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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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64 不測の事態

「それで、島を一周しようとしたら落石してたと」

「トンネルが塞がっててね。まさかの通行止めで…」

「岩ぐらい私らが破壊するから通してって言ったんですけど」

「落石が続く恐れがあるからダメって」

「慌てて来た道を戻ったんすけどね、ジェット船に間に合わなくて」


 ジェット船に乗り遅れてしまった。

 困ってしまった。熱海に戻る便がもうない。

 紆余曲折あり、おじさんがテレポートで大島まで迎えに来てくれた。


「カフェでゆっくりしてたりして、なんだかんだ楽しんでたら」

「でも余裕で間に合う予定だったんすよ?まさか崖崩れなんて」

「明日日曜だし、しょうがないからホテルで泊まろうかとも思ったんですが」

「親に泊まるって言ってきてないし、心配するかなって」


 そんな感じでRINEで相談しようとしたらおじさんがダンジョン前まで迎えに行くと言ってくれた。

 ああ、失敗した。観光などせず大人しくダンジョン潜ってればよかった。

 こんなに迷惑をかけてしまう事になるなんて…


「そうか、良い経験をしたな」

「え?怒ってないんすか?」

「いや、旅行なんてこんな事良くあるもんだぞ?通行止めとかあてにしてた店が臨時休業とか」

「で、でも、わざわざ迎えに来てもらって」

「船を経験しておこうってのも偉いと思うぞ?俺は良く調べずに行って欠航とかあったし」

「で、ですが」

「北海道に行く為の予習してるんだろ?若いのに行き当たりばったりじゃなくて大したもんだと思うけどな」


 今どきの若い子とは思えないよ。ちゃんとしてる。

 そりゃあジェット船には乗り遅れたかもしれないけど不測の事態だ。お前達が悪い訳では無い。


「取り合えず送っていくよ。熱海ダンジョン前で良いか?」

「は、はい」

「おじさんありがとう」

「ご迷惑かけるっす」


 熱海ダンジョンへと飛んだ。



 ---------------



「つかバイク見せてよ。タクシー代はそれで勘弁してやる」

「あ、クオンちゃんが二台も買ったんだよ?300万も使ったの」

「ちょ、ちょっとルシル」

「なんだと!お前は何を考えてるんだ」


 こっちはおじさん怒っちゃった。

 でも興味あるから見せろって。


「ふむ、こうして見ると電気かっこいいな。こんなのが街で走ってたら振り返っちゃう」

「の、乗ってみますか?」

「いや、ヘルメット無いからね」

「貸しますけど」

「おっさん脂が凄いぞ?スマホとかもすぐ脂が付いちゃう」


 乗ってみたいけどやめとくよ。若い子のヘルメットに脂つけたくない。

 こんなおっさんの加齢臭をつけたら可哀そうだ。


「おじ様相変わらず卑屈っすね。うちのはアメリカンす」

「ああ、人気車種だな。デザインが傑作だよな」

「一目惚れっす」

「解るぞ。400なのにこのデカさ、小さい女の子が乗るとまた映えるんだよな」

「えへへ」


 エレナ褒められてうれしそう。

 あたしのはおじさんおすすめのやつだから知ってると思うけど…


「イタリア車はお洒落だよな、デザインへのこだわりが違うんだよな」

「そうなの?」

「個性を大事にするんだよ。それでいて上品で飽きの来ない洗練されたデザイン、これだけは他国では真似のできないイタリア特有のものだ」

「えへへ」


 おじさん褒め上手だね。自分の事のように嬉しいよ。

 バイクが好きなんだろうね。それが伝わってくる。


「こっちはアドベンチャーです」

「おお、進めはしたけど実は俺アドベンチャーは乗った事無いんだよね」

「大島では乗りやすかったですよ。勾配が激しい場所に最適ですね」

「面白そうだな、つか今のバイクはメーターまわりこんなに電子化進んでるんだな…時代の流れを感じる」

「針のが味わい深いっす」

「エレナのは中古だからでしょ?最近の新車はこんなもんだよ」

「いいなあ買おうかなぁ。テレポートあるけど趣味でバイクをまた始めたいなぁ」


 目がキラキラしている。子供のようだ。

 おじさんかわいいね。


「はあ、ありがとうな。久しぶりに堪能した」

「満足していただけましたか」

「ああ、子供が出来るから今は無理だけど俺もまた落ち着いたら…」


 お金持ちなのに我慢するんだね。あたし達も見習わなければ。


「何台買おうかなぁ」

「前言撤回」

「ん?じゃあそろそろ帰るよ。困った時は気にせず頼りにしろよ」

「本当にありがとうございました」

「マジで助かったっす」

「気をつけて帰ってね」

「お前らもなー」


 おじさんは帰っていった。はあ、助かったね。

 一時はどうなる事かと思ったよ。


「恩にも着せずスマートに帰っていったね」

「バイク見せるくらいなら安いもんすよね。これでチャラとか」

「あたし達が気にしない為のおじさんなりの気遣いだろうね」


 大人だ。見習うべき大人の姿だ。

 ルシル達は今日、大人の冒険者としての生き様を学ばせて貰った。



 ---------------------



 国会議事堂


「飛川さん、解読終わりました。新たなダンジョンが出ると確かに書いてありますね」

「では議会にかけないと、これって喜ばしい事よね?」


 40年前に突然世界中に現れたダンジョン。

 ここに来て、新たなダンジョンの誕生が発表出来るとは。


「どうでしょうね?海外からはまた日本ばかりズルいと言われるとは思いますよ?」

「そうよね、ただでさえ日本はダンジョンだらけなのに」

