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ダンジョンだじょーん(仮)  作者: ヒゲ面の男


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56 バイク

「ふー学校で勉強してここでも勉強して」

「私ら学校では勉強してないでしょ?」


 1学期が始まってすぐの頃。

 熱海の女の子3人組は自動車学校に来ていた。


「エレナがバイクの免許取りたいって言ったんだよ?」

「おじ様の真似したくてさ、伊豆にはいっぱいダンジョンあるでしょ?バイクで回ってみたいなぁって」


 若い頃にバイクで全国を回りながらダンジョン攻略をしたおじ様。

 どんなバイク乗ってたんだろ?そこも真似したいけどウチらが取れるのは普通二輪免許まで、大型だったら真似出来ないな。


「もうバイクも注文しちゃったし」

「気が早いね、あたしまだだよ。どんなバイク買ったの?」

「来てからのお楽しみ。パイセンはどうなんすか?」

「おじいちゃんがバイクに詳しいから今相談してる」


 高い買い物だけど冒険者の報酬のお陰で躊躇なく買うことが出来た。

 金遣い荒くなってきてるのは自覚している。だけどまだ貯金が3000万以上ある。


「でも丁度良かったのかもね。100層攻略が見えてきたし」

「伊豆には100層ダンジョンいくつあるの?」


 12か所だったかな?うろ覚えだけど。

 どこもバイクで日帰り出来るよ。


「熱海潜ってた方が近いしレベルも上がるけど、マンネリを防がないと」

「そうだね、『あいつらいっつもいる』って陰口叩かれてるもんね」

「そ、そうなの?」

「仕方ないっすよ、ウチら狂ったように潜ってますもん」


 これから1か月半、ダンジョンにも潜るし自動車学校にも来る予定。

 学校の勉強は頑張る気ないけどこっちは頑張るつもりだ。

 これでいっつもいるとは言わせない。

 デートしてんのか?ってハラハラするといいよ。



 -------------------



「ほう、バイクか!羨ましい」


 熱海ダンジョン前広場


「羨ましいって何すか。おじ様の真似したんすよ?」

「俺は子供の誕生とともに売っちゃったからな」

「どんなバイク乗ってたんすか?」

「アメリカンだ。重いから下り坂で止まらなくて大変だった」

「(やば、アメリカン買っちゃった)ダンジョン移動には向かないっすかね?」

「ああ、ダンジョンは山奥も多いからな」


 道が悪い場所も多いし、アメリカンで回るのは大変だったな。

 一番向いてないのがアメリカンだと思う。


「…(ずーん)」

「おじさん、一番向いてるバイクはどんなの?」

「そうだなルシル、アドベンチャーバイクが一番良いとは思うけど、女の子が乗ってるのはめったに見ないな」

「アドベンチャーか…おじいちゃんもそう言ってたけど、可愛くない」

「だよな、クオン」


 女の子はやっぱスクーターになっちゃうよな。

 でもたまに大型バイク乗ってる女の子見るとかっこいいなと思ってしまう。


「排気量は?やっぱり400買った方が良いですかね?」

「400でも車体が重いとモッサリ感が出ちゃう、バランスが大事だぞ」

「あたし、スクーターが良いんだけど」

「スクーターか、125だと高速乗れないからそうなるとビックスクーターくらいしか…」


 いや待てよ?イタリアのこれはどうだ?

 スマホ検索、ルシルだけに見せたろ。


「あ!可愛いね!これにする!」

「どれどれ?」

「来てからのお楽しみだよ?クオンちゃん」

「うーん、決まってないの私だけか。師匠、私はこれが気になってるんですが」

「どれどれ?おお、未来的でかっこい……電気じゃないか、航続距離短いぞ?インフラも未発達だし」

「駄目ですか。ドイツ製でかっこいいのに」

「200万か、お前達の金銭感覚が心配だ」


 初めてのバイクか、いいなぁ、楽しいよな。

 ついつい磨いちゃうんだよな。

 おや?どうしたエレナ、さっきから静かだな?落ち込んで…

 はっはーん、お前、アメリカン買っちゃったな?


