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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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66 旧友

「見た?ズドーーンて出てきてさ」

「見たぞ。とんでもない高さだったな」


 世間では新ダンジョンの話題で持ちきりだ。

 おっきいだとか固そうだとか、みんな好きな事を言っている。


「新しい資源に期待だね」

「でも難しいダンジョンなんだろ?亡くなる人が出ないと良いけどな」


 日本ばかりこんな事になって…

 くそっ、私が日本にいながら止める事が出来なかった。


 CIAエージェント、ケイトリン・リリー・フィリップス。

 現在は由布院ダンジョンにてガルーダを倒す為にパーティを組んでレベルアップ中。


 ここ由布院でも石板が出る可能性があるのよね。

 どうしよう?もし私達が討伐した時に出てしまったら?

 壊そうかしら?でもそんな事したらパーティメンバーに殺されかねないわよね?

 てめえ、外国のスパイだったのかってなりかねない。


 ガルーダ討伐自体を辞めようかしら?

 石板が出る達成条件に協力するのもシャクよね?

 少しでも遅らせるために足を引っ張るべきかしら?


「ケイト、大丈夫か?集中してないように見えるが」

「え?ええ、大丈夫よ」


 日本に来て初めて組んだパーティ、けっこう居心地が良いのよね。

 この人達を裏切る事になるのだろうか。


「でもケイト、外国人だから税率50%なんてひどいわよね。抗議してあげよっか?」

「え?い、いや、国際問題になりそうだからいいわよ。私はレベルが上る事に満足してるの」

「アメリカのダンジョンは500までしか無いんだっけ?それも不公平よね」


 不公平なのよ。本当に不公平な事になってるのよ。

 アメリカが一番であるべきなのに。


「でもさ、日本はダンジョンが出現するまで資源が全然無かったんだよ?石油とかあるだけでお金持ちになる国とかもあるのに」


 立地次第で何の苦労もせず金持ちになる国もある。

 資源は手柄ではない。ただ恵まれただけ。


「日本はダンジョンに恵まれて幸せよね」

「そうでもないよ。災害が多いからね。築き上げた物が一瞬で奪われていく」

「………」

「知ってるでしょ?ダンジョンが多い場所は地震が多いの」


 もちろん知っている。アメリカは西海岸にダンジョンが多いんだけど、過去には大地震があった。

 日本に来てから何回地震を経験したかしら?ここでは小規模の地震は日常と言った感じだ。


「アメリカは日本の軍事力の増大を警戒してるかもしてないけどね、私達の敵は災害なのよ」

「(ギクッ)きゅ、急に何よ?」

「あはは、ニュースでそんな事言ってるじゃない?資源の無かった昔ならともかく、今の日本が戦争なんてする訳ないのに」


 …その通りだろう。狙ってるのは私達だ。

 私達が我儘なのだろう。人の物がすぐに欲しくなる。

 母国愛でそれを正当化しようとしている。


「おいおい、あまりケイトに絡んでやるなよ」

「何よ?若くて奇麗だから態度が違うじゃないの」

「いやお前が若さに嫉妬してるんじゃないか?」

「うるさい!」


 あはは、良いパーティだ。

 なんだかんだパーティ組んでからは楽しい日々を送っている。

 自分の気持ちに複雑な思いもあるけど、もうちょっとこのパーティで様子を見てみよう。



 --------------------



「旅の心得その一」


 熱海ダンジョン前広場


 北海道旅行を前にして最後の予習。

 おじさんに色々聞いておこうと思い、熱海まで来てもらった。


「おじ様、そんなのよりお店を聞きたいんすけど」

「うん、それがな、俺が北海道のダンジョン回ったのは30年以上前だから、調べてみたらほとんどの店がもう無かった」

「がーん」

「特に地方は過疎化がやばくてな、それでも一応リストを作って来たんだけど…」


