101 クリスマスパーティ
平日は時間が空いたら別府の777へ。
カミナはミオコ達とあちこちの500へ行ってるみたい。
そろそろ600行きたいとか言ってる。600は心配だな、今度の土日に俺もついて行くから様子見させてよ。
「カミナ、週に1、2回休みもはさんでくれよ。ちょっと頑張りすぎだ」
「うーん、たしかに楓をほったらかしてる気分にもなってるんだよね」
あれもしたい、これもしたい、全然時間が足りない。
リハビリを焦るあまり、片方がおざなりになるなんて事になりかねない。
俺がフォローしてるけど、カミナも気になっていたらしい。
おや、飛川さんからメッセージだ。
「ベルギー王女のクリスマスパーティ?」
「なにそれ?」
良くわからんけど熱海でクリスマスパーティやるとかなんとか。
俺も育成担当として出てくれって、これは断れないやつだな。
「カミナも同席していいみたいだけどどうする?」
「今度の土曜日なんだね。トモカが来てくれる日だから行こうかな」
「あいつはクリスマス予定ないみたいだな」
「それは言っちゃだめだよ?」
解ってる。あいつも結構可愛いのにモテないのかな。
体は貧相だけどああいう子が好きって奴も多いと思うが。
人の心配は余計なお世話だ、やめておこう。
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土曜日
「あ!おじ様助かったす。ウチどうしていいか解んなくて」
王女のパーティに来た。ルシルとエレナがいる。
二人とも小奇麗な格好してるな、そんなフォーマルなスカート持ってたのか。
「マイスターはサンタをやってくださらない?」
王女がひょっとこのお面持って何か言ってる。
あそこにあるのは杵と臼、向こうでは獅子舞がソリを引いてる。何このパーティ。
「任せとけ!」
おもろそうだからここまま突き進もう。
ひょっとこのお面を被って餅をつく俺。サポートはルシルとエレナ。
「杵に餅がくっついてきたぞ、二人ともちゃんとひっくり返してくれ」
「やった事ないもん」
「おじ様がふざけたお面付けてるから信用できないっす。ウチらを亡き者にしそう」
ひょっとこのお面って近くで見ると結構サイコパスに見えるもんな。
下から見ると照明を逆行にして恐怖を演出してるようだ。
「じゃあ変わるか?お前らも突いてみろ」
「おお、結構難しいっすね」
「杵ってバランス悪いね。こんな武器どうすれば…」
「武器じゃないぞ」
冒険者脳か。杵で戦うルシルを想像したら笑っちゃうだろ。
餅はスライムみたいだけどな。
「この豆はどの段階で投げればいいの?」
「王女、どこで得た知識かしらんが、あとで餅に混ぜればどうだ?」
「チョコは混ぜていいかしら?」
餅が少し冷めてきたら中に入れて食べてみろ。多分合うと思う。
「爆竹も準備してるけど」
「それ中国の行事じゃないか?」
「迷惑になるからやっちゃだめだよ?」
なんかいろいろ混ざってるな。
欧米人には区別がつかないのだろうか。
「突きたての餅って美味いっすね」
「ねー、あたし初めて食べたかも。焼いた餅とは全然違うね」
「嚙んでも嚙んでも無くならないわ。ガムなのかしら?」
「ガムじゃないから良きところで飲み込んでいいぞ」
きな粉とあずきと胡麻は準備してあった。そこは正確なんだな。
お、カミナ放置してすまん。楽しんでるか?
「カイ君が獅子舞に対抗心燃やしてるの」
「あれはトナカイではないぞ」
つか精霊は精霊でしょ?
