?まずそこから考えよう。
「それよりまだ13時半だし、夕飯前にもう一つ攻略しない?」
「え?夕飯後は?」
「朝の摩周湖に行く為に早寝する」
了解、せっかくだから見たいよね。
次は川湯ダンジョン?では宿を予約しておくね。
20分で川湯ダンジョンに着く、近いんだね。
ここも100ダンジョンなんだ?北海道は本当に100ばかりだよね。
「明日も100、明後日が200かな」
ふーん、制覇ばかりで呆気なく感じ始めてる。
そろそろ手ごたえが無いと100専門の冒険者になった気分だ。
明後日は張り切って行きたいな。
では川湯ダンジョン潜ろうか。今回は3時間半で終わった。
「ルートすぐに見つかるとこんな事もあるんだね」
「いや、ウチらが強くなってるんじゃない?」
少しずつだがレベルが上っている。
現在17時半、ホテルにチェックイン。
夕飯を食べ、風呂に入って部屋でゆっくりと過ごす。
「朝食前に行くんすよね?何時起きっすか?」
「なるべく早い方が良いんだけど、5時でも大丈夫?」
ご、5時かあ。早いけど無理ってほどではない。
ここから20分で着くらしい。じゃあ21時くらいに寝ればいいかな。
「21時に寝れるかなぁ?うち結構繊細だから…」すぴー
「………」
「ルシル、札幌の人気ホテル、お盆の期間埋まりだしてるみたい」
「え?!」
今日は8月5日、そっか、そうだよね。
「12、13、14が空きが少なくなってる」
「もうどこのダンジョンにいつ潜るって先々まで決めた方が良いのかな?」
「それとも札幌通りすぎて戻ってくる?田舎ならお盆でも空きがあると思うんだけど」
果たして何が正解なのか。高校生のあたし達に現段階では解るはずもない。
きっと結果論であの時ああしてれば良かったってなるやつだ。
「明日は100で明後日は200」
「近いけど一日2つは難しいの?」
「夜に200になっちゃうよ?明日早起きで厳しくない?」
うーん、厳しいか?じゃあ夕食無しにしてチェックインの後すぐ潜るとか。
「夕飯はわびしいけど携帯食料で」
「そうする?一応観光も少し考えていたんだけど…」
摩周湖、屈斜路湖、阿寒湖と続いて行くらしい。
ここに来て湖三連発なんだね。離れていてほしかった。
「いや、五連発なんだよね」
「はい?」
糠平湖、然別湖と続いて行くらしい。
ぜ、全部見なくても良くない?
「で、翌日ここへ移動して2つ攻略して…」
「ここは移動2時間ちょっとなんだよね。電車無いからバイク移動」
2時間移動の後4時間ダンジョンとして6時間、いやバイク休憩はさむとして6時間半。
9時から行動して15時半終了、そこから移動して…
「翌日帯広に行き、その日のうちに電車で札幌に…これなら8日に札幌に着けるよ?」
「帯広は豚丼が有名だから食べたい。昼のタイミングに行けるかな?」
うーん、また弾丸ツアーになっちゃうね。
トラブルあったらそこまで、山道が続くからいつ通行止めがあるかも…
「札幌には何泊したいの?」
「え?日数的には余裕あるし、3泊くらいかな」
「じゃあもう8、9、10で取ってしまわない?予定狂ったらキャンセル料払えばいいし」
おお、勇気ある決断だね。ここまで直前で決めてきたから大丈夫なのかなって思っちゃう。
エレナ寝てるけど勝手に決めて怒らないかな?
「エレナー?そう決まったからー」
「すぴー」
返事をしたという事にしておいた。
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「うおおおお!雲海だ!!!」
翌日8月6日、北海道17日目、現在は朝の摩周湖。
「めっちゃ雲海!めっちゃ神秘的!」
「ここに来るまでも霧凄かったね」
「前が見えづらくて怖かったよ」
あーーー、ずっと見ていられるんだけどな。
でも急がないといけない事情もあるのが悲しい。
「ここは殺人事件のようなイメージで写真撮ろうよ」
「ええ?なんでそんなの?」
「小説でしょ?読んだこと無いけど」
そんな訳で摩周湖でエレナに追い詰められる可哀そうなあたしとクオンちゃん。
撮りづらいね、他の観光客の方に手伝って貰ってまで茶番を演出。そして画像をおじさんに送信
さて、今日はまず100を攻略して…
観光中まで考えてしまう。なんだかノルマに追われたビジネスマンみたい。
「ルシル、まだ大丈夫だよ。阿寒湖は15時に着けばいいんだから」
「そうだったね」
「むう、ウチ本当に返事したの?」
「「………うん」」
エレナは納得してないようだ。へ、返事してたよ?