 おお、ありがとうおじさん。女の子でも入れるようなお店をリストアップしてくれた。

 札幌、函館、旭川、小樽のお店が多い。

 人口の減ってる地方のデータはやはり少ない。


「道東、道北は本当にデータが無かった。すまんな」

「いえいえ、それでもぽつぽつと良さそうなお店があるじゃないですか」

「寿司屋とか入れないでしょ?だからなおさらピックアップには苦労したよ」


 うん、あたし達は回転寿司しか入れない。

 カウンターのお寿司も憧れるけど大人と一緒じゃないと肩身狭い。


「つか今の時代ネットで調べれば良くないか?」

「食べ〇グ信用出来なくて」

「グー〇ルの評価も自演多そうじゃないっすか?」


 確かにな。全然美味しくない事も多々ある。

 グー〇ルはアカウント作ればいくらでも水増しできるからな。

 クチコミを一つしか書いてないようなアカウントは怪しいよな。


「札幌とか函館はプライベートでも行ってるし、情報新しいから間違いないぞ」

「いいよね、テレポートで行ってるの?」

「ああ、ちょっとお昼にラーメン食いに札幌行くか、とか出来る」

「ぐぬぬ、羨ましいっす」


 まあまあ、苦労して辿り着いた方が美味しく感じるもんだぞ?

 一瞬で飛べると意外と味気なく感じる事がある。


「北海道で勢力を振るってるコンビニがあってな、過疎地で食事に困ったら利用するのも手だぞ。店内で作ってるから結構美味しい」

「ええ?コンビニ?せっかく北海道まで行くのに?」

「その土地のものが食べたいっす」


 馬鹿にしおって。セ〇マ便利だぞ?

 長旅だからどうせ利用する事になると思うけどな。


「良いもんばっか食ってるとな、胃が疲れてくる事がある。そういう時はチェーン店の牛丼屋の朝食とかがありがたくってな」

「そういうもんですか?」

「胃が年寄りだからじゃないっすか?」

「エレナ、言い過ぎ」


 エレナめ。でも多分その通りかもしれない。

 若いお前達には関係の無い話だったか。


「それよりルートは考えたのか?」

「はい、フェリーで苫小牧まで、その後は近い方から…」

「夏休みで回りきれるか解らないし、先に道東と道北を攻めた方が良くないか?道南は後から新幹線でも行ける」

「なるほど、あと心配なのが礼文と利尻なんですが」

「フェリーだな。天候次第だけど、夏なら欠航は少ないと思う」


 着々と計画が組みあがっていく。

 俺の若い時は結構適当だったけど、この子達はしっかり考えてる。立派だよ。


「こっち先に行った方が良いんじゃないすか?」

「でもこの店に寄るならこのルートの方が」

「お店の定休日にも注意だぞ?」

「ここの湖も寄りたいんだけど」

「夏なら富良野、美瑛も寄った方が良い。お前ら花とか好きか?」

「好きっすよ?乙女なんで」

「あたし、ドラマの舞台も寄りたい」

「ルシルそんな古いドラマ見てるの?夏休みで回り切れるかな」


 良いじゃないか。回りきれなくても。

 思い出が一番だ。その時しか体験できない事もある。


「電車もやっぱ併用した方が良いっすかね」

「ああ、雨の日は無理しちゃ駄目だ。ICカード使えるかどうかにも気をつけるんだぞ」

「ここは電車の路線がないからどうしよう」

「バスという選択肢もある。電車が無い場所は大抵バスが代わりに運行してるぞ」


 ああでもないこうでもないと頭を悩ませる若者達。

 青春だな。羨ましくなってきた。

 若さに当てられて、おじさんはなんだかセンチメンタルな気分だ。

 俺はなんで歳取っちゃったのかなぁ。


「おじさんは今年も道後で育成なんでしょ?」

「あ!そうだ!ブロンズダンジョンってのが出たんですよね?」

「おじ様潜らなくていいんすか?なんか全国から高レベルが集まってるって聞いたっすけど」

「今の俺のレベルじゃ無理なんだ」


 お前らも気になってたか。まあそうだよな。

 俺は育成に精を出すよ。攻略欲求もそれほどない。


「今は産まれてくる子供の事で頭がいっぱい」

「ハイエルフの子…」

「ちょ!ルシル大丈夫?」

「おじ様、ルシルはちょっと夏バテで」

「もうか?」


 旅行大丈夫か?大丈夫?どんな根拠で?