「現状では今あるだけで充分とも言えます。資源は十分潤っています」

「でも、新しいダンジョンというからには何か新しい可能性がありそうじゃない?」

「確かに、未知の物質やスキル、魔法がある可能性も…」


 だったら発表するしか無いじゃないの。

 議会でも反対意見が出るかしら?反対してもしょうがない事なのに。

 取り合えず総理に報告、今後の対応を考えるわ。


「…大騒ぎになるでしょうね」

「まあそれは間違いないわね。それに台座がある他のダンジョンにも可能性が出てきたのよ?」

「他もダンジョンボス100回討伐がトリガーなんでしょうか?石板が出ても私物化するような者がいる可能性も」


 ありえるわね。実際これ出した人も価値が解らず一年くらい放置したそうよ。

 国に報告せずに勝手に台座にはめられても困るし、その辺の対処も考えなければ。


「では石板発見者には報奨金を出しますか?」

「このクラスのダンジョンに潜ってる者はすでに大金持ちだから効果あるかしら?」

「政府に協力的な者ばかりとは限りません。石板を破壊するような過激派が出る可能性も…」


 はあ、考える事がいっぱいね。

 育成も控えているし、仕事がどんどん増えていくわね。

 でも充実してる。議員になって本当に良かった。


 元冒険者議員、飛川珠希は本気で総理大臣の座を狙う事にした。



 -------------------



「ええ?ブロンズダンジョン?あの石板そんなに面白そうな事が書いてあったの?」


 カミナ邸にミオコとミヅキが来た。

 育成の時にお前達も見てたっけ。


「でも、別府第一ダンジョンですらいまだにおじさんが一度攻略しただけなのに、今新しいダンジョンに出られても」

「確かになぁ、日本はダンジョンなんて飽和状態だからな」

「おじさん、別府は100回攻略出来そう?」

「今のレベルじゃモチロン無理だよ。というか、当時だって奇跡的に倒せただけで死んでてもおかしくなかったんだからな」


 あれをあと99回?絶対無理だ。

 そもそもあんなのソロで狩るもんじゃないんだよな。


「オロチは首を全部落とさなきゃいけないんだけど、斬ってもすぐに復活してな」

「七つ全部同時に落とす事が望ましいという事ですか?」

「そうだ、でも簡単に斬れるもんじゃないし、まごまごしてるとすぐに復活するし」


 なので本来はパーティでタイミングをあわせて斬るのが望ましいと思う。

 モチロン抵抗も激しいので簡単な話では無いのだけど。


「なので若い君達に託すよ」

「ええ?おじさんもう攻略欲求ないの?」

「先が見えてるからだよ。俺が今からいくら頑張ったところで頂点に届くとは思わん」


 寄る年波だ。レベルが落ちないよう程々には頑張る。

 だけどこれからはお前達の時代って事だ。

 協力はさせてもらうけどこれからの中心は俺ではなくなると思う。


「子育てを頑張り次の世代を育成する。俺はもうとっくにその段階だよ」

「GOD、諦めきれるの?」

「本当は悔しいんだぞ?なんで今頃になって新しいダンジョンが出てくるんだよ。可能であれば俺がソロで全部攻略したかった」

「ソロなんですか」

「私達は足手まとい?」

「カミナはともかく、ミオコミヅキとはドロップで揉める」

「ぐぬぬ、まあそうなるかもね」

「新しい武器とかが出たら…まあ…ねえ」

「まあ現実的に考えて不可能だよ。俺は今年55歳だぞ?」


 それに、死ねない理由が出来たじゃないか。

 俺にとっては新しい命が一番の宝物だ。

 ダンジョンのドロップ品なんて比較にならないくらい大切だ。


「俺は縁側でお茶でも飲みながらみんなの活躍を聞かせてもらうよ」

「おじいちゃんか」

「GOD、寂しい事言わないで」


 カミナ、お前はひょっとしたら俺が何でも出来るスーパーヒーローだと思ってるかもしれない。

 若いお前には想像できないことかもしれないが、衰えるという事は残酷な事でな。

 怖くなるんだよ。残り少ない命を失うのが怖いんだ。万が一の失敗を考えてしまうんだ。


「見損なったか?」

「ううん、そこまでは思わないけど」


 憶病になっていくものなんだ。悲しい事だけどな。


「まあまあ、取り合えずいつ誕生するの?その新しいダンジョン」

「解らん。国次第じゃないか?階層は500らしいぞ。石板に書いてあった」

「それは解ってるの?ずいぶん親切だね」

「今のウチらで通用すると良いんですけどね」


 その辺はまったくもって未知数だな。

 500層というのが微妙だよな。元からあるダンジョンより少ないとか。

 とんでもない理不尽ダンジョンかも知れないし、ただのボーナスダンジョンかも知れない。

 100回倒した皆さんにご褒美を上げます、とかなら良いんだけどな。

 それなら俺でもまだまだ頑張れるんだけど。


「まあそれまでは地道にレベルアップしときなよ」

「おじさんもうちょっとダンジョン潜れませんかね?ミヅキと二人じゃやっぱり限界があって」


 今は1週間に一回しか行ってない。

 夏休みになったらカミナが里帰りするから少しは頑張ろうかな。

 育成もあるから何かと忙しいんだけどね。


「私も早く復帰したいよ」

「カミナ」

「せっかくGODから新しい杖貰ったのに」


 地蔵菩薩の錫杖だな。こないだ鵺からドロップした名前付き杖。

 保管庫に行けば輪廻の杖もあるんだが…あれは以前まだ必要無いと断られた。

 強力すぎる杖だからな。段階を踏みたいのだろう。


「ブロンズダンジョンか…ブロンズのビキニアーマーとかあるのかな?」

「今サファイアなんだからブロンズだと何か下がってないか?」


 まあビキニアーマー以上の装備もあるかもしれないよな。

 想像は自由だけど、今は経過を待とうぜ。

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