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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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59 決着

 高崎での動画が上がり、俺の勇姿がまた世間に広まった。

 遠目からの映像だったので顔は不鮮明だったけどね。

 大火傷した事もカミナにバレなかった。

 心配させるのも可哀そうだから良かったよ。


「凄いジャンプ。GOD海外の時より飛んでるね」

「レベルかなり上がってるからな」


 夕方の空から降ってくる隕石に向かって飛びあがる巨体。

 体重も軽くなってるからな。凄い飛んでるわ。


「あれ?GOD、飛川さんが会いたいって」

「また?事件の後も説明に行ったんだけどな」


 カミナにメールが来たようだ。また新たな問題でも出てきたのかな。

 正直気持ちがげんなりしている。

 俺は今回頑張ったしさ、次は他の人に頼んでもらえないかな。


「冒険者権利向上委員会の件が一段落したって、今回はお礼の為に会いたいみたい」

「それならまあ…」


 実体のはっきりしない団体だったはずだけど、なにか進展があったのだろうか。

 その辺の経過は確かに聞きたいな。

 今度の日曜日?解った、会いに行くか。



 ~日曜日~


 都内のフレンチレストランに呼び出された。

 飛川さんともう一人、見知った子がいた。


「あれ?カナデちゃんどうしたの?」

「どうしたのじゃないですよ。私の事を助けに来てくれたのに、ろくに礼も言えなくって」


 ああ、やっぱり気づいたのか。

 責任感じて冒険者を辞められると困るからな。こっちも言わなかったんだ。


「報道では無差別テロという事になっています。育成狙いだと言ってしまうと三人に批判が行きかねないので」

「そうだよね飛川さん、そんな事言ったらまず友達がいなくなるよ」


 一緒にいたら命を狙われかねないとなると、人から避けられる存在になってしまう。

 そうなったらもう不幸になる未来しかない。


「私の為に危険を冒してくださってありがとうございます。この恩は一生忘れません」

「カナデちゃんは被害者なんだから責任を感じる必要もないよ」

「いえ…責任はどうしても感じてしまいます。ですが、冒険者を辞める気はありません」

「そうか、なら良かった」

「ですが、1億かけてもらったのを贔屓だという声も解るので、私は冒険者で得た収益のなかから返していこうかと」

「それをやると今度は他の二人に不満が集中すると思うぞ?カナデちゃんは返したのにお前らは返さないのかって」


 熊本の子は返さなくていいというから冒険者になったんだ。

 あの子は家が大変なんだから1億返せって言われたら可哀そうだと思う。


「ミコトとも話しました。あの子はもう5000万くらい貯まってるらしくて、別に返しても良いって」

「ええ?まだ一年も経ってないのに?」


 ミコトちゃんはレベル700の師匠とダンジョンに行く事も多く、他の二人より深い階層まで進んでいるらしい。

 そうか、二等分で報酬貰ってるのかな。ならば納得だ。


「返すって言ってるけど飛川さん、国の方はそれで問題ないの?」

「国としては今後も育成を続けていきたいので候補者が辞退しない為にも返さなくて良いという方針です」


 そうなるのか、ややこしいね。

 つかこんな話聞かされても困るんだけど。

 今日は気楽な気分で来たので面倒な話はやめて欲しい。


「そんな事言わずカナデちゃんを説得してください」

「飛川さんを説得してほしいんですよ」

「おい、板挟みにするなよ。そんな事まで面倒見切れないよ」


 お互いの話し合いで決める事だ。部外者が口を挟むことではない。

 いや、育成には関わったし部外者はおかしいか。

 実際、その1億が支払われたのは俺に対してな訳だし。


「1億せしめてる俺に批判が来るようなことは無いだろうね?」

「どうでしょう?パワーレベリングにお金がかかるのは当然ですし、そんな事は無いと思いますが」


 道後で育成してる姿は見られているからな。

 俺よりカミナが目立ってたから、カミナに誤解が向くような事になっても困る。


「その話もしたかったんですよ。今年は5人の女の子を育成する予定で、また引き受けてもらえないかと」

「このタイミングで言われても困るな。それにあれはカミナの絶対防御ありきの作戦だったし」

「絶対防御持ちの他の冒険者を準備しても駄目でしょうか?」


 あの時のカミナはレベル550くらいだったんだよな。

 そのクラスの冒険者でないと耐えられるか不安だ。

 つか話進めないで、俺は引き受けるかどうかわからない。

 身重のカミナを放ってもおけないし。


「出産予定日は10月初旬になるだろうし、そう考えると夏休みの育成にかまけてはいられるかどうか」

「GOD、私は里帰り出産しようかと思っててね」

「え?そうなの?」


 いつ頃から?丁度夏休みが始まるくらいから?