 よく解らんけど無理はするなよ。


「もう聞ける事は聞いたかな?」

「師匠、他に何か気をつける事無いですか?」

「そうだな…女の子がバイクに乗ってると、『大型はいいぞおじさん』ってのが近づいてくる」

「なんすかそれw」


 やっかいなんだぞ?あんまり本気にしてないな。

 まあ必ず出会う事になるから適当にあしらうんだぞ。


「じゃあそろそろ帰るよ。なんか解らん事があったらRINEで聞いてくれ」

「「「ありがとうございましたー」」」


 お礼を言える良い子達だ。北海道、楽しんでくるんだぞ。



 -------------------



「GOD、新ダンジョンの情報が結構出て来たよ」

「どんな情報だ?」


 現在最高到達階層は67、ほう、50階層を抜けたのか。

 50階層に従来通り小ボスが居て、51階層はセーフティエリアになっていたとか。

 セーフティエリアが50階ごとにあるの?便利だな。

 階層上がるごとに敵は強くなっていく。やはり、800層の道後ダンジョンの続きのような作りだと言う。


「50階小ボスは不死王と同じくらい強かったって」

「恐ろしいな、でももう抜けた奴がいるんだな」

「草津の帝王って人のパーティらしいよ」


 草津には帝王がいるのか。けっこうド田舎の帝王だな。

 おや、知らない番号から電話がかかってきた。


「もしもし?」

 ーおい!なんでブロンズダンジョンの事教えないんだよ!ー

「はい?どちら様ですか?」

 ー影山だよ!大学の同級生の影山!ー


 ああ、攻略サイトを運営してる奴だ。

 冒険者御用達の攻略サイト『超攻略!ダンジョンダンジョン』略してダンダン。

 嫌いだから縁切ったんだけどな。


「なんでこの番号を?」

 ―大学の同級生から聞いたー

「俺が新ダンジョンと関係あるってなんで知ってんの?」

 ー海外の中継に映ってたぞー


 新ダンジョン誕生の日、こいつは世界中の中継をネットで見ていたらしい。

 その中の一つに映りこんだとか。

 よく解ったな、若い時とは見る影も無いのに。


「まあでもさ、お前とは縁を切ったし」

 ーふざけるなよ!インセンティブ契約してただろうが!ー

「いつの話だよ。もうとっくに切れてるだろ」


 冒険者を辞めた時に契約は切ったはずだ。

 現にお前からの振り込みはそれ以降無い。

 どうせ情報を先取り出来なかったからキレてるだけだろ。


 ーこっちはなぁ!お前のせいで面目丸つぶれだ!ー

「知らんがな、情報欲しけりゃ自分でダンジョンに潜れ」

 ーどう責任取ってくれるんだよ!SNSの方が詳しい情報が出てる!ー


 それは時代の流れだろう。お前のサイトは長年新着情報無かっただろ?

 俺が日本のダンジョンを完全攻略し、主要な更新は止まったはずだ。

 それでも新たに冒険者になる者が見てくれるからお前は潤ってただろ?