疲れてたんじゃない?
「ウチ、北広島で野球見たかった」
「丁度試合あるの?札幌から行けるんじゃない?」
「エレナ野球興味あったんだ?」
「うん、選手が好きとかじゃなくてホームランみたいだけなんだけどね」
ふーん、ホームランは聞いたことあるけど何の事だか解ってない。
あたしは興味持たずに育ってきたなぁ。
「私は一応おじいちゃんが広島好きだから時々見てる」
「そうなの?でも広島なら丁度いいね」
「ああ、北広島と広島は別物で……」
なんか、めんどくさい事を言ってしまったみたいだ。
知識無いんだから仕方ないでしょ。
でも二人が見たいんならどこかのタイミングで見ようよ。付き合うよ。
朝食を食べ、8時にはホテルを後にする。
まずは屈斜路湖を観光。
「ここも結構霧出てるね」
「あれ?湖の湖畔にダンジョンあるんすね」
観光が終わった後はあそこに潜るのか。
と言っても霧は摩周湖の方が凄かった。
こっちの方が大きい湖なの?でも見えにくいな。
「本当は上の方の峠から見るのが良いらしいんだけどね」
そこまではしなくていいよ、霧は摩周湖で見たし。
30分ほど周辺散策、その後、ダンジョンに潜って4時間弱で制覇。
「おお、霧が晴れてるっすよ」
「島があったんだね。見えなかった」
現在12時半、阿寒湖までの移動は一時間半か。
湖畔のレストハウスで昼食を食べ、阿寒湖周辺で宿を予約しすぐにバイク移動。
「ルシル、今日はバイク交換してー」
「ええ?初アメリカンかぁ、山道大丈夫かな?」
「うち、本当に返事したのかな」
「……」
バレてそう、解ったよ。乗ればいいんでしょ。
「あっ!もう、エンスト…」
「うひゃひゃ、うちの相棒は気難しいの」
重たい車体、阿寒湖までは緩やかな登り坂。
直進を走る時の安定感は凄い。重心が低いからだろうね。
「うーん、カーブは少し怖いけど、あたしは結構好きかも」
「ええ?……いやウチも好きだよ?」
本当かなぁ?あたしのスクーターの方が好きそう。
顔つきが違うもの、うきうきしてる。
「ここからはカーブ続くよ」
クオンちゃんの号令、ええ?しかもトンネルもあるの?
あ、でも四角くて横の景色が見えるトンネルだ。これなら閉塞感が無い。
「雪避けのトンネルらしいよ」
「そうなんだ?」
「うはは、音が反響しておもろい」
冬は雪が多いんだろうね。通行止めにならないのかな?
湖は観光資源だから除雪を頑張るのかな。
「そろそろ着くよ」
14時に到着か。少しは観光できそうだね。
周辺を散策してみよう。
「わ!あのコロポックルの置物可愛いね!」
「買ったら?そう言えばお土産全然買ってなかったね」
「ウチもフクロウの置物買おうっと」
それもいいなぁ。でもいくつもあってもしょうがないし、一つにしておこう。
ではそろそろホテルにチェックインしてダンジョン潜ろうか。
15時チェックイン、すぐに準備する。ダンジョンへ向かう。
「200、久々すぎっす」
「層雲峡以来?感覚忘れそうなくらいだよね」
「朝早かったんだし、眠気にも注意だよ」
眠かったら無理しないでおこう。どのみち200は制覇出来ない。
137階層まで潜って6時間、前回と同じ階層だけど本日はダンジョン2個目だし、この辺で引き揚げよう。
「うう、疲れたっすね」
「ダンジョンに実質10時間+移動だからね」
「今21時、お風呂入ってすぐ寝ようよ」
明日も移動が長め、天気が良いと良いけど。
ホテルに戻って就寝。