トナカイ型だとしてもそこはプライド持てよ。
「そういえば綾元さんは?王女呼ばなかったの?」
「東京の大使館に行ったみたい。場所もちゃんと教えたのに」
大使館の中に直接テレポートしたらしく、館内が警戒態勢になったらしい。
いつものあの人だ。大使館は外国扱いだから今頃パトカーの中かな。
「短冊に願い事は最後?」
「一回で全部やっちゃう気かよ」
一応書くか、楓が健康に育ちますように。
ふう、やっと少し落ち着いてきたな。
「フィオナ王女、ダンジョン探索始めたんだよね?順調?」
「ええ、今のところ楽しくやらせてもらってるわ。まだ30階層までしか進んでないんだけどね」
まだ30階層か。レベル的には90くらいまでは行けるはずだけど…
「私達の目的はお金じゃないの。なのでとにかく死なないことが一番で、出来れば怪我もしたくないわ?」
「ヒーラーいるのにか?」
「ええ、ケガをすれば痛いもの。すぐに治るとは言っても心が折れかねないわ」
温室育ちだもんな、でもそれだとレベルはなかなか上がらないと思うが…
「その時はまた育成をお願いできなくて?」
「うーん、前も言ったと思うけど、100以降は時間がかかるんだよね。レベルアップの必要経験値も全然変わってくるし」
「一人10億くらいなら出せると思うけど、もちろん日本円でね」
5人で50億?むう、悪い話ではないな。
でも10億でレベルいくつまで?それによっても変わってくる。
「どれくらいを希望したらいいのかも正直解らないわ。前回は2つのボスに7回行ったわよね?」
「ああ、それで100万ユーロだったな」
「じゃあボス50回くらいが妥当なのかしら?」
50回?!滅茶苦茶大変だ!やっぱ受けれないよ。
俺には幼子もいるしそんなに時間はかけられない。
「そう?残念ね。でも気が変わったらお願いしたいわ」
「まあすぐの話じゃないんでしょ?まだ始めたばっかだしさ」
「ええ、当分は慣れる事が優先ね。まだ武器に振り回されてる子も多くて時間かかりそうだわ」
ははは、まあ物足りなくなったら声かけてみてよ。
その時の状況によっては受けるかもしれないしさ。
でもあまり期待はしないでね。
「聞きましたよおじ様」
「やっぱりお金なんだね」
「なんだよ、今の話なら消極的な態度だったろうが」
「いや、値段を吊り上げる為の演技っすね」
「俺そんな悪どい印象なの?」
「冗談す、ただ10億とか別世界の話だなと」
「貧乏なあたし達には真似できないよ」
お前らだって十分稼いでるでしょ?バイク2台買ってる奴もいたし。
皮肉を言うのはやめなさい。
「10億で50回なら一回あたり2000万?」
「1回くらいならうちらでもいける?」
「ええ?高いよぉ」
「でもうちらにはパイセンが…経験値の精霊って確か2体で4倍になるって前に言ってたよね?」
「じゃあ結構おいしいのかな」
「おい何の計算だ?それだとクオンの負担が大きくないか?精霊でお前達にも恩恵与えて同じ2000万て」
「確かに…」
カミナにも手伝ってもらえば8倍だ。言わんけどな。
つかお前らからそんな大金取ったら罪悪感にさいなまれるよ。
結構情が沸いてきてるし金のつながりになりたくない。
「むう、こんなに可愛がってくれてるのにレベル上げは他の子優先…」
「おいおい、心が痛むだろうが」
「エレナ、あんまりおじさんを困らせたら可哀そうだよ。この前タダで一回連れてってくれたじゃない」
そうだ!王女と一緒に行った時だな!あんときタダだったな!
俺はお前達を贔屓してるじゃないか!
「ちぇ、もうちょっとだったのに」
「危なかった、もうちょっとで情にほだされるとこだ。エレナめ腕を上げおって」
「次はどの作戦にするべきか」
「……」
「あはは、おじさんも大変だね」
まったく、変な知恵ばっかつけおって。
短冊にエレナみたいになりませんようにって付け足しとこ。
「GOD、女子高生との話は終わった?」
「お、おう、見てたのか?」
「じっと見てた」
「……」
このパーティ楽しくないな、そろそろ終わらないかな。
「お、遅れました~」
「あ、不法入国者だ」
「ひ、ひどいです~」
ここに来て胸がぱっくり空いたサンタドレスの綾元さん登場、カミナがまた不機嫌になる。
つかなんでこのパーティは男が俺だけなんだろ、不思議だ。
「ユアの分残してあるわよ。硬くなっちゃったかしら?」
「……餅?」
初めて疑問に思う奴が現れたな。
綾元さんが常識人なのは納得いかないけど。
「プレゼントですよ~」
お、綾元さんが何かを配りだした。
え?俺の分もあるの?気を使わなくていいのに。