「それにお前、オロチの情報は隠しているそうじゃないか」

 ーあ、あれは、あれが無くなったら俺のサイトに訪れる数が減ってしまう!ー


 汚いよな、肝心な情報を隠す事で定期的に閲覧をさせるやり口。

 ラスボスは誰だって気になる。ダンジョンに潜る者なら誰だって知りたい。

 例え戦う気が無くても知っておきたいものだ。


「だが残念だったな、オロチはラスボスでは無いかもしれない」

 ーふ、ふざけるなよ!今からでもいい!ブロンズダンジョンの情報を寄越せ!ー

「俺は潜る気無い。情報欲しけりゃ草津の帝王にでも交渉すればどうだ?」

 ー誰があんな奴に!良いから潜って情報寄越せよ!ー


 駄目だこりゃ、話にならん。

 スマホを切り着拒、よくも身勝手な事ばかり並べられるもんだ。

 気分悪いな。もう一生関わりたくない。


 …あんな奴って言ったな。帝王と知り合いなんだろうか。


「GOD、何かトラブル?」

「これこれこういう訳だ」

「ふーん、随分我儘な人だね」


 あいつにとっては死活問題なのかもな。

 全ての情報を掌握し、天下を取った気分だったのだろう。

 だが続きがあった。そして攻略サイトという時代遅れの遺物。

 SNSや動画サイトのほうが今は便利だもんな。


「今は情報を獲得した者が自分で発信できる時代だからな。もう役割は終わってるんだよ」

「GODもSNSやったら?」


 めんどくさいな。でも金儲かるならやろかな。

 やっぱめんどくさいな。保留で。


「カミナ、里帰りいよいよ明日だな」

「うん、実家の方にもたまには会いに来てね」


 うーん、お父さんが睨むんだよなー。

 明日は送っていくけど多分また無言の圧力で居心地悪くされる。


「ママはGODの事嫌ってないよ?」

「それがまたお父さんにとっては気に食わないんだと思うぞ?」


 俺より年下のカミナパパ、カミナママ。

 カミナママはカミナを産んだだけあって凄い美人だ。

 野球選手の妻ってやっぱ奇麗な人多いよな。


「カミナは裕福なのに冒険者始めたんだよな」

「それはだから憧れの人がいたからだよ」

「親は反対しなかったの?」

「パパが遠征に行ってる時に勝手に始めたの」


 反対されるの解ってたから黙ってたらしい。

 しばらくは部活やってると思ってたんだって。

 母親は特に反対しなかったとか。


「最初は同級生の女の子五人で始めたんだよね」

「そうだったのか」

「順調だったんだけどね。やっぱり怪我すれば痛いし、少しずつみんな熱量下がって行っちゃって」

「まあ仕方ないよな」

「気づいたら一人になってたよ。寂しかったな」


 辞めるのも続けるのも自由なのが冒険者だ。

 限界だと思えば無理をすることは無い。


「次に組んだのは売れないお笑い芸人の女の子2人でね」

「おお、急展開だな」

「私を笑わせようとするんだけど、全然面白くなくてね」

「そ、そうか。売れてないんだもんな」

「あんまり笑わないもんだから、田舎帰るって」

「………」

「でもその頃カイ君と会ったんだ」


 そっか、最初宝塚に潜ってたからお笑い芸人とかいるのか。

 2人は残念だったけど精霊に会えたのは幸運だったな。

 おそらくカイ君の方がカミナを笑顔にしただろう。


「その後すぐにミオコ達に会ったんだ」

「あの二人の事だから精霊目当てだったんじゃないか?」

「ううん、私の顔を見て『センター発見』って」

「動画サイトのセンターか」

「精霊は言わない方が良いって聞いてたからね」


 最初は言わなかったらしいけど、経験値アップの精霊だからどのみちバレるよな。

 バレた後は二人とも自分の目に狂いは無かったと、自画自賛だったらしい。

 自己肯定感が強くて羨ましいです。


 その後、汐里さんと会うんだよな。

 もうそれ以上話さなくていいぞ。悲しくなるから。

 母体に触るといけない。楽しい事だけを考えよう。

 俺が守るからな。カミナもお腹の子供も。

 あと笑わせられるよう努力もするからな。

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