70 プラチナ
朝だ。道後三日目の朝。
旅館だと早く目が覚めちゃうな。枕が違うからだろうか。
育成の時間まではまだ早い、朝の空気でも吸ってこようかな。
外に出ると朝から人がチラホラ、みんな外湯に行くんだろうな。
「あら~、風俗ですか~?」
「なんでだよ、つか綾元さんか。早いんだね」
浴衣の綾元さんに出会った。超巨乳の浴衣…破壊力がやばい。
胸元が目の毒だ。もっと隠してくんないかな。
「そういえば影山ってやつ知ってる?向こうは知ってそうだったけど」
「ああ~攻略サイトの~。あの人別府のダンジョンボスの情報と引き換えに~、ナンパしてくるんですよ~?」
そう言う事かよ!いろいろ合点がいった。
それで相手にされなかったのだろう。だから『あんなやつ』って言ってたのか。
しょうもないなぁ、人から貰った情報でナンパかよ。
「セコイいんですよ~?違う人間装ってブロンズダンジョンの情報も探ってこようとするし~」
「情けないやつだなぁ。ちなみに別府のボスは…」
「オロチですよね~?知ってますよ~」
別府攻略から20年以上たってる、情報は漏れ出ているようだ。
俺も聞かれたら全然答えてるし、政府だって知ってる事だ。もう古い情報なんだよな。
「相手にしなくていいからね」
「メッセージがしつこくて嫌な人なんですよ~?どんな人なんですか~?」
「会った事がある訳じゃないんだね。俺と同い年のおっさんだ。大学の同級生だよ」
「そうなんですか~?メッセージでは三十代後半って言ってましたけど~」
「歳まで誤魔化してるのかよw」
呆れて物も言えない。いい歳こいて何やってんだ。
そんな方法で上手く行くのか?…騙される子もいるのかもしれないな…
「うふふ、良い事思いついちゃいました~」
ん?急にどうした?綾元さんが俺の腕に絡みついてきた。
俺の腕を胸に挟み込み、スマホを取り出して自撮りを始める。
おいおい、なにやってんの?
「影山さんに送ろうかと思いまして~」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺も嫁がいるんだから誤解されるような事は困る」
「ええ~?でも狙ってた女を知り合いに寝取られたって思わせた方が面白くないですか~?」
面白いけどあんまり良い趣味ではないぞ?
おっとりしてると思ったけど結構怖い事考えるね。
「昨晩は朝までお楽しみ…」
「お、送るなよ!送るなら違う男でやりゃいいだろ!」
「だから~知ってる人の方がダメージあるんですよ~」
とにかく絶対ダメ!どんな弊害があるか解らない。
人の夫婦生活脅かすような事はやめてほしい。
「仕方ないですね~」
「画像も消して、証拠残さないで」
「あー、おじさん浮気してるー」
「ほらもう誤解されちゃったじゃん。ミヅキなんて一番ややこしい奴に」
まったく朝から散歩してみたらえらい災難だよ。
今日も育成とダンジョンあるんだからそろそろ戻って準備しようぜ。
はあ、それにしても影山のアホはどうしたもんかな。
犯罪起こさなきゃいいけど。困ったもんだ。
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「うー、朝寒かった」
北海道3日目、昨日は遅くまでダンジョンに潜ったので朝が遅い。
「朝食ぎりぎりだよ?」
「温泉も入りたい」
チェックアウトぎりぎりまで粘る。今日はバイク寒くないかな?
10時頃には丁度良い気候になってた。
「まずは白金ダンジョンまで、20分くらいかな」
「近いんすね」
「でも山道だから気をつけよう」
のんびり出発、草木が生い茂り、動物が出てきそうだね。
曲がりくねった道を進んでいく。
「こういう道をワインディングロードって言うんだって」
「ワイン飲むと酔っ払うから?」
「道がクネクネしちゃうって意味っすかね」
謎だね?あ、ワイングラスがくねってるから?真相は謎だ。
意味は解らないけどバイクだと曲道は楽しい。
って、調子に乗ってると…
ガガッ
「ルシル大丈夫?」
よろけてバランスを崩してしまった。
目立ったキズは見えないけど車体の底の方を擦っちゃったみたい。
「ショック―」
「仕方ないよ。切り替えていこ?」
はあ、仕方ないか。避けられない物だと聞くし。
むしろ転ばなくて良かったよ。
20分で白金ダンジョンへ。
あたしまだちょっとイライラしてるな、自分のミスなのに。
こうなったらモンスターに当たっちゃおう。
「ここも混んでるね。田舎なのになんで?」
「名前の通り、プラチナスライムが出やすいんだって」
プラチナ+夏休みか。プラチナって価値高いの?