 なんとタイミングを合わせたように夏休みが暇になっちゃった。

 飛川さんの目が光る。


 カミナの実家は横浜だ。

 一時期は神戸に住んでいたけど、両親とも横浜出身らしい。

 お父さんは野球選手、現役を引退した後は地元に戻っている。

 因みにいまだに俺はお父さんに嫌われている。


「なるほど、では絶対防御持ちの冒険者を準備しておきますね」

「おい、まだやるとは言ってない」

「GOD、ダンジョン潜らないとレベル下がっちゃうんだから引き受けたら?」


 自分がいない間に俺が怠けると思っているのかな。

 見てない間は不安なのかな、解ったよ。


「解った。引き受けるけど条件はどうなるの?前回はドロップも報酬も俺の独り占めだったけど」

「今回もそのように持っていきます。絶対防御持ちの協力者もレベルアップの恩恵があれば引き受ける者もいるかと」


 どうだろうな?今回はカミナの精霊の加護が無い分レベルアップの伸びも悪くなる。

 前回より日数かかるだろうし、協力者が満足するような結果になるだろうか?

 不満なら少しくらい報酬分けても良いんだけどな。

 でも今の段階でそれを言う必要もないか。候補者が見つからないようなら提案する事にしようかな。


「まあいいや、それより冒険者権利向上委員会の件が気になっているんだけど」

「そうでしたね、実体が解らない団体だったのですが、過激派の一人に幻惑の魔法が効きまして…」


 過激派は結局大阪と高崎で暴れた5人で全てだったらしい。

 全員が捕まり、組織は解散。何人かいた穏健派もこんな事が起こったので不満は無いらしい。

 むしろ自分達に責任が回ってこないか心配してるんだって。

 結局保身が一番か。まあ責めはしないけど。


「男子の冒険者就労年齢引き上げに不満がある者はまだまだいるとは思います。ですが、取りあえずの脅威は去りました」

「六馬が言ってたけどさ、冒険者の罪が一般人より重くなるというのは確かに不公平だとも思うんだよね」

「能力が高くなった者が悪に染まれば脅威は一般人のそれと比較になりません。仕方のない事かと…」


 それも解るんだよな。実際800人規模の襲撃事件も起きてる訳だし。

 被害が大きすぎるし、高レベルの冒険者を収監するのも不可能だ。極刑にするしかないのかな。

 ちなみに高レベルの冒険者の処刑方法は溺死だ。

 絞首刑も電気椅子も高レベルには効きにくい。水の中に沈めて放置が一番効果的だ。


「弟の恨みを言ってたかと思いますが、そもそも六馬の弟が人の女にちょっかいをかけようとしたのがきっかけで」

「なんだよ、やっぱり逆恨みだったのか」

「カミナにちょっかいをかけてくる男がいたとしても殺さないでくださいね」


 確かになぁ、俺だっておかしなのに絡まれたら頭に血が上っちゃうかもな。

 そういう事故を防ぐために酒はやめたけど、理不尽な奴はいるもんだからな。

 幻惑や残心で対処してるけど、効かない相手だった場合はどうするかな。


「大丈夫、絶対防御で手出しさせない。むしろGODを犯罪者にするくらいなら私がこの世から消滅させる」

「お、おいおい、物騒な事言うなよ。カナデちゃんが驚いてるじゃないか」


 あまり興奮するな。母体に悪いぞ。

 この話はもうやめよう。ほら、このコンフィ美味しいぞ。


「それよりカナデちゃん、政治家たちがこんな贅沢な食事ばかりしているのをどう思う?」

「最初にお会いした時も高そうな料亭でしたよね。ズルいと思います」

「ヘイトをこっちに向けないでくださいよ」


 税金で食う飯は美味しいものだね。俺も政治家になろうかな。

 まあ冗談だけどさ。国民の我儘なんか相手にしたくもない。


「経歴だけで当選出来ると思いますけどね」

「私も応援しますよ?飛川さん応援演説って何歳から出来るんですか?」

「18歳からよ、カナデちゃん」

「じゃあ成人したらどこへでも駆けつけます」

「今大人気のカナデちゃんに応援してもらえるなら頼もしいが冗談だって、日本の未来は飛川さんに任せるよ」

「そ、総理大臣を目指します」

「「「おー」」」


 そんな感じで食事会は終わった。



 -------------------



「大阪の動画はモザイクかかってるけどさ、どうも海外も高崎も同一人物だって皆気づき始めてるよな」

「GODはオーラが凄いからね」


 SNSを見ながら呟く。オーラではなく体型でバレてるのだろう。

 カミナは俺の事となると盲目になってしまう。


「私の旦那様説もチラホラ出てるよ」


 少しだけど出てるね。だがまだ半信半疑と言った感じ。

 ダンジョンではカミナと一緒に行動してたし冒険者の中には気づいてる人もいるだろうね。

 それをわざわざSNSで発信するかと言ったら暇な人になってしまうから少ないとは思うが。


「このヒーローは誰なの?ってサイトまで立ち上がってるよ」


 そのうちバレるのかな?住みづらくなるのはめんどいな。

 まあでも、行動だけを見ればカミナの旦那に相応しいと思って貰えそう。