「でも冒険者だから取り回しに苦労する事は無いだろう。なんでもいいよ」

「(ほっ)そ、そっすか」

「私達、バイクで伊豆半島の100層まわろうって」

「もうそんな段階なのか、すげーな」

「おじ様が全国まわったのは何歳の時なんすか?」


 大学入ってすぐだよ。俺はダンジョンばっか潜ってて大学中退してるんだ。

 大学辞めて冒険者専任になったんだよ。


「師匠、大学中退してたんですか」

「ああ、ダンジョンにハマって行かなくなった」


 華やかなキャンパスライフも楽しかったけどな。でも大金にはかえられない。

 まあ専任したおかげで別府覇者にまでなれたんだけど。


「そうか、伊豆を回るんだな。俺も最初は伊豆だった」

「熱海出身だもんね」

「夏休みは北海道でも回ればどうだ?100層が一番多いのは北海道だぞ」

「え?北海道?」

「バイクじゃ無理でしょ」

「行くまでが大変っすよ」

「大洗からフェリーが出てる。フェリーの旅も良いもんだぞ」


 ちなみにバイクをアイテムボックスに入れて飛行機乗ればもっと早いが禁止されている。

 空港はアイテムボックスの審査がめんどいんだよね。

 フェリーは空港ほど審査が厳しくない。

 それでもアイテムボックスには入れず、車両として金払って運んだ方が良いとは思うけどね。


 まあ半分冗談だけどね。学生だけで北海道はハードル高いだろう。

 夏の北海道はバイクで走るのは最高だけど、何しろ広い、広すぎるんだ。

 100層ダンジョンが30以上あるし、夏休みだけで回りきるのは大変だ。


「北海道か…考えても無かったね」

「あたし、行ってみたいかも」

「滅茶苦茶行きたい。もうそれにしよう」


 え?その気になってる、まずいまずい。

 冗談だぞ?未成年の女の子がバイクで北海道旅行だなんて、さすがに親の許可が下りないと思うが。

 つか責任感じちゃう、おっさんの戯言を真に受けないでくれ。


「でも今年の夏は北海道、来年の夏は九州とか良くない?」

「お前達の受験はどうなっているんだ」

「おじ様でも大学入れたんだから余裕じゃないっすか?」

「なんだとう?言っとくけど俺は団塊ジュニアで競争率高かったんだからな?今みたいに誰でも大学行ける時代じゃなかったんだぞ?」

「…(私、進路どうしよう)」


 まあまあ、大学行ってからでも良くないか?大学生なら時間あるし、旅行も許されるし。

 いやまて、クオンが就職するとしたらそれは無理か。


「いや就職は無いですね、大学か冒険者専任の二択です」

「じゃあルシルとエレナが大学入ってからでもいいのでは?」

「バイクで青春したいっす」

「今しか出来ないことがあるの」

「…」


 本当に行く気か?多分つらい思い出になるぞ?

 雨降った時の事とか考えてるか?バイクは甘いものじゃないんだが…


「本当に行く気なら電車も併用した方が良いぞ。全部バイクじゃ大変すぎる。観光してる暇なんて無いと思う」

「バイクをアイテムボックスに入れてって事?それはオッケーなの?」

「グレーだな。でも電車はそんなの調べてる暇無いからな」


 飛行機で明確に禁止されてるのはバイクはガソリンを積んでいるので火炎瓶扱いになるからなんだ。

 電動バイクはどうなんだろう?リチウム電池も発火の恐れがあるからダメか。


「電車も良いね。ますます行きたくなってきたかも」

「親を説得しなきゃ、これも私を成長させる為」

「ウチは家出してでも行くっす」

「…」


 悪い大人に騙された事になるんじゃないかこれ?

 なんか親御さんに申し訳ないな。諦めてくれないかな。

 あ、やべ、カミナからRINEが、長いしすぎたか。


「カミナからプレッシャーがかかったから帰るけど、北海道はもう一度よく検討してからだな」

「はいはい、検討しまーす」

「…(駄目だこりゃ)」


 おじさんは帰って行った。


「カミナさん相変わらず可愛いね。おじさんを束縛したいんだね」

「あんな美人に束縛されてみたい」

「え?パイセンもそっちっすか?」

「違うけどカミナなら嫌じゃない気がする」

「ああ、解る気もするっす…てか北海道、夏は北海道って事でいいんすよね?」


 まだバイクの免許も取れてない、バイクも届いてない。

 なのに北海道でツーリング旅を予定するのは無謀だろうか?