金の半分くらい?十分高いんだね。
「プラチナスライム倒せたら北海道旅行の旅費もバイク代も全部取り戻してお釣りがくるよ」
「凄いね、でも競争率高そう」
「ここはガチ勢も多そうっすね」
十勝岳より装備がしっかりしてる人が多い。
結構深く潜ってスライム探すんだろうね。
一攫千金か、ちょっと魅力的ではあるけれど…
お金にとらわれると、ここで旅が終わってしまう。
あたし達は観光目的でもある。さすがに時間は使えないかな。
普通に潜って運良く討伐出来たらラッキーくらいの気持ちでいよう。
装備を整え、ダンジョンに潜った。
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育成三日目、やる事は一緒だ。
不死王倒して女の子たちのレベルアップ。だが16しか上がらなかった。
三日合計で現在レベルは86、あと何日かかるだろうか。
前年度の育成三人が教育に加わる。
昨日までは飛川さん一人で5人に基礎的な事を学ばせていたらしい。
ここからは次第に実践的な指導に変わっていくのだろう。
「ふう、肩の荷が下りました」
「飛川さんか、三人に任せっきりで良いの?」
「あの子達は私よりちゃんとしてます」
確かにそうかも、いや、飛川さんが悪いとかじゃなく、あの三人が立派過ぎるんだ。
現代の若い子には無い人を思いやる気持ちを持っている。
「私はちやほやされたくて冒険者になったところがあるので」
「ああ、アイドル冒険者って言われてたもんね」
ネット黎明期、情報が格段に伝わるようになり、ダンジョンに潜る冒険者にもスポットが当たるようになってきた。
そして動画サイトの登場、収益化の始まり、飛川さんは上手くその流れに乗れたのだろう。
元々女子自体が少ない職業、パッとしない女の子でも動画サイトでは人気になった。
ちやほやされたい系女子はそこに目をつけた。自分でも人気が出ると思ったんだろうね。
「まあ新陳代謝の激しい世界なので私も議員に鞍替えしましたけどね」
現在は飽和状態、更に男子の冒険者就労年齢引き上げにより、その傾向はますます強くなるだろう。
しかしそんなにぶっちゃけなくても良いよ。政治家が本音言ってたら商売あがったりでしょ?
「その後政策への批判はどうなの?」
「反発はもちろんありますが、過激派の影響で表立って声を上げる人はいませんね」
そうなったか。確かに仲間だと思われたくないもんな。
良くも悪くも過激派たちの行動は裏目に出たという訳か。
「まあいい方向に向かったのなら体張った甲斐があったよ」
「また何かあった時はよろしくお願いしますね」
それはその時の状況次第だ。俺はもうおっさんなんだから。
責任も引き継いでいきたい。若い子がどんどん育つことを望もう。
「そろそろ潜りますか~?」
ああ、待たせてたね。ミオコ達も来ている。
では本日は85階層からか?頑張ろうぜ。
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「うう~せっかく見つけたのに」
白金ダンジョン前広場
100層を制覇し出てきた。しかし三人共浮かない顔。
途中、プラチナスライムを見つけたのだ。でも討伐には至らなかった。
「攻撃全然当たらなかったね」
「今調べたらレベル250くらいでないと狩るの難しいみたい」
「全然足りてないじゃないっすか。ウチら」
どおりでガチ勢多い訳だ。あたし達じゃ最初から無理だったのか。
ああ、今頃他のパーティに狩られてるのかな。口惜しい。
「しょうがないよ、切り替えて『青い池』に行こう」
とぼとぼとバイクに乗り込み、観光名所に向かう。
あれ?すぐに着いたね。うわ!人がいっぱい!
「おおお、なんで池が青いの?」
「幻想的で奇麗だね…おとぎの国みたい」
「水の中から木が生えてるっすね。なんでなんだろ?」
現実味の無い風景にしばし時を忘れ見入ってしまう。
しかし観光客多いな。静かに見たいのにそれを許さない。
「ここはやはり…」
「エレナ、また写真撮るの?」
「ここで撮らない人居ないでしょ」
そだね、またおじさんに送ろうか。
昨日の画像は既読ついてるのに反応ないね。忙しいのかな。
「ではパイセン、水の妖精のようなイメージで」
「またー、もういいよそういうの」
「美女がビジョビジョって感じで」
「最悪だ、旅行でテンションおかしくなってない?」
またしばらくクオンちゃんで遊んだ。
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ブロンズダンジョン99階層まで来た。
敵が強い、ミオコもミヅキも疲労困憊だ。
そして100階層へ下りる階段も見つけた。
「先に進むならウチら離脱しますんで」
「先にリターンで帰ってるよ」
「いえいえ~今日はここまでです~。限界まで経験値稼ぎをしましょう~」
そんな感じで限界まで頑張る。俺達の限界というより精霊達の限界なんだけどね。
もう精霊無しでは全然立ち行かない。
「ふう、そろそろ帰りましょうか~?」
「一応100階層の様子ちょっと見てこようか?中ボスが本当にいるのか解らないし」
俺一人で様子見てくる役回りを提案してみた。
俺なら透明化で危険なく偵察が出来る。
中ボスいるならどんな奴かも確認出来れば少しは対策が練れる。
「では~お願いします~」
階段を下りながら透明化。
レオンはパーティでは使ってないからまだまだ元気だ。
「ん?何もいないように見えるが」
広い部屋、ただ空間が広がってるだけに見える。
でも油断は禁物、モンスターの中には擬態する奴もいるからな。
ガーゴイルが良い例だ。あいつは石像に擬態している。
「バク子、何か居るか?」
『居るのは確かですが反応が漠然としてますね』
バク子でもサーチするのが難しいのかな。
奇襲に気をつけ恐る恐る足を踏み出す。あ、何か踏んだ。
ぶあああああああああ
うおお!!!床全体が動き出した!!