「おお、天狗のうちわか。新人さんには良いプレゼントだな」
「天狗のうちわ?」
「おじ様、なんすかこれ」
これを使うと暴風が起こって敵が吹っ飛んでしまうんだよ。
思いがけず敵がたくさん出てしまった時に便利だな。
結構高レベルのモンスターのドロップ品。時々壊れる。
「あと飛んでる敵を落とす時とかに役に立つな」
「へえ、確かに便利っすね」
「暴風に耐える奴もいるけどそれも高階層の敵の話だから300層あたりまでは安心して使って良いぞ」
「ありがたいね、何かお返ししなくて良いのかな?」
「いりませんよ~、若い子を助けるのはベテランの務めなので~」
「らしいすよ、おじ様」
「うっさいな、レベル上げの話に戻るなよ」
便乗してきおって、油断ならない奴め。
俺は可愛いお前達にあえて苦労をさせて成長を期待しているのだ。
うーん、カミナが睨んでるからやっぱ可愛いは無しで。
こんどエレナが何か言ってきたら天狗のうちわを使おう。
パーティが終わった、カミナ機嫌なおしてくれよ。
天狗のうちわを構えて威嚇しないでくれ。
俺がヅラだったら大変なことになるんだからな。
「トモカ、お土産だ」
「……餅?」
俺は何のパーティに行ってきたんだろうな。
ぜんざいでも作ってくれ。
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翌日の日曜日、今日はミオコ達と4人で600階層に挑む。
501から始めるのか、まあ一日で終わらせるならその辺になるか。
俺はあまり手を出さない。平日はカミナミオコミヅキの3人で回ることになるのでその確認のためだ。
「しかしおじさん、いつの間にレベル883に?」
「私達と50くらい差があったはずなのに追いついてきてるじゃん」
ミオコは897、ミヅキは895らしい。カミナは802。
ソロで頑張ったからなんだかんだ伸びちゃったな。
「まだまだ若いもんには負けん」
「あはは、おじいちゃんか」
「二人はもうすぐ900だな、もう日本のTOP100くらいになってるんじゃないか?」
「そうかもですね。でも新しいダンジョンが出来たので復帰し始めてる冒険者も多いらしく…」
俺みたいにやめてた冒険者が復帰しだしているらしい。
やる事も無くてモチベーション下がった者も、新しいダンジョンや別府の攻略の道筋が見えた事でまたやる気が出たのかな。
復帰してくるって事は制覇をする自信のある高レベルなのだろう。活性化してるなら喜ばしい。
「由布院はまだ石板出ないのかな?」
「おかしいね、ビキニアーマー狙いで人気あるはずなんだけど」
「ああ、それは俺のせいかも」
「「はい?」」
奥飛騨バジリスク、道後不死王は若い時に二、三十回倒してるんだよね。
でも由布院ガルーダは一度しか倒していない。
「なんで?由布院遠かったから?」
「いや、俺がガルーダを最初に倒して初討伐確定アイテムとしてビキニアーマーが出たんだけどさ、今でこそ高性能防具の扱いだけど、最初の頃は…」
情報が無かったからただの変態装備扱いだった。
それを繰り返し取りに行ってると思われるのが恥ずかしかった。
「本当は行きたかったんだけど、若かったから変に意識しちゃったんだよね」
「あはは、女性専用装備だし、確かに恥ずかしいかも」
そのうち凄い装備だと知れ渡って行ったんだけどね。
でもその頃には別府第一の900中ボスでレベルアップしてたし、800のガルーダに行く必要は無くなってた。
「なので由布院はまだ100回いってないのかもしれない」
「おじさんがむっつりだったせいか」
「俺がビキニアーマーを山ほど集めていてほしかったか?」
「ははは、それも怖いですね」
本当はそういう欲求あったけどね。
部下としてビキニアーマー部隊とか作りたかった。これも若気の至りだ。今考えると恥ずかしい。
「その後の情報だけどエメラルドのビキニアーマーはガルーダ倒せば5回に一回は出る。レアだけど超レアって程じゃない」
「じゃあ100回倒す頃には20着くらいは出てる計算になるね」
みんな欲しがるけどそんなものなんだな。
つかあれを着る自信だって必要だから手に入れても諦める人も多そう。
実際オークションにも出てる、やめてく人も売るだろうし20着もあれば十分なのかもしれない。
「俺のアイテムボックスにも入れっぱなしになってるな」
「え?変態?」
「変態?」
お前らにルビーとサファイアのビキニアーマーやった時に一緒に持ってきたんだけど入れっぱなしだ。
折を見て保管庫に戻しておくか。
さて、じゃあ600攻略しようぜ。ビキニを働かせて俺は高みの見物だ。