「100層の数調べてちゃんとルート考えたりして計算してみようよ」

「なるほど、200とか300は無視する?将来の為にテレポートポイントを作っておくのも手だけど」

「確かに、北海道となるとなかなか行けないもんね」

「ウチら勉強以外の事には真面目っすよね」


 その後も北海道の話でずっと盛り上がってた。



 ------------------



 ー緊急事態発生、緊急事態発生ー


「おおびっくりした、最近無かったのに」


 また冒険者が暴れているようだ。

 今日は道頓堀か、行った事のある場所だ。

 観光地の休日の昼間、人が多い時間帯だな。


「GOD行くの?」

「ああ、カミナは来ちゃだめだぞ」


 妊婦なんだから安静に待っててくれ。

 じゃあ行ってくる。



 大阪府大阪市中央区 道頓堀


 パニック状態だ。火の手が上がり、逃げ惑う人々の群れ。

 倒れてる人も多数見受けられる、冒険者にやられたのか?


 場所が解らないけど人の流れとは逆方向だろう、かき分け向かっていく。

 人波が途切れるが見つからないな。暴れてる奴はどこだ?


 警察も見つからない。大体警察から救援要請が入るんだけどな。

 ここにも倒れている人々が、暴れてる奴が移動しているのだろう。


「ん?川の向こうか?」


 戦っている音が聞こえた。すでに他の冒険者が接触したのだろう。

 遅れてしまったがとりあえず俺も向かおう。


 橋の上、こちらに逃げてくる男が。

 動きで解る、あいつは冒険者だ。逃げてるって事はあいつが容疑者か?


 俺に気づきビルの上に飛びあがる。早い、レベル高そうだな、スカウトの動きだ。

 俺もビルの上へジャンプ、くそ、移動した後か。

 混沌とした町だ、隠れる場所がいっぱいあるから目視出来ない。


「バク子、探せるか?」

『逃走しているレベルが高い者ですね。ビルの間を西に向かっています』


 バク子は人間の個体差を見分けるのは苦手だ。

 でもレベルが高い者は認識できる。


「誘導してくれ」

『解りました』


 ビルの間をあっち行ったりこっち行ったり。

 隠れるように移動してるのが解る。


『あ、気配を消しましたね』

「スキルか?バク子でも解らないのか?」

『すみません、ですがこの辺のどこかで動かず息をひそめていると思います』


 スカウトか。冒険者が犯罪を起こしても逃げきる可能性が一番高いのがスカウトなんだよな。

 やっかいな相手だ。動き出すまで持久戦になるのだろうか。


 他の冒険者がやってきた。さきほど交戦してた者だろうか?


「援軍か!」

「ああ、容疑者はこの辺にいるはずだがスキルで気配消してる」

「やっかいだな、この地形じゃ一筋縄ではいかない」


 ああ、計画的な犯行だろうな。

 スカウトが躍動しやすい場所を選んでる。


 警察も来た。俺達から距離を取っている。戦力にならんからな。

 続々と他の冒険者も来たな。遅れて到着した援軍だろう。


「容疑者は?」

「潜んでる。スカウトなんだ」


 皆でキョロキョロ、どこに潜んでいるんだ?

 向こうが消耗すればスキルが切れると思うが、それまで待つか?

 冒険者が多くなって出られなくなってる可能性もある。


「本当にここにいるの?逃げられたんじゃ…」


 こっち側でしびれを切らす者が現れたか。

 いるのは間違いないんだが、精霊の事は言いたくない。


「俺もスカウトだ。だから解る」

「え?その体で?」


 うっさいな、嘘だよ。でもいるのはホントだよ。

 スカウトなら感知出来るからそう行っただけだ。


「容疑者の特徴は?みんなでこうしてても仕方ないから私が探してみるわ」

「そうだな、男で暗めの服を着てたな」

「俺は交戦した。身長170くらいで釣り目、黒いマスクをしていた」


 女の冒険者がビルの上へ。

 上から探すのは普通なら効果的なんだがこの町ではなかなか…あっ!