な、なんだこりゃ!まるで絨毯のように床が波を打つ。
中央が盛り上がり、目が出てくる。床全体がモンスターなのか?
うわ!床を波立たせ俺の体を高く宙に浮かせてきた。
見えてはいなさそうだけどモンスターの体を踏んでるから位置がわかるんだな。
向こうの床が弓なりに反り始め、反動をつけているように見える。
あれは何してるんだ?良い予感がしない。
逃げたいけどまだ空中だ、逃げれない。
反り始めた床の先端が槍状に形成されていく。
ヤバいな、恐らく反動をつけてアレで串刺しにしてくるのだろう。
力が解放され、槍状の床が俺に向けてムチのように発射される。
まだ空中だぞ?こんなもんどうやって避けろと言うんだ!
あれを食らうとやばい。とっさに火の魔法を空中で撃つとぐにゃりと槍状が融けていく。
地面に落ちたら今度は細かい触手が伸びてきた。ヤバい、拘束する気か?
もう駄目だ。俺は尻尾を巻いて99階層に逃げ帰った。
「お、おじさん大丈夫?」
「はあはあ、やばかった」
「と、取りあえず出ますか~。外でお話を聞きますね~」
リターンで外へ、ああ、冷や汗をかいた。
「なんというか、でっかいエイと言うかタコと言うか、それをミックスした感じと言うか」
「床に擬態してたんですか~」
良い表現が見つからない。とにかく大きすぎて全体も見えなかった。
戦うとしたらどうすればいいのだろう?モンスターの上で戦うのか?
「バレーボールのトスとアタックみたいな攻撃だった。空中で何も出来ないうちにやられる」
「ちょっと作戦が必要ですね~」
「火の魔法が通用するのは確認した。これくらいしか情報無くて悪いんだけど」
「いえいえ~床に擬態してると言う情報だけでもありがたいですよ~」
確かに初見殺しなんだよな。あの擬態は。
だがまだ情報が全然足りないと思う。もっと試したかったが…
ふう、地震の中で戦ってるような気分だった。
床全体がモンスターでは透明化が無意味だ。通用するならスルーして101まで行っても良かったんだけど。
チョイスを使えばスルー出来るからね。
500階層の内の100階層でこんな感じか。先が思いやられるな。
スマホを見たらルシル達から呑気な写真が、お前らダンジョン潜ってるのか?
美女がビジョビジョって何だよ。親父かお前達は。
今日の探索は終了、疲れたから宿に帰って休もう。
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青い池から美瑛駅へ。今日は駅前のホテルで泊まりだ。
途中ラベンダー畑があったけど、富良野で見たからバイクで走りながら見るだけにした。
「洗濯しないと」
「長期旅行はこれがあるんすね」
「コインランドリー他の人が使ってたよ?終わってるから早く出してほしい」
自分の事を自分でしなければいけないから大変だ。
「洗濯お願い出来ない?ちょっと近くの充電スポット行ってくる」
「夕飯はどうするの?」
「美瑛はおじ様情報無いみたいね」
じゃあ自分達で調べよう。どこが良いかな?
近くで美味しいお店があればいいんだけど。
「あれ?昼しかやってない店が多い」
「ホントだ。観光客は日帰りしちゃうって事なのかな」
観光地ではあるが人口1万人に満たない町、そっか、夜はお客さんが来ないのか。
困ったね。あ、焼肉屋があるからここにする?
「ジンギスカン?」
「ううん、牛みたい」
「おじ様のリスト、ジンギスカンの店は無いんだよね。なんでなのかな?」
どれどれ?本当だ。北海道と言えばジンギスカンなのに。
書き忘れたのかな?ちょっと聞いてみよう。
ーああ、俺ジンギスカン好きじゃないんだ。牛のが美味いー
好き嫌いの問題だった。ユッケしか食べないくせに。
どこかで一度くらいは食べたいなぁ。
その後、帰ってきたクオンちゃんと合流し、焼肉屋で食事した。