 年齢と容姿で釣り合わないと思われるのは避けられないからな。

 あ、電話がかかってきた。


「…元嫁からだ」

「ええ?!な、なん、今更何?!」


 カミナの動揺がひどい。母体に響くから落ち着きなさい。


「ご、GODは返さないからね!」

「そんな用事じゃないと思うぞ?知り合いに不幸があったとかだと困るから出ていいか?」

「う、うう、う、うん。私、向こうに行ってる!」


 カミナは寝室に行った。会話を聞くのは嫌みたいだ。

 久しぶりだな、一息ついてからスマホをつなぐ。


 ー久しぶりね、新婚生活はどう?ー

「息子から何か聞いたのか?」

 ーええ、息子より若い子と付き合い始めて結婚したのも知ってるわー


 そうか、まあ仕方ない。隠すのも無理だと思ってたからな。

 それに何を言われようともう関係無いじゃないか。


 ー私といた頃は抜け殻みたいだったのにー

「俺そんな感じだったか?」

 ーあなたはダンジョンを忘れてなかったのよ。家族との生活を選んでくれたことには感謝してるけど、大事なものを奪われたみたいに気力が無くなっていったわー


 そうだったのかな。自分では解らなかった。

 良い夫であろうと努力したつもりだが、気力が無くなっていったのは確かだと思う。


 ダンジョンは確かに俺の青春だった。それは間違いない。

 全てを攻略し、やり終えたと思っていたけど、俺はダンジョンに未練があったのか? 

 家族の為とそれを捨てた時に、俺は少しずつ変わっていったのかもしれない。


 ーあなたに気力溢れる若い頃に戻ってほしいと思っていたけど、私では起爆剤にならなかったのねー

「いやそんな事は…それだと俺が若い子の為に張り切ってるみたいじゃないか」

 ー違うの?ー


 いや、違わないのかもしれないな。

 元嫁とも関係が冷え切っていく中で、救いを求めていたのかもしれない。

 安らげる場所がほしかったのだ。


「いまだに何が正解で何が間違っていたのか解らないんだよな」

 ー夫婦関係なんてそんなものだと思うわ。私だって今思えば悪い所があったと思うしー


 別れて冷静に考える事が出来たという事だろうか。

 でもそれは今更の話だ。もう終わったのだから。


 ー勘違いしないでね?やり直したいとかじゃないのよー

「そうか、じゃあこれは何の電話だ?」

 ーひとこと言いたかったのよ。結婚してからもダンジョンに潜り続けてもらうべきだったわ。それを後悔しているー

「……」

 ー今のあなたの活躍は私があなたを好きでたまらなかった時の…若くて鋭気に満ち溢れ、数々の女を魅了してたわよね?あなた」

「何が言いたいのやら…」

 ー私との失敗を糧にして、今の奥様を大事にしなさいって言ってるのよー


 何を言ってるんだコイツは。どんな立場なんだ偉そうに。

 しかも奥様って言ったぞ。それは差別用語だとお前が以前に言った事だろうが。


 ーそういう揚げ足取りも新しい奥様にはしない事ねー

「余計なお世話だが気をつけるよ」

 ーそれじゃあ、若くは無いんだからあまり張り切りすぎちゃ駄目よー


 電話が切れた。解っとるわ。足を引っ張るときもあるからな。

 俺の方が冒険者の事を理解してるし、やった事のない奴に言われる事ではない。

 そういうところが嫌になっていったんだ。久しぶりに思い出した。


「カミナ、終わったぞ」

「………な、なんの電話だったの?」

「要領を得ない電話だったが新しい嫁を大事にしろってさ」

「(ほっ)そ、そうなの?祝福してくれてるの?」


 それは解らん。若いお前に対する僻みも少し感じた。

 余裕を装っていたけど自分に魅力が無くなっていってるのを解ってもいるのだと思う。

 まあでも、今更どうでも良い事だよ。


「久々に話してみて実感したよ。俺はもうあいつが他人になってるな」

「そ、そうなの?夫婦だったのにそこまで気持ちが変わるものなの?」


 不幸になってほしい訳では無いけど、興味が無くなってる。

 実際薄情なのかもしれないな。


「わ、私も歳を取ったら捨てられるのかな」

「おいおい、飛躍しすぎだぞ?気持ちが無くなっていったのはお互いの愛情が無くなったからで」


 カミナが抱き着いてくる。

 捨てないでとすがるような眼で俺を見上げてくるが、歳を取ったら捨てられるのは俺の方だと思う。

 若いお前が心配する事じゃないよ。

 その前に俺が死ぬと思うよ。言わないけどさ。


「母体に悪いから変な心配はするな」


 よしよしとカミナの頭をなでて落ち着かせる。

 大丈夫だから、お前を粗末にするようなことはしないよ。

 子供が出来て、今は新しい未来にワクワクしているんだ。

 それを見守り続ける為にも、今度こそ失敗はしたくない。

 そしてかっこ悪い父親でありたくないとも思ってる。

 子供に誇れる父親であり続けたい。だからこれからも頑張っていこうと思う。

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