「きゃあ!」

「この女を見殺しにしたくなければ武器を捨てろ!!」


 容疑者が突然出てきた。女が近くを通ったのだろう。

 逃げるチャンスが今しかないと判断し、女を人質にしてきた。

 仕方ない、武器を捨てよう。

 どうせアイテムボックスにまだ武器もってんだけどな。向こうもそれくらいは想定してるはずだが。


「動くなよ!おい暴れるな!」

「私は少しくらいケガをしてもいいわ!捕まえて!」

「ふざけるな!首をちょん切れば冒険者だって怪我じゃ済まねえ!」


 その通りだ。頸動脈切るくらいならすぐにヒールすれば治せるが、ちょん切られるとその瞬間に死んでしまう。

 容疑者が女の首をぶった斬れるレベルなのか、女が耐えられるレベルなのか解らない。

 なのでそう言われても動けないんだ。


 テレポートを使って逃げないという事はレベル500以下だとは思うんだけどな。

 困ったな、膠着状態だぞ。

 せめて援軍にレベルの高いスカウトがいてくれればあいつに気づかれずに近づけるんだけどな。


 ひそ「あんたスカウトだろ?」

「うーん、仕方ないか」


 俺はスカウトでは無いが、気配を消せる。

 ただ、ついでに透明になってしまうからこんな場所では使いたくなかったんだけどな。


「そこぉ!なにコソコソ話てやがるゥ!」


 女の首に刃物を充てる容疑者。

 やばいな、緊張と興奮でいつ首を切ってもおかしくない。

 さすがに目線を外してくれないと透明になりにくい。

 急に消えたら警戒が高まるだろう。


「は、離れろぉ!冒険者は全員いなくなれ!」

「お、丁度いいな」

「なに喋ってんだ!こっから離れろぉ!!」


 容疑者に背を向け歩き出す。他の冒険者は信じられない者を見る目だ。

 見捨てるのか?って顔してる。だがここにいても状況悪くなるだけだと思うぞ。


「全員だ!全員いなくなれ!」


 皆が容疑所の方向を見た瞬間、建物の影に身を潜ませる。

 ここは本当に隠れる場所が多いな。俺も利用させてもらおう。


 即座に透明化、ビルの上へ飛びあがり、容疑者の元へ。

 刃物を持つ右腕を腕拉ぎ逆十字固め。


「うわあ!どこから来やがった!」


 飛びついた衝撃で女を離してしまう容疑者。

 女よ、援軍を頼んでくれ。


「て、手伝って!容疑者を取り押さえたわ!」


 いていて、刃物の背が俺の顔に当たる。

 だがこの体制ならダメージは無い。


「拘束具を預かってきた」


 他の冒険者も来てくれた。皆で取り囲み無力化する。

 ふう、一時はどうなるかと思ったぜ。



「あれ?来てたのか?お前らがいるなら俺が無理する必要なかったのに」

「今来たんや、化粧しとったら遅なってもうたわ」

「どうせもう終わっとるおもたわ」


 はんなりギャル達だ。正月ぶりだな。

 でもなんかしょっちゅう会ってる気がする。


「あいつ、知り合いどすわ。男の冒険者就労年齢引き上げに反対しとったやつでなぁ」

「不公平や言うとったなぁ」

「政治的な犯行だったのか?でもそれで犯罪起こしたら逆効果じゃないか?」

「男が犯罪起こしたら逆効果やわなぁ。でも関係なかったんやろ」

「被害者見てみぃ。若い女の子ばっかりや」


 倒れているのは高校生くらいの女の子が多い気がする。

 政治で決まった事を対象者に返したのか?


「政府が責められる流れに出来ればなんでも良かったんちゃう?」

「これで政策自体が責められるもんなぁ」

「あー、そういう事か」


 政策のせいでたくさん女の子が死んだんだ!としたかったのだろう。

 マスコミは政府の責任だと言いかねないから効果はあるのかも知れないな。

 だけど悪いのはやっぱり容疑者だよ。理不尽すぎる。


「やれやれ、やりきれないな」

「ほんまあほやで」

「実際不公平やからなぁ、どう転ぶか…」


 んーまあそうか。政策がひっくり返る可能性もあるのか?

 自分には関係ない話だから特に気にしてなかったけど、飛川さんは大変かもしれないな。


 しかしあの容疑者も若くはなかった。今回の政策で割を食う立場でもないだろうに。

 思想が強いのかな?理由までは解んないな。


 俺が事情徴収に呼ばれた。

 捕まってた女と最初に戦ってた男も呼ばれてる。

 じゃあ俺は警察に協力してくるぜ。ギャル達に手を振り別れた。


